【2-2-1】 フクローラン
少しした後、お父さんとお母さんには子供が産まれた。男の子だ。私はその瞬間のことを今でも覚えている。産まれた時には泣き声が部屋の中に響いていた。私はまだ拙い身体を動かして様子を見る。
『ほら、貴方の弟だよ』とお父さんが見せてくれた。その子は私をジッと見つめている。『お姉ちゃんって分かってるのかな?』なんて皆笑っていた。
彼のまだ小さい手を、私の小さな手で握る。温かくて火傷してしまいそうだ。私は泣き出してしまう。お母さんが私を慌てて抱っこする。『驚いちゃったのかな?』なんて言っていた。
違うのだ。嬉しかったのだ。ただ悲しくもあった。寂しくもあった。
今度こそはこの子を守り通そう。私の生命の全てを賭けて。何があろうとも絶対。
「……で……ローラ……は」
「え……恐ら……ただ……」
「仕方な……ならスー……は」
私はリムさん達と分かれてからすぐバルディアへと向かった。着いてすぐに脇目も振らずにギルドの本部、さらに言えばマーニャさんのいる執務室を訪れる。話し声が漏れ聞こえる。誰かと会っているようだった。
しかし私は、ノックもせずにバンッとドアを開ける。マナーもクソもない。ただ知った事か。ツカツカとマーニャさんへと詰め寄る。
「――話を聞かせてもらいましょうか?」
彼女は私が来たことに驚いていたものの『すみません。ちょっとだけ待っとって貰っていいですか?』と、話しを中断する。その相手は全身をローブに包んでいるために、男性か女性かも分からなかった。マーニャさんは改めて私へと向き直る。
「スーニャさん。まず謝らせてください。ホンマに申し訳ありませんでした」
彼女は開口一番に謝ってきた。ただその程度でこちらの怒りは当然収まらない。
「……それで?」
マーニャさんは言葉を続ける。
「あのクエストはフクローランから受けたものです。ディーヴァヌ山脈にモンスターが出ている。討伐して欲しいと」
「それで私達がノコノコ行ったらモンスターはいなくて、ギィ達が出てきたって?」
「……そのクエストをこなせる冒険者は、その時貴方達しかいなかった。向こうも緊急だという事で、空きを待っている余裕なんてなかったんです」
『フクローランには当然苦情を入れました。ギルドにもメンツがありますからこんな事許せるわけもないです』とマーニャさんはため息を吐いた。
「ただこれは本当に我々の落ち度です。というより最初から狙っていたとしか思えない。……我々の中にもあの人たちの協力者が入り込んでるんでしょね」
「アンタらのことはいい。こっちはまだリーザは目も覚さないんだ」
「……本当にすみません。出来うる限りのことはさせて頂きます」
再度マーニャさんに頭を下げられる。ただ怒りは収まらない。彼女が元凶ではない事は分かっている。それでもリーザが今の状態になった責任の一端は担っているはずだ。
「……マーニャさん」
私は彼女の肩をポンと触る。
「アイツらがどういう連中で、何が目的なのか。私は今も分かってないです。だからできる限りの情報を教えて下さい」
「……分かりました」
「それともう一つだけ」
私はマーニャさんの耳元に口を近づける。彼女の身体がビクッと震えた。
「次似たような事があれば、――今度は許さないですよ?」
今度はビクッではなくフルフルと身体が震えている。私はハァとため息を吐く。まあこれ以上彼女を責め立てたところで意味はないだろう。
「もういいです。頭を上げてください。で、アイツら一体何だったんですか?」
まあどーせ私の存在がどこからか漏れ、それでギィがわざわざ出張ってきたという辺りだろう。ただリーザとの関係はよく分からなかったが。
「それは……」
マーニャさんがチラリと元々話していたであろう人の顔を伺っている。そういえばその存在を全く忘れていた。見知らぬ他人に随分と見苦しい姿を見せてしまったものだ。
ローブを着ているために顔は見えないが、背丈や身体付きからは男性だろうか。
「いいですよ。マーニャレスカ」
その声は聞き覚えがあるもので、目の前の人物はフードを取り顔を明かす。
私は思わぬ人物に驚いてしまう。まさかこんな所で再会することになろうとは。
「久しぶりですね。スーニャ」
それは、今はマグシアにいるはずのレナードだった。
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