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異世界転生したら、世界の敵になりました。【続】  作者: 篠原 凛翔
【第2部】 重なる足跡

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【2-1-4】

 その日は朝から雨が降っていた。私は木々の葉から雫が滴り落ちる様子を眺めていた。


「スーニャ。お茶はいかがですか?」


 ジーが私に話しかけてくる。


「ん。じゃあ貰おうかな」

「ええ。いい茶葉が入ってます。ぜひ」


『ククル様? お願いしても?』という声に『まっかせてー!!』なんて返事が聞こえる。


 いやいやいや。突如として不安になる。ただ出てきたものは予想に反してしっかりとしたものだった。


「あ〜〜、美味しい。染み渡る〜」


 そんな声を上げるとみんなは『スーニャ、お婆さんみたい〜』なんて言われる。


「今日は何だか冷えますからね。身体から温めた方がいいですよ」


 確かに雪が降りそうな寒さだった。私は曖昧な反応を返す。


「なんだかスーニャ最近元気ないねー?」


 ククルがモノとジーに喋りかける。モノが『……ん』と頷き、ジーが『こら! そういう事言わないの!』なんて返している。『少し気を使ってあげなさい!』という声も全部聞こえている。私は思わず苦笑してしまう。


「……大丈夫だよ。三人ともありがとうね」


『えー、ジー、スーニャは大丈夫だって言ってるよー?』とククルがまた言うと、ジーは『ククル様は少し黙っててくださいね』なんて返している。……すっかり仲良くなったみたいで何よりな事だ。


「……スーニャ、リーザ心配?」


 そんな中モノが私に喋りかけてくる。ジーは『モノ!?

 もうダメって言ったでしょ!?』と慌てているが別にそんな気を使わなでいいのに。それに逆にストレートな方がこっちもやりやすい。


「……うん。そりゃね」


 私が目覚めてリーザの様子を理解してから、既に二十日近くが経過しているのに状況は変わらない。あの子はまだ眠っている。食事も摂っていない中大丈夫なのかと思ったが、魔素を身体に取り込んでいるために問題はないのだとか。


「きっと大丈夫。リーザ元気になる」


 ありがとうとモノの頭を撫でてあげる。なんだか久しぶりだ。ここ最近は頭を撫でてあげるといえばずっとリーザだった。


「そうだね。きっともう少ししたら起きてくれる。眠たそうな顔しながらね」


 大きな欠伸を浮かべながら、いやそんな眠くなんてないですけど? みたいな表情を浮かべるのがいつものリーザだ。変わらずそのまま起きてくる。きっと。


「実際スーニャの時もかなり待ちましたからね。だから大丈夫ですよ」


『貴方の時なんてそれこそもうずっとソワソワしっぱなしでー』とジーが私の時の話をしてくれる。


「ご主人なんてもうずっと顔が顰めっ面で――「――ジー? 誰がしかめ面だと?」


 ふと現れたのはリムさんだ。そしてジーはまさかの登場にアワアワと顔色を白黒させている。


「いえいやその〜」

「ふん。構わんさ。むしろよく見ていたと褒めてやるべきかな?」


『いやえっと……』とジーが反応に困っている。『ん? なんだ?』と詰め寄るリムさんだが、ここは私を思っての意図もあったのだし助け船を出してやろう。


「いやほらリムさん。ジーも私を元気つけようとしてくれていたわけで」


『スーニャァ〜』とジーがこちらを見てくる。普段しっかり者であるジーにしては珍しい表情だ。


「フン。そんなこと言われんでも分かっている。ただ何もせんのもつまらんだろうが」


 あーリムさんぽい。負けず嫌いそうだし。でもジーはヘナヘナと力なく座り込んでいた。


「それでリムさんとしてはどうお考えなんですか?」


 一番今の状況に理解が深いのは彼女に他ならない。


「……は? 知らんなそんなことは」

「……え?」


 まさかの回答に私は戸惑ってしまう。何かしら分析した上での情報が返ってくると想像していたのだ。


「どうせ、いまどういう状況だとか、こう考えられるだとか、そんな事を聞きたかったのだろう? ……知らん。そんなものは」


 ゔっ……。図星である。ただ流石に何かしらの見解くらいは教えてほしいものだ。


「でもほら推測は立てられるわけでしょう? ならそれでもいいので――「――なら言ってやろう。死ぬか、生きるかだ」


 いやそんな極論を……。ただリムさんは至極真剣な表情だった。


「過去私は様々な実験を行ってきた。その中にはすぐさま死んでしまったものもいれば、投げ出したくなるほどに長い時間耐え抜き生き抜いたものもいる。私がもう無理だと思ったものでもな」


 リムさんが私や、そしてジーやモノを見回す。彼女が言っている人ってもしかして……。


「大丈夫だろうとか無理だろうとか言う事に何の意味もない。所詮どちらかしかないんだから、な」


『少なくとも貴様の時の方がよっぽど死にそうだったがな?』とリムさんは続ける。そういえば私はそれこそ炎に身体を焼かれていた。体温が下がらずずっとジーやレナードが付きっきりだったはずだ。それと比べれば確かに随分とマシな状況ではあるだろう。


「それで? 貴様はこの小娘は起きないと?」

「……リーザは起きますよ」

「ならなんの心配もいらんな」

「いやまあ、……そうですけど」


 くっそーと心の中で地団駄を踏む。上手く言いくるめられた気分だ。いやリーザが起きることを信じているのは間違いないけど、ほら状況聞きたくなるくらいいいじゃんか。


「それに貴様はらそんな事よりも考えるべき事が多いみたいだがな?」

「……それはどういう意味ですか?」

「貴様の存在はいよいよ世間に許されなくなったらしいな」 


 この言葉と同時に連絡用の呪具が音を鳴らす。これは確か誰かと繋がっているものだったはず。ジーが電話を取る。そうすると見知った声が聞こえた。……ああそういえば彼女への連絡をすっかり忘れていた。


「すみません。スーニャさんがそちらにいるって聞いたんですがホンマですか!? 今回の件を謝ろうと――「――マーニャさん? 話は直接聞きに行きます。ただ言い訳は考えといてください。適当な事言ったら、殺しますから」 

 それだけ残し私は一方的に会話を切る。シンと部屋が静まり返っている。おやちょっと空気を損ねてしまっただろうか。


「コホン。じゃちょっと行ってきますね?」 


 私の反応をリムさんは面白そうにニヤニヤと見ていた。『ああアイツには宜しくな』なんて言われたので『ええそれはもうバッチリと』と返しておく。


 それからは私はバルディアまで行く出掛ける事にした。リーザは皆がいるから大丈夫だろう。久々の一人旅だ。

 

最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。

この物語が、ほんの少しでも心に残ったなら――

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