【1-1-4】
「はいリム様。こちらが今回のクエストの報酬です。ご確認んお願いしますね」
「は〜〜い♪」
ホクホク顔で渡された金貨や銀貨の数を確かめる。いやー思った以上に高額の報酬になった。あの時のゴブリンの親玉は、どうやらギルドに報酬金の登録がされていたらしく代金が上乗せになったのだ。これで次回のマーニャさんへの支払いも心配はいらない。むしろお釣りが来るほどだった。
「はい。問題ないですよー。毎度どーもですー」
「ええ。お疲れ様でした。あ、新しいクエストも入っているのでぜひご覧になっていって下さいね」
「いえ今日はもう帰って――はいはい。リーザ。すぐペチペチしないで」
本音を言えば休みたいところなのだが、隣のリーザはそのつもりもないようだった。彼女に服を引かれながらにクエストの掲示板へと向かう。
「あ、確かに新しいの出てる。へー結構遠くのやつもあるんだね」
この世界の総人口は知らないけれども、それなりの人達が暮らしている。その為に街も点在している。今私がいるのはこの世界のちょうど真ん中辺りに位置する商都バルディアだ。
募集されているクエストには、ガレリオやグレイといったここからは東に位置する人族の国付近のものや、亜族が住まう西側区域のマグノリアの辺りのものもあった。あ、いや今はもうマグノリアとは呼ばないか。正しくはマグシアだ。
「やっぱ報酬が良いのは討伐系かなぁ? あ、オークやギガントトードのヤツとかは割と良さそう。ガーゴイルなんかもあるけどまだランク的に受けられないしなぁ」
今回みたいな追加報酬が稀であることは分かっているのだがどうしても期待してしまう。おいしい任務は果たしてどれだろう……。
「あ、リムさん!」
ジーッと掲示板を睨んでいると後ろから声を掛けられた。振り向くとAランクパーティのスタン達がおり、様子を見るにどうやらクエスト帰りのようだった。
「スタン達じゃん。お疲れ様ー」
「ええ。スー、あいや、リムさんもお疲れ様です。聞きましたよ! 手配されてたゴブリンを倒したんですってね! やっぱり流石ですね!」
目をキラキラさせてこちらを見てくる。最初に会った時にとある理由で勘違いさせてしまってから、いまだにスタンはこの様子なのだ。
「いやー、あはは。たまたま運が良かっただけだよ」
「でも大分手強い相手のはずですよ。高ランク冒険者も何人もやられてるとか。それを倒してしまうなんてさすがです!」
こそばゆい思いをしながらに曖昧に回答する。そうかあのゴブリンそんなに有名だったのか。随分と報酬がいいとは思ったけれどそれならと納得する。
「早くリムさんと高難度クエストに行きたいですね! その時はぜひ学ばせて下さい!」
「いやいや、学ぶのは私の方で……」
「ハハッ。ほらもうやめとけよ。リムだって困ってんだから」
お、ナイス。いい加減にと仲裁に入ってくれたのは獣人族のラルフだった。
「しかしアンタとクエスト行けたらと思う気持ちは本当だぜ? 機会あれば宜しく頼むよ」
「それはむしろ私が頼む方なんだけども。まあもし機会あればね」
『約束だぜー?』なんて言うが、確かAランクと組むなら最低でもBランクにならないとダメだったはず。約束を果たせるのはいつになるやらだ。
「そういえばセラムやニーナは元気ー?」
「ええ。たまに連絡を取っていますが元気にしているみたいですよ」
『今は気楽な男二人旅です』なんて笑っている。
「セラムもまだまだマグシアの件で忙しそーだものね。ニーナはアヌ教のお務めなんだっけ? 当分四人のパーティはお休みかな?」
「そうですね。ただ落ち着いたら戻ってくるって言ってるので気長に待ちますよ」
「そっかそっか」
スタンも一時期アヌ教に入信していたのだが、やっぱり合わないと今は棄教したと聞いている。その際にはニーナはかなり残念がっていたらしいけれど。
「リーザちゃんもお久しぶり」
スタンがリーザに話しかける。あれ? リーザが照れ臭そうにしている……? フム。もしかしてそういうことか? ニヤリとした私の顔を見られたのか、リーザは私をポコポコといつもよりも強めに叩いてきた。
当のスタンは露知らずと言った様子で、この手のタイプはこういう時鈍感系が多いというけれど、彼もまたその例に漏れないようだった。
「でもリーザちゃんと過ごし始めて結構経ちましたね?」
「確かにそだね。一年はいかないけども、それに近いくらいにはなるかな?」
指を折りながらに数えている。言われてみるとあっという間だった。
「思い返せば色々あったなー」
あの時私は借金塗れで放り出された。そして途中に偶然リーザと出会い今に至っている。
「でもリムさんは昔より何だか気さくになりましたよ?」
『なー?』とラルフに言うと彼もまた頷いていた。
「ああ。昔のアンタは随分と危なっかしかったからな。色々あったんだろうが今の方が好きだぜ?」
「そりゃどーも。……でもそうかもね」
確かにあの頃は今みたいに肩の力を抜いてというのは出来なかった。ずっと頭にあったのは復讐のこと。それが終わったのだから素に戻ったいうことだろう。
「ま大分張り詰めてたからね。だからリーザ、今はもっと私を緩ませてくれてもいんだよー?」
リーザはそれは違うとむーっと頬を膨らませている。みんなでその様子を見て笑いあった。でも本当にこんな日々が来るとは思いもしなかった。今のような穏やかな日々がいつまでも続けばいいなんて思う。
……まあ借金はちょっと余計なんだけどもさ。
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