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異世界転生したら、世界の敵になりました。【続】  作者: 篠原 凛翔
【第1部】 うつろう世界

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【1-8-7】

「いいですね。魔素の使い方は何となく分かりましたか?」


 ジーの言葉にリーザが頷く。


 魔法を繰り返すうち、今までは眠っていた神経が起こされる。自ずと魔素を扱う感覚を身体が覚え始める。そう彼女は言っていた。


 そしてジーの言う通りにリーザは段々と魔法の出し方を覚えてきたらしい。今では安定的に氷の礫を発現させ、岩にぶつけることも出来ていた。


「……では、次の段階に進みましょうか」

「次の段階?」

「ええ。ここまではお試しでここから本番ですよ」


『ちょっと貴方はこちらへ』と言われて私は岩の方へと移動する。


「あ、リーザちゃんはそのまま。モノちょっときてくれる?」


 すっかり存在感が乏しくなっていたモノであるが、ずっと私達と一緒にいた。ただやる事もないのでぽけーっとそのあたりを眺めていたのだ。今もふわぁ〜と眠たそうに欠伸をしている。


「そうそう。その辺り。はいストップ。でねお願いしたいのは――」


 私に聞こえない声でゴニョゴニョと何やら指示をしている。ただ漏れ聞こえる『……ジー、ホンキ?』『うん。必要なことだから』などの二人の会話から、リーザの魔法の訓練の何かの手伝いをしようとしている事は分かった。


「……リーザちゃん。では今から本番ですよ」


 ジーの言葉にリーザは若干緊張の色を浮かべる。それはそのはずで、ジーの言葉には先ほどよりもさらに真剣な色を孕んでいた。


「場面は貴方が敵と対峙しているところ。味方は今にもやられてしまう。貴方はどうにか仲間を守らなければなりません。――さぁ、どうしますか?」


 ああそういうシチュエーションなのか。モノが私に剣を向けている。恐らく私がその仲間で、ジーとモノが敵役なのだろう。


 リーザは手を前に出す。そして魔法で作られた氷の礫がモノとジーの前に現れる。


「うん。上手になりましたね。でもそれだけでは、敵は倒せませんよ?」


 モノが剣をリーザの魔法へと振るう。作られた氷は即座に両断される。


「ダメですよ。もっと必死にならないと」


 再度リーザは氷を作る。ただそれもまた瞬時に切り落とされる。


「やっぱり難しいですよね」


 ふぅとジーが息を吐く。そして彼女はモノへと視線だけを移した。


「――モノ?」

「……ん」


 そういえば二人で相談していた。恐らくリーザをけしかける為の方法を考えていたのだろう。今の相槌もそれを始める合図というこ――。


「――ごめんね?」


 気が付いた時には私の目の前にはモノがいて、その大剣を私へ振り下ろそうとしていた。


「――え゙?」


 その剣は容赦なく私の体を斬りつける。突然の出来事に反応する事が出来ない。避ける暇も無かった。


「……ッ!!!!」


 リーザが明らかに狼狽した様子が見える。……ああなるほど。確かにこれは効果的だろう。ただ流石にやる前には一言くらい言って欲しかったけれど。


「ほらリーザちゃん? 貴方のお仲間はやられてしまいます。私達を魔法で止める他ありませんよ?」


 まー、私はどうせ回復するし死ぬ事もないのだけれど、ただ痛いことは痛い。それに服も汚れるし。だから極力はやめてほしいのだが、ここは空気を読むことにして傍観することにしよう。


「……ほらもう一回攻撃されてしまいますよ? 今度こそは危ないかもしれません」


 モノが私の首元に切先を突きつけている。あれいやちょっと本気すぎない? 


「ダメならいいんですよ? この人が亡くなるだけですから」


 それと、ジーって悪役が堂に入りすぎじゃない? ちょっとイメージ変わっちゃうんだけど……。可愛い見た目ながらも、しっかりもので優しい女の子って印象だったのに。


「ほら本当に、間に合わなくなっちゃうよ?」


 私の想いとは裏腹にジーはリーザへの挑発を続ける。リーザは手を前に突き出し続けていた。どこからともなく氷が生まれ宙に浮いている。


「……それでは先ほどと何も変わりませんよ? 貴方の想いはその程度ですか?」


『モノ?』とジーが声を掛けるとともに、突きつけられていた剣に力が込められる。


 うーわ、これ今度こそ一回殺されるやつだよヤダナーなんて呑気に考えていた。死んでも生き返るがそれでも嫌なものは嫌だ。

 

 ――ただそれが私の首を貫くことはなかった。突如目の前に先程より大きな氷の塊が現れ、私の身を守ってくれたからだ。


「……!」


 モノは剣を振りいったん距離を取っている。慌ててリーザを見ると、彼女は目を伏せながらに跪き、宙に手を伸ばしていた。


「――リーザ?」


 モノはその氷へ剣を振るう。ただどれだけ切り裂こうともそれはすぐに再生し、その傷跡を埋めていく。そして驚いた事に、氷に触れたモノの剣もどんどん凍りついていく。その勢いはモノの手にまでも及びそうであった。


「……モノ、もう大丈夫」


 モノの手に触れそうというところでジーが間に入る。モノには剣を手放すように伝えていた。


「……リーザちゃん。おめでとうございます」


 言うまでもなく、その氷はリーザが魔法で作ったものだ。ジーが言うところの、彼女が持つイメージを体現した結果なのだろうか。


「……守りながらに戦う。貴方そのものを表しているのかもしれませんね」


『もういいですよ』というジーの声とともにリーザは魔法を解く。そして緊張の糸が切れたのか荒い息を吐いている。


「お疲れ様でした。今の感覚、忘れないでくださいね。それと本当にいざという時だけ。あとは周りに回復魔法が扱える人がいるといいですね。……でないと、死んじゃいますからね?」


 その声を聞き届けてリーザは気を失ったのか、その身をジーに預けてた。


「……ありがとね?」

「いえこちらこそ無理やりですみませんでした。スーニャも驚きましたよね?」


 リーザが意識がないからか久々にその名前を呼ばれる。なんだか違和感があることがおかしかった。


「まあね。でも無事魔法の使い方も覚えられたみたいだし助かったよ」


 私の言葉にやはりジーは難しい表情をしていた。


「うーん。良かったのか悪かったのかですが……」

「というと?」

「この子、きっとどこがで使うよ? たとえ自分の身を削ろうとも。だから教えない方がよかったのかも」


 確かにそうかもしれない。ただ少なくとも、リーザにとって多少なりと生き残るための手段が増えたのだ。覚えておいて損はないだろう。


「まああとはスーニャに任せます。私達もそろそろご主人のところに帰らないと」

「あれもう行っちゃうの?」

「ええ。あの人たちだけ置いておくと、ちょっと不安なんです」


 なんて悪戯っぽい表情をしている様子は、先ほどまでの彼女とは似ても似つかない。そういえばアイツに似ているような印象だった。


「でもさー、さっきまでのジーってなんかレナード? っぽかったかなぁ?」


 私が言うと『おー! 似てましたか? ちょっと寄せてみたんです!』なんて嬉しそうに言っていた。やっぱり。まあ普段の彼女ではあの役はやり辛いのだろう。誰かを模すというのは最も手軽な手段の一つだ。


「あ、あとも一個だけいい?」

「はいはい、なんでしょう?」

「結局魔法を使う上で、呪文って必要ないの?」


 リーザは言葉を介せないために魔法は難しいのかと思ったが、最終的には扱えた。となると呪文の存在意義とはいったいなんなんだろうか。


「あー、言葉が発せない事自体は実は大きな問題じゃないんです。その呪文自体に効果はなくて、魔法へ意識を向けさせる事が目的なので」

「あれ、となるとやっぱり別に呪文って無くてもいいのでは?」

「……それ外で言っちゃダメだよ?」


 あ、やっぱり根本の部分のようだ。


「呪文を唱える事で、この魔法が発現するって心理的な働きかけの効果もありますから。あとは何よりイメージがしやすい。なので呪文を唱えられた方が会得はやっぱり早いみたいですよ」


『まあ一回詠唱無しで覚えちゃうとそっちの方が簡単になっちゃうんで、どっちもどっちなんですけどね』と言っているが、あれ? 私の時ってそんな選択肢もなく、体当たりで覚えさせられたような……。


「スーニャはだって特殊だもん。それに今が上手くいってるならいいでしょう?」


 なんて非道なことを笑顔で言うあたり、やっぱりこの子もレナードがどうとか言えないくらいには、性格破綻気味かもしれない。……まぁ主人があのお方だし無理からぬ事なのかも。


「じゃ私達は行きますね。リーザちゃんにもよろしく。それとスーニャ、そのうちご主人達にも会いに来てくださいね」

「うん。ありがとね。モノもジーも、またね」


 そして二人を見送る。私はリーザが起きるまで木陰で休憩し、これから先の事をぼんやりと考えることにした。


「――あそうそう! 一個忘れてました!」


 ジーがトテトテと慌てながらにこちらへと帰ってくる。はてなにかあったのだろうか。


「これを渡すのを忘れてました!」


 そう言って渡されたのは小さな小包で、振るとカタカタと音がしたので、中に何か入っているようだった。


「ジーこれは?」

「ご主人から渡されて、実は私も知らないのですがなんでしょう?」


 ジーも知らないようだ。ただまあリムさんの事だから何かしらの意図はあるんだろうけども。


「まあ預かっとくよー。リムさんにもよろしくね」


『はーいー』と今度こそ二人を見送ったのだった。


最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。

この物語が、ほんの少しでも心に残ったなら――

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