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異世界転生したら、世界の敵になりました。【続】  作者: 篠原 凛翔
【第1部】 うつろう世界

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31/111

【1-8-3】

「……普通かー」

「……普通、ですね」


 何とも言えない空気が流れる。いや全然悪くないんだよ? だってほら一応普通に才能があるわけじゃない? 私なんて全くセンス無いなんて言われたんだから。むしろ普通最高! 普通バンザイ! なんて言っても良いくらいなんだけども。


「……」


 リーザはどう反応すべきか困っているような顔をしている。……いや待てよ? ジーから見たらそれは誰でも才能なんて普通のはず。もしかして基準が違うのではないだろうか?


「ね、それってもしかしてジーとかレナードとか、凄い人たちから見てなんじゃ――「――違います。普通の、この世界の人から見てです」


 バッサリと切り捨てられる。ちぇー……。まあそんな気はしたよ。


 でもこういう時って、だいたい凄いか凄くないかのどっちかじゃない? 普通って……。いやリーザには悪いけどさ。彼女も同様に何とも言えない表情を浮かべていた。


「……ちなみに、普通ってもう少し具体的に聞いても良い?」

「うーんそうですね……。魔法は扱えます。でも戦闘に扱えるほどじゃありません的な……?」


『この世界でも魔法をそんな扱える方が珍しいんですよ?』というジーの声を聞いて、いかに自分が特殊な環境下にいたのか気付かされる。え、ということは、里にいたカーナなんてめちゃくちゃ有望だったんじゃなかろうか?


「……最初から説明が必要みたいですね」


 ジーはも〜〜、とでも言いたげにこちらを見ている。


「まずですね。アヌの話から始めましょうか」


 アヌ? でも魔法とどういう関係があるのだろうか?


「アヌがこの世界に生まれて、世界を作った神話はご存知でしょう?」

「うん。まあ」


 私の曖昧な答えにハァとため息を吐いているが、勿論それくらいは知っている。始まりの五日間とかいうやつだろう。まず太古の神々である六柱が、その後にこの世界に生きる生き物達が日毎に生まれたそうな。


「あの話の上ではもともと世界には魔素は存在しなかったらしいです。でもアヌが世界に魔素を分け与えたのだとか」


 ほー。そんな話だったろうか。


「だからこの世界において魔素を持たないものはいないのです。……いるとしたらそれはこの世界のものではないかもしれない、ですね」


 あれ? 私の方をジッと見てる? いやなんだろう。何か顔についているのかな? 


「ですから魔素はみなが一様に扱えます。扱えるはず」


 また私の方を見ている。いやほら何かあればハッキリ言ってくれた方がありがたいのだが。そんな言いにくい事なのだろうか。……なんて、冗談だけれども。


「でも勿論その得手不得手は才能次第です。ただ簡易的に扱えるもの、生活に扱える程度のもの、深く理解して高度に扱えるもの、それは人それぞれです」


 ジーはようやく私から目を離した。しかしなるほどだ。であれば冒険者などはまさしく才能の塊なのだろう。


「ですから、別に普通っていうのは悪い意味ではありません。むしろその言葉の通り一般的という事でもあります」


 モノはこの話に飽きてしまったのか、ふぁーなんて大欠伸をかましていた。隣で真剣に聞いているリーザとは対象的である。


「それで? リーザが戦いに魔法を使用できない理由は?」

「ふむ。リーザちゃん改めてよく聞いてください」


 最も重要なところはそこである。リーザがゴクリと唾を飲んでいるように見えた。


「……魔法というのは、身体に秘める魔素を呪文や呪具を触媒とし発現させています。貴方もそれらを用いれば魔法を扱うことは出来るでしょう」


 私が『あれー? 私はー?』と言うと『今はややこしいから黙っていて下さい』と言われ引き下がる。まあ今は茶々を入れるのはやめておこう。


「ただ、ね。ただですよ。貴方の身体に秘める魔素は、先ほど言った通りに普通なのです」


 少しだけリーザの身体が揺れた気がした。


「魔素はその人自身の生命力とも言い換えられます。無理やりに魔素を変換させようとしても発現はしません。むしろ生命力を霧散させるだけ。……貴方は魔法の扱いは向いていません」

「……」


 リーザの瞳が揺れていた。それでもなお気丈な態度を保っている。私は慌ててフォローに入った。


「まあまあ、ほらリーザ、他にもやり方があるよ」


 それから私がどんなに話しかけても彼女は俯き黙りこくっていた。


 その後途中に水場があり私達は一度休憩を取る事になった。その場所は滝になっており、上から降り落ちてきた水が池となっている。私達は思い思いに時間を使う。リーザは一人水場の辺りにいる。私も何と声をかけていいか分からなかった。


「……怒ってます?」


 ジーが私に声を掛けてくる。


「いやまさか。ジーはしっかりしてるなぁって改めて思っただけ」


『あはは。なにそれ』なんて言っている。先ほどリーザに言っていた事は、けして意地が悪いというわけではない事は分かっている。あくまで事実を伝えただけ。


「分かってると思いますけど。……あの子を戦いに近づけたとしても、きっと死んじゃう」

「……うん。きっとそう。だからホントは嫌だったんだ」


 私の言葉にジーが目を丸くする。


「でも教えてあげようってなったんですか?」


 私は頷く。ジーは合点がいかないといった表情をしていた。


「それはなんでまた?」

「あの子はね。なんでか知らないけど、私から離れる事をとても恐れている。それが危ない場面であればあるほど」


 目の前ではモノがリーザに近づいて一緒に水面をぱちゃぱちゃとして遊んでいた。


「ちゃんと言えば止められるんじゃないですか?」

「何回も言った。でも絶対に言うことを聞く事はない。もしかしたら失っている記憶の中でも同じような経験があるのかも」


『随分と固執しているみたい』と言葉を続ける。ジーは黙り言葉を聞いていた。


「ま、最初は私が助ければいいと思ってたんだけどね。でも目から離れてしまう時もあるかもしれない。助けてあげられない時も。そういう時のために、護身の仕方くらいは教えてあげようと思ってね」


 二人はお水を飲んだり掛け合ったりして遊んでいる。


「うーん事情は分かりました。でも難しいですよ」

「そうだよね」

「……あの子は貴方や私達とは違う。普通の子です。それをよく認識してあげてくださいね」


『わかってるよ〜』と肩をすくめて返す。ジーは『仕方ないなぁもう』なんて呆れていた。


 実際分かってはいるのだ。リーザと自分が違うことなんて。ただ受け入れたくはなかった。こんな身であったとしても彼女と二人でいつまでも暮らしていけたら、なんて思ってしまったのだから。


最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。

この物語が、ほんの少しでも心に残ったなら――

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