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異世界転生したら、世界の敵になりました。【続】  作者: 篠原 凛翔
【第1部】 うつろう世界

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27/55

【1-7-5】

「……まったく。やっと見つけたよ」


 リムさんとはまだ距離が離れているはずなのに、その声はとても通って聞こえました。


「リーザ? あとでお説教だからね?」


 一歩一歩とこちらへと近づいてきています。死人族と名乗った女性は疑うようにリムさんの事を見ていました。


「……ア、赤い髪? イや、でもあの絵とは、似てなイ?」

「アンタがうちの子にちょっかい出したのかな? なんだか知らないけど離してくれる?」

「ネ、ねぇ、貴方が、思い浮かべていたのは、このひト?」


 彼女はリムさんから目を離さずに私に問いかけてきます。こうなっては致し方ありません。私はコクリと頷きます。


「ソ、そウ。デも、この人は違う、のかナ?」

「……別になんだっていいでしょ?」


 その語気の荒さに驚いてしまいます。今までリムさんが怒った姿は実は見た事がないのです。


「とっとと解放して? じゃないと全員殺すまでだよ」

「……ア、貴方が、そうなのか確かめさせて、貰いまス」


 その声と同時に屍人さん達がリムさんへと向かっていきます。ノソノソとした足取りではありますが、数が数なのです。私はリムさんへと逃げるようにと手をシッシと振ります。


「リーザ? なにそれ? 手首でも痛めたの?」


 いや全然ダメです。全く私の意思が通じません。今こうしている間にも屍人さん達はリムさんへ迫っていきます。


「ア゙ゥガァアアア!!」


 その手がまさに触れようとしているのに、リムさんはそれでも慌てる様子すらなく冷めた表情で屍人さんを見つめていました。


「――ひとまずウチの子に手を出した報いは受けてもらわないと、かな」


 その声と同時に、屍人さん達の身体から炎が立ち昇ります。


「ア゙ァ゙ア゙ァ゙ァ゙ァ゙ッッ!!!!」


 辺りには苦痛からか絶叫が木霊しました。屍人さん達にも痛覚はあるのでしょうか。


「……」


 その様子を淡々と見つめているリムさんの姿は、私の知っている今までのリムさんとはまるで別人で、少しだけ怖く感じてしまいました。


「ア、ああ、そ、それは、もしかしテ……」


 そんな中で死人族の彼女は、仲間の屍人さんが倒されているというのにどういうわけか嬉しそうにしていました。


「ア、貴方が、スーニャ様、なのですカ?」

「は? アンタがスーニャなんじゃないの?」

「イ、いエ。私は、死人族の、ザビ、と申しまス」


 ああこの人はザビさんというのですね。ここに来て初めて知りました。


「で、その死人族がなんでスーニャを名乗っていたのさ?」


 リムさんの声色は冷たいままで射抜くようにザビさんを見ています。 


「ワ、私は、スーニャ様にお会いしたかったのでス……。スーニャ様の名前を名乗れば、いつか、きっと私の元へ、来てくれるのではないか、と考えていましタ」

「ふーん? それで? 会ってどうするつもりだったの?」


 そうです。私もずっと気になっていました。なんでザビさんはスーニャさんにそんなにもご執心だったのでしょうか。


「……ワ、私の一族は、太古の神々の一存で、滅ぼされましタ。スーニャ様はミームを、殺したでしょウ? キっと、私を導いて、くれるは――「――そんな事ないよ」


 ザビさんが話している中、リムさんが言葉を被せ止めます。その声色は先ほどよりもさらに冷たいものでした。


「スーニャはそんな存在じゃない。貴方は勘違いしてるんだ。ソイツに何かを願ったところで、得られるものなんて何もないよ」


 その言葉はまるでスーニャさんの事をよく理解しているような言い回しでした。それにどこか悲しそうな表情でもありました。


「一族が滅ぼされたのは気の毒だしもし復讐をするというなら止めないけれど、でもスーニャに期待するのはやめといた方がいーよ」

「……」


 ザビさんはリムさんの言葉に呆然とした表情を浮かべています。


「ほら周りのゾンビみたいな連中も全部燃え尽くしたし、貴方もどこか行きな」


『今回だけは見逃してあげるから』とリムさんはザビさんから視線を外します。確かに周りにいた屍人さん達は全て燃えかすになり、一人もいなくなっていました。


「リーザ? 動ける?」


 私はコクリと頷き立ち上がります。


「あーあー、もう首にあとついちゃってるよ。これ当分消えないと思うよー?」


 今はもういつものリムさんの声と雰囲気に戻っています。その様子に私はホッとしました。


「でもさー、ホントなんで勝手に行っちゃったのさ。今もギリギリだったよ?」


 確かに後少しリムさんが遅れていたら本当に危なかった事でしょう。今回のことは私も反省しなければなりません。


「じゃ、行こっか。ほらザビ、だっけか? アンタももうスーニャとか、名乗らないようにね?」


 そう言って私の手を引き歩き出そうとします。ザビさんの方を見ると、彼女は何やらぶつぶつと呟いているようでした。


「……ソ、そんなことはないでス。スーニャ様は、私を導いてくれる、はズ。ダから、絶対、スーニャ様を、探しださないト」


 その声にリムさんは明らかに不機嫌そうな様子をしています。


「だからさー、スーニャにそんな依存するのはやめなって。神様でもなんでもないんだか――「――スーニャ様は、神様でス!!」


 今までは聞き取るのか難しいほどにボソボソと喋っていたザビさんが一転して声を張り上げました。


「ス、スーニャ様は、私にとっての、神様でス!! ア、貴方に、何が分かるというんですカ!!」

「……まあ好きにしたら? でもここにこのままいるのであれば殺す。それにスーニャを名乗るのでも殺す。これは本気だよ?」

「ソんなこと、知ったことでは――「――本気、といったよ?」


 その瞬間にザビさんの身体が炎に包まれます。彼女の叫び声が辺りに響き渡ります。私はリムさんを止めるためにその身体をゆすりました。リムさんも長くは続けるつもりはなかったのでしょう。すぐに炎は消えザビさんはその場に崩れ落ちました。


「……忠告はした。あとは好きにすればいい」


 その言葉だけを残し、リムさんは私の手を引いてその場を去っていきます。私は最後までチラチラとザビさんを横目に見ていました。  


「……キ、キヒヒ。ス、スーニャ様ならわかってくれル。ミ、見つけださないト。ソして、ア、あの忌まわしきアヌ教も、ホ、滅ぼして頂くんダ。キヒヒヒ」


 何かまたぶつぶつと喋っていて全てを聞き取ることは出来ませんでした。それでも、彼女の心は変わっていないのだろうということだけは私にも分かりました。当然リムさんも察しているのでしょうが、あえて口を開くことはありません。私はリムさんの様子を窺おうと思ったのですが、暗がりのせいでどんな表情を浮かべているのかは知ることはありませんでした。


 ただ、今の私では理解できない何か複雑な想いがリムさんの中にあるのだろうということだけは分かったのです。


最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。

この物語が、ほんの少しでも心に残ったなら――

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(……でないと、力尽きるかもしれません)


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