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異世界転生したら、世界の敵になりました。【続】  作者: 篠原 凛翔
【第1部】 うつろう世界

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【1-7-2】

 それからも私達は探索を続けました。ただやっぱり何も見つかる事はありません。


「うーんー、なんだろうね。ひとまず明日ももう一度だけ探してそれで何も無ければ引き上げよっか」


『明日あそこだけ一応見てみよ』と私達は一度馬車まで戻ります。あそこというのは、探索を続ける中で少しだけ離れた場所に広間があることが分かったのです。とはいっても遠目から見る限り沢山の人達が隠れられるような所ではないように思えました。


「どっかに出掛けてるとかかなー?」


 リムさんもあまり期待はしていない様子です。


「ま、とりあえず今日は適当に休も」


 私はまたコクリと頷きます。馬車へと戻りご主人に説明すると彼は問題なく受け入れてくれました。


「ええ構いませんよ。数日は泊まれる用意があります。ただ野営はここからは少し離れた場所でもいいでしょうか?」

「ああ勿論大丈夫ですよ。それに私達も一緒に行きますので安心して下さい」


 今そのスーニャさんはお出かけしているのかも分かりませんが、この場所が普通の人には危険な事には違いありません。それなら私達が守ってあげなければですから。


 ……いえ私も守られる側かもしれませんがいざとなったらこの短剣を使うまでです。私は首元の剣の鞘を撫でながらにそんなことを考えます。


「じゃあいこっか」


 そうして私達はほんの少しだけ街から移動しました。ちょうど近くには川が流れていたのでそこで泊まることにします。実はリムさんは街中のお家を借りることも考えていたみたいです。ただ流石にそれは私が止めました。だって、もしご自宅の主人さんが帰ってきたらそれはそれは驚いてしまうでしょうから。


「さーてー、じゃあお楽しみの時間だねー」


 何だかんだですっかり日も暮れてしまい私達は晩御飯を食べることになりました。私達は馬車のご主人にご飯を分けてもらいつつその料理に舌鼓を打ちます。


「……っはぁー! やっぱ美味しいねー!」


 モグモグとご飯を口に運びます。うん。保存の効く食材を使ったものばかりではありますが、美味しいです。ちゃんと栄養も考えられているようでお肉だけでなく野菜もたくさん入っていました。


「ね? もう一本いいかな?」


 もう本当にこの人は……。明日もちゃんと捜索することを覚えているんでしょうか? そんなお酒ばっかり飲んでちゃ動けなくなってしまうでしょうに。


 でも私がどれだけ責め立てるような視線を送っても本人は気にもしていない様子です。まあ今日は一日中歩き回りましたし、きっと気を張ってくれていたこともあるはずです。それは私が一緒にいたから余計にそうなった部分もあるでしょう。なら今日くらいのんびりさせてあげましょうか。


「お! いーの!? 珍しいー! じゃ遠慮なくー」


 ……やっぱり撤回してこれ以上はダメと伝えるべきでしたでしょうか。


 そしてご飯も食べ終え私達はそれぞれ床につきます。まだお休みするには少し早い時間ですが、特にすることもないので致し方ありません。程なくしてリムさんの寝息が聞こえ始め、私もまた目を瞑り身体を休める事にします。明日は何か手掛かりは見つかりますように。


 ……? 眠りについていた中、ふと何か気配を感じました。獣か何かが通ったのでしょうか? あるいはもしモンスターであれば一大事です。私はリムさんをユサユサと揺らし起こそうとします。


「……ゔ〜ん、リーザー、お手洗いなら一人で〜」


 全く起きる気配がありません。ハァとため息を吐きます。でも確かに誰かがいたような気がします。それにこちらを見ていたような……。


 一人で確認に行くのはやっぱり危険でしょうか。でももし何か危険が迫っていたら大変です。どうしたものでしょう。


 私はうーんと頭を悩ませます。隣のリムさんはクークーとお休みしています。馬車のご主人も同様です。こういう時って誰かは起きているべきなんじゃ、と今更ながらに思います。


 よし、私が起きている事にします。そして本当に危険が迫るようなら、リムさんをペチペチ叩いて起こしてやるのです。そうと決まれば横になってなんかいられません。私は身体を起こして周りを警戒する事にしました。


 ただあれからずーっと待っているはずなのに何も気配は表れません。浅い夜の時間が今では深夜に差し掛かりそうな頃合いです。流石の私もだんだん目蓋が重くなります。頭がカクンカクンと下に落ちてはハッと意識を取り戻します。


 もうやっぱり寝てしまいましょうか。これから行きたい場所やしたい事を妄想しては意識を保っていましたがそれももう限界です。


 閉じた目蓋が開かなくなり意識が虚ろになってきた頃、ガサリという音が確かに聞こえました。私はビクッと身体を起こします。やはり誰かがこちらを見ていたのでしょうか? 私は音のした方向をジーッと見つめ耳を澄まします。どうやら音が段々と遠ざかっているようです。つまり私達を見つめていたどなたかはこの場から逃げようとしているのです。


 私は追うべきか追わないべきか迷いました。でもここで逃してしまったらもう手掛かりは見つからないかもしれません。それに私一人でもし情報を手に入れたとあれば、リムさんも私をきっと認めてくれるはずです。


 今まではおんぶに抱っこな状態ではありましたが、少しはお役に立てるアピールが出来るかもしれません。確かに冒険者の方々が倒されてしまったというお話もありましたが、もし危なそうであれば一目散に逃げ出せばきっと大丈夫でしょう。私はヨシと自分を鼓舞します。リーザいっちょやったりますよ。

 

 私は音の聞こえる方向へ後をつけます。相手さんの進みもそこまで早いわけではありませんでしたので見失う事はありませんでした。ただその姿がどんな様子なのかはまだ分かりません。今日は都合悪く雲で月も隠れているのです。


 リムさんは否定的な態度でしたが、私はもしかしたら今この人こそが本当に本物のスーニャさんなのでは? と思っていました。だってそれならこんなにも姿を隠していることも頷けます。


 暫定スーニャさんはどうやら私達が明日調べようとしていた広間へ向かっていたようです。その場所でスーニャさんが立ち止まるのが見えて、私は興奮と緊張からトクトクと鼓動が鳴りました。


最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。

この物語が、ほんの少しでも心に残ったなら――

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(……でないと、力尽きるかもしれません)


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