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異世界転生したら、世界の敵になりました。【続】  作者: 篠原 凛翔
【第1部】 うつろう世界

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【1-7-1】 狂信

「わーおこれはまた中々……」


 リムさんが目の前で絶句しています。それもそのはずで目の前にあるのはまるで廃墟? のような街でした。


「えー? 本当にここであってるのかな?」

「はい。ここに向かうようにジルベルト様からは仰せつかっております」


 やっぱりここで間違いないようです。この中のどこかにそのスーニャさんがいるのでしょうか?


「なんかイメージと違ったなぁ……」


『洞窟とかおっきな城? みたいな所にいるのかと』と言っています。


「まあでもちょっと色々探してみようか」


 私はコクリと頷きます。そして二人で街の中へと入っていったのです。


 街はまだ真っ昼間なのにとっても静かで何だか眠りについているようでした。殆どの家が既に崩壊していて原型を保っていません。私達は一つ一つ建物を捜索していきます。


 建物の中には過去に人々が暮らしていたと感じさせる痕跡がそこかしこに残されていました。食器、服、装飾品、寝具。ただそれらのどれもが朽ち果ててはいるのですが。


「リーザ、何があるか分からないから私から離れないようにね?」


 私はトコトコとリムさんの近くへと戻ります。ん、とリムさんは頷き私達は捜索を続けます。


「あ! これはまた売ったら高く売れそうな装飾品が……」


 それぞれのお家を見ていく内中にはお高そうなものも見つかります。リムさんはそろそろ〜とそれに手を伸ばそうとしていますが、私はペチンと叩き止めました。


『え〜、だって誰も使うわけでもないんだしさ〜』なんて言っていますが、それじゃ泥棒さんなのです。めっ! です。めっ! 『分かったよぉ〜』なんて名残惜しそうにしていますが私はリムさんの手を引いて先へと進みます。


 ある家の中には子供部屋があり、玩具が並べられていました。埃は被っていますがまださして状態は悪くはありません。きっと丁寧に、大事に扱われていたのでしょう。


 またある家ではたくさんの絵が飾られていました。色褪せ擦り切れてしまっているので、何が描かれていたのかは分かりません。ただ私には大人と子供が手を繋いでいるように思えました。


 私達は探索を続けます。最初は警戒していたリムさんも段々と集中力が切れてきたのか、今ではゆるゆるな雰囲気です。気を引き締めるようリムさんをペシペシ叩いても『だって何にもいないじゃないー?』とそんな具合です。これは私がしっかりしないといけませんね。


「ちぇー、事前にもっとちゃんと聞いておけばよかったなー」


 とは言ってもジルベルトさん達も情報がなかったのでしょう。もし何か知っているのであれば教えてくれているはずです。


「地道に手掛かりを探していくしかないね〜」


 それからも私達は何かないかと探し続けました。結局何も見つかることはありません。くたびれてしまった私達は適当なお家をお借りして休憩を取ることにしました。


「あー歩き疲れた。なーんも見つからないねー」


 本当に何にも見つかりません。こうなってしまうと私もここが目的の場所ではなかったのではとすら思えてしまいます。


「ちょっと休んで、また地道になにかないか探そっか」


 私もコクリと頷きます。


「それにしても最近は色んな所に言ってるよね。一昔前からだと考えられないなー」


 確かにリムさんの言う通りです。初めて会った頃はバルディアの中、あるいは近郊までしか出掛けるなんてありませんでした。それが今や竜人族や獣人族の里にも出掛けるようになって昔からは考えられない生活です。


「ね? リーザはさどこが楽しかったー? 美味しいものもいっぱいあったよねー」


 その通りです。バルディアも勿論美味しいものは沢山ありました。それと比較することは出来ませんが、それでも竜人族や獣人族の里で食べたものは美味しいものばかりでした。


 それぞれの種族の特性や土地柄に即したものが形成されているのでしょう。竜人族の里と獣人族のそれは見た目からしても違いました。勿論バルディアとも違います。


 きっと精霊族や鬼人族、人族のそれぞれの国もまた異なる文化を持っているのでしょう。いつかリムさんと行ってみたいものです。


「あーはやく帰ってまたあのお酒飲みたいなー。帰る時にはちょっと貰っていこっかなー」


 私にはまだ早いと言って飲ませてはくれませんでしたが、そんなに美味しいんでしょうか。ガリオンさん達と飲んでいたお酒はトロリとしていて、見た目と深い色合いからするととっても甘そうに見えますが、果たしてどうなんでしょう。大人になるまでお預けというのはあまりにも殺生じゃないでしょうか。


「リーザもチロっと舐めるくらないならまー許してあげてもいいよー?」


 ニヤニヤとそんなことを言っています。言いましたね? 今度リムさんが飲んでいる時にグラスをガバッと奪ってやりますから覚悟しておくがいいです。


 しかし、改めて考えるとこのリムさんはいったい何者なのでしょうか? マーニャレスカさんから始まりフレイさん、ガリオンさんにジルベルトさん。どうも簡単には会えない人達のようなのです。


 それなのにみんなに気軽に話している様子や、先の戦いに詳しい所を見ると、もしかしたらリムさんも相当に位の高い人だったりするのでしょうか? 


 少なくとも生まれが高貴なものだとしたも見劣りしないくらいにお綺麗な整った顔立ちはしていると思います。真面目な表情の時なんてドキリとすることもあったり……。


「はぁー、帰りたいー休みたいー。ずっとダラダラしていたいー」


 それなのにこんなグデーとしている姿では台無しです。私は自分の頭をブンブンと振り浮かんだ考えを消していきます。やっぱり私の勘違いなのでしょう。


 リムさんと会って、拾ってもらって、それなりの月日が経ちました。それでも私は記憶が戻ることはありません。声が出ることもありません。


 でも今のこの生活には満足していました。あとは自分の力不足を補うことが出来れば満点なのですが。それはまた追々進めていくとしましょう。


 ひとまず私達は体が休まるまでこのお家にお邪魔させて頂きました、

 

最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。

この物語が、ほんの少しでも心に残ったなら――

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