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異世界転生したら、世界の敵になりました。【続】  作者: 篠原 凛翔
【第1部】 うつろう世界

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【1-6-1】 萌芽

 魔法。今でこそ自在に操ることが出きているものの、そのやり方を説明するとなると思ったよりも難しい。特に私の場合は体系化された教育を経て扱えるようになったわけではない。


 スパルタもいいところというくらいに強制的に身体で覚えさせられたのだ。勿論リーザに同じ体験をさせられるわけもなかった。


「……」


 隣ではムムムと眉間に皺を寄せながらにリーザが手を見つめている。


「ほらリーザ? こんなとこでそんな事しないよ?」


 いじけた顔しない。だって本当に魔法がでたらどうするつもりだ。いやリーザは喜ぶかもしれないが、怒られるのは私なのだからやめてほしい。


 昔には故郷の化け形族の里で一応、魔法の扱い方を学びはした。ただ結局どんなに試したところで意味をなさないので、内容なんてもう覚えてはいない。


 今詠唱もせずに魔法を扱えているのは、この身には様々な種族の素養が備わっている為であり、力をくれたエルフのカイリ様々だった。……こんな事ならもっとちゃんと聞いておけばよかった。

 

「ほら。つくよリーザ」


 私は目の前の分厚い扉をノックする。奥から声が聞こえて中へと入る。


「――いやよく来てくれた。ひとまず座ってくれ」


 私達は言われた通りに示されたソファへと腰掛ける。随分と上等な素材のようでフカフカとしていた。


「で、久しぶり。って言うほど関わりもないような気がしちゃうけど」

「ガハハ。そういうな。お前さんの事は気にしてたんだ。フレイの所にも行ったんだろう?」


 ああ出所はそこか。リーリアさんから呼ばれるならともかく、なんでこの人に呼ばれたのかは疑問だったのだ。


「まあね。じゃ改めて。――ガリオン。要件はなにかな?」


『そう急かすな』と彼はお茶を勧めてくれる。


 ――今、私達は獣人族の里を訪れていた。

 

「せっかく遠くから来てもらったんだ。世間話くらい付き合ってくれないかね?」


 ガリオンの長く立派な立て髪をリーザは物珍しそうに見ている。


「なんだ。獣人族の顔役がわざわざご指名頂いたみたいだから大慌てで来たってのに」

「悪かったさ。ただなお前さんとどうしても会いたいというヤツがおってな」


『ほれ入れ』と声を掛ける。私にわざわざ会いたいなんて一体誰だろう?


「……失礼します」


 入ってきたのは獣人族の男性、いや少年というべきか。ガリオンとは異なり人の部分が多い。片耳は傷を負ったのか欠損していたが、ピアスで上手く誤魔化しているようだった。


「ジルベルト=オーヴェンと申します。今は一応獣人族の長を任されています」

「ええ、どうも?」


 ジッと彼から見つめられる。何だろう? どこかで会ったでもあるだろうか。


「えっと?」

「あ、いえ失礼しました。噂にお聞きしていた方とお会いして少し緊張してしまいました」

「あー、そうなんだ。でも噂って」


 どんな噂が出回っているのだろう。スーニャとしての意味であれば、あまり良い意味ではなさそうだけれど。


「ええ。レオ国王からお聞きしていて」

「レオ国王? ……ってあのレオ?」

「ええ。そのとおりです」


 確かに考えるまでもなく、レオはマグシアの王様だ。彼女とは縁があり、先の戦いにおいては色々と関わる機会も多かった。しかしレオ国王か。王冠を被ってる姿を想像しても似合わなさ過ぎて笑ってしまいそうになる。


「ということはどーせ碌でもない話ばかりでしょ?」


 彼女とは浅からぬ縁だが何を言われていることやら。


「いえいえ。彼女は貴方の事を大層認めておられますよ。それに、申し訳ない事をしたとも」


 ……申し訳ないことか。いや彼女らしい。立場変わっても、あの頃から変わってなさそうだ。


「そんなことはないよ? 言い出したのは自分だし。レオが気に病む必要はないんだけどね」


 実際にそうなのだ。今この状況を作ったのは自分自身なのだから。


「それでも貴方がいたから今のマグシアがあります。……貴方には感謝するべきなのでしょうね」


 ジルベルトは神妙な顔をしていた。今マグシアという大国が生まれ、永く歪みあっていた亜族と人族は平和への一途を歩み始めてはいる。


 まあ今が良いのか悪いのかは分からないけれども、確かに私がいなければ、また違う未来になっていた事だろう。


「別になんでもいーけどね。私は私の好きなようにやった。だから感謝されるいわれも無いし、恨むなら好きに恨めばいい」

「……貴方は強いですね」


 ジルベルトは最初驚いたように目を丸くし、そしてふっと表情が和らぎこちらを見ていた。


「正直どんな人かと気になっていたんです。それでガリオンに無理を言って呼んでもらいました」

「あー、それでか。一体何事かと思ったよ」


 通常クエストというのは、掲示されたクエストを自らが選び、ギルドの窓口へ申請をすることで受理される。ただ今回のものは直接私に指名が入った。高ランクの冒険者ならそういう事もあるらしいが、まさか自分にとは思わず最初は疑ったものだ。


 更に怪しさに輪をかけるように、クエストの内容は獣人族の里で説明するとの一言のみだ。断ってやろうかとも思ったんだけどその報酬の高さを見ては逆らう事はできなかった。……いや本当に、全然違うんだもの。


「まあ私としては報酬が貰えれば何でもいーよ。で、クエストの内容は? まさか本当に会うだけって事はないでしょ?」

「ああ。ではそっちの説明を始めるか」


『まあお前さんが適任だろうさ』なんてガリオンは笑っていた。


最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。

この物語が、ほんの少しでも心に残ったなら――

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