【1-5-3】
あの日リムさんから血が溢れるのを見て、私は心臓が止まるかと思いました。このまま死んでしまうのではないかと本気で思ったのです。リムさんがいなくなってしまう恐怖に私は身体が震えが止まらなくなりました。
対照的にリムさんはまるで気にしていない様子でした。私にはそれが理解できません。だってこんな深手を負っているのですから、なんでそんな反応ができるのでしょう。
「大丈夫大丈夫」
リムさんが私の頭を撫でてくれます。いつもなら照れ臭くも嬉しいそれも、今はただ私を慌てさせるだけです。
「ちょっとだけ離れててくれる? すぐ片付けちゃうからね」
まだ戦うつもりなのでしょうか。私は首を振って拒否します。当然です。今すぐに治療しないと間に合わなくなってしまいます。とても行かせるわけにはいきません。
「――ほら見て?」
私は指し示された傷跡へと視線を向けます。そうすると沸々と何かが湧き出てくるようでした。いったいなんでしょう? 私は近づいて見ようとした時、リムさんの背中から炎が立ち昇りました。私はビックリし過ぎて何事か理解ができません。
ただその炎はとても綺麗で、私は思わず見惚れてしまったのです。まるで生命そのもののような、そんな印象でした。気がつくと炎は消えていてリムさんの傷も癒えていました。
「だから大丈夫。またサクッとアイツ倒しちゃうから。待っててね?」
そんなこと言われてもまだ理解が追いつきません。私はリムさんの服の裾を掴んで行かせないようにします。だだリムさんは微笑んで私の指を離しました。
その後はリムさんはあっさりとワイバーンを倒しました。戻ってきた後に再度傷跡を見ましたが、やっぱり無くなっています。元から傷なんて負ってなかったのではと思うくらいに綺麗でした。
私達は竜人族の里に戻りました。お金も無事に受け取り、約束していた観光に行くことになりました。初めて見る風景や食べ物はとても新鮮で心躍らせるものでした。
でも私はずっと頭の中に残り考えていたものがありました。私は変わらなければいけない。リムさんに甘えているだけでは駄目なのです。
一通り見て周り、私達は里の隅から沈んでいく夕日を眺めていました。
「……ね。リーザは楽しめた? もし、なにかあれば言って欲しいな。せっかく今二人で過ごしているわけだしさ」
私の様子がどこか上の空だったとリムさんも思っていたのでしょうか。
私はリムさんの手を取り今自分の思いを伝えることにしました。
「――戦い方を、教えて? 守られるだけではなくて?」
今みたいに守られているだけでは、やっぱり駄目です。リムさんの足手纏いにだけはなりたくありません。それにずっと一緒にいるためにもきっとこれは必要なことです。
リムさんは何やら考え込んでいる様子でした。どうするべきか迷っているのでしょう。
「……じゃ、ちょっとずつやってみようか」
やりました。思わず万歳をしてしまいそうです。リムさんほどに強くなれなくとも、手助けを出来るくらいにはなれるでしょうか。
「でもさ、私は人に教えた事ないし期待はしないでよー?」
それでも全然問題ないです。私はコクコクと顔を上下させます。私のそんな様子を見てリムさんは笑っていました。
でもその笑顔は、なんだか哀しそうな、泣きそうな表情だったことを覚えています。
それから私達はバルディアへ戻り早速魔法を習い始める事になりました。魔法を選んだ理由は、私は剣術には向かないとリムさんが判断したからです。それはきっと当たっていて私もあんな重い物、とても振り回せる気がしないのです。
「で、だよ。ホントに私誰にも教えた事ないからさ。ぶっちゃけ教え方も分かんないんだよね」
ドキドキしていた私の心が一瞬で冷めていきます。教えてくれると言ったのは何だったのでしょう。私は責めるようにリムさんに視線を向けます。
「そんな目しないでよー。だってさー。うーん、改めてどうやってるかって言うとなぁ……」
『自然とやってるからそれを説明するってのも難しいんだよぅ〜』なんて言われても、こっちも困ってしまいます。
「ま、ひとまずさ。私が使える魔法を見せてくからさ。そこから始めよっか」
そこからはリムさんの魔法をいくつか見せてもらいました。ワイバーンと戦っている時に見た炎の他にも、水や氷、岩、風、魔素そのものをぶつける魔法もあるみたいでした。
「あとは爆発系の魔法もあるんだけど、これはちょっと威力が強すぎるからここではやめておこう」
魔法というのはどうやら何種類にも分かれているらしいです。攻撃を目的としたものだけでなく、治癒魔法や移動魔法、何かしらの効果を付与するものもあるみたいでした。
「魔法の出し方はねー。こう、身体の中から力を手に集めて、ガァーッと打ち出す的なー」
でもリムさんの説明は全然参考になりません。はぁとため息を吐きます。魔法を学ぶまでの道のりはどうやら長そうです。
最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。
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