【1-4-3】
「うっま! なにこれ!?」
私は口の中に含んだお肉をシカルで流し込む。肉の脂が絶妙にその苦味と調和して次々に口に運んでしまう。……いやホント美味しいこれ。いくらでも食べれちゃうんじゃないか?
「遠慮せず食べなね? 私もどんどん食べるから」
リーザもコクリと頷きモシャモシャと食べている。なんだろう。牛に近いジューシーさだけども魚にも似た奥深さがある。ドラゴンってこんな味なのか。
「いやーこれはお酒も進むわ。もう一杯貰ってこようかな?」
フレイと別れてからようやく観光に赴いた。竜人族の里は随分と特徴的で、岩を繰り抜いた住居が建ち並んでおり傍目からは大きな岩山のように見える。
住居の中はまるで洞窟のようではあるものの、光を取り込む為の窓も設けられていたりと生活するのに何ら不自由はなさそうだった。
「どう? リーザも見るのは初めてでしょ? 中々来る事ないだろうし目一杯楽しんどこう?」
私は適当な露天で酒を調達し、自分の喉に流し込む。ふむ。バルディアで飲んだものとベースは同じだけれども、味わいが若干違う。こっちはあっさり目だろうか。比較的暑い気候であるこの土地柄に合うよう工夫がされているのだろう。
「ほらなんでもいいよー? 甘いのも塩っぱいのも今日だけは特別だからさ」
私もここぞとばかりに名物を平らげる。フレイにはああ言ったものの、竜人族の里に来る機会なんてそうそう無いだろうし、目一杯楽しんでおかないと。
でも今までは結局バルディア近辺のクエストが主だったが、これから先は遠出も増やしてもいいかもしれない。この世界にも観光地と呼ばれる場所も存在する。東南の地域に位置するスウェールなんて、綺麗な海沿に面しておりその澄んだ海は一見の価値があると聞く。いつかリーザと共に行ってみたいものだ。
「あ! あっちにもまた別なの売ってるよ! ちょっと見に行ってみよう!」
私はリーザの手を引き、一通りの露天を見て回った。
「ーーはぁー満足満足」
私は冗談まじりにお腹をポンポンと叩いてみせる。隣にいるリーザは、夕日に照らされ真っ赤に染まる竜人族の里を眺めていた。
「リーザも満足?」
私は彼女へと話しかける。なんやかんやで一通りの観光はしたつもりだ。食べ物だけでなく竜人族特有の建造物も見て回った。勿論全部が全部見れたとは言わないが、それなりに羽休めにはなったはずだ。
「……ね。リーザは楽しめた?」
それでもリーザは今日一日どこか上の空で、何か別の事を考えていたように思える。彼女も楽しみにしていたはずなのに何か思うところでもあったのだろうか。
「もしなにかあれば言って欲しいな。せっかく今二人で過ごしているわけだしさ」
私の言葉にリーザは少しだけ逡巡した様子だったが、意を決したようにこちらへ向き直った。
「ん? どしたの?」
彼女は私の手を取り文字を書き始める。初めて会った時、自分の名前を私へ伝えたように。
「ーー私も、戦いたい? 守られるだけではなくて?」
私の言葉にリーザはコクリと首を縦に振った。
「いや、えー。でも、なんで?」
別にリーザが何か学ぶ必要なんてないはずだ。それなのになぜそんな事を言い始めたのか。もう一度私の手を取り文字を書く。
「私が、リムさんを、守ってあげたい、か」
この前の戦いの事を気にしているのだろう。彼女なりに考え抜いた末に私に言ってきたに違いない。若干表情が強張っている。
実は、去り際にフレイにも似たような事を言われた。あの時会話を終え部屋を出ようとした私はこっそりと呼ばれ、耳打ちされた。
『あの子って本当にただの子供なわけ?』
それに対して私はこう答えた。普通の子だと。私も詳しくは知らないけれども、と。
『これからもあんなのを連れて行くつもり? 死ぬわよきっと』
そんな事はさせない。私がまた守ってやればいい。
『アンタはいいけどね。ただの非力な子供を連れた冒険者なんて、聞いた事もない』
確かに私がリーザと共にクエストを受けていると伝えるとみんなに驚かれた。
『連れて回るなら最低限の責任は持った方がいいわよ』
軽く考えているつもりは毛頭無い。ただ彼女の言葉に反論も出来なかった。
『ま、私には関係のない事だけどね』
ただそれでもリーザが共にいたいと言った。それならそれでいいと思ったんだ。
私はリーザの目をじっと見る。彼女は緊張した面持ちながらも私から視線を外すことはしなかった。……仕方ない、か。リーザは意志の強い子だ。今まで共に過ごした中でそれも分かっている。
「……じゃちょっとずつやってみようか」
彼女の顔がパァーと輝く。
「でも私は人に教えた事ないし、期待はしないでよー?」
リーザはフンフンと鼻息を荒くしながらに頷く。私はそんな彼女を見て作った笑みを浮かべる。しかし、正直に言えば内心は苦々しい想いだった。
こんな私が今更何を、という事は分かっている。
ただせめて、私の目の前にいる間だけでもリーザには戦いに近づいて欲しくなかったのだ。
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