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異世界転生したら、世界の敵になりました。【続】  作者: 篠原 凛翔
【第1部】 うつろう世界

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1/9

【1-1-1】凪

 キンキンに冷えたシカルを流し込み火照った体を冷やす。杯の中身を一息で飲み終えたところでふぅと息を吐いた。


「……んん゙ーー。やっぱこれの為に生きてるよねー!! 大将もう一杯ー!!」


 大将はすぐに新しい杯を持ってきてくれた。私は早速それを飲み干しに掛かる。


 あ゙ーいやホントうまい。美味しいっていうよりうまい! って表現が適切だ。


 因みにこのシカルは、前世で言うところのシュワシュワした黄金色のアルコール飲料にそっくりだった。


 ガブガブと胃の中にシカルを放り込んでいるとクイクイと服の裾を引かれた。私はそれに気付かない振りをする。クイクイとまた服が引かれる。


 いやでもまだもう少し……。今度は身体をツンツンと小突いてきた。……も゙ー仕方ないなぁ。


「……リーザさん、なんでしょ?」


 視線をリーザに向けると、彼女は明らかに不機嫌そうな顔でこちらを見ていた。


「あ、もしかしてこれ飲みたい? だめだめ。まだリーザには早いよー」

 

 彼女はフルフルと首を振る。いやまあそういう事じゃないのは分かってるさ。でも少しくらい許してよー。ホント疲れてるんだしさー。


「それかリーザも飲み物追加する? それともお腹空いた?」


 それも違うと首をもっと大きく振っている。


「あそう? じゃあ私はもう一杯」


 私の言葉にいい加減にしろとペチペチ叩いてきた。


「痛い痛い。ごめんごめん。……でもさあ、ずーっと働きつめだったじゃん? 私も少しくらい息抜きしたくてさー」


『大人にはお酒に酔いたい時もあるのさー』なんて言うと、彼女は諦めたのか溜息を吐いて、自分の飲み物をクピクピと飲み始めた。


「お! リムじゃねーか。今日は随分と景気が良さそうだな?」


 話しかけて来たのは私と同じく冒険者の知り合いだ。酒場はだいたい同じ顔ぶれが客として来るので、いつの間にやら顔見知りになったのだ。


「そう見えるー? 相変わらずの素寒貧だってのー」

「はっは。そりゃ酒でも飲まないとやってらんねーな」

「でっしょー?」


 二人で笑い合っている中、目の前のリーザさんはやっぱり複雑そうな顔をしていた。


「なーんか美味しい仕事でもあればいんだけどねー」

「そういうのは俺たちみたいなのには回ってこねーだろー? 大体上位ランクの連中が取っちまうからな」

「いやほんとそれ。楽で報酬の良い仕事に当たりたいもんだよー」


 この会話をしている間にも空になったグラスがどんどん積み上がっていく。


「ハハハ。まったくだな。しっかし相変わらずよく飲むなー」

「飲まなきゃやってらんないっつーのー。アンタも私が借金まみれって知ってんでしょー?」

「そら酒に酔って何回も聞かされたからな。もう耳タコさ」


『この店にくる奴の大体は聞いてるんじゃねーのか?』と言われるが、あれいやそんな言ったっけ? 


 ……言ったかもしれない。でもまあ愚痴くらい吐いたっていーじゃない。ストレスを吐き出しにきてるんだもの、なんて。 


「でもそろそろやめといた方がいーんじゃねーか?」

「えーなんでさ。まだこれからだってのに」

「いやほら隣のちっちゃい女房がすごい剣幕だぞ?」


 えっ、とゆっくりと隣を向く。確かにそこには完全にお怒りな様子のリーザが私を睨んでいた。 


「……あははー。今日はこんな所にしとこうかなあ」

「ははっ。そうしとけ。リムもリーザもお疲れさん」


 流石にやりすぎだったか。私は早々にお勘定を支払いリーザと共に帰路へと着く。途中彼女に話しかけてもずっとそっぽを剥かれたままだった。

 

 お酒を飲む習慣なんて、前世でもこの世界でも今までなかったけれど、労働の後に飲むお酒の味は確かに格別だった。大人がこぞって飲みに行く理由もよく分かる。 


 そして、こうして家族や恋人に冷たく扱われるところもまたきっと一緒なんだろう。


 明日はご機嫌伺いにリーザが好きなものでも買ってあげるとしますかね。


最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。

この物語が、ほんの少しでも心に残ったなら――

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