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受難続きのテラ惑星間貿易商  作者: 椎谷 急須
10章 四国大戦
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閑話 タニア連合王国 王都ノクティス・ラビリントス



--- ラビリントス宮の宮廷内 王妃執務室


挿絵(By みてみん)


ルゥルゥ・フォー・タニア・ソフィーナ。

前国王の妃になり、現在は新女王の摂政として政務をとり仕切っている。

ここは、王妃の執務室内になる。タニア宰相との打ち合わせを行っている。


「アルゴスからの協力は? 」

「おそらく、無理かと存じます。 状況が状況だけに激怒しており、会話できる雰囲気ではありません」


「まったく。 国内反乱を目的とした介入――加えて失敗するとは。 激怒するのも当然よ。 おまけに裏取りまでされるなんて申し開きもできないわね」

ソフィーナの怒りも道理にかなっている。


「……そこは、情報庁のキンバリーの暴走との方向でまとめております」

その文言だけでは、彼女の眉間の皺は取れない。


「それに加えて、アルバテラでのTF-1型の実験とか初耳なんだけど? 」

「状況が状況でして、テロリストに扮して、核実験の実施予定のようでした」


「過去のデータもある。臨界前実験でもなんでもできるでしょう! どうして屋外で爆発させる必要があるの! 」


「実際の威力をこの目で見たかったとのことです――報告書には、そう記載がありました」


「そんなサイコ発言。 発端は技術開発局ね? 」


                 ***


王立技術開発局。 このノクティス・ラビリントスが、※1連合王国の首都として、そして配下の都市を抑え込む力の源泉として用いている最重要部署の一角である。


キンメリア大陸での食料事情悪化した時代、多くの民が口減らしとしてイスペリアからティファー大陸へ送られることになる。 簡単に言えば島流しと言ったところだろう。


しかし、多くの民が送られたことで、その地で新たな国家成立を立ち上げた。 最初は小さな集落からであった。 そこから既存勢力と戦闘、抗争、そして追いやられながら、逃げながら場所を領土移動していく。


設立当初は、階級の無い平等な社会を模索したものの、突発的な抗争、戦争、移動する領地、そして市民への強権的な従軍などを実施するため、強力な権限として王権が必要なる。


結果、王権による移動する軍事優先国家が興ることになる。 しかし、移動しているため、人口増加も不安定になるなか、少数でも多数を相手にするため科学に頼ることになる。 その中心を担ったのが、王立技術開発局になる。


そして、その科学を戦闘に用いて諸都市国家を急襲・吸収していくことなる。


                 ***


「はい。 しかし、承認したのは、キンバリーです」


「キンバリー、キンバリー、キンバリー。 ここ最近の失態は、全て彼が起因しているわね! だいたい、超機密情報の塊を国外に持ち出して、実験とはどういう了見? 貴族院の事前委員会にすら上がっていないのよ! 」


「おっしゃる通りです」

「宰相の貴方を通り越して、奴は何を考えているの! おまけに実験して失敗して、どんな計画を建てれば、こんな無様な結果になるの! 」


「キンバリーの情報庁長官の降格騒ぎがあった当時でして、副長官が代理で業務を遂行しておりました」


「完全にグルじゃない! 副長官の身分は、はく奪! 情報庁から……武官府から追い出しなさい。 何なら、首をアルゴスへ渡そうかしら? 」


タニア宰相から王妃への進言がある。

「非文明国家のような振る舞いは、おやめください。 TF-1型を持っているとの威勢を周辺国に知らしめた利点もございます。 はく奪と追放だけで、ご容赦を」


「いいわ。 しかし、私の裁定を不服として国を裏切った場合は――」

「それも承知しております。 年金もありましょう。 厳しく言い含めておきます」


彼女は書類を机に放り投げる。 あまりにも失敗続きの内容でもう読む気にならない。

机の上のティーカップに口を付け一息入れる。


「リーラインをイスペリアからこちらに戻しなさい。 彼を情報庁長官へ登用するわ」

「キャンバリー殿は、どういたします? 」


「すでに国王兄弟派と合流しているわ。 奴を抑え込める器は、リーラインぐらいでしょう? 」


「確かに……。キャンバリー殿が、兄弟派に付いた目的はなんでしょうか? 」


「国王兄弟派に取り入って、貴方の。宰相の地位が欲しいのでしょう? 王妃派だっけ? こちらには貴方がいるから、望んだ地位が手に入らないと踏んだんでしょ」


「この地位ですか? そんなに良いものですかね。 宮廷政治にはウンザリなのですが」

王妃の前で愚痴が言える程度の信頼関係は、築けているようだ。


「ふふふ。 あなたには、色々対応してもらっているから、こちらは楽ができて助かっているわよ。 とはいえ、宰相と言えば、王族と伴に国を動かせる最高権力よ。 魅力的なんでしょうね」


「たったそれだけの理由――地位欲しさに主要3ヵ国とことを構えるのですか? 」


「あとここからは、完全に私の予測。 ねぇ? 仮に主要3ヵ国が、タニアの配下に入ったらどうなると思う」


宰相の表情は、信じられないと見て取れる。

「かつての情報庁長官です。 にもかかわらず、その思考。あまりに誇大妄想で稚拙過ぎるというもの。 言葉に出すのも(はばか)られる目的になりますが……」


「“世界征服”。 国の運営も分からない輩が、征服後の世界の運営方針を是非とも聞きたいものね。 しかし、戯言で片づけられないのが現状よ」


王妃から発せられる言葉に宰相の思考が固まる。 


その様子を見て、王妃は一拍置く。

「それで、例の計画は順調? 」


王妃の言葉に宰相は、我に返り回答していく。


「は……はい。 タニア国内の戦争主導権の確保に関しては、順調でございます。ただ――」

「何? 」


「本気でことを構える場合、エリス側もTF-1型を持っているため、楽観的な予測はできなかと」


「そうでしょうね」


マールス(火星)の主要3都市国家を相手にするのです。 それなりに対応と戦略・戦術も必要となりましょう。 加えて“エリスの英雄”も宇宙に上がっています」


「エリスの英雄ね――」

「恐らく、エリスは、前々から何かしら感じ取っており、準備を進めていたと思われます


「美人英雄と持ち上げられて、浮かれていればいいと思っていたんだけど。 うちの宇宙軍からの報告では、順調に仕上がっていると聞いているわ」


「はい。 残念ながら」

宰相はいったん間を置く。


「王妃殿下。 この戦、大きなものになるでしょう。 事前に手打ちはできないのでしょうか? 女王即位に反対派の貴族など、ラビリントスの科学力をもってすれば敵ではありません。 


TF-1型もあります。 以前のような独立機運もありません。 無暗に外敵を作る必要もないと考えます。 御命令があれば、キャンバリーであっても――」


宰相のその目は、鋭く決意に満ちている。


彼女は残念そうな顔を宰相に向けながら、さらなる言葉を綴っていく

「先ほどの私の予測には、根拠があるの。 都市国家エリスも戦を望んでいるわ」


途端に宰相が動揺する。

「まさか! いや……そうですか。 そう来ますか」


「そっ。 誇大妄想に取り付かれた権力者が、2人もいるの。 TF-1型を手に入れて両国家とも気が大きくなったのね。エリスの執政官メラノとうちのキャンバリーよ。


キャンバリーは、混乱状態を作るのに長けている。 何をするか分からない。 確実に戦争を引き起こす状況を作るでしょう」


「国王兄弟派は、キャンバリーの野望をご存じなのでしょうか? 」

「知っていたら自陣には、加えないでしょうね。 言ったでしょ。 私の予測だって」


「……」

「そして、奴を消すにも既に国王兄弟派に匿われていて手が出せない状況よ」


「そのために、戦争の主導権を“国王兄弟派”に渡さないための本計画ですか」


「そうよ。被害も最小に抑えたい。もちろん我々の方が、現時点では立場は上よ。 もし戦になった場合には、“国王兄弟派”には先兵となってもらうわ。 


将軍職でも与え最前線指揮官になってもらう。 そして相手方に彼らの位置情報を漏洩させる」


「王族の首が取られたことで講和に持ち込むと」

宰相が結論を述べる。


「上手い方向に転がって欲しいけど。 現時点での最善案よ。 プロメンテに着く前に彼らには、戦場で死んでもらう。 後ろ盾がいなければ、キャンバリーも手詰まりになるはず」


「確かに……」


「もう戦はいやなの」


そう言うと彼女は、執務室の大きく開けた窓から外を見るように黙って背を向けてしまった。 王妃の表情は見えない。


「御意に」

宰相は、臣下の礼を行い退出した。


                 ・

                 ・

                 ・


それから1ヵ月後、メムノニア(タニア第3の港湾都市)ヴィノグラードフ(タニア第1の港湾都市)で大規模な爆破テロが発生した。


両都市合わせて死傷者500名を超える被害となる。 犯行後には、キンメリアでの悪業を誅する内容として “プロメンテ国民解放戦線” の名で声明文が発表された。


タニア連合王国内に“打倒プロメンテ”の機運が、再び高まることになる。 前回の※2収奪法案時にも起きたが、キンメリア大陸の片田舎に直接武力を向けることへの虚しさに一旦は治まっていた。


しかし、現在キンメリア南部は、巨大な地下資源と農業改革より豊富な資源地帯と変容しており、その戦略価値が上昇してる。 そこにまたとない大儀名分が届く。 かつての愚行と今回の件を合わせて懲罰行動して、動き出す。


予想通り、女王陛下の御前評議会で煽動を仕掛けたのは、国王の甥達(兄弟の息子)であった。


想定通りに事が進んでいく。


貴族院では満場一致でプロメンテへの開戦が、決定する。 


貴族院議会で採択された宣戦布告の文書は、“プロメンテ国民解放戦線”の首謀者を差し出せと伴に、我々が上陸するための港を開港せよとの傲慢な文面が記される。


それらをサバエア大陸のアルギューレ海に面している港湾都市全てにばらまくことになる。 もちろん、そんな無茶な内容に従う都市国家はなく、なし崩し的に開戦の幕が上がる。


そして、“国王兄弟派”により秘匿時に策定された“レーベ・メレア打通作戦”により電撃的にガレへの上陸を決定する。


かつての悪夢の再来となり、サバエア大陸の都市国家ガレは、パニックとなり避難が始まる。


ここに 第二次アルギューレ海戦とガレ上陸作戦が、再び実施されることになる。

ガレ支援のため、サバエア大陸の海上戦力がアルギューレ海へ展開する。


海上戦術は、大きく様変わりしている。


Uボートによる隠密作戦は、海中ドローンの進歩により魚雷による戦艦破壊率の著しい低下と潜水艦を用いた作戦成功率の低下を示している。


アウトレンジからの戦闘機やミサイルを用いた空戦は、艦大群が装備しているアイギスシステム、高度化するAI、光学処理の進歩により迎撃率の向上し、航空戦での制空権確保の作戦の成功率の低下も著しい。


アイギスシステムの威力は、実際に旧世代の航空戦力しかない、プロメンテが大国テッサリアに制空権を握らせなかったことからも、その迎撃能力の高さが伺える。


結果、空中と水中の防御力向上により、戦闘は砲撃による古典的な海上戦が繰り広げられ、特にコンバットスーツの高機動化や飛行機構により艦から艦への直接侵入によるかつての海賊のような白兵戦が主流になっている。


そうなると士気が高いタニア連合王国に有利になって来る。


タニアの白兵戦の能力は他国の抜きに出ている。


タニア連合王国では、全て志願兵であるが、戦闘に参加し一定の戦果を挙げると貴族への道が開ける独自の制度がある。


武官準貴族の称号”ツー・オルト”は、従軍することでも得られる最も取得しやすい称号として知られている。


国に貢献しているものにも与えられ、かなりの国民がこの称号を持っている。


準貴族になったからといって、何かが有利となることはない。 実際にこの称号もほぼ名誉でしかなく、恩恵といえば、国事に参加でき、国王に謁見できる程度しかない。


しかし、貴族の称号が欲しい国民は後を絶たない。


故に戦時になると、称号欲しさに各地から人が集まり、士気の高い狂戦士の部隊が出来上がる仕組みになっている。


これらを背景に、熱烈士気の高い部隊による白兵戦が海上で繰り広げらることなる。 予想通り、タニア連合王国の海上戦力を退けるのは困難となり、ガレへの上陸を許す形となった。



※1:連合王国:この国の基本は、連合王国の名の通り多くの諸国家の連合体になっている。そして、数ある国から頭一つ抜け出し、今やティファー大陸に覇をとなえるまでに成長したのが、都市国家かつ王都のノクティス・ラビリントスになる。


※2:収奪法案:ヒューリによるプロメンテ市民以外が所有している農地は、没収する法案。


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