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受難続きのテラ惑星間貿易商  作者: 椎谷 急須
8章 阻止走狗
72/81

東奔西走 

---アルバテラ・シティ地区 中心地

オーソン宅のバンに乗って、セントラル・ステーション付近まで来ている。


運転は地理に詳しい、オーソン嬢になっている。

「どうします?」


「とりあえず、適当に流して。 速度は遅めで。 オーソン嬢は運転に集中して、他は例のポイントに合致しそうな場所を探してほしい」


「わかったわ! まかせなさい」

サナエさんの声が車内に響く。


「了解です。では、出発しますね」

とりあえず、まずは状況を確認のため街中を流す。


テンペ大陸の北部第一の都市だけあって、それなりの都会となっている。 とはいえ、それだけの都市となると歴史もあるようで、築数十年は経過していると思われる、古いビルも散見される。


信号待ちの人もごった返すほどでもないが、それなりにいるところが、この街が都会であることを示している。


「周辺は、衛星都市になっているの?」


「そうですね。防衛業務とかもアルバテラとの共有が、多いですね。 この周辺は、行政もアルバテラに頼っている都市もありますので、周囲の都市国家や地域との争いごとは少ないですよ。


周辺の地域もアルバテラ同様に耕作地になっていて、アルバテラに農作物を集約して大陸各地に列車で運搬する形ですかね」


―― 周辺都市が、意図的に水爆テロに協力することは、なさそうか。 アルバテラが滅んだら自分の首を絞めるようなものだからな


「なるほど」


渋滞が多いためか、断続的に自動車が止まる。

「いつもこんな渋滞なの? 」


「最近ですかねー。なんかビルの建て替えとか、都市の再開発ですかね。それで渋滞です。工事車両も流入して、走り難いったらありゃしない」


確かに途中から、古めかしいいビルから新しいビルディングが見られるようになる。 旧市街から新市街に向かう風景の移り変わりは、この都市の歴史を感じさせる。 緊張の中にも僅かに感傷に浸る時間がある。 


そして、その旧市街地も多くが工事エリアになっている。 改修工事、再開発と言ったところだろう。


車内から見える風景から地下鉄が、確認できる。

「地下鉄もあるんだ」


「ええ。郊外に続く路線がありますよ。 この地域は降雪地帯ですからね。 冬季で道路を通らずとも安全な交通手段とのことで整備されています」


―― うーん。 地下鉄かー

タツマが考え込む。


旧市街地のオフィス街を抜けると商業地区になる。 こちらはかなり新しめの大型店舗が、多くなってくる。

「この辺りは、商業地区ですかね。うちも休日は、ここを散歩することが多いんですよ」


「ほー。 オーソン嬢ならナンパでもされそうだよね」

タツマが、軽口を叩く。


「まーうちは、可愛いですからね」

どや顔でタツマの質問に応じる。 多少は、こちらへのとげとげしい状況が、緩和されているのだろうか。  といっても、都市の運命を掛けた一大事の調査。 たしかに仲間割れをしている状況ではない。


「馬鹿なこと言ってんじゃないわよ」

後ろからサナエさんの突っ込みが入る。


「おっと」

自動車が停止する。


「どうした?」


「うーん。ここでも渋滞ですか? 変ですね。ここは信号とかないんですけど」

車列が動き、簡易信号機が見えてくる。


「下水道工事? 」

「大変そうです。随分と大きい工事ですね」


渋滞を抜けると、高層の集合住宅の建築現場が見えてくる。

「これのため? 」


「かもしれませんね。 最近、アルバテラも住民が増えてきているんですよ。 自然が豊かで、治安もいいですし、観光地のような騒がしさもないらしくて。 それにアスクレウス山も近いですからね! 」


―― 近いと言っても半日は掛かりそうな距離だけど。 まぁ鉄道があるのは、利点にはなるか?


「へー。 高層集合住宅ねー工事か……」

タツマが考え事をしていると、端末が鳴る


             *** ☎ 通話中 ***


≪タツマさんですか? ≫

≪はい。 どうです。 そっちは?≫


≪とりあえず、カメラ制御権を収集と許可が下りました。因みに、執政官やお偉方が軒並みいなくなっているんですが≫


≪そうゆうことだろ? 因みに、いない連中の名簿作っておいて。 あとで恐喝の材料にしてやる≫


≪馬鹿な事言わないでください≫

≪ちなみに、冗談では無くて、いざ身を守る時の武器になる。頼む≫


≪わかりました……それとコードとアクセスキーを送ります。 それと先ほどの件ですが、治安維持庁に確認したら、再開発地区からの騒音やら違法駐車のクレームが多くて、対応に苦慮しているとのことでした。 そちらは何かわかったんですか? ≫


≪なるほど……ありがとう。 助かる。 今の話で少し勧められそうだ。 アルバテラのシティ地区の再開発地区の詳細なデータは手に入る? ≫


≪なぜです。 可能性があれば、治安維持庁や情報庁の支援を頼めばいいじゃないですか?≫


≪テロリストは、慎重に計画を進めている。 こちらが安易に動いたらすぐに感づく。 兵器が移動されたら振出しに戻るか、最悪は爆発させられる。 明確な証拠があるまで慎重に進めたい≫


≪わかりました。 再開発案件は、国土整備庁の管轄なので少し時間をください≫


             *** ☎ 通話終了 ***


「騒音が出ても問題ない。重機が入っても気にならない。インフラが有り、周囲は囲われて中が見えなくなっている。工事現場で最終組み立てと考えるがどう思う? 」


「また、シティ地区の真ん中で秘密工作とは、大胆な推理ね」

サナエさんが、やれやれ顔で返答してくる。


「怪しい場所は、アルバテラの情報庁やその他の人間に任せておけばいい。 我々の強みは、この地域に対しての先入観がないことだ。 可能性があるところを見たい。 シティ地区の再開発地区に戻ってみてくれる? 」


「了解です」

オーソン嬢が、ハンドルを大きく切り、シティ地区の中心部に戻っていく。




--- 再開発地区

再びアルバテラ・シティ地区に戻ってきている。

確かに工事重機車両・貨物車両がかなり多い。これだけ車両が多ければ渋滞になるのも納得だろう。


「なんでこんな大規模改修しているの? 」


「ええ、アルバテラの土地開発会社が徒党を組んで一気に実施しているらしいです。

集中して実施した方が、材料とか一括購入できるとかお得とのことで、実施しているようです」


車内にいてもそれなりの騒音が聞こえてくる。 確かに、クレームになりそうな音が、窓を閉め切った車内にもそれなりに響いている。


「なるほどー。これなら他の騒音と混じって、目立たたないんですね」

オーソン嬢が、納得している。


大小合わせて様々な建物で工事が行われている。埃が周囲に飛ばないように防飛シートで中が見えなくなっている。


しかし、かなり多いな。

「セレン。 カメラの映像はどんな感じ? 」


『先ほどから状況を確認しています。 カメラの台数はざっと1000台近くありますね』


―― それはすごい。


「大丈夫そう? 」

『問題ないですね』


なぜかサナエさんが、したり顔をしている。

「ふっふーん。凄いでしょう! 」


「サナエさん。 何したのよ? 」

「高性能化ってご要望でしょう? どうよ! 」


「ありがとうございます。 さすが天才! 」

一応褒めておかないと、直ぐ不機嫌になるため、感謝と称賛を送っておく。


「まーねー」

と声が聞こえてくる。


『目標の人物がいますね』

なんか大きなことなんだけど、簡単に会話に入り込んで来るね。


「どこ! 」

『開発地区中心部へ歩いて来ているようですが……』

「どうした? 」


『対象者は、監視装置の位置を知っていますね。ことごとく死角に入って動いているようです。 見失いました。 人陰に入るのも上手い。プロの工作員ですね』


腐っても工作員。 一筋縄ではいかないか。


「まずはその場所に行ってみるか? お願い」

「了解です」

オーソン嬢が、車両を廻す。


カメラが対象者を捉えた位置に来てみたが、

「開発地区の中心で都会の真ん中か」


窓を開けて周囲を確認する。 車両の騒音と工事音、様々な雑音が車内に入り込んでくる。


「活気に満ちているわねー」


しかし、流石に人通りや車両の台数が多過ぎる。 ここから特定の人物を探し出すのも不可能だ。 それにもう夕方になる。


「本日は撤収だ。」

「いいんですか?」


オーソン嬢が、確認を取ってくる。


「成果が見込めなさそうだし。 まずは、帰宅して本日の内容をまとめよう」

「了解です」


--- オーソン宅 

オーソン宅に戻り、ガレージにてシティ地区のマップにカメラの位置にチェックを付けていく。 夏季なので湿っぽいが、流石にリビングで話せる内容じゃない。


「あとは工事範囲だけど……」

今日見たところに印をつけける。かなり監視機器から抜けているエリアが多いな。


『ケルン氏から開発地区の情報が来ましたよ。追記します』

セレンが、マップに次々とマークを付けていく。

—― かなりのエリアなんだけど。 これ全部調査するのか?


「なに。アルバテラは好景気なの?」


「絶好調ですよ。特に近年登山ブームですからね。ここからオリンポス山やアスクレウス山に行く人が多いんですよ」


「因みにケルン氏って? 」

「うちの兄貴の名前ですよ!! 」


“10”の名を知ったところで、マップをまじまじと見る。

―― 確かに大きな都市だな。探せるのかここから?


マップを見ていくと一か所不自然な場所が見て取れる。


「セレン。ここは? 周囲が開発工事をしているけど、ここだけ開発していないの?」

『確かに、なんでしょうか?』


―― 確認するか。


              *** ☎ 通信開始 ***


≪オーソンです≫

≪データ届いたよ。ありがとう。それで、このブロックで開発が取りけれている箇所があるんだけど。これは?≫


≪ああ。そこですね。開発会社が途中で資金がショートしてしまって倒産したんですよ。今次の事業者を見つけている最中ですね。なので、建築許可がいったん取り消されています≫


≪なるほど≫


≪そちらは進展ありました? ≫


≪実行犯らしき人物を見つけたが、巻かれた。シティ地区内に潜伏しているのは、間違いなさそうだ≫


≪進展があってよかった。……エリスが本件から手を引きました ≫

≪理由は? ≫


≪不明です。最終段階に来て及び腰になっているとの見方ですね。事情を知っているだけに庁舎内は欠席者が多数出ています ≫


あいつらー。後でとっちめてやる。


≪了解した。因みに今日は帰れるのかい?≫

≪無理ですね。当分、庁舎で寝泊まりです。明日生きていたら、また連絡します≫


              *** ☎ 通信終了 ***


ここも安全ではないからね。完全に爆心地に入っているし。

「じゃぁ解散ね」


ガレージからサナエさん、アルプ、オーソン嬢が出ていく。結果ガレージにはタツマとセレンのみが残る。 因みにスマイル号は、ガレージに入れさせてもらっている。


『どうしますか? エリスも撤退している今、やり通すのですか? 』

「仕方ないだろ? 犯人まで見つけちまったんだから。それにやり通せる気が……する」


タツマからなんとなくの確信めいた自信がのぞく。 そしてタツマは、先ほどチェックを付けた地図を見る。


―― やはり、この空白が引っ掛かる。


「奴が消えたのが、この監視装置のこのエリアだ。そして空白地帯は工事をしていない。重なるよな? バクドローンは?」


『十分に。 多足昆虫型でもバタフライタイプでも』


「いくぞ」

『了解です』


ガレージを開けると、3人が立って待っている。

「……」

勘がいいのも問題だね。


「どこに行くのかしら? 」

サナエさんが、詰問するかのように佇んでいる。


「ねーさんのため、夜のドライブに付き合います!」

相変わらずの太鼓持ちには、変わりなし。


『マスターの無茶に付き合うのはいつもの事なので』

サナエさんが行くなら、従者のトークンは付いてくるのは必然か



---夜のアルバテラ・シティ部の開発エリア


昼間の騒音が嘘のように平穏な時間が流れている。

抽出したエリアは、開発区の中心地に近いためか余計に人通りが少ない。


もっとも工事業者が足元を照らす簡易電灯は、設置してあるようだ。


「ここの周辺ね。怪しいって言っていた場所」

サナエさんが、車内から外を見ながらつぶやく。


「まぁね。オーソン嬢は、車両で流していて。 サナエさんは待機。 アルプは彼女たちの護衛を頼む。 私は下車して周囲を散策する。 セレン。行くぞ」


『了解です』


“えー”とか聞こえるが、今回は目立つのは厳禁のため、とにかく、納めてもらう。

まずは、少し遠めの暗がりに降ろしてもらう。


車両は、そのまま工事のため灯りが少なくなった街に消えていく。


タツマも周囲が意外に暗いのに少しひるむが、都市国家の存亡が掛かっているためミッションを進めていく。 タツマの格好は、スーツ姿になっており、まさにビジネス街に溶け込む姿になっている。


「セレン。 周囲にカメラは? 」

『今のところ発見できませんが』


「了解だ。 周囲に注意してくれ」


徒歩で目的にまで進む。 ビジネス街であるため、夜になると街中であっても人通りがまばらにある。 例のポイント近くに近づく。


端末を取り出して連絡をするふりをして、セレンからの情報を入手する。 端末からはセレンの声が聞こえる。


≪上部に私設のカメラがあります≫

―― 私設というのが気になる。 それにこの感覚――何か嫌な予感がする


≪あー。 そんな風になっているのか? どうするかー≫

通信の受け答えのような、やり取りをする。


≪バクドローンを出しますか? ≫


≪そうだな。それで頼む。 詳細な状況が知りたい≫

≪了解です≫


電灯の光が届かないエリアから多足型のドローンが出ていく。 追加情報がセレンからもたらされる。


≪向かいの建物にもカメラがあります――監視体制が、かなり大掛かりです。 こちらの意図に気付かれたら、こちらが危険な状況に陥る可能性があります≫


≪条件が合わない? 金の問題じゃないって、どういうことだよ≫

―― この感覚。 誰かに監視されている感覚だ。


タツマは、怪しまれないように演技をし続ける。


≪撤退したほうが、よろしいかと≫

≪わかった。 とにかく、バポニスの乳製品を買い付けないと、先方との契約反故になる! 何としても進めるんだ≫


連絡が終わったように見せかけて、その場を立ち去る。


                   *


≪どうした?≫

≪男がトークン連れで、目標の入口近くに立ち止まっていたので。報告します≫


≪様子は≫

≪連絡が終わったようで、トークンに悪態ついてその場を去って行きました。どうやら、仕事で上手くいかなかったことをトークンに当たっているようです≫


≪トークン連れか。 屋外で同伴とは珍しいな。 会話内容は? ≫


≪当たり散らしていた内容からするに会社経営者のようです。 何でもバポニスの乳製品協議が、上手くいっていないようです。 因みにトークンは、荷物持ちのように使っていました≫


≪あそこは、協同組合が一手に仕切っているからな。 なるほど、筋は通るか。 問題ない。引き続き監視を継続してくれ≫


≪了解≫


                   *


タツマ達は、しばらく歩く。


『タツマ。 あの場所ですが、だいぶ危険かもしれません』

「雰囲気は、そんな感じがした」


『演技中に周囲を暗視モードでの確認なのではっきりした画像は確認できませんでしたが、向かいの建築中の建物にカメラ以外にも数名の人影らしきものを確認しました』


「安易に監視カメラ設置しなくて良かったか?」

『おそらく。 これで、ほぼ決まりだと推定します』


―― あとは潜入捜査か……。またやるか? すでに夜……彼はまだ仕事中か……いや、状況が状況だ! プライベートタイムでも引っ張り出すけどね


--- 2日目

組み立ては、3日目に入っている。そろそろ組み立ても半分はすすんでいるころだ。

緊迫する中、タツマ達の姿は、アルバテラ・シティ地区 都市開発地区にあった。


「本日から一緒に働いてくれる。タツマ・キャミャエルさん・オーソン・ケルンさん・アルプさんだ」


「タツマ・キャミャエルです。本日からよろしくお願いします」

『アルプです。 タツマのトークンとして、支援をします。よろしくお願いいたします』


「オーソン・ケルンです。よろしくお願いします」


―― 作業服。久々だね。もう転職回数が分からない。

ビルのオーナーに公権力を使って強制的にねじ込んでもらった。 情報庁からの直接圧力をかけて対応させたのは、強引過ぎたか?


「さぁ! 新入りお前らは、こっちで材料運びだ!!」

班長から指示が飛ぶ。


「潜入捜査っていったから、どんな施設に行くかと思ったら工事現場ですか?」


「何? スパイ映画よろしく研究施設かと思った? ほらほら! そこの鉄筋を持つ! 」

「この裏ですか? 問題の箇所は?……この鉄筋重い」

ケルンが、よろけながらも鉄筋を持ち上げる。


「予想だけどね」

タツマは、これ系の業務が多かったこともあり、それほど苦労せず持ち上げて移動させる。


―― 軽量型コンバットスーツでも借りて来ればよかったかな? 

しかし、現場で忘れたことを思い出しても状況は進む。 今はとにかく、業務を行っていく。


場所が狭く重機で運べない為、人力で鉄筋を運んでいる。


「防飛シートであちら側が見えませんね。 重い……」

「それを調べるためにここで働いて調査する訳よ。 それに時間もない」


防飛シートが邪魔で向こうが見えない。 とにかく重労働になる。

鉄筋や軽量鉄骨を運びながら労働する。


新人作業者のため道具の運搬などの雑務が多い。


「アルプ。 後でバグドローンを回収しておいて」

『了解です』


建築現場の労働だけではない、本業も実施していかないところが、辛い所である。


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