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受難続きのテラ惑星間貿易商  作者: 椎谷 急須
8章 阻止走狗
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捜索開始 アルバテラ・シティ地区

--- テンペ大陸穀倉地帯 農業都市国家 アルバテラ


現在は、宵の刻。空はすっかり暗くなっている。

ようやくアルバテラ中央駅に到着する。


駅周辺には繁華街もあり中々にぎわっている。

繁華街の店舗の看板の電灯で明るくなっており人もそれなりに多く活気がある都市である。


同じ農業都市プロメンテのシティ地区より大きそうだ。 そう言えば、あれからどうなったか確認していないな。 まぁあの執政官なら当分大丈夫だろう。


列車のカーゴからスマイル号を降ろす。

「さてと、これからどうするか? 」


「イーノの実家に行くわよ! 場所は知っているから。 アルプお願い」

『了解です』


「……」

アルプの運転でアルバテラ郊外に向かっていく。 スマイル号の車内は、緊張と沈黙に包まれており、ただロードノイズだけが室内に響いているだけである。


本来であれば、ラジオからのバラードでも聞きながらリラックスしたドライブを楽しみたいところであるが、心がそれを許さない。


周囲は穀倉地帯だけあって、昼間見れば開放的な気分に浸れるかもしれなが、現在は宵。耕作地帯であるため灯りはなく、周囲には広大な闇が広がる。 


帯びているミッションと闇の広さが、こちらを押しつぶしてくる感覚にとらわれる。 心が緩めば、潰される。 そんな感情に支配されている。


                 *


しばらくすると、暗闇にいくつか個人宅の光が漏れている。 集落だろうか。 それなりの家が密集している。


「あの辺りね」


サナエさんが、光の方向に指をさす。 本来であれば、団欒(だんらん)を感じるのだろうが、事態が事態だけに、そのわずかな光が夏なのに寒々しく感じる。 


暗闇を進むと徐々に住宅の形がと輪郭が見えてくる。 目的地のオーソン宅が見えてきた。


彼女の家は、それなりに広そうに見える。


如何(いかが)しましょう? 』

「路肩に付けて。 アルプは待機」


『了解です』

オーソン宅の前に車両を止め、タツマとサナエさんが、住宅のドアに向かう。


暗闇で漏れている光でしか分からないが、庭は良く手入れをされている。

呼び鈴を鳴らすと返事があった。


≪どちらさまー≫

女性の声だが、オーソン嬢ではない。 彼女の母親だろうか? 


「夜分遅くに失礼いたします。 私、キャミャエル(サナエさん)ですが、イーノ(オーソン嬢)さんいらっしゃいます? 」


≪ええ、居ますけど……イーノ―お客さん……≫

―― 一般家庭じゃない。


しばらくすると、入口の扉が開くとオーソン嬢が、出て来る。 数日前に分かれたばかりである。サナエさんを見て驚いているようだ。


「やっ」

サナエさんが、手を上げ軽く挨拶をする。


「ねーさんどうしたんですか? こんな時間に。 それに実家に来るなんて……」

―― かわいらしい、室内着ですね。


「話は後よ。とりあえず、中に上がってもいいかしら? それとお兄さんいらっしゃる? 」


「兄貴は、さっき難しい顔して帰って来たばかりですが……兄貴と何か関係あるんですね」


どこか不安そうな表情を覗かせている。 荒事まがいを経験した後に、その元凶が自分の家に来たとなれば、当然だろう。


「まぁね。 行くわよ。 タツマ」

サナエさんのその掛け声で、暗闇で見辛かったタツマがいることをオーソン嬢が知ることになる。 彼女の視線が、一気に厳しいものになる。


こちらは、“白翼の騎士団”に関わりがあるとされているのであれば、こちらも妥当な反応になる。


しかし、サナエさんの頼みであるため、オーソン嬢は、両名を室内に招き入れ、こちらの要望する兄貴への案内しくれる。


急に2名の客人を迎えるオーソン宅であるが、サナエさんが、美人なので騒がれないのが、せめてもの救いか。


―― 見た目か? 見た目なのか!


そんなことを思いながら部屋の中を進んでいく。 まさに一般住宅。 家は平屋だが、かなり広い。 


「兄貴は、ここです」

オーソン嬢が、ある扉の前で止まる。


―― そういえば、彼、成人だったよね。 親と同居?って自分も同居だったか……職場兼住居の宇宙船だったけど。


オーソン嬢が、ドアをノックをして呼びかける。

「兄貴―お客さん……タツマ……13さんだって」


かつての名を聞くと室内からモノ音が聞こえてくる。


ドアが、開きインテリさんが出てくる。 タツマの姿が目に入った時は、目を丸くして驚いている。


「13……どうしてここに? 」


「ハハハ」

タツマが、渇いた笑いをする。


「このひとタツマ・スキュレスさん」

オーソン嬢が紹介してくれる。


「違うわよ。タツマ・キャミャエルになったの。先日にね」

彼女が、少し固まる。


―― 思考中……だよなーこっちも考えさせらるよ


「ハァァーーー? ねーさん正気ですか。 この人と」

「まぁねーまぁ色々考慮した結果よ」


ハハハ。こっちは笑うことしかできない。


オーソン嬢が睨みつけてくる。 そんな多少混沌状態の中、イーノの兄貴がこちらに話しかけて来る。


「13……タツマさんでしたか? 私に何用ですか? 」


「そうねー。君の部屋の中で話したいところではるが、まぁプライベートで見られてはまず物ものもあるだろう。 これから、ウチの車両で夜のドライブとかどうかな? 」

タツマが、少し洒落た感じで提案する。


「分かりました。 私達の車両でもいいですか? 」

警戒されているようだ。


「構わないさ」

タツマがその提案に応じる。


「うちは? 」

オーソン嬢が、タツマに質問してくる。こんな夜分に訪ねてくるのであれば、ただ事ではないはずである。 興味も湧くと言うもの。


「留守番だ」

タツマが言い切る。 


「うちも行きますよ! 」

強い意志で睨みつけてくる。 タツマが、サナエさんに視線を向けると、彼女はしょうがないと顔をしている。


―― 分かりましたよ。折れますよ。

「まぁ、最初のミッションは君の確保だからね。いいだろう」

「? 」



--- オーソン宅所有の車内にて

オーソン宅所有のミニバンが暗闇の中を走っていく。先ほど来た道を逆走するわけだが、アルバテラの街郊外からシティ地区中心部に向かっているため、周囲が暗いこともあり都市の明かりが際立っている。


運転はオーソン兄貴。 助手席にタツマだ。

後ろの席にオーソン嬢とサナエさん。アルプ。セレンが乗車している。


「それでタツマさん。 話というのは? 」

オーソン氏が、まず質問してきた。


「君が追っている。 TF型についてだ」


「……なぜそれを? 」

声のトーンが落ち、彼が警戒しているのが分る。 向こうで、私的レジスタンスに加わっていただけのことはある。 しかし、彼の発言を聞き流しタツマが話を続ける。


「サナエさんの要望で君の妹を確保して欲しいとのことだった」

「うちですか? 」

後部座席のオーソン嬢が、会話に加わる。


「そう。 逃すように言われている」

彼女は、サナエさんの方を見る。


引き続きオーソン嬢が、質問してくる。

「ところで、そのTF型ってなんですか? 」


「簡単に言えば水爆だ」


「ミサイルじゃないんですか! 」

オーソン氏が、驚いたように訪ねてくる。


一方、妹は意外と冷静に受け止めている。

「水爆って……こんな時間に我が家を訪ねて来ている以上、冗談ではなさそうですね。 それが……ここで爆発するんですか? 」


「そうなるね。 第二指示として君の家族を逃せとも言われている」

タツマは言い切っていく。


「他の人たちは? 」


「悪いが、アルバテラの中心で起爆した場合、アルバテラは文字通り更地だ。 ここから自動車で飛ばして半日掛かる範囲までは何もなくなる想定が出ている。 関係エリア全員を逃すのは無理だ」


「そんなに凄いんですか? TF型って」


「破格の威力だよ。狂っているといってもいい」

彼も詳しくは聞かされていないらしい。


「君が捜査に加わっていると聞いてね。 君から詳しい情報を得て欲しいと。 まぁ私と君の関係を知ってのことだろう」


「あなた。 何者です? 」

時々顔を照らす街路灯から分かる彼の表情は険しい。


「ただの借金会社の経営者だよ。 それと少なくとも君達側の人間ではある。で、現状は? 」


「現在捜索中ですが、それらしい製品が、数日前に港に入港したところまでは掴みましたが、その後の行方が分かりません。


それと、先日、大型の燃料タンク車が、アルバテラは地域に入ったことが確認できたのですが、その後の行方分かっていない状況です。 もっとも正規かテロ用なのかまではわかりませんが」


―― 何もわかっていない状況ね――捜査は、無理じゃない?


「でっ。どうする? 私としては、家族そろって逃げることを勧めるけど」

タツマが提案する。 逃げるが勝ち。 今の状況はまさにそんな状況になる。


「妹を逃がしてください。 私は残ります」

想定通りの反応だよ。


「理想に燃えるのは良いけど、当てはあるのかい? 」


「いま、エリスの工作員とアルバテラの情報庁が動いています。 彼らの情報網を信じて動くだけです」


「信じるねー」

エリスの工作員ってのが、そもそも信じられないところだけどね。


「タツマ!あんた何かアイデア無いの? 」

ここでサナエさんが会話に加わって来る。


「できることね――」

「何かあれば、お願いします! 何でもします」

同性に何でもしますと言われてもときめかない。


「あることは、あるけど――実現は無理かな。 やはり逃げよう」


「勿体付けるんじゃないわよ! 教えなさいよ!」

オーソン氏ではなく、サナエさんから詰められる。


「この間アルゴスで反乱騒ぎがあったのよ」

「最近じゃないですか。……それにも関わっていたんですか? 」


「うちも、危うく操を奪われるところだったのです」


「タツマ!! あんた何してんの? 」

「うちの妹に何しているんですか! 」

2人から攻められるが、ここは流して話を続ける。


「まぁ、細かいことは良いじゃない。 そこで犯人の発見に広範囲な監視装置による画像解析を用いていたんだ」


「監視装置ですか。 監視装置はありますが、現在各部署バラバラでの対応になっていて一元管理がされていない状況です」


「セレン。 どう考える。 犯人の画像はある。 画像から監視映像より特定の人間を抽出できる? ただし膨大な監視映像になるけど」


『各部署の監視映像を全て確認してからです。 データ量が不明では解答できません』


「という方法。 数百かそれ以上なのかは分からないが、集中管理して見つける方法だ。力技だよ。 実行するのであれば、今ある監視カメラの制御権が直ぐに欲しい。 セレンに監視してもらう」


「分かりました。 明日アルバテラの情報庁や各部署に掛け合います」


「ダメなら。 逃げの一択でお願いね。 ところで農業庁の人間が、どうして諜報員もどきのコトをしているの? 」


「農業庁は、穀物倉庫などの管理もしていて、管理施設の周囲をよく訪れるんですよ。それでミサイルを隠せそうな場所を調べてくれって依頼が来たんです。

とりあえず、庁の全員が当たっているので、完全に庁内の作業が停止状態なんです」


なるほど。たしかに、モノがヤバすぎて、さらに時間もないと来ている。 なりふり構わず強制的に動員しているのか。 そして真実は伝えない。 典型的な手法だこと。


「ミサイルによるテロって聞いていたんですけどね。 治安維持庁からではなく、情報庁からの要望なので、おかしいと思ったんですよ。 庁内全員動員するなんて。 水爆ですか」


予想の遥か上だよね。


「因みに、TF型ってどんな意味合いが? 」


「ティル・フィングっていう、地球の神話に出てくる魔剣の略称だって。神話では狙いを外さないとのことらしい。 詳細は知らないけど」


「なるほど――とりあえず、明日、上司と共に情報庁に行きます。 タツマさんも来てください」


「うーん。パス!! 明日はまず現場確認に出る」


時間の無駄だし。そういうところ行くと、詰問で時間が無駄に消費されるからね。

こっちは、こっちで策を考えないと。


---1日目


組み立ては、2日目に入っているだろう。

イーノの兄貴は、通常通りに出勤していった。 彼らの両親も仕事に出ている。


今はオーソン宅内のリビングで作戦会議中。


まず犯人ならどう考えるか――。


「爆発の威力をみたいのなら、見えやすいところがいいよねー。 そして破壊力をみたないなら、街中での起爆だと思う」


『そうでしょうか? 組み立てるには広い場所が必要です。 郊外ではないでしょうか?森とか畑の中とか』

アルプからの反論がある。


「でも組み立てるといっても、重いんでしょ? 重機とかどうするの? それと周りから見えてもダメよねー。 加えて音も出るだろうから、音が出ていても不信に思われない場所かも? 」


サナエさんも考えを出してくる。

「セレン。TF-1型の設計図ってあるの?」


『国家機密級の情報ですが、ありますよ。ダイゴ経由での情報です。何でもかんでもおくってきましたね。 旧のトツカ弾核の設計図もありましたよ。 確かにサナエさんの言う通り重さに関しては、重機がないと厳しいでしょう。 それと電力確保は必須ですね』


「電気ね……そうなると森とか畑の中はあり得ないな――工場跡地とか?」


『確かに重機を置くスペースはありそうですが、廃工場では電気は、仮設発電機での対応も考えられます。 そうなると音と共に長時間の安定した電力に疑問が付きます』


「仮設発電機による長時間稼働は厳しいな。 それに冷却の問題も考えれば、厳しい手法だよな」


「それに廃工場で発電機が動いて居たら不審に思われますよ? 」

イーノも会話に入って来る。


―― 極秘裏の計画だ、犯人は目立つような作業はしたくないはず。


『その辺りから絞ってみてはいかがでしょうか騒音クレーム、重機の違法駐車関連、ついでにインフラが通っていることも必要でしょう。 かつ周囲が囲まれていて広い場所』


アルプが、意見をまとめて来る。

「あるか? そんな都合のいい場所? 」


携帯端末か鳴る。 オーソン氏からになる。


*** ☎ 通話開始 ***


≪どうしました?≫

タツマが応じる。

≪最悪なんですが、情報庁の情報に統制が掛かっていて、農業庁内部の上層部も知らされていなかったようです。今、庁内がパニック状態になっています≫


―― どんな言い方したんだよ。 いきなり水爆でしたって言えばパニックになるだろうに。


≪それで?≫

≪タツマさんから直に話を聞きたいと≫


≪悪いがそんな時間はない。君に話した以上の情報はない。そう伝えておいてくれ。……そうだ。頼みたいことがある≫


≪なんでしょう? ≫


≪騒音クレーム、重機の違法駐車に関連してのここ数日以内になんかない? ≫

≪それが答えですか? ≫


≪わからない。妥当な線をまとめている。これから調査に向かう。のんきに会議してどうしようかを決めている場合じゃない。 現場で動いて考えるしかない。 カメラの制御権お願いね。 じゃあね≫


≪ちょっと……≫


*** ☎ 通話終了 ***


『よろしいのですか。 一方的に切ってしまって』


「とにかく時間がない。 親父も言っていたが、少なくとも5日もあれば完成するらしいと。すでに2日経過している。モタモタしてもいられんだろ」


『それで……当ては、あるんですか? 』

「分からない……が。 おそらく起爆は街中で実施したいはずだ」


『理由は? 』


「力を誇示するには、悲劇が必要だからだ。 目指すは、アルバテラ・シティ地区だ」

『了解です』


「私も行くわよ」

「うちもです! 」



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