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受難続きのテラ惑星間貿易商  作者: 椎谷 急須
5章 偏約是正
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後始末

作戦終了。そして最後の仕上げにタツマが動く。

--- 閑静な住宅街

捕虜の連中は、御老公の下で優雅な捕虜生活を送っている。


自分の潜入捜査時の安宿より、いい食事といい部屋を割り当てられているって何? 

納得いかないんだけど。


タツマがその様子を見ながら御老公に質問する。

「それでこれだけの良い環境で――聞き取りの調査はどうなの? 」


「……お前さんは、何者なんじゃ」

御老公(ニルブ)が怪訝な視線をこちらに送ってくる。


―― ほんと。 爺さんかおっさんからの視線しかないのかよ。

そんな不満が渦巻くが、ここは会話を進める必要がある。


「いったでしょう? ただの借金会社の経営者って。ホントお金に困っているんですから。余計な出費は勘弁してくださいよ。 ああ、使用分の兵器と修理費の領収書です。 お願いします」

タツマが、領収書を御老公(ニルブ)に手渡す。


「随分な金額じゃな! 特にカーゴ車両の修理費が異常に高い。 なぜこんな掛かるんだ? 」


「ああ、スマイル号の修理費ですね。あの車両、硬質化装甲で覆われているんです。おかげで、ガンシップからの射撃や榴弾の猛攻を防ぎ切りました。いやー助かった」


「……あのカーゴ。 宇宙船の装甲なのか? 」

「ええ。※1タイプ5装甲なのでそこそこするんですよ」


「……」

御老公は改めて領収書の金額を見るが、通常の新品カーゴ車両を10台は購入できるだろうの金額が記載されている。


その沈黙を打ち消すかのようにタツマが質問する。

「情報はどうです? 」

「ああ、色々話してくれたよ」


どうやって聞き出しているかは知らないし、聞かないのが暗黙のルール。


「それは上出来き。 証拠は? 」

「ああ、抑えられるだけは押さえている」


「じゃぁ、最後の一押しだ」

「押し入り強盗みたいなマネを」


「何も取らないんだから、強盗ではないですよ? それに事前に連絡もしているし。 お話です」


その応答に御老公(ニルブ)が、こちらを疑いの目で見みながら、話しかける。


テッサリア(キンメリア筆頭)では、上級市民への反逆だとかで、“白翼の騎士団”の武勇伝で大盛り上がりだそうだ」


「へー。 大したものだね。 さすが自称義賊」

タツマがいかにも他人事のように放言する。


「……お主との関りはここで聞かん。 しかし、派手にやり過ぎている。 このままでは、テッサリア(キンメリア大陸筆頭)政府に目を付けられるぞ。 事実、あそこの執政官は、お前さん達が内部情報を暴露したことで今は窮地だ。 関係議員の辞職、治安維持庁も随分と叩かれている。 気を付けろよ」


「心に留めておきますよ」

そう口では言っているが、タツマ自身は特に気に留めていない。そして次の話題を御老公(ニルブ)に振る。


「じゃぁ、弁務官のスケジュールと住処。 それと執政官から工作員の協力をお願いね。 証拠と証言もついでに揃えておいて」

「……」


「ね? 」

タツマが笑顔で念押しする。


「わかった」

「よろしい。もちろん、成功の名声は、貴方にしてあげますから。 しっかり働いてくださいよ」

御老公自身あまり面白くなさそうだが、タツマとしては、知ったことではない。


---弁務官邸宅

深夜。 多くの人が寝静まり、住宅地内の街灯だけが、道を照らしている。

夜の静寂もまたいいものである。


―― しかし、流石弁務官。いいとこに住んでいますね……といっても近所じゃん。 何この茶番。 


「確かにここは高級住宅で、環境が最高だけど」

タツマから思わず声が洩れる。


事前の所在地情報からも判明していたが、御老公の邸宅から徒歩圏内にターゲットの邸宅がある。


『イスペリアでも屈指の高級住宅地。 安全を買っている地域ですね』

御老公より住宅の見取り図も確保している。


「やだやだ。 金持ち自慢じゃん」

タツマが愚痴を垂れる。


『アホなこと言っていないで、行きますよ」

しかし、アルプは意に介していない。


白いコンバットスーツとアルプ、そしてイスペリアからの支援として15人の工作部隊の合同チームである。


とりあえず、フェーザー銃(電気針)での対応して欲しいとの執政官から要望であるため、急遽全員分揃える羽目になった。といっても全て御老公持ちにではある。


                  *


高級住宅地だけあって、巡回の私設警備員がいるが、それの巡回路と時刻も全て入手済み。

巡回警備が、回り終わった時刻を見計らい、作戦に移る。


徒歩数分で、弁務官の邸宅に到着。

豪華で広い作りになっており、至る所に監視カメラがある。


しかし、カメラの配置もわかっているため忍び込むのもそれほど難しくはない。

忍び込んだのちは、人間の方を何となするだけになる。


こちらは、精鋭。向こうは素人。 戦闘経験が如実出ることになる。


侵入後は、危なげなく邸内ガードマンを鎮圧していく。といっても、流血沙汰にはせず、フェーザー銃により無力化を実施して屋敷内を進む。


襲われると考えていないから、サクサク進める。

弁務官への寝室に到着には計画より早く到着することなる。


―― 容易すぎる

アルプが、寝室のドアのロックを解除する。

――さすが、アルプさん頼りになります。


音を立てずに寝室に侵入する。かなり広いプライベート空間だろう。 そして暗視ゴーグルに映るのは、でかい寝具におっさんが、寝ている姿である。


―― あー異性の寝室なら少しは、やる気がでるんだけどなー。


タツマもおっさんの寝床への侵入のためテンションが低い。

寝ている弁務官を揺らす。


「こんばんわー弁務官さん。 起きてください」

「うーん。誰だ――! 」

覚醒した弁務官の口を咄嗟に手でふさぐ。


「おっと、お静かに。ガードマンは無力化してありますよ」

「……」


「私達は、貴方を殺しに来たわけではありません。お話をしに来ただけです。手紙に書いてあったでしょう? とりあえず一方的に話すので、黙って聞いてくれればいいですよ」


弁務官はうなずく。手おどけ、モニターを渡して話始める。

タニアによるイスペリアの裏工作やプロメンテへの工作内容が証拠付きで示される。


モニターから灯りで表情は、鮮明ではないがよく見えないが、はつらつとはしてなさそうだ。


一通り説明が終わると、タツマが話始める。


「さて、我々の要求ですね。これらを公にされたくなかったら、治外法権を撤廃してください。安いものでしょ。


所詮は、悪さをしたタニア人をイスペリアでもしょっ引けるようになるだけですから。


逆にこれらの情報を開示されたら、タニア自身、イスペリアでやっていけなくなりますよ。ご質問を受け付けます」


「お前達……白翼の騎士団か」

最初の質問がそれでいいの?


「最近、名前が随分と売れているようですね。 その通りです。 それでどうします? 」

「本国と掛け合ってみないとわからない」


「ええ。 でしょうね。 なので、これらが入ったデータをお渡ししますね」

モニターと取り上げ、記録媒体を渡す。


「治外法権と今後のキンメリア内のタニアの立場を天秤に掛けたら、比べるまでもありせんがね」


「お前らはタニアが、憎いんじゃないのか? 」


「別に。治外法権が嫌なだけです。 だからそれ以外、要求していないでしょ。 駐屯軍が問題だと言っている人もいるが、関税やら人的交流の利益もある。 それらの制度は、絡み合っている以上、この国への恩恵があるのも事実ですからね」


「ただの過激派でないのか」


「ええ。 そしてこの治外法権撤廃法案をまとめれば、弁務官さん。あなた、この地の英雄になれますよ」


「……わかった。 やってみる。最後に一ついいか」

「なんでしょう」


「どうやって、ここを突き止めた」

「やっぱり、治外法権は違うと思う人が、とても多くいるんですよ。色々なところに」


「なるほど。色々なところにか……もういいだろうか」

「ええ。それでは、良い夢を」


弁務官邸を後にする。さてさて、どんな結果になることやら。


--- その後

執政官の連名で治外法権の撤廃の申請書が議場で上がった。

最初、周囲は執政官の人気取りかと思われた。 大半の人間が、弁務官の拒否権で廃案にされると予想された。


しかし、弁務官が執政官を連れて、タニア本国とのやり取りを始めることになる。

おそらく、例の証拠を用いてこうしょうしたのだろう。


結局、タニア本国はイスペリアからの要望を飲むことになる。

しかし、IDのみ交流や関税の引き上げ等嫌がらせの様なペナルティをかしながらも、渋々ながらも撤廃を認める形になった。


弁務官自身のタニア本国内の立場は、絶望的にまでに下がり、無策無能とまで蔑まれた。


一方で、イスペリア国内では、今まで誰もやり遂げられなかった治外法権の撤廃を実現した弁務官として、イスペリアの賢人弁務官と偉大なる執政官との見出しが、報道紙をにぎわす。


本国を恐れず交渉する能力と器は、最高の英知であるとまで記載されている。 副次的であるが、タニアに対する好感度も上昇し、両者の関係も引き続き良好なまま推移しそうだ。


弁務官自身もタニアの暗殺に一時はびくびくしたが、本国(タニア)も全てが上手く回りだしたことで何も言わなくなり、最近は穏やかな日々を過ごしている。


そして、再びタニアからイスペリアに関しての相談が来るようになった。


彼自身。 本国での出世の道は閉ざされたが、イスペリア内での安定した地位も悪くないと考えているようだ。


レジスタンスは、目的を達成したことで解散。


作戦時、彼らには一般人として囮役 と スマイル号の車両周辺を車両で固めてもらっていた。 もし、渋滞中に襲われた場合は、迎撃してもらう算段だったが、結局攻撃してこなかった。 


敵さんの理性に救われたようなものだ。 襲撃になればパニックなった市民で尾行難易度が上がるため、襲わなかったかもしれないが、そこは理性と信じたい。




--- タニア連合王国 首都 ノクティス・ラビリントス  ラビリントス宮

ぶどう酒を片手に貴族らのサロンが開かれている。 


落ち着いた木目調の室内、高級そうな酒とオードブルが並べられており、自由に飲み食す空間にシックな音楽が流れている。


そしてサロンの話題はやはり、治外法権撤廃に関してが多い。


「まったく、あの無能な弁務官。出し抜かれおって」


「しかし、イスペリアとの関係はより強固なものになったようで、なりよりでしょう。ケガの功名ですかね。それに彼は、向こうでは賢人ともてはやされているようですよ」


「因みに陛下はなんと? 」

「両国の関係が安定していれば、それ以上は望まぬとのことです」


「さすがですな」

「結果良ければ、多少の問題に目を瞑るとは、相変わらず名君でいらっしゃる」


「しかし、今回の件。 情報庁は何をやっていたんだ。 イスペリアには、次期情報局長官候補のリーラインがいたろう」


「とりあえずは、お咎めなしらしい。それより第二方面部(サバエア大陸のエリス)の切り崩し失敗のほうが問題であったんだが」


「第二方面部……。サバエア大陸の対応か」


「エリスへの工作は失敗したが、それよりも重要なものが手に入ったらしい。もっとも第三方面部指揮官(リーライン)と合同作戦だったようだがね。


かなりの得物のようで技術局が喜んでいたようだ。結果として、エリス謀略の失敗は帳消し――とはいかないが、とりあえず、第二方面部、第三方面部ともに御咎めなしだ」


「しかし、この失態。 リーラインの出世にも響くだろうな」

「それは、当人も自覚している。まぁ降格や左遷にならないだけでも良しとしているのだろう」


一旦会話が止まる。 貴族たちは果実酒の入ったグラスを傾け、ある者は、酒の当てを口に含む。


そして、うち一人が、話題を振り始める。

「しかし、あの狂人達(技術局)が作るものは、如何ともしがたい。 たまには人を生かすものも作れないものかね」


「しかし、タニア王国が、ただの農業国からティファー大陸全土に覇を唱えられたのも、彼ら(技術局)の知恵と技術があってのたまもの。 故に各国に影響を及ぼせるもというものです」


しかし、あれはあまりに危険すぎる。 ここ最近の権謀術数は、あまりに前のめりすぎる。陛下は何を考えておられるだろうか。いや周辺の輩の仕業か……


「そうそう。例の※2惑星間プロジェクト がようやく進んだようですぞ」

「あの人工恒星プロジェクトか! 」

150年(地球歴300年)も掛かっている金食い虫計画が? 」


「ええ、アステロイドベルトでの実験で、ようやく人工重力石の生成にこぎつけたようで今ユピテル宙域(木星)の実験場での最終工程のため例のポータルで移送中だとか」


「ほっほー。それはめでたい。これで、より太陽を身近に感じされそうですな」

「気が早いですぞ! 」


貴族のサロンは盛り上がっていく。


つづく


※1:タイプ5装甲:高密度原子積層体により強度を上げている。通常の宇宙船の積層は5層程度(タイプ5)


※2:惑星間プロジェクト:星系人類全体の進歩に寄与する文化・技術開発への総称名称になる。 3惑星が資金を出し合い、SFのような未知の計画に莫大な金額を投資する。 現在は、第6次、第7次が存在しており、人工恒星計画は第6次計画になる。 そして第6次計画の人工恒星とは、文字通り人工の恒星を作り出す計画になる。


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