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受難続きのテラ惑星間貿易商  作者: 椎谷 急須
5章 偏約是正
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局面打開

タツマと次席補佐官が接触をもってから3週間以上が経過している。 庁舎内(監視下)の中でも怪しまれることが無く情報のやり取りをしつつ、各人がイスペリア脱出計画の準備を進めている状況になる。 作戦も大詰めであり、ハルマキス(イスペリアの隣国)への脱出計画は進んでいく。

---13地区 教会

御老公から管理者伝手にレジスタンスの招集をかけた。

軽く情報が洩れたのか? それとも緊急招集が原因なのだろうか。 参加者の顔が緊張しているように思う。


今回は管理者でもなく、御老公(ニルブ)でもない、タツマが会議を取り仕切る。

「さて、お集りのみなさん。かなりの大仕事が来ました。次席補佐官の国外脱出計画です」

「……」


全員が沈黙する。今まではタニアの悪事を暴くことや成敗することに注力していたが、ここにきて全くの想像外のミッションが組まれている。


「作戦目的は2つ。次席補佐官を安全に出国させること。そして、追手のタニアの工作員を生け捕りにすることにあります」

「……」


「そのために皆さんにしてもらいたいことは、タニアの工作員の陽動になります」

その言葉で室内が一瞬ざわつく。


タニア工作員となると戦闘のプロになる。 そんな輩相手にこちらで勝てるのか。 装備も練度も全く違う相手になる。


「といっても安全のため、街中での陽動で、コンバットスーツ装備で人込みでの対応になります」


“危険すぎるだろ”

“プロとアマチュアでは、差があり過ぎる”

“武器はどうするんだ! ”


「はい。そこれで陽動班は、基本逃走をメインで護衛のトークンを付けますのでご安心を」

―― 一体30万マリベル(300万)以上するが、まぁパトロンが太いのが幸いだな。


タツマが合図をするとアルプが、台車にコンバットスーツを載せて現れる。


“随分と高そうなやつだな”

“本物の軍用じゃないか? これ”

“こんなんどこで手に入れているんだよ! ”


それらの言葉を無視してタツマが話を進める。

「これを装備し、上に大き目のコートで逃走してもらいます。 危険な目に会いそうになったら、街中の治安局に逃げ込んでもらいます」


“治安局って”


「我々は普通の一般市民です。 何者かに追われていると言えばいいでしょう。 もちろん何かの質問をする体でもかまいません。それこそ落とし物でもいいでしょう」


全員が静まる。


これらのコンバットスーツをどこから持って来たって? 先の内戦でプロメンテの兵士から頂いた。 プロメンテ政府も兵装を返せとか言ってこなかったし。


「“13”これだけの軍用装備をどこから? 」

12(青年)が訝しげに聞いている。


「出所を聞いてどうします? 」

タツマが微笑みながら聞き返してみる。


「……いや。いい」

余りにも物騒過ぎるため、下手に出所を知るも気が引ける。


「さてと、2つの作戦目標があるので、実行部隊を2班に分けます」


「ちょっと待ってくれ! 話についていけてないのだが、タニアの工作員部隊相手に応戦するのか? 」


レジスタンスの一名が、声を上げる。 流石にタツマのペースで話が進み過ぎているのと、工作員との命のやり取りがあるため、慎重にならざるを得ない。


「ええ。 そうです」

しかし、タツマは、問題がないような振る舞いで質問に回答する。


「それが一体何になるんだ! 我々の目的と関係ないではないか! 」

管理者も質問してくる。


「今回タニアの工作員部隊は、国外脱出の次席補佐官を狙っています。 常に水面下に潜んでいる彼らが表に出てくる滅多にないチャンスです。


彼らを拘束して、知っている事実を洗いざらいはいてもらいます。その情報を基に弁務官と協議する方針です」


「……無茶が過ぎる。 我々に工作員の対応などできないぞ! 」

管理者も食い下がって来る。


「故に先ほどの班を2班に分けるといいましたが、1班は、工作員確保班として、私と10(バルティス)班により対応します」


「たった。2名で? 」

管理者が疑問を挟んでくる。


「はい。 しかし、心配ご無用。 トークンも数体用意しております。そして残りは、先ほどいったように陽動班になります。 工作員から逃げて、逃げて、逃げまくる役回りになります」


“多少は安全なのか? ”

“逃げるって言っても、治安局に飛び込むんだろ? ”


「しかし、情報を貰ったからと言って、弁務官があってくれるわけないだろう! 」

レジスタンスの一人が声を上げる。


「そうでしょうか? 会いに行けば、会ってくれるんじゃないですね」


管理者さんは、訳が分からないとの表情。 他の人間もざわついている。


しかし御老公(ニルブ)が、口を開く。

「……穏やかな会合にする気はなさそうじゃな」


タツマがニヤリと笑う。

「人は必ず眠る必要があります。 故に寝室にでもお邪魔すればいいだけです。 簡単でしょう? 」


「……」

最悪の回答だと全員が思う。 しかし誰も反論しない。


「お前さんを最初から強引にでも排除しておけばよかったよ」

ニルブが不満を零す。


「そうですか? 私でなければこれほどの作戦も武装も準備できませんでしたよ。


さて、作戦は最終段階です。 ここをしくじれば、全滅ですが成功すれば、晴れて治外法権撤廃の足掛かりになる訳ですよ。 もう一息です」


タツマは、一拍置く。全員がタツマに視線を向け、騒めきも治まっている。 

その状況を確認して最後の決断を迫る。


「そこで最終確認です。やる人は残ってください。 やらない人は出ていって下さい。重要な作戦なため、これ以上は、関係者だけに提示したいので」


おやおや、誰も出ていかないとは?

「ここから先は裏切ったら、消えてもらうことになります」


―― それでも、出ていかないか。

「そうですか――分かりました。作戦内容を提示します」


            ・

            ・

            ・


タツマの説明が始まる。

誰が見ても過去一危険な作戦になる。 人を逃すだけならいい。 

しかし、タニアの工作員の陽動は別問題だ。 闘争の経験値が違い過ぎる。


            ・

            ・

            ・


作戦の成功は、ハルマキスとイスペリアの間の河を次席補佐官が渡り切れること。

次段作戦として、タニアの工作員に強襲を仕掛け、生け捕りにする。


しかし、最もきついのは、タツマ達の班になる。 ここからは、彼ら(レジスタンス)に知らせていないが、懸念事項としてタニア駐屯軍から出撃の可能性がある。


―― あとは、この問題をどうするかだな。 しかし、時間もない、彼らとも詰めないとな


いよいよ、最終作戦に向けて状況が動きだす。


--- イスペリア庁舎

タツマの決起集会から数日が経過する。


今回の脱出計画の主役たる次席補佐官は、弁務官室に出向いている。

話し相手は、この部屋の主である弁務官になる。


「……職を辞する? 」

弁務官の純粋な驚きと動揺が、言葉から伝わってくる。


しかし、それらを認識しつつも、次席補佐官は、淡々と詳細を述べていく。


「はい。 弁務官殿のスケジュールが合わず、中々報告する機会がなく遅れて申し訳ございませんでした。 明日が最後の出庁日になります。 私もこの国にも大きく貢献してきました。 残りの人生は、穏やかに過ごそうと思いまして」


※ちなみに次席補佐官の上司は執政官のため、直前まで弁務官にいう必要はない


「執政官達は、なんと」

「“職業選択は自由だ。任せる。後任は決めておいてくれ”とのことです」


弁務官の顔が僅かに歪む。

(あいつら。相変わらず何考えているんだ)


しかし、いつもの顔に直ぐに戻し、話を続ける。

「しかし、君のキャリアをここで捨てるのかい。もう少し働けば、執政官選挙へも立候補できるんじゃないか? その時は、私も応援させてもらうよ」


「とんでもない。私には、あの職は無理です。 まだ先ですが、引継ぎ後、この庁舎からお暇させていただきます」


「そうか……わかった。 今までありがとう」

次席補佐官は、弁務官室を退出していった。


(まずな。 あいつには、色々肩代わりさせている。多く情報を渡して実行させいる。 このまま奴を手放すのは、ヤバすぎる……タニアの部隊を使用には、独立作戦局の許可がないと動かせない。まずは、指揮官殿(リーライン)に連絡を取らねば)


--- 休憩室

いつもの海が見える休憩室でタツマと次席補佐官が、話している。

「ここから見る景色もあとわずか……明日を最後に只の人になる訳だ」


「……そこまでして撤廃したいですか? 今の地位に上り詰めるのは楽ではなかったでしょうに」


「まぁね。 しかし、この地位を得たのも治外法権撤廃のため。 それが実現できるなら地位に興味はないよ」


「今の地位での対応は、できないんですか? 」

タツマが怪訝そうに尋ねる。 


「無理だね。何年この地位にいると思っているんだ。 同じことをしていては、同じことしか起きないよ。 望む結果を得るには動くしかない」


「……さすがですね」


「計画通りに明日は隣国のハルマキスまで送ってくれないか。 あそこは、隣国でありながらタニアの影響力が少ない地域だ」


「……」

複雑な感情になる。


「そうだ。簡単に出国させないことも認識している。しかし、レジスタンスである以上私の夢に付き合ってもらうよ。報酬は……」


「大丈夫ですよ。頂き先は確保してあるので」

「そうか。 頼もしい限りだ」


この庁舎ともおさらばか。また履歴書に記載項目が増えたね。

アルプからの情報で裏付けも固まりつつある。


                  *


どんなに大きなことを起こそうとも、悲劇が起きようとも、うれしいことが起きよとも。 

日は上り時は進む。 決行の日になる。


最終出庁日。


いつもの休憩室に2人とトークンがいる。 本日はよく晴れている。

ここからの眺めは最高だね。海もよく見える。


「今日が、最終ですか? 」

「随分と長い間、働いたものだ」


「そうそう。 尾行者の正体ですが、タニアの工作員ではなかったようです」

「……」


「イスペリアの工作員ですね。 執政官配下の部隊になります」

「ほぅ……そうか……」


驚きもない。おそらく何か感じるものがあるらしい。 もちろん、この状態で、尾行者がだれであるか聞いても意味がない雰囲気がある。


「私の立場ですと、執政官室にも入れるんで、少しお話をしてきました」


*** ある日の 執政官政務室清掃の回想 ***


イスペリア棟の散らかりようは、どこも変わらず酷いモノである。


「ようやく時間が合ったな。 早速やってくれ。 散らかりすぎて書類が見当たらなくなる。 そこのローテーブル上の書類は、全てシュレッダーにかけてくれ。


あと色々こぼしてしてしまっているから、シミもできるだけきれいにしてくれると助かる。

加えて、キャビネットの埃も何とかして欲しい。


ずっと使ってなくてなかなり溜まってしまっていてね。 それと私に気にせず清掃してくれ構わない」


矢継ぎ早に指示が飛んでくる。


「承知いたしました」


業務の方が忙しいようで、我々には注意を払っていない。

アルプに入口近くの清掃を任せる。


――さてと、確認作業と行きますか

ダストボックスの回収しにデスク側面に近き、ささやく。


「次席補佐官の尾行者は、あなた方の 差しがね ですね」

彼の作業の手が止まり、前を見る。


「……初対面のはずだが? なかなか勇気のある発言だな」

執政官の雰囲気が一気に重く冷たくなっていく。


「時間がありませんので手短に、彼の辞職の意味はご存じで? 」

「……ああ。おおよそな」


「ならば、どうします? 」


「……貴様らは?」

「彼から運送の依頼を受けました。その際、彼を監視していそうな者はどちらかと思い」


「なるほど……危険な運送だぞ」

「覚悟はありますよ」


「……分かった。あとで回答する」


執務室を清掃が終わる。中々にきれいな部屋だな。しかし、一回でコンテナが満載とは。一度ステーションに戻って廃棄してこないとね。


「清掃終了いたしまいた。では失礼いたします」

タツマが笑顔で回答する。


「……わかった」

執政官は入った時よりもぶっきらぼうに回答してくる。


執務室を出ると扉の両脇に護衛が立っている。


「どうも。お疲れ様でーす」

タツマの挨拶に返事はない。


―― 私の言葉は意に介さないといったところか? 護衛なのか見張りなのか

*** 回想終わり ***


「ということがありました」

休憩室から海を見ながら思い出しながら語っていく。


「……そうか。 随分と博打をしたものだね」

次席補佐官から少し感嘆が感じられる。


「もちろん、ある程度の情報は掴んでいましたよ。 執政官がこちらに対して敵対心の有無が分からず話しかけたら。 私は今ここには居ません。反逆罪で鉄格子の中です」


「それもそうか――で私の周りを“うろついていた者達”の目的は?」


「やはりあなたの護衛っぽい感じですかね。 あなたが、タニアの裏仕事みたいなことをやらされていたのは知っていたようで、気には留めていたようです。 諜報員を付けたのは、エリスの件だったようです。 タニアを刺激する可能性を考えて、とのことですね」


「彼らは、流石だよ」

執政官を思ってだろうか、しみじみとした声が響く。


「ええ。事実貴方の行動がなにやらおかしいと判断したのでしょう」

「……」


「ああ、その“うろついていた者達”もこの作戦に参加してもらいますよ」


「いつもはおくびにも出さない連中(執政官達)がね。 いざとなると助けてくれるとは」


「心配は、しているんですよ。 今までかなりの仕事量を振ってきたことへの恩返しの意味もあるようです」


「……まったく。 それにしても、君の立場は随分と融通が効くな。 執政官の執務室まで入れるとはね。 私でも、そうそう入れる部屋でないのに」


「以外に便利な立場ですよ――全てに根回しは済んでいます。作戦は、予定通り今夜決行です」


「わかった」


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