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受難続きのテラ惑星間貿易商  作者: 椎谷 急須
5章 偏約是正
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ニルブ通商の頭目

レジスタンスの仲間からの情報と自ら集めた情報を基にレジスタンス創設の意味が見えてくる。

--- 閑静な住宅街


数日間、アルプに徹底的にニルブ通商の役員一党を徹底的に調べさせた結果を持って、

本日は、そのニルブ通商の頭目の根城に向かっている。


『ダイゴやスキュレス(議員)まで総動員してまでとは、凄いですね』


「まったく、手間かけさせやがって。 それにしても、フィクサーを気取りとはいい御身分だな」

『いますかね?』


「いるさ。 複数の住居を構えていても、金を持っていても一般人。 帰る場所はそう変わるものじゃない。 特に年を取っていればなおのことだ」


シティ地区から暫く車を飛ばす。時間にして半時(1時間)程度が経過する。


目的地が見えてきた。木々が生い茂る小高い丘のようだ。遠くからでは何となくの家になるが、近づくとその建物の大きさと壁の高さを感じることになる。


下々の小さい土地にひしめき合っているとは程遠い、贅沢な造り、複数の屋敷が構えられているがどれも庶民の住宅からは程遠い。


『大きな家というより、邸宅ですね。ネス邸と同じくらいでしょうか。かなりの資本家達が、住まう土地なんですね』


「レジスタンスのパトロンだからな。それなりに金は持っているだろうさ」

目的地の番地が見えてきた。重厚な門扉で入口は閉ざされている。


――表札はなしか。 当然かもな。


「ここだ。アルプ尾行は? 」

『ありません』


カーゴ(スマイル号)を門の前に止める。 もちろんアポなしである。

「じゃぁ。ベルで呼び出すか」


タツマが、カーゴから降りて門扉脇のブザーを押す。

まずの一回目には応答がない。


気にせずそのまま押し続ける。するとスピーカからの反応がある。


「どちら様でしょう」

女性の声が聞こえる。 メイドだろうか?


「そうですねー タツマと名乗りますか。 会長に用事があります」


しばらく時が経過すると応答が返ってきた。

「どうぞお入りください」


門扉が開く。

「だとさ。行くぞ」

『了解です』


タツマはそのまま歩きで、アルプは、カーゴに乗ったまま車両を敷地内に乗り入れる。


敷地内は、季節の花々が出迎え、噴水の演出は目を楽しませてくれる。

―― くっそ! ブルジョアか? なんて豪華な庭だよ。 ちょっとした公園じゃないの? ここ。


タツマも圧巻の庭に多少押されている間にアルプも車両から降りてくる。


かわいらしいメイドさんが、出迎えてくる。

「ようこそいらっしゃいました。 タツマ様。 こちらへ」


母屋ではなさそうな方向に案内される。

裏庭の方に案内されるが、それでも庭はしっかり手入れされている。


しばらくすると庭の真ん中に小さい離れ屋が見えてくる。しかし、広い庭だな。


メイドさんは、離れ屋に向かっていく。入り口前まで来るとノックをする。

「どうぞー。 開いているよー」


メイドさんが、離れの小さな小屋のドアをゆっくり開ける。

「失礼します会長。 タツマ様が会いたいとのことです」


「入ってもらって」

メイドさんがドアを開け、我々に道を譲る。 譲られた動線に沿って中にはいる。

小さな一部屋だ。


作業机とテーブル椅子がある程度で、ここを住居にするには無理だろうが、一人で考え事をするには最適な空間だろう。


室内に入りタツマから第一声が発せられる。

「久しぶりだね。 御老公。 いやニルブ・エリュス。 あんたが、ニルブ通商の会長さんとは、知りませんでしたよ」


「さすがだな。 ここまで来たのは、お前さんが初めてだよ」

「“二重スパイ”とは、随分と手の込んだことを考えましたね」


「地上にいると宇宙のことは疎くなるが、お前さんが“海賊殺しのヒルベルト商会”の2代目と聞いて合点がいったよ。最初からどうも戦い慣れしすぎていると思った。苗字がかわっていて最初は、混乱したがね」


また随分な2つ名だな。もっと小洒落たものにして欲しい。


「だいぶ、我々をお調べになったみたいですね。 といっても私は、ただの経営難の会社の社長ですよ」

軽いノリから入るが、タツマの顔から緊張が消えることはない。


タツマが続ける。

「次席補佐官を餌に最後の仕上げですか? 適当にタニアの工作員と交戦して、次席補佐官を亡き者にして情報源は闇の中、工作員をある程度退治して、レジスタンスの地位向上といったところですかね。 無難な着地点ですね。 彼を消す理由をお聞きしても? 」


「……(次席補佐官)は、わしの二重スパイを疑い始めてな。 それが理由だ」


「なるほどね。 それで原因の方を動かして、タニア側を動かすか。 確かにいくら大企業の会長であっても、あんたじゃ、タニアの工作員を動かす権限はないわな」


小癪(こしゃく)なガキじゃの。 見えない敵程大きく見えると思ったが以外にやるか。 といっても見破られたなら仕方ない」

御老公(ニルブ)には、少し達観した表情が見える。


「次席補佐官への対応の決め手は、やはりエリスへの協力要請ですか? 」


「ああ。 やつ自身は実行部隊もいなければその権限もない。 であれば、捨て身の賭けとして外部の者に支援を要請したのだろう。  外部への逃走ルートと引き換えに、奴ら(エリス)へは、イスペリアの情報をくれてやる算段だろう。 


エリスとしてもタニアが力を落とすことは願ってもないこと。故に利害が一致。 レジスタンスの協力で国外脱出し、知っている情報で外から治外法権の撤廃にいそしむ。 そんなところだろうな」


御老公(ニルブ)は、机の上に置いてあるティーカップを口元に上げ喉を潤し、話を続ける。


「護衛を工作員と誤認させたまではよかったが、まぁいい。お前さんもタニア相手に戦うことは無理だ。 諦めろ」


御老公(ニルブ)の言葉を無視してタツマが質問を続ける。

「なぜ二重スパイを? 」


「国同士の関係は、綺麗ごとだけでは上手くいかん。わしとて治外法権は撤廃したい。しかしタニアとの関係も保ちたい」

ニルブが、本音を漏らす。


「そこで、イスペリア内の過激派や有力者の抹殺ですか。レジスタンスにいれば自然に情報が入ってくる。その情報をタニアに流す。


一方で、ニルブ通商や官庁からタニアの裏情報をレジスタンスに流す。適度に暴れさせイスペリアの内のガス抜きですか? 」


タツマがその本意を指摘する。


「まっ。 そんなところだ」

「あっさりと認めますね」


「あの時と逆じゃな」

ニルブが、苦笑している。


「で、あなたはどうしたいんですか? 例の法律を撤廃したいんですか? したくないんですか?」


「直情的なのは、若者の特権じゃの。だが、結論からすれば無理だ。諦めろ、タニアが自らの利権を手放す理由がない」


「そうですか。私は、ここまで来た以上最後までやらせてもらいますよ。 次席補佐官を守り、タニアが利権を撤廃する算段が付きました」


戯言(ざれごと)を」


「ふふふ。国家は強いが。 人は弱い。 変えるには、つつきどころが重要です」

タツマの悪い顔が浮かぶ。


「……何を考えている惑星間貿易商(ヒルベルト商会)

その質問を無視してタツマの語りは続く。


「さらに、次席補佐官から先にオーダを頂いておりますので、惑星間貿易商として使命を全うさせていただきます。 レジスタンスの報酬は、あなたに請求しますね。そのようなルールらしいので」


「……ほぅ強気だな。わしはレジスタンスでもあるが、タニアでもある。 次席補佐官を亡き者にしようとした場合はどうする? 」


「倒しますよ。 どちらであってもあんたに請求書を送りつけるつもりです」


「さすが商人。若造であっても、契約と請求にはシビアだな」

ニヤ付いた顔で煽ってくる。


しかし、急に神妙な顔つきなり、低いトーンで語り掛ける。

「いつから、二重スパイの可能性に気づいた? 」


「やはり“ニルブ通商”が、レジスタンスに絡んでいると分かった時からですね……」

少し間を開けタツマが話始める。


「実際、“ニルブ通商”は、タニアとの交易で儲かっているわけでしょう? それなのに、タニアを叩く理由が分からなかった。


今まで成功している作戦を管理者さんから教えてもらったんですが、タニアに対してのいやがらせ程度の妨害工作が、結構成功しているんですね。


工作内容は、大した事がないのですが、新聞にも見出しが載るぐらい派手に喧伝していたようで。 メディア戦略ですかね。確かにあの程度でも逮捕できないのは問題ですけど。


そして、大きな作戦を実施すると必ず誰かがいなくなる。いなくなった人に関して、管理者さんが言うには、過激な発言ややたら切れ者が多かったと聞きました。


そこで、タニアへの過激者や障害となりそうな人物を大事になる前に消すつもりでいたのかなと推測をしました」


「なるほど、管理者から今までの作戦の事例を聞いていいたのは、そのためか……」


「といっても、“ニルブ通商”に行きついたのは全くの偶然。 経済誌の社長の面が、あんたに似ていたのが切っ掛け。 年齢がいっていない社長だ。 まだ遺伝が色濃くでているのが幸いしたよ」


「すでに20(地球年齢40歳)を越えているがね」


「それでもだ。 まぁ同族経営の所以のジレンマ。 若いうちに引き継がせる必要があったんだろう。 今回はそれに救われたよ。 そこから“ニルブ通商”を調べるとっかかりなったてこと」


「……」

御老公(ニルブ)は黙っている。


「そこからは、徹底調査。 ただ情報が無かっただけで、直ぐに怪しい事には気づきましたよ。 なんせ会長の情報が全くないんですからね。 いやダミーの会長は分かりましたよ。 しかし、いかんせん社長や重役に同族がいて会長だけ他人って分かり易すぎるダミーでしたよ」


「なるほどな。 少し工夫が必要だったか」


「はい。次は頑張ってください」

タツマが笑顔で回答する。


「しかし、それだけでは、“ニルブ通商”がレジスタンスを支援しているだけとも取れるだろう? 」


「ええ。しかし、私があんたの二重スパイと判断した理由は、イスペリアの護衛をタニアの工作員と誤認させたことですね」


「ほぅ」


「レジスタンスに入ったばかりの12(青年)すら知っていた情報だ。 それを誤った情報を知らせた。 もちろん、知らなかったも考えられるが、もし知っていた場合、こちらに誤情報を与えて相手がどんな得をするかを考えただけです」


「……」

御老公(ニルブ)は沈黙したままである。 しかしタツマは続ける。


「管理者さんからの情報も併せると、タニアに恩を売りながら、イスペリアのガス抜きと考えると意外に合致する。 となれば、二重スパイの可能性が出て来る訳です」


「それで終わりか? 」


「最後に。 最初にあんたに話しかけた“二重スパイ”の単語は、ただのハッタリです。 正直ここにくるまでは、状況証拠だけですし、自白が必要でした。 乗ってくれてはっきりしました。 ありがとうございます」


御老公(ニルブ)の顔が歪む。


「因みに、タニアへの軍事情報流出事件の際にも誰か消す予定だったんでしょ? 恐らく、あの10(インテリさん)か、ついでに私だったんですかねー。


あの10(インテリさん)は、しつこく狙っていたようですが、まぁいい具合に戦線離脱できてよかったのでしょう。 彼は優秀で、作戦の盲点を見つけ幾多の危機を救っていたと管理者さんが言っていました」


「……」


「本来であれば、ここであんたを消したいところですが、消したところで私には、何の利益にもならない。 なので、今後の作戦のスポンサーになってもらいます。いいですよね」


「まぁいいだろう」


「それと、次席補佐官件ですが、本気でやり合うので、後始末もお願いしますね」


「後始末……? 何をする気だ」


「ヒルベルト商会が入って、タニアの工作員と一戦交えるんですよ。 まさか、治安隊の小競り合い程度で終わると思っているんですか? 因みに諦めるきは、さらさらありませんから。 勝ちに行きますよ」


「……」


「もっとも相手の出方によりますがね。 駐屯軍の一部の出動も考慮してください。もちろん、レジスタンスにも協力してもらい総力戦を挑みますよ。 必要物資は、こちらで用意しますので」


「……」

ニルブの眉間に皺が寄る。

――もう小手先の悪巧みじゃないからね。


「ああ。 そうそう。この件をタニア側に漏洩してはだめですよ。漏洩の疑義が出た時点で、我々総出。つまり惑星間貿易商ヒルベルト商会直々に、ニルブ通商 を跡形もなく消しますから。 


そして、お前の命もないと思えよ。 ああ――独立作戦局が関わっていることが判明しても同じです。


あの男(リーライン)は、今テッサリアで白翼の騎士団に夢中ですからね。 この作戦には気づかないはずです。 あれがいると作戦が、頓挫させられる恐れがありますから」


“白翼の騎士団”の全貌は掴ませていないため、恫喝に結構使える。


「お主。 あの麻薬現場の捕り物演出はそのためか! 」

「面白かったでしょう? 劇場型ってやつです」


ニルブの眉間に皺が寄る。と同時にこちらに質問をしてくる。

「なるほど、わかった。 一ついいか? 」


「なんでしょう」

「“白翼の騎士団”は、お前たちなのか? 」


「ふふふ。 どうでしょうかね。 ご想像にお任せします」

「……」


「それと今まで通りにレジスタンスの会議には、参加してくださいね」


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