英雄再臨
--- 作戦実施日 夜の波止場
予定通り医療用コンテナから税関検査前に物を抜き取り、取引が完了した車両が、こちらに向かってくる。 密輸輸送車両は全部で3台。
―― 税関に金を握らせザル警備。 そもそもこの港の管轄もタニアとなれば、何でもありだな。
≪13。 そちらの状況はどうだ? ≫
副社長から連絡が入る。
≪無事悪党どもの取引は、無事成功。 金貰ったほうは、船に戻っていった≫
≪了解≫
要所に仕掛けたバグドローンが、取引を成功しアジトに引き返す車両の映像を捉えている。
―― 車両内の犯人は、意気揚々だろうな。
タツマが、その映像をを見ながら、ぼんやりと考えている。
取引現場の映像は、バグドローンにばっちりと記録されている。 あとは、現場で制圧したのをイスペリア治安局が捕まえれば万事完了になる。
レジスタンス一派は、コンバットスーツ装備で倉庫の陰に隠れ、襲撃の合図を待っている。 敵さんが、アジトに戻る前に対処する算段である。
車両が任意のポイントを通過すると突如として、密輸組織一団の輸送車両の車輪が、破壊され動きが停止する。 スパイクストリップでパンクさせたのだ。 原始的で一番効果的な方法である。
車両から声が聞こえてくる。
“何が起きた! ”
“攻撃です! レジスタンスの奴らかもしれません! ”
自動小銃を持った護衛が外に出てくるが。
≪投擲! ≫
タツマの指示で四方からスモーク弾が一斉に投げ込まれる。
夜であることに加えスモークより完全に視界を奪うことに成功。
赤外線ゴーグルをつけたレジスタンスが襲い掛かる。
≪殺さず、拘束しろ! ≫
攻撃仕掛けた直後にアルプからの通信が入る。
『タツマ。 敵の増援確認!』
「お早い事で! 人数は? 」
『車両3台です。15名前後ほどでしょうか』
≪10。そっちは、頼んだ! 前方から足止めをかけてやれ≫
タツマからの無線が飛ぶ。
≪了解だ!≫
敵の増援部隊の車両には、バルティス率いる第二部隊が物陰からフラッシュバンが投げ込まれる。 敵も突然の発光により、運転を誤り追突する。
「やっぱり奇襲にはこれだな! 」
バルティスがつぶやいたのち、無線で指示を出す。
≪車両周囲を固めろ! 車両から敵を出すな! ≫
敵増援部隊対応のレジスタンス第二部隊は、増援敵車両を囲み、敵が身動きが取れない状況にしている。 レジスタンスと思って舐めてきているのだろう。 敵の装備は防弾ベスト程度で突っ込んできている。
≪第二班、増援隊の全員の顔を撮影しろ。 しっかりとな! ≫
≪了解≫
ここでタツマから密輸犯拘束組に指示が飛ぶ。
≪増援隊の車両の奴らは、手練れだ。 密輸犯対応は、3名もいれば十分! 残りは、10 の指示のもと向こうを手伝ってくれ!≫
≪了解だ! “13”≫
タツマの指示のもと、部隊が分かれ動いていく。
人数が減ったのを好機とみて、密輸犯の護衛からの反撃がある。
先制攻撃でそれなりに戦力を削ったのだが、3名ほどがまだくじけていないようだ。
しかし、レジスタンスはコンバットスーツ装備であり、数発の被弾は問題ない。一方で密輸犯の護衛は、ごろつきばかりで、生身である。 一発の被弾で動けなくなるため、圧倒的優位で制圧していく。
タツマの方は、車両の衝突で伸びたり、被弾し呻いたりしている密輸犯を見ながら、彼らの車のカーゴ荷台を開ける。
荷台には、抜荷された薬物が大量に積まれている。
―― さて、そろそろ出番かね。 いい感じだ。
「アルプこっちだ。 カメラ回して!! 」
ここでアルプが、初めて現場に登場する。
多くの隊員が厳戒態勢で工作員を囲んでいるなか、タツマのみが密輸犯の車の前で撮影を密かに始める。
カメラには、白いコンバットスーツに身を包んだ人物が、抜け荷のコンテナの前に現れる。
「イスペリアの方々、お初にお目にかかる」
一旦溜める。
「今回、我々はイスペリアのレジスタンスの呼びかけに応じて、タニアからの不正な薬物の摘発に協力した。 作戦は成功し、証拠を押さることができた。これもひとえに活動家と呼ばれる、レジスタンスの努力の結果であろう」
ここから一気に煽っていく。
「彼らは非常に優秀で、志高く、正義を通すため己を捧げている高潔な組織である。
裏でこそこそと動いているタニアの間者程度では、その堂々たる意気の前には、雑兵も同然であり、タニアの賊が敗れるのは必然だったのだ! 」
映像にレジスタンスに取り囲まれた、工作員達が映る。バグドローンの映像である。
「イスペリアのレジスタンスは、この地を開放し、自由を取り戻すまで決して諦めない! イスペリアの圧政者よ! 覚悟するといい! 」
締めに入る。
「我々も彼らの仕事を最後まで手伝いたいところであるが、既に次の戦場がまっている。ここで別れるは非常に心苦しい。 この地は、気持ちを同じにする同志に託したい。 奮闘しているレジスタンスの諸君! この地が開放さえるまで壮健なれ!」
映像を残し、照明弾を数発上げ去っていく。それを合図として
10の指揮のもと増援部隊対応班も撤収していく。
しばらくすると、消火隊と治安隊の車両のサイレン音が聞こえて来る。
あれだけ派手な音と照明弾だ。よく目立つだろう。
*
次の日の報道は、密輸と白翼の騎士団の話題で盛り上がっている。
押収された麻薬を背景に映る“白翼の騎士団”。 おまけに映像付きである。
話題性には事欠かない。
レジスタンスの背後には白翼の騎士団が付いている。そんな噂も飛び交い始めている。
因みに増援部隊の顔写真も各種報道機関にばらまいておいた。
これで暗躍の人数も抑えられるはず。
報道紙を広げて、副社長が呆れている。、
「社長。これいいのか? 」
「了解は、取ってある。 それと例の作戦を実行に移して」
「翔巴とウィードからまた文句がでそうだな」
「もともとは、君たちの作戦でしょ? 手伝わないなんて言わないよね」
タツマが少し威圧を掛ける
「へいへい。 話は通っていますよ。前社長より人使いが荒いな」
こっちは無理な借金を負わせられているんだけどね。
--- 南部 13支部 教会
早速、白翼の騎士団の映像を画策した“13”への質問が相次ぐ。
“どうして教えてくれなかったのか? ”
“あれは本物なのか? ”
“彼は今どこにいる? ”等々。
あんな白いコンバットスーツによくご執心できるものだね。
そんな中で、御老公が口を開く。
「あの白いコンバットスーツよりも今後の方針決定が重要になるじゃろう。“白翼の騎士団”が、関わってきたとなると、当局からの締め付けも厳しくなるだろうて、一方で入る情報も多くなる。
加えて重要な情報とそうでない情報も出てくる。
今回の作戦は、この組織の転換点になる大きな意味を持つことになるはずじゃ。
各員気を引き締めて対応せんと、1人のミスで組織全員が全滅する恐れもあるぞ」
「……」
御老公の言葉の重さに全員がその言葉に黙る。
管理者が、言葉を継でいく。
「我々の最終目標は、不平等条約の撤廃。 治外法権の解除が目的です。そのためには、今回の事例を大いに利用して他の団体との協力への餌にすること|厭≪いと≫わない。
しかし、そうなると玉石混合な輩が我々に近づいてくるでしょう。 君達は、安易に情報を漏らしたり、付け込まれることがないよう、対応してください」
「……」
全員沈黙のままである。
「以上です。本日は解散。次回作戦会議は、後程連絡します」
管理者の会議の打ち切り発言により、協議会は解散となる。
そして、いつものように最後になるタツマである。
そこへ珍しく管理者の方から近づいて来る。
「貴方は、御老公から聞いている通り、本当に只モノじゃないんですね」
「そんなことありませんよ。 できることをしているだけです」
あくまでも低姿勢のタツマ。
管理者が顔をまじまじと覗き込んでくる。
「どうしました? 」
「……我々の主から直々にタツマさんに直々に頼みがあるとの申しつけがあります。 会ってもらえないでしょうか? 」
―― ここの組織の元締めと来たか。 しかしなぜこのタイミングで
「直接個人に? いつものように全員への指示ではないとうことでしょうか? 」
タツマが少し警戒気味に返答する。
「はい。 彼が会うのも個人的要望のようです。 そして直接会ってみたいと、先方たっての頼みです」
タツマが、少し考え込む。
タツマの何か疑っている雰囲気を察したのか、管理者が言葉を付け足してくる。
「貴方がオーナーに信頼されている証ですよ」
―― 以前あの御老公が言っていた奴か……
「分かりました。どうすればいいのでしょうか」
タツマからの肯定の回答に管理者の安堵の顔が見られる。
「明後日ですが、通常の教会の入口からお入りください。 懺悔室はご存じですか? 」
―― まぁ顔は見せたくない問う事か……しかし……いやそうゆう事か
タツマの中に芽生えた疑問に関して自身で合点がいったようだ。
「ええ。 そこに入れば宜しいのですね」
「はい。 お願いします」
その言葉のやり取りをしていつもの裏口から教会をでることになる。
他の人間は地下道から出ていくのだが、どうやら未だ信頼は得られていないようだ。
何時のものようにカーゴに乗車する。
『お疲れさまでした。 何かありました? 』
アルプが声をかけて来る。
「ああ。 明後日、この教会の懺悔室に来いとさ」
『懺悔室……何かの打ち合わせですか? 』
「そのようだ。 このレジスタンスのオーナー直々に案件があるらしい」
『しかし、懺悔室であれば、顔は見えないはず、わざわざ回りくどい方法ですね』
「そうでもない」
『ほぅ。 その心は? 』
「相手もマールス人と言うことだ」
『なるほど。読心術ですか。 やっかいなものですね。やはりあの“白翼の騎士団”の演出が気になっているのでしょうか? 』
「だろうな。 といってもこちらの狙いは、別なんだが――まぁいい。 おまけイベントが発生したと思えばいいさ」
車両が走り出す。
辺りも暗く、たまに発砲音が聞こえて来る。周囲の音を感じる為、この地域ではカーゴ内のラジオはオフにしてある。故に教会からの帰りの車内は、沈黙状態である。
もっとも、相手はトークンであるためそれほど気まずくならないのが、心地良い。
しかし、今回はアルプから話しかけて来る。
『タツマ。 先日の違法薬物の捕り物に関してですが、疑問があります』
「おう」
『ここのレジスタンスは、全部で14名。うち一名は、管理者で現場に出ないということですよね? 』
「ああ――いや正確には2名だな」
『2名ですか? 』
「御老公も前線には出ない。 よって最大12名での活動になるな」
『なるほど――それで合点がいきました。前回の揉め事の時全員でるといいつつ12名だったので』
「まぁ年配だしな」
『ふむ。 となるとその“御老公”という人物は、その名の通りお年を召していることですね』
「どうした? 」
『いえ。みなさん地下道からの退去なので顔が判らずじまい、タツマの安全を考えると問題と思いまして。 多少なりともレジスタンスの情報を得たいところです』
「最初のレジスタンスとコンタクトしたことを憶えているか? 」
『ええ。襲撃に会って危うかった場面でしたね』
「あの時の青年が、コード12,爺さんのほうが、御老公だ。」
『なるほど。登録しておきます。そしてバルティスですか』
「そうだ。レジスタンス内に副社長がいるから、それでも安心感はあるさ」
『……』
車両は発砲音が響くダウンタウンを進んでいく。
時折の銃撃もカーゴ車両の装甲は、容易に弾いて進んでいく。
*
こちらに潜入してすでに6カ月が過ぎようとしている。季節は夏季になっている。
そんな夏の入口の夕暮れに13地区の教会の正面に一台のカーゴが止まる。
時間通りに到着し、正面扉を開けて教会内に足を踏み入れる。
中には誰もおらず、夕日とステンドグラスの色で満ち溢れている教会は、幻想郷にでも迷い込んだような雰囲気がある。
タツマの歩を進める音だけが室内に響く。といっても、コンバットスーツの装備であるが、バイザーメットと武装はしておらず、それらは、表のカーゴのアルプが管理している。
つまりは、いつも通りと言うことになる。そのまま、奥まで進み脇の小部屋を入る。
しばらくすると、向かい側の木の板の向こうに気配を感じる。
「ようこそ。迷える子羊よ」
男性、それも壮年のような男性の声が聞こえて来る。
―― 管理者さんの声でもない。それにレジスタンスの声とも違う。ってかまた、おっさんかい!
「別に迷う必要はありません。 私はあなたの味方です。 先日の“白翼の騎士団”のパフォーマンスを見せて頂きました。 あなたの大変すばらしいできしたよ」
―― あれをパフォーマンスと評するか
「どうしました? 」
「いえ―― ありがとうございます」
「さて、その行動力を買って一つ頼みたいことがあります」
―― 本題か
「何でしょう? 」
「重要人物の護衛と敵の確保になります」
―― いきなり重そうなご要望だ。 確保となると荒事確定ってわけか
「そして詳細を話す前に、この情報は我々レジスタンの最重要情報になります。最初に聞いたら最後までやり遂げて頂きたい。 途中の足抜けはできないとだけ言っておきます」
「後戻り不可能な案件ねー。 そのリスクに見合うだけのどんなメリットが、ありますかね? 」
「我々は、貴方の素性を掴んでいる。 ヒルベルト商会さん。 現在いい船をお持ちのようだ」
タツマの雰囲気が変わる。
「ほぅ我々を脅すとはいい度胸だな……」
ダイゴ程でもないが、海賊と渡り合ってきた人間の威圧は、板越しでも伝わる。
しかし、相手も引く気はないようだ。 声のトーンも変わらず続ける。
「脅しではありませんよ。ただの確認です。 さて、成功報酬は商社プロメンテへの純粋な融資で如何ですか?」
「融資ねー」
「商社プロメンテも確かに差し当たっての開発資金500億マリベルは確保した。 しかし、オガネソン鉱脈と線路の延線。それにヘスベリアの開発とまだまだやることは多く金も掛かる。 この規模は済むとは到底思っていないのでしょう? 」
「……」
「イスペリア内の商工促進銀行に100億マリベルの無担保融資枠をご用意いたしましょう。 もちろん、融資のためお金は、利息付きで返してもらう必要はありますがね」
―― なるほど。 準公的金融機関の商工促進銀行に顔が利くときたか。 そして正体もばれない。小賢しいくさいやつだな。しかし……
「100億マリベルの融資枠ねー。 こちらの開発規模に比べて少なくない? 」
「残念ですが、この金額は、商社プロメンテの信用に沿った金額を算出しています。 設立したての商社プロメンテに無担保融資枠を100億マリベルは、容易な金額ではない。 貴方なら分かるはずだ。 それに資金集めに多少の猶予ができることは悪いことではないはずと考えますが」
―― こちらが、金集めを苦手なことをついてくるかーよく調べている。
「……話を聞こう」
「ありがとうございます。 早速ですが、我々の情報源の主要人物として、イスペリアの次席補佐官と呼ばれる人物がいます。 執政官とタニアの首席補佐官の支援を行う人物です」
「へー何か偉そうな感じ 」
「そうですね。弁務官といえども、首席補佐官と相談して政策を決めています。 首席補佐官は、タニアからの選出ですので、実質イスペリア官僚の頂点のような人物です」
「……その人が情報を流しているってわけ? 」
「細かいこと言うと違いますが、大枠ではその通りです」
「で彼が、こちらに肩入れする理由は? 」
「彼もイスペリアの住民です。タニアとの不平等条約は好ましくないと思っている。しかし、イスペリアはタニアなしには成り立たないのは事実です。 なので、何とか不平等条約だけでも撤回したいと動いているのです」
「官僚らしい妥協案ってことだろうけど……タニアが不平等条約撤廃へのメリットがないように思うけど」
「そこで、タニアの不正を暴き出し、タニアへの不信感と関係悪化を盛り上げます。 そして、その解決策として、治外法権の撤廃と引き換えに手打ちにするとの大まかな構想を作りました」
―― おおざっぱだな
「その彼の周囲に正体不明の輩の影があるようです。 これを確保して欲しいと“13”にお願いしたいと思います」
「……え? いやいやいや。それこそレジスタンスの領分でしょう」
「レジスタンスとして、彼の安全を確保することが、どうして 対タニア闘争と結びつきますか? どちらかというと、タニアと結託して政を行っている人物です。 レジスタンス内部では理解が得られないでしょう。
それに我々の情報源をレジスタン内部といえ、多くの人間に共有されることは危険だと判断しています。 加えて、政府内にパイプがあることも知られたくありせん。
そうなると、外部からの来た貴方が最も適任になるのです……惑星間貿易商さん」
「……」
「それに、スキュレス様からも問題ないとの確約は得ていますので」
―― 御老公からでも情報が漏洩したのか? いやその前にあの女。こちらの素性を話したのか!
「申し訳ないと思いましたが、外部の者が参加するため、多くの伝手を用いて身元確認はさせてもらいました。 貴方が、ルヴェリエへの資金の流れを知りえた時点で、彼女へ確認を行いました」
―― なるほどね。
「それで……具体的な行動は? 」
タツマが渋々受け入れる。
「イスペリア庁舎に潜入してもらいます。外部クラス職員としてですが、掃除担当者して彼と接触し、暗殺から防いでください」
「ボディーガードでも雇ったら? 」
「たしかに、殺害から防ぐのも重要なことですが、今回は工作員の確保を行いたいのです。そして彼らから情報を引き出したいと考えています」
「前回の生け捕った、増援部隊はどうだったの」
「全員、タニア人でした。それも中央……タニア本国の諜報員でした。急造部隊だったのでしょう。 仮に彼らを捉えて、尋問したところでイスペリアの情報は得られないと思います。 といっても、今回の罪状も不必要な武器所有による銃刀法違反の程度で不起訴になっています。 しかし、写真をバラまいたおかげで、こちらでの活動はできなくなるのが救いでした」
「確かに発砲する前に制圧したからね。しかし、今回の工作員も同じ結果では?」
「いえ。 おそらくイスペリア内の人間だと思います。 しかし、正体が不明で次席補佐官を探っているようで中々攻撃してこないのです」
「それって本当に工作員? 」
「あまりに動かないので正体が掴めないとうのもあります。 見え隠れはしているのですが、どうも素性がわからないのが本当のところです。 ただし、とある筋からタニアの工作員との情報が出てきましたので今回動くことにしました」
「ふーん。 そいつのストーカーじゃないの? 痴情の縺れとか? 」
「それはないかと」
――言い切るかー。 とりあえず、次席補佐官に危険性を認識してもらう所からか
「わかりました。とりあえず、掃除業者として潜り込めばいいんですね。トークンの連れ込みは問題ない?」
「掃除会社の補助ロボットとの扱いで申請を出しておきます。十分にご注意を」
「わかりました――いつからです? 」
「明後日からお願いします」
――早くない?
*
タツマは、南部第13支部教会から出てカーゴに戻る。
『懺悔はできましたか?』
「ああ。 潜入捜査のご要望だ。 成功報酬は、商社プロメンテへの100億マリベル融資枠の設定だと」
『ほう。それでどこへの潜入ですか? 』
「イスペリア庁舎への潜入だ」
『おや。今回は少しお洒落なところではないですか』
「清掃員だがな」
アルプが、カーゴを出発させる。
『どこでも入れる職業となると適切な選択ですね。しかし……』
「良いように動かされている感じがあるな」
『はい』
「あのオーナーを名乗る人物を調べてみたいが、懺悔質の壁越しだからなー。 顔すら見えなかったし」
カーゴのヘッドライトが、街中の暗闇を照らし出し進んでいく。
『本当にその人は、オーナーですかね? 』
「……何が言いたい? 」
『レジスタンスを維持できる資金を持っている人間が、現場にわざわざ足を運ぶかのか疑問です』
「それは……例の“白翼の騎士団”の演出があって……」
『だとしてもです。もし私がアドバイスするのであれば、読心術が強い、手近な部下を派遣します。わざわざ危険を冒す必要もないですし』
「……となると。あいつはただの仲介者か? 」
『おそらく。 もしオーナーを詮索したのであれば、別の視点が必要だと思います』
「……そっちは頼めるか? 」
『当たってみます。まずは、スキュレスからですかね。それとビャーネさんにも確認が必要だと思います』
「ビャーネさん? 」
『相手は商社プロメンテを知っていました。 こちらがプロメンテとの繋がりがると読んでいるのであれば、ビャーネさんへの接触もあると考えます』
「なるほどねー」
奴らの手の内とは、次席補佐官とのパイプの存在。
そして、その重要人物の周辺を探っている工作員の確保ときたか。
そしてそのための潜入業務。 今度は清掃業者か。
―― もう、自分の職業が分かんなくなっているな。
周囲の建物は電気がないのか暗いままである。
ヘッドライトが唯一の頼りとして、車両は暗闇を進む。




