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【百合】天笠夏鈴は堕とされたい~健気で一途な後輩に堕とされる百合の話~  作者: 八星 こはく
第2章 栞は、世界で一番私のことが好き

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第39話 お店なので

「これ、着てみてください。私、夏鈴先輩にこういう服着て、ツインテールしてみてほしかったんです!」


 栞が渡してきたのは、ワインレッドのブラウスと揃いのデザインの黒いジャンパースカートだった。

 胸元には黒い大きなリボンが縫いつけられており、袖はふんわりと膨らんでいる。赤と黒、という色味のおかげで少し大人っぽく見えるものの、かなり甘いデザインの服だ。


「さすがに、私が着るには可愛すぎない?」

「絶対似合いますって。とりあえず試着してみてくださいよ。ねっ?」


 強引に押し付けられた服を改めて見る。嫌い、というわけではないのだけれど、自分に似合うとは思えない。

 とはいえ断ることもできず、私は渋々試着室へ入ったのだった。





「……やっぱり、似合ってないような気がする」


 試着室の鏡に映る私には、予想通り違和感がある。こういう可愛い服は、私よりも栞が着るべきだ。


「先輩、着替え終わりました?」

「終わったけど」

「じゃあ、開けますね!」


 試着室のカーテンが開いて、栞と目が合う。目が合った瞬間、きゃー! と栞が叫んだ。


「先輩、超可愛いです! ツインテールにしたら、絶対もっと可愛いですよ!」

「……私がツインテールとか、似合わない気がするんだけど」

「絶対似合いますって。先輩は普段愛想がないだけで、可愛い顔してますもん。しかも夏鈴先輩、私といる時はよく笑いますし」


 写真撮りたいけどマナー違反かなぁ、なんて呟く栞が可愛い。こんなにはしゃいだ姿を見られるのなら、慣れない服を着た甲斐があった。

 とはいえいつもよりずいぶんと短いスカートは落ち着かない。階段の上り下りをするたびに気になってしまいそうだ。


「……栞は、こういう服が好きなの?」

「大前提として、私はどんな服装をしている先輩も大好きですけど」


 嬉しすぎる前置きをした後、栞がにっこりと笑った。


「慣れない服を私のために着てくれるっていう特別感がいいんです!」


 栞が身体を半分だけ更衣室に入れて、私の髪に手を伸ばした。素早くツインテールの形を作ると、やっぱり! とまた楽しそうに笑う。


「絶対似合いますよ! 私、これを着た先輩とデートしたいです」


 可愛すぎる服もツインテールも、普段の私なら絶対に選ばないものだ。

 だからこそこの服を見るたびに、栞との幸せな今日を思い出すかもしれない。


「……分かった。これ、買ってくるから」

「わーい! 絶対、またデートしましょうね!」


 分かっていたことだけれど、私は笑顔の栞にかなり弱い。いや、これも全部可愛すぎる栞のせいだ。

 カーテンを閉めて着替えながら、栞に着せたい服を改めて考える。


 そういえば服をあげる時は、脱がせたいって意味があるんだっけ。


 もし栞を脱がせる機会があったら、私はどこから脱がせたくなるんだろう。上から? 下から?

 どこからでもいい、なんて結論は出せない。これは極めて重要な問題だ。


 大事なのは、どっちがより恥ずかしがってくれるかだよね。


「せんぱーい? 着替え、まだですか? なにかありました?」


 私の邪な思考は、栞の愛らしい声によって中断されたのだった。





 店を出て、今度は私が狙いをつけていた店へ向かう。

 栞はいつも、甘めのガーリーな服装をしていることが多い。童顔な栞にはよく似合っているけれど、いつもとちょっぴり雰囲気が違うものがいいだろうと考えたのだ。


 そして個人的に、どうしても栞に着せたい服のデザインを見つけた。

 オフショルダーである。

 オフショルダーというのは肩が出るデザインの総称で、その形は様々だ。肩だけが出たものもあれば、首元もがっつり出ているデザインのものもある。

 インナーを選ぶせいでなかなか厄介なデザインなのだけれど、私は絶対にオフショルの栞が見たい。


 なぜなら、えっちだから。


「これ、着てみて」


 新作としてマネキンも着用している服を手にとる。首も肩もがっつり露出したデザインのサマーニットだ。

 あまりにも無防備すぎて普段着には向かないだろうけれど、二人きりで出かける時なら問題ない。


「夏鈴先輩」

「なに?」

「これ、かなり胸元が出ちゃうと思うんですけど……もしかして先輩、だから選んでます?」

「別に。大人っぽいデザインで、いつもと雰囲気が違っていいかなって思っただけ」


 無表情を意識しすぎたせいで、つい早口になってしまった。

 最近の私はだめだ。栞のアピールがどんどん過激になっていくせいで、私もどんどん欲望を出してしまっている気がする。


「へえ。じゃあ先輩、これに合わせるスカートは、この二つだったらどっちがいいと思いますか?」


 笑いながら、栞は近くにあったスカートを二着手にとった。

 一着は足首まであるロングスカートで、もう一着は膝上のミニスカート。

 分かりやすく試されているのに、どうしても嘘をつけない。だって私の答え次第で、栞が試着する服が変わってしまうのだから。


「絶対、こっち」

「やっぱり。じゃあ、試着してきますね」


 ロングスカートを棚に戻した栞が、くるっと振り向いて笑った。


「先輩。お店なので、覗いちゃだめですからね?」

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