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【百合】天笠夏鈴は堕とされたい~健気で一途な後輩に堕とされる百合の話~  作者: 八星 こはく
第2章 栞は、世界で一番私のことが好き

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第38話 先輩ってやっぱり

 夏休み最終日。まだまだ暑さが残る中、私と栞はハチ公前で待ち合わせをしている。

 待ち合わせの時間まであと30分。早すぎるとは思うけれど、栞はそろそろやってくるはずだ。

 私の予想通り、栞が駅から出てきた。目が合った瞬間、全力で駆けてくる。


「先輩っ! すいません、待たせてしまって……!」


 今日の栞は、ブルーのシャツに紺色のミニスカート姿だ。シンプルなだけに、栞の美貌が際立つ服装でもある。

 ミニスカートから伸びた長い足は相変わらず綺麗で、気を抜いたらずっと見てしまいそうだ。


「全然。待ち合わせまで、まだ時間あるし」

「でも、先輩は待ってたじゃないですか」


 言いながら、自然な流れで栞は私の手を握った。目が合っても、今さら『手を繋いでいいですか?』なんて聞いてこない。

 私と栞がこうして手を繋ぐことは、いつの間にか当たり前のことになったから。


「先輩に似合いそうな服のお店、昨日いっぱい考えたんです」


 楽しそうな栞が、店名をいくつも口にする。元々栞はファッションに詳しいけれど、きっと私のためにいろいろと調べてきてくれたのだろう。


 まあ私も、いろいろと調べてはきたんだけど。


 可愛い服を買うには、それなりにお金が必要だ。だから今日だって、無制限にいろいろと買えるわけじゃない。

 だからこそしっかりと吟味した上で、栞に似合う最高の服を見つけなければ。





 待ち合わせ場所から少し歩いて、私達は近くにある渋谷110というビルにやってきた。女性向けファッションやコスメの店がいろいろと入っていて、買い物には便利なところなのだ。


「とりあえず一番上まで行って、順番に見ていきます?」


 フロアガイドを見ながら栞が言った。もちろん、反対意見なんてない。くまなく店を見て回った方が栞に合った物を探せるだろうし、なにより、一秒でも長く一緒にいたいから。


「うん。そうしよう」


 エレベーターで最上階へ向かう。エレベーターを出て少し歩くと、女性用下着の店が目に入った。下着類だけでなく、靴下や他のインナーも販売している店舗だ。


「……夏鈴先輩。もしかして、ここに入ろうとしてます?」

「違うから」


 慌てて否定したものの、栞と一緒にここへ入りたいか入りたくないかと問われれば、間違いなく入りたいと答えるだろう。


 っていうか、女同士で買い物にきてるわけだし、別に変じゃなかったりする?

 靴下だって売ってるし。そもそも同性なら、一緒に下着屋に入ることだっておかしくないような……。


 店内には一人の客だけでなく、女性同士の客もいる。だとすれば、変に意識する方がおかしいのかもしれない。


「夏鈴先輩? ほら、早く行きましょうよ」


 立ち止まっていたら、結局栞に手を引っ張られてしまった。若干の名残惜しさを感じつつ歩き始めると、栞がちらりと私の顔を見た。


「ねえ、先輩。もしさっきのお店に入ってたら、先輩は私に何色をすすめてました?」


 予想外の問いかけに立ち止まってしまうと、栞は悪戯が成功した子供みたいな顔で笑った。

 これは本当に、非常によくない気がする。私の脳内が邪な妄想に支配されてしまっていることが、栞に伝わりつつあるのだろうか。


 でも、それも全部栞のせい。栞に出会う前の私は、少なくともこんなに邪な人間ではなかったはず。


「夏鈴先輩。教えてくれないと参考にできませんけど?」


 答えたら私の希望を聞いてくれるってこと?

 そしてそれを、私に確認させてくれるの?


「夏鈴先輩、真剣な顔しすぎです」


 くすっと笑うと、栞は急に私の耳元に口を寄せた。


「先輩ってやっぱり、えっちですよね」


 そうだけど、と開き直ったら、栞はいったいどんな顔をするのだろう。気になるけれど試す勇気はない。

 けれどこのチャンスを逃したくないと強く思うほどには、私はえっちだった。


「白」

「……え?」

「栞には、白が似合うと思う」


 数回まばたきを繰り返した後、栞は頬を真っ赤にしながら俯いてしまった。自分から聞いてきたくせに、私が答えるとこんな顔をするらしい。


「夏鈴先輩」

「なに?」

「……参考には、します」


 顔を上げた真っ赤な栞があまりにも可愛くて、やっぱり赤もいいかも……なんて思ったけれど、さすがに口には出さなかった。

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