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4話 迷い人

 エルデリア村に到着したディラン達。

 ようやく休める……そう思うと、ディランは内心ほっとしていた。


「ここが、ロズ達の村か……綺麗な村だな」


 村を見渡し、素直に感想を漏らす。


 村の中心には一本の長い木の柱が立ち、その周りを囲むように鮮やかな花々が円を描いて咲いていた。さらに外側を木の柵が取り囲んでいる。

 家々も木材や削り出された石で作られ、どこか素朴ながらも美しい造形を見せていた。


 (だが、魔導具の類が一つも見当たらないな)


「ほら、おっさん。そんなとこで突っ立ってないで、早く中に入りなよ」


 いつまでそうしていたのかはわからないが、ロズ達が早く村に入るよう促してくる。


 「ああ、すまん」


 そして、村の中に入ってロズ達の案内で村の奥に進んで行くが、違和感を感じる。


 (変だな……村人の姿が見えないが)


 そんな疑問が浮かんだが、その答えはすぐにわかった。

 村の中心にある大きな広場。そこに村人たちが集まっていた。しかも、皆が武装した姿で……


「おわっ、皆どうしたんだよ!何かあったのか!?」


 そのただならぬ様子に、ロズが大きな声をあげる。


 その声に気付いた村人が振り返り……


「あ、ロズ!お前たち!無事だったのか!」


 安堵と喜びが広がり、村人たちは口々に声をかける。三人が無事に帰ったことに笑顔が溢れた。


 ……が、ふと気がつくと、ロズの目の前に綺麗な赤い髪の女性が立っていた。


「ロズ……」


「か、母さん……あのっ(パーンっ!)っ痛ぇ」


 いきなりの平手打ち、キレイに決まった。


「あんた!村の皆がどれだけ心配したと思ってるの!」


 凄い剣幕で怒る女性、先ほどのやり取りからして、この女性はロズの母親か……

 そして、この武装した村人たちの様子を見るに、森に向かった三人を救出するために集まったのだろう。


「母さん、ごめん。だけど、このおっさんのおかけで熊の魔獣も倒せたんだ!」


 ロズがそう言った瞬間、全員の視線がこっちに向く。


 (おいおい、いきなりこっちに投げるなっての)


「誰だ?見たことない人だね」

「おっさんだ!」

「頼んでたハンターかい?」

「いやいや、流石に早すぎるだろ」

「熊の魔獣をやったのか!ただもんじゃねぇな」


 色々な言葉が目の前をかけていく。そして、ディランが横を向くとすぐそこに、先ほどの赤い髪の女性が近づいていた。


(うお!さっきから気配が掴めん)

 

「どなたかは存じませんが、あなたが、息子たちを助けてくださったのですか?」


「え、ああ、助けたと言うほどでもないんだが。たまたま通りかかったところで、偶然鉢合わせたもんでね」


「偶然だとしても、息子達が無事に村に帰って来てくれたのです。本当にありがとうございます」


 そう言って、深々と頭を下げる。


 村人たちも、続いて頭を下げ、感謝の言葉を述べてくる。


「いや、本当に気にしないでくれ。それより、村長さんと少し話をしたいんだが?」


「村長ですか、爺様ならそこに」


 ロズの母親の視線を追うと、そこに杖をついた爺さんがゆっくりとこちらに歩いて来ていた。

 

「うむ、わしがこのエルデリア村の長を務めておるバルトじゃ。シェリーも、無事で何より」


「あ、お祖父様!ただいまっ」


 そう言うや否や、シェリーは村長の元へ駆けていく。


「この子は、わしの孫でな。本当に無事で良かった。しかし、ゼラルド、お主は怪我をしとるではないか。大丈夫か?」


「はい、傷自体はそこまで深くないので大丈夫です。それよりも、二人を止めることが出来ず、すみませんでした」


「ほっほ、よいよい。ロズが言い出したら聞かんのはよく知っておる。じゃからこそ、こうやって村の総力を集めて探しに行こうとしとったんじゃが」


 そして、ディランの方へ目をやり、言葉を続ける。


「こちらの方のお陰で、大事には至らず、本当に感謝しております。して、わしに話があるのでしたな?ここではなんです、わしの家にご案内しましょう。ゼラルド、お前達の話も聞きたいのでな、一旦家に戻って母親に顔を見せてから来なさい」


「はい、わかりました。では、ディランさんもまた後で」


 ゼラルドはそのまま、広場を出て駆けて行く。


 (そう言えば、ゼラルドの親の姿が無かったな。何か事情があるのか?いや、よく見たら、ほとんど女性や年配の男性ばかりか、これは……)


「さぁ、こちらです。付いてきてくだされ。ロザミラもロズを連れて一緒に来なさい」


「はい、ほらっ行くわよ」


「ってて!わかってるって!引っ張んなよ」


 ロズがロザミラに引きずられる様に、連れて来られる。


 ――ディランはバルト村長の家へと案内され、家を見上げる。

 村の中では比較的大きく、客室らしき部屋もあった。そこで少し待つように言われ、椅子に腰をかける。


「ふぅ、やっとゆっくりできるか。んで、ロザミラさんだったか、言いづらかったら無理に言わなくてもいいんだが、この村の状況について教えてもらえるかな?男手が少ないのには事情が?」


「そう、ですね。村の様子を見ていただいたのなら、ご察しの通り、この村には女子供や年配の者しかおりません。私の夫……ロズの父親をはじめ、村の若い男達は三ヶ月前に起きた魔獣の襲撃で命を落としています」


 眉間に皺を寄せ、辛そうな表情で告げるロザミラ。


「三ヶ月前……」


 (三ヶ月前なら、イスフィール辺境に迷宮が出現した時期と重なる)


「ええ、突然、森の動物達が魔獣化して暴れ始めたんです。ハンターギルドに助けを求め、救援が来るまでの間、主人達は必死に村を護りました」


「そう、でしたか。辛い話を、ありがとうございます」


 ガチャリ


 丁度、部屋の扉が開き、村長とゼラルドが入ってくる。


「そして、シェリーの両親も、ゼラルドの父も命を落とし、母親は足を怪我し、まともに歩けぬ身体になってしもうた」


 そう、村長が告げる。


 皆の表情が悲痛なものとなる……


「では、今回のクローベア……熊の魔獣はその時の生き残りと言ったところですか」


「おそらくの。わしらに満足に戦える戦力も無く、本当にその一匹だけかもわからぬ中、村人だけで討伐するのは危険だと判断したんじゃが」


 そう言ってロズをジロリと睨む。


「っ!うぅ、そんな睨むなよ……悪かったよ、二人も危険に巻き込んじまって」


「まぁよい、三人とも生きて戻ったのなら何よりじゃ。して、旅の方?お待たせしてしまい、すみませんな。話をする前に、いくつか問うてもよいですかな?」

 

 村長はそう言って、真剣な顔でこちらを見つめる。


「ああ、もちろんだ。あなた方にとっても俺は怪しい人間だろうしな」


「ほほ、孫娘達を救ってくれた方をそのようには思っておりませんぞ。先程、ゼラルドから少し話を聞きましたが、イスフィール……と言う国からいらしたと?」


「ああ、その通りだ。俺は、ディラン・デッドガードナー……イスフィール王国の騎士団に所属している」


 (わからないことは多い、だからこそ俺の素性は全て明かして情報を照らし合わせるしかない)


 真剣な顔で村長の問いに答える。


「おっさん、名前持ちだったのかよ!」


 ロズが驚きの声をあげるが、村長は静かにこちらの表情をうかがいながら口を開く。


「名前持ち、私たちの間では、それは特別な意味を持ちます。しかし、あなたはその理の外にあるのでしょうな……イスフィール王国、そこから来られたのが真であるならば」


 ディランは首を傾げながら聞き返す。


「それは、どういう」


「"迷い人"の伝承、私たちの間に伝えられているものに、そう呼ばれるものがあります。その迷い人は、イスフィールからやって来たというもので、あなたの境遇と似ておりますな」


「なるほど……ふぅ」

 

 (迷い人、この見慣れない世界に迷い込んだ自分にピッタリだな)


 自分の置かれた状況を察し、ため息を吐いた。

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