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間話 残された者

イスフィールに残されたクリスたちの話です。

 《イスフィール》


 ――イスフィール王国辺境の迷宮にて……


「隊長!」


 クリスがディランのもとへ駆けつける。

 しかし、黒い靄が晴れてもディランの姿は無かった。

 そして、黒い霧を纏っていた迷宮の核もその場から消えていた。


「そんな、一体何が・・・」


 クリスは、ディラン隊の前衛を担う分隊の隊長であり、どんな事態にも冷静に対処できる胆力を備えていた。

 だが、目の前で起きた異変に思わず言葉を失う。


「おい!クリスっ!しっかりしろ!」


 そこへ男の魔導士が近寄り、声をかける。


 彼はディラン隊の魔導士部隊を率いる隊長、イグニス・ウィンザード。


 イグニスの声に、はっと我に返る。


「すまない……」

 (まずは状況の確認と指示を出さないと)

 

「通達を頼む。隊長と核の消失を確認。各分隊に情報を共有し、引き続き損害状況の確認を・・・」


「はっ!」


 指示を受け、兵が走り出す。


 そこへ、神官服の女性が駆けつける。


「神官部隊、隊長。ティナ・メサイヤです。私も見ていましたが、ディラン隊長は・・・」


「わかっている。そのことについても確認する」


 冷静になったクリスは淡々と話を進めていく。


「まず、消えた隊長についての状況は不明。このまま捜索するにも迷宮の消失に巻き込まれる危険を考えると、すぐに撤収すべきと私は判断するが。二人は?」


「俺も、賛成だ」


「わ、わたしも賛成ですが、本当によろしいんですか?」


 ティナはディランの捜索をしないことを心配そうに聞き返す。


 クリスは少し俯きながら返事をする。


「もちろん、隊長のことは心配だが、どこをどう探していいかも分からない状況で、隊を危険に晒すわけにはいかない。核が消えたことで、ここも崩壊する可能性もある。隊長ならそうするでしょう」


「まぁな、あいつもそう言うだろう・・・方針が決まったなら動くぞ。迷宮の崩壊が始まる前に出ないとな」


 迷宮の核を破壊すると、数時間後に迷宮の崩壊が始まり、次元の中に消えていく。

 

 それに巻き込まれたものがどうなるかは不明だが、巻き込まれて戻って来た者もいないのも確かである。

 

 そして、迷宮のあった場所には空虚な大地のみが残る。

 迷宮周囲の侵蝕された地域は長い時間をかけて以前の姿を取り戻していくのである。


「よし、各分隊に再度通達。準備ができ次第撤退を始める」


『「了解」しました』


 その後は、各分隊で撤退の準備を始め、負傷者をまとめて搬送し、入り口へと向かって行った。


 

 ――クリス達攻略部隊が撤収を始め、誰もいなくなった最下層に、いつの間にか、真っ黒なローブにフードを目深に被った者が、佇んでいた。


 小さく口を開き、抑揚のない声で呟く。


「・・・スフィアの状態、確認・・・不明。状況の確認・・・異界の人間と、次元の歪みに、消失。ジェニウス様に・・・報告」


 そう言って、両手を前に突き出し


「・・・開け」


 その言葉に応える様に、黒い靄が広がる。

 黒いローブを着た何者かは、その中へゆっくりと、消えて行った。


 そして、誰もいなくなったその場所には、黒い靄が残り、その中に地面や壁がゆっくりと吸い込まれていった。

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