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48話 シュバリエ選考会②

 ――ディランとソルディが戦っていた頃、ローレンス家の宿舎では


「なんだか、騒々しいですね……」


 カティアに言われた通り、宿舎へと足を運んだゼラルドは、そのただならぬ状況に首を傾げていた。


「おい!ローレンスの嬢さんが攫われたらしいぞ!」

「シュバリエの選考はどうなるんだ!?」

「知るかよ!当人が攫われたら中止なんじゃねぇのか?」

「マジかよ?せっかくここまで来たってのによ」


 シュバリエ立候補者たちは、自分が仕えようとしていた主人が攫われたと言うのに、他人事のように喚きあっていた。


「……誘拐?なら、どうして助けに向かおうとしないんだ?」


 そんな彼らの様子を見て、ゼラルドはさらに首を傾げた。


「すみません、状況を確認したいのですが。カティア様が攫われたというのは……」


 ゼラルドは近くにいた宿舎の使用人に声をかけた。


「は、はい。黒ずくめの集団に連れ去られたと連絡がありました」


「そんな、場所は?何か手掛かりはないんですか?」


「村の西側へと、向かったということまでは……それ以上はわたくしどもには……」


「わかった……ありがとう」


 ゼラルドは広間の方へ向き直り、大きく息を吸った。


「皆さん!聞いてください!カティア様が攫われ、村の西側に向かったらしい!救出のために力を貸してください!」


 広い部屋の中でゼラルドの声が響き渡った。

 一瞬の静寂、その沈黙を破るように、ゼラルドは言葉を続けた。


「皆さんは、カティア様のシュバリエとなるべくここへ集まったのでしょう?その主が危険な目にあっているのなら、助けに向かうべきではないのですか?」


「おいおい、にいちゃんよ!俺たちゃ、シュバリエの選考会に出るためにここにいるんだぜ?主催者がいなくなっちまえばここにいる意味はねぇんだよ」


「そうだぜ、誘拐されたってんなら、ローレンス家の連中と警備隊がなんとかするんじゃないの」


「ああ、俺たちゃ、ことが落ち着くまで待ってりゃいいだろ。下手に首突っ込んで、最悪の事態になったらどうするんだよ」


「……それは」


 (この人たちの言っていることは正しいのかもしれない……でも、シュバリエになるためにここにいる人間が、主の危機に何もせず待っているなんて)


「あんた、名前は?」


 不意に声をかけられ、振り向くと、短剣を腰に差した長髪の男がいた。


「ゼラルドです。あなたは?」


「チャドリックだ。俺はゼラルドの意見に賛成だぜ」


 チャドリックはゼラルドの横に立ち、他の候補者の面々に声をかけた。


「俺たちゃ、こういう時こそ、シュバリエとして動かねぇとダメなんじゃねぇか?最悪の事態?そんなことにビビってるやつはシュバリエになんか到底なれやしねぇよ」


「バカ言え!失敗すりゃ俺たちの首が飛んじまうだぞ!」


「だったら指咥えて見てるんだな!誰か、腕に自信のあるやつはいないのかよ?」

 


 ……その後、チャドリックの呼びかけに答えたのは五人。体格の良い大男ばかりが集まった。


「よし、それじゃ作戦会議だ。まず、必要な情報を集めてから行動に移そう。そのために、村の中で情報を集めるんだ」


「情報?」


「そうだ。いま必要なのは、お嬢様が連れ去られた場所と、敵の数だ。それが分かれば、俺たちでもやりようはある……時間との勝負だ、敵に勘付かれないように動け。半刻後にここへ集合、いいか?」


 チャドリックの言葉に六人が頷く。


  他の候補者たちがそれぞれに宿舎を離れていく中、ゼラルドはその場に残ったまま、しばらく動けずにいた。


(……俺たち七人で、どうにかできるんだろうか)


 この人数で、誘拐されたカティアを助けられるのか、そう考え始めたところで、思考を止めた。


 (ダメだ、今は動かないと)


「おい、考え込んでる暇はねぇぞ」


 背後から声が飛んでくる。


 振り向くと、あの長髪の男……チャドリックが、腕を組んで立っていた。


「……すみません」


「謝ることかよ。さっきの、悪くなかったぜ」


 そう言われても、ゼラルドは曖昧に頷くしかなかった。


「ほら、行くぞ」


 そう言って、宿舎を出ていくチャドリックを追いかける。


「必ず、助けるんだ」


 自分に言い聞かせるように、小さく呟いた。



 ――村の西側へ向かう道は、人の気配が薄かった。

 昼間だというのに、どの家も戸は閉まり、不自然なほど静かだった。


「黒ずくめの連中を見たって話はこの辺りだ」


「見張りがいるかもしれません」


「だろうな」


 チャドリックは、それ以上何も言わず周囲の気配に気を配る。


 二人は倉庫が並ぶ一角で、足を止めた。


「……声がする」


 ゼラルドがそう言った直後、倉庫の影が動いた。


「っ!」


 黒ずくめの二人が、何かを話しながら歩いている。


「……んとに、シュバリエの……るの……うか?」

「……らず……ですが……お嬢様をここで……」


 ゼラルドたちの位置からでは言葉がはっきりと聞き取れなかったが、確かに『お嬢様』と言っていた。

 

「どうやら、この古倉庫が監禁場所で間違いないようだな」


 チャドリックは姿勢を低くしながら、周囲を警戒する。


「……敵の規模は大体把握できた。他の連中と合流して、情報を整理しよう」


「……はい」



 ――ゼラルドたちが宿舎へと戻るのを確認し、さっきの黒ずくめの二人組が姿を見せる。


「ほう、なかなか有望な候補者がいるようですね」


「……まだ、わかりませんよ」


 ソルディが偵察に来たゼラルドたちを褒めたのが面白くないのか、イシュナンテは少し不貞腐れたように言葉を返した。


「ふふ、まぁこれからどう動くのか楽しみにしていましょう……さて、ディラン殿もそろそろ着く頃合いですし、持ち場に戻りましょうか」


「……はい」


 二人は音もなくその場から姿を消した。

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