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2話 見慣れぬ世界②

 ディランとロズがクローベアと対峙し、数分が経過していた。

 その一分、一秒がとても長く感じられる。


 (なんとかするとは言ったが、あいつの硬さを超える力が無い以上、今は守りに徹するしかないが、どうする)


「おい、おっさん、いつまでこうしてりゃいいんだよ?」


 この膠着状態に痺れを切らし、ロズが話しかける。


「それを、今考えてんだよ。お前も、なんか良い案ないか?」


 クローベアの攻撃を躱しながらディランが答える。


「そんなもん思いつかねぇよ!そもそも、目とか口を狙うにも届かねぇし。あいつの爪だって、一撃で俺の剣を折るぐらい硬いってのに」


 ロズが早口に言う。


 (まぁ、そうだよなぁ……ん?爪、か……あの辺の岩場まで誘導出来れば、いけなくはないな)


「少年、お前さんのおかげで良い案が思い付いたぞ!あの岩場の所までこいつを惹きつける。しっかり付いてこいよ」


「はっ?っておい?!」


 そう言って、ディランはクローベアの方へ間合いを詰め、攻撃を受け流す。


「っと、そうそう、こっちだ!」


 クローベアとの間合いを保ちつつ、岩場に近づいていく。


 (よし、もう十分か……)


「少年!合図をしたら、その折れた剣を目か口にブッ刺してくれ!」


「えっ?ブッ刺せって、どう……」


 ロズがディランの言うことにあたふたと思考を巡らせる。

 その間にもディランはクローベアの攻撃を受け流しつつ好機を待つ。


 (まだだ……まだ、欲しいのは右腕の大振り)


 ギンッ、ガン!ギィン!


 何度も攻撃を受けつつ、クローベアの動きを注視する。

 そして、クローベアが右腕を大きく後ろに振り上げた。


 (っ!ここだな!)


 ディランは左腕の盾を構えながら、更にクローベアへと距離を詰める。


 クローベアは、そのまま右腕の爪で獲物を切り裂こうと腕を振り下ろす。


 ガッ


 ディランは爪を盾で受けず、腕の下に潜り込み、クローベアの手首を盾で受けていた。


 そのまま、盾の位置をクローベアの肘の方へ滑らせていき、腕を振り下ろした勢いを殺さずに盾で上方に振り抜く。


 クローベアの右腕がクィッと肘から曲がり、その爪がクローベアの左肩に突き刺さる。


「グゥァ゙ア゙ア゙ッ」


 その痛みから、くぐもった咆哮をあげる。そして、ニ歩、三歩と後ろによろけた。


 (よしっ、この隙は逃がさんぞ!っと)


 クローベアがよろけたのを確認し、すぐに近くの岩場を踏み台に跳び上がる。

 クローベアの頭の高さまで一気に跳躍し、ディランは左腕の盾を振りかぶった。


「ぉ、っらぁあ!!」


 盾の左縁を思い切りクローベアのこめかみに打ち込む。


 ダン!……ピシっ

 その衝撃による鈍い音とともに盾にヒビが入る


 (おっ?!これはヤバいか)


 ディランの盾にも想像以上にダメージが溜まっており、ヒビ割れる音に内心焦る。しかし……

 

 「ガッ……ァ」


 頭に強烈な一撃を受けたクローベアの脳が揺れる。小さな呻き声とともにその巨体が倒れていく。


「っし!今だ!」


 ディランが叫ぶ。


 目の前で起きた攻防に目を取られていたロズが、ディランの声にハッとする。


「ッ!」


 目の前で倒れ込んだクローベアに一瞬たじろぎつつ、折れた剣を握りしめ、駆け出す。


「ぅ、ぉおお!」


 ザッ!


 剣を逆手に振りかぶり、左目に力の限り突き刺す。


「ガァアアア!!」


 あまりの痛みに叫ぶクローベア、ディランは更に追い討ちを掛ける。


「こいつで、どぉ、だあ!」


 左目に突き刺さされた剣の柄を盾で叩きつける。その衝撃で剣は更に奥まで刺さり、脳にまで達した。


 ガッ!


「グゥ……」


 クローベアは小さく唸る様な声を発し、動かなくなった。


「や、やったのか?」


 ロズが恐る恐るクローベアの様子を窺う。


「ああ、終わったようだ」


 そう言いながら、突き刺した剣を引き抜く。


「ほら、お前さんのだろ?って、そういや少年、名前は?」


「あ、ああ。おれは、ロズだ。あんたは?」


 剣を受け取り、血を振り払いながらロズが聞き返す。

 

「俺はディランだ。それで、ロズ、ちょっと聞きたいんだが……ここは、どこだろうか?」


「ん?ここ、はエルデリアって村の近くにある森だけど、おっさん……村でも見かけたことないな」


 (エルデリア……聞いたことのない村だが、人が住んでいる場所なら情報は得られるか。ついでに休みたいしな)


「ああ、事故に巻き込まれてな、気がついたらこの森にいたんだ。それで迷ってな、この洞窟で休もうとしたら、お前さんたちを見つけたのよ」


「こんな所で迷うって?ま、いいか。何にしても、おっさんのおかげで助かったよ。ありがとう」


 そう言って、ロズは頭を下げる。


「気にしなさんな、むしろこんな所で人に会えて助かった。そのエルデリア村まで一緒に行ってもいいか?」


「ああ、いいぜ。村までは少し歩くことになるけど、ちょっと休んでからでもいいか?怪我した仲間のことも気になるし……」


「もちろんだ、とりあえず入り口に戻るか」


 洞窟の入り口へと歩を進める。そこでふっと、クローベアの亡骸を振り返る。


 (何故、この辺りは侵蝕を受けていない?それに、魔力による強化ができかったのも)


「いや、考えるのはもっと情報を得てからだな」


 沸いてくる疑問や不安を払拭する様に前へ向き直る。そして左手の盾のグリップを強く握る……ボロッ


「!?」


 ガラガラパンッガシャン……


 愛用の盾が、見る間に崩れ落ち、金属と石がぶつかり合う音が響く。


「ぉ、ぬわぁアアッ!」


「ぅおい!どうしたおっさん!」


 突然の騒音と悲鳴に前を歩いていたロズが叫ぶ。


「ああ、いや、愛用の盾が壊れちまってな。驚かせてすまん」


 (相当無茶な使い方をしてきたからな、今まで良く頑張ってくれた。ここなら静かだろうし、せめてゆっくり休んでくれ)


 一緒に戦ってきた相棒に目を伏せ、心の中で別れを告げる。

 

「さぁ、行こうか」


 そう言って、もう一度歩き始める。

 未だ見慣れぬ世界へ……

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