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22話 出発の準備

 村長の家で夕食を済ませ、この村での最後の夜空をベッドから眺めつつ考える……

 (イスフィールからこの世界に飛ばされて、訳が分からなかったが……迷い人か、俺と同じ境遇の人間がいたんだとしたら、そいつはどうやってここに来て、どうなったんだろうか?俺は……いったい……)


「……ぐぅ……zZ」


 そのまま睡魔に意識を預け、眠りについていた。



 ――翌朝、陽の光が差し込み、目を覚ます。


「ふぁ〜あ、朝か」


 のそのそと起き上がり、いつものように顔を洗ってから食堂に向かう。


「おお、ディラン殿、おはようございます」

「おはよう、おじ様。パンとスープ、用意出来てますよ」

「おはようございます。ありがとう、早速いただこうかな」

「では、皆揃ったところで、いただきますじゃ」

「「いただきます」」


 すっかりディランの世界の習慣に慣れた二人。自然と食事の際に挨拶が口にでるようになっていた。

 そして、朝食を食べ終わる頃に家の入り口の扉が叩かれる。


 ドンドン……

「村長、朝早くに悪いんだが、警備隊の御一行が到着されたみたいだわ」


 入り口に向かうと、ダナンがあくびをしながら警備隊の到着を知らせに来ていた。


「おお、警備隊の方々が到着なさったか。ダナンも朝早くにすまんの、すぐに向かうとしよう」


「いいってことよ、それじゃ、俺は賊の引き渡しの準備に行ってくるかな。あ、ディランも行くんだってな、準備してるのか?」


「おう、シェリーがバッチリ用意してくれてるから大丈夫だ」


「それなら安心だな、んじゃ、また後でなー」


 そう言いながら、ダナンは賊達を収容している小屋に向かっていった。

 横からひょこっと、シェリーが顔を出し、少し困った表情で口を開く……


「信用してくれるのは嬉しいんですが、とりあえず荷物の最終確認を一緒にお願いしますね」


「わかった。まぁシェリーに任せてれば安心なのは本当だぞ?

「はいはい、ありがとうございます。それじゃ、昨日も話しましたが、この皮袋に入ってるのが当面の生活費です」

 中身を確認すると、銀色の硬貨が入っていて、小さい硬貨が20枚と、それより一回り大きい硬貨が10枚入っていた。

「小硬貨20枚で食糧ニ日分は買えるはずです。それからこっちの大硬貨は宿代ですね。一泊1枚が相場になっていたはずですが、その辺りは安い宿を探してみてください」


「安い宿か、フラムにも聞いてみるかな」


「街のことはフラムさんなら色々知ってるでしょうから、それがいいですね。それから、こっちは着替えです。普段着と寝巻き用ぐらいしか用意してませんが、それ以外は金銭に余裕が出来たら街で買ってみてください。それと、こっちが薬草で、あとは食糧ですね。パンと干した果実、木の実を用意したので大事に食べてくださいね」


「何から何まで本当に助かる。ありがとうな」


「いえ、慣れない環境で大変だと思うけど、頑張ってね、おじ様」


「ああ、頑張るさ……それじゃ、村長もシェリーも、短い間ですが、お世話になり、本当に感謝しています」


「なに、こちらこそ村を守ってくださり感謝しております。迷い人のことも、これからのことも心配はつきぬさでしょうが、ここを家だと思っていつでも帰ってきなされ」


「そうですよ。ロズもゼラルドもおじ様が出て行ったら寂しがるでしょうから、ちゃんと帰ってきてくださいね」


「もちろん。じゃ、行ってくるよ」


 (胸の奥が、暖かい……気を抜いたら泣きそうだな)


 目の奥が熱くなるのを感じ、ディランはそのまま、二人に背を向け広場へと向かって行った。

 

 

 ――広場に到着したら、既にダナンが警備隊の人達に捕らえた賊の引き渡しをしているところだった。


「コイツが最後だ、あとはよろしく頼むよ」


 最後の一人を搬送車に乗せ、ダナンが警備隊の者に声をかける。


「了解した。あなた方も、魔獣被害に賊の襲撃と災難でしたな。被害がほとんど出ていないのが幸いだが」


 この隊の隊長だろうか?他の警備隊の者よりも装飾の多い隊服を着た男がそう告げる。

 

 警備隊の者は全員、青と白を基調にした隊服で統一されていて、隊長だと思われる男の肩には金色の刺繍が施されたマントが着けられていた。


 (堂々としてて、貫禄のある顔つきをしている。年は50歳ぐらいといったところか)

 そんなことを考えていると、こちらに気づいたダナンが手をあげて声をかけてきた。


「お!ディラン!やっと来たか、この人が警備隊の隊長さんだ。挨拶しときな」


「あ、あぁ……初めまして、ディランと言います。今回、賊の移送とともにフラム達と一緒にカレドニアまで同行させていただきたいのだが、構わないだろうか?」


「初めまして、私はこの隊を任されているアルフテッドと申します。フラム嬢達と?ええ、構いませんよ。ただ、賊の引き渡しは済みましたが、バロン達を休ませてやりたいので、出発まで少し待っていただけるだろうか?」


「ええ、もちろんです。しかし、カレドニアからここまでにスウェード村で一泊してから向かわれると聞いていましたが」


「確かに、スウェード村には寄らせていただきましたよ。今回の賊の移送任務では、若い者を多く編成していてね。遠征任務の訓練も兼ねて、村の外で野営をしつつ巡回をして、日の出前に村を出たので、エルデリア村の方々には早朝から迷惑をかけてしまい申し訳ない」


 (なるほど、危険度の少ない任務を若い隊員の訓練に利用しているのか)


「任務の間に訓練とは、熱心ですね」


「若い者たちを遠征任務に連れて行く機会も少ないのでね、こういった移送任務も貴重なんですよ。とは言っても、ここからは本来の任務なので移送に集中させていただきますがね」


 (まぁ、訓練のせいで賊を逃したりしては本末転倒だからな……さて、俺はフラム達を探しに行くか)


「よろしくお願いします。バロン達を休ませてから、いつ頃の出発になるだろうか?」


「そうですな、隊員達も食事や休憩も取らせるので二時間ほどでしょうかね。一緒に来られるのはフラム嬢達も合わせて何人になりますかな?」


「二時間……分かりました。一緒に行くのはフラムの連れも合わせて三人ですかね」


「了解した。ディラン殿は我々の走車に乗られますかな?フラム嬢達の走車でも乗れるでしょうが……」


「あぁ、それは考えてなかったな・・・今からフラム達と話をしてきます。出発の時に返事をしても構わないだろうか?」


「ええ、大丈夫ですよ。それでは、後ほど……」


 アルフテッドはそのまま他の隊員達のもとに向かい、指示をだしていった。


 広場の入り口に向かうと、ちょうどフラムとチュチュリーゼが大きい袋を背中に背負って歩いて来ていた。


「あー、おじさん、ウチらよりも早く来てたのね!」


 元気よくチュチュリーゼが声をかけてくる。


「あぁ、おはよう。俺もちょうど二人を探しに行こうとしてたところでな」


「おはよ、あなたがここにいるってことはもう警備隊の人に挨拶も済んだのかしら?隊長は誰だった?」


 フラムが挨拶を返してくる。


「隊長さんはアルフテッドって人だったな。あと二時間ほどで出発するって言ってたぞ」


「アルフか……それなら別に挨拶しなくてもいいかしらね」


「いやいや、そう言う訳にはいかないでしょ!もう、ウチから挨拶しとくから、フラムはおじさんをディアのとこに連れてってあげてよ」


 チュチュリーゼがやれやれと言った感じでフラムに声をかけたが、聞き覚えのない名前にディランが聞き返す。


「ディアっていうのは?」


「ディアはあたし達のバロンの名前よ。とりあえず、ディランもあたし達と一緒の走車に乗ってもらうつもりなんどけど、それでいい?」


 (バロンに名前を付けてたのか……)


「乗せてもらえるなら助かるが、さっきもアルフテッドさんとその話をしててな、出発の時にどの走車に乗せてもらうか伝えないと」


「それなら、ウチらと一緒の走車で行くってことでいいわね。隊長さんに挨拶するついでに伝えといてあげる。じゃ、行ってくるねー」


 そのままチュチュリーゼは広場の奥へ走っていった。


「まったく、ほらっ、アナタも行くわよ。ディアには村の入り口で待っててもらってるから」


「そうなのか、それじゃ宜しく頼む」


 フラムとディランも村の入り口へと歩き出した。

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