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21話 カレドニアへ向けて

 レイナに杖を渡し、フラムと一緒に広場に戻って来たディラン。

 広場の柵に腰掛けながらフラムと話す。


「そう言えば、警備隊が来たら賊の引き渡しと一緒にあたし達とカレドニアに行くのよね?」


「ん?あぁ、そのつもりでいるんだが、やっぱり迷惑か?」


「いや、そうじゃなくて、迎えが来てからの動きについて話しておこうと思ってね」


「そういうことか、そりゃ助かる」

 

「それじゃ、まず警備隊だけど、あと二日もすればこの村に着くと思うわ。それからカレドニアに向かう途中にスウェード村って所があるの。そこで一泊して、翌日の日没までにはカレドニアに着くはずよ」


「それ、警備隊のやつは行ったり来たりの移動だけで大変そうだな?」


「仕方ないわよ、それが仕事だし。あたし達だけで賊の移送なんてできないでしょ?」


 賊達だけでも十人はいる……ましてや、彼らを移送するための荷台も走車も無いのだ。


「確かに、移送する手段が無い……って、そう言えば、走車ってたまに聞くが、どんなもんなんだ?」


「あ〜、そうねぇ、簡単に言えば物資や人を運ぶための荷車なんだけど、それをバロン達に引いてもらって移動するの」


「バロンってのは?」


「それは、あ、ほら、畑で(すき)を轢かせてるでしょ。あれがバロンよ」


 広場から見える畑の中に目をやる……


 (あれは……角の生えた馬、だよな?しかも、俺の知ってる馬より一回りもでかいぞ)


「大きいな、俺の世界でも似たような動物はいるが、それよりもでかい……暴れたりしないのか?」


「ん〜、よっぽど気性の荒い子ならわからないけど、そんな話は滅多に聞かないわよ?むしろ、危険が迫ったらあたしたちのことを守ってくれるぐらいだし」


「へぇ、凄い忠誠心……いや、そう言うんじゃないのか?」


「ええ、バロンは賢いの。知能は私たちと変わらないと思った方がいいわよ」


「なるほどなぁ、嫌われないようにしないとな」


「そうしてちょうだい。それじゃ、迎えが来るまでに荷物とか整理しておきなさいよ?」


「おう、って特にまとめる荷物も無いんだが、必要な物ってあるのか?」


「それは、硬貨とか着替え、それから装備品と食糧なんかもあれば十分じゃないかしら」


 (服も硬貨も無いんだが、シェリーに頼んで、パンだけでもちょっと貰おうか…)


「ん〜、了解。色々と教えてくれてありがとうな」


「別に。これぐらい気にしないでちょうだい……それじゃ、帰るわ」


「おう、またなー」


 そう言って、手を振り広場から家に戻って行く。


 その日の晩、村長宅で夕食中にシェリーと村長にカレドニアに行く事を伝えた。


「なんと、もう出て行かれてしまうのか……」


「おじ様……もう少し、この村でゆっくりしてからでもいいんじゃないですか?」


「これ以上居候させてもらうわけにもいかんし、自分の境遇のことも調べないと。賊の移送のついでにカレドニアに行けるなら良い機会だしな」


「確かに、迷い人について調べるならカレドニアに行くのが確実でしょうな」


「ええ、村長、シェリー、短い間でしたがお世話になりました。迎えが来るまでに荷物をまとめて……ああ、借りてる服もちゃんと返しますんで」


「ふふ、別に良いですよ。お貸しした服も家で着れる人がいませんから。それと、荷物の準備も私がしておくので、大丈夫ですよ」


「いや、流石にそう言うわけには……俺にも、『大丈夫です』」


「おじ様じゃ、わからないことの方が多いでしょうから、私の方で必要な物はまとめておきます」


「お、おう……助かるよ」


 この世界のことに疎い自分よりもシェリーに任せた方が無難であると考え、お言葉に甘えさせていただく。


「ほっほ、まぁ、身支度などはシェリーに任せておけば

 心配はなかろうて、今日のところはゆっくり休まれなされ」


「二人とも、何から何まで、本当にありがとうございます」

 深々と頭を下げると、二人は優しく微笑んでくれていた。

 

 

 ――翌日はゼラルドやロズと訓練で模擬戦を行った。

 

 モヴーダと戦った時の身体強化の魔法をどれぐらい実戦で使えるのか、その調整も兼ねて色々と試してみた。

 

 結果としては、前の世界にいた時の様な全身の強化は出来ず、脚に魔力を集中してもマナが足りずに魔法が発動すらしなかった。

 

 集中する魔力を少なくして、強化する部位を局所的に限定すれば発動するかもしれないと、踏み込む足の指先にのみ魔力を練ってみると……三メートル程の距離なら瞬時に加速して移動出来た。

 

 モヴーダ戦の時みたいに、十メートル程の距離を詰めるには足の裏と膝にも強化が必要だが、再現は出来た。

 

 しかし、脚への負担が大きく、何度も発動させると身体の方が先に悲鳴をあげそうだった。


 (魔法を使うにはマナが少なすぎるのか?だが、まったく使えないわけじゃない……工夫次第で出来ることも色々あるかもしれんか)


「はあ、はあ……おっさん、その瞬間移動みたいなやつはなんなんだよ!攻撃も当てらんねぇし、避けらんねぇし、ずるいって!」


 ロズが息を切らしながら文句を垂れていた。


「確かに、ただでさえ強いのに、そんな動きをされたら手も足も出ませんよ。いったいどうやってるんですか?」


 さすがにゼラルドもお手上げの様子だった。


「これはなぁ、なんて説明すりゃいいんだろうな?こう、身体の中にある気を足に集中させて、ボン!って感じで身体の動きに合わせてやるんだよ。めちゃくちゃ訓練が必要だぞ!」


 と、魔法を知らない二人にそれらしい説明をして誤魔化してみたが、この世界の人間にとっても異質な力に見えるのだろう。

(必要以上に使わない方がいいか)


「ボン!ってなんだよ、わっかんねぇ」


「はははっ、まぁそう簡単にゃ出来ないってこった。二人とも今日はありがとうな、俺の訓練に付き合ってもらって、おかげで大分感覚が掴めた」


「お役に立てたなら良かったです。明日からの訓練はどうしますか?」


「明日からの訓練か、そう言えば皆には言ってなかったか。俺も、フラム達と一緒に警備隊の走車でカレドニアに行こうと思ってるんだ」


「げっ、おっさん、村から出てっちまうのか?」

「確かに、伝承の情報を集めるなら、警備隊の方とカレドニアに行くのはちょうど良いですが……」


「まぁ、いつまでも村長の家にお世話になるわけにもいかんしな、村長には昨日伝えたとこだ。ちょっくら旅に出てくるさ」


「それじゃ、今度会う時には今よりもっと強くなっておきますよ」

「あ、俺だって剣の腕、磨きまくってやるからな!」


「そりゃあ、楽しみだな。さて……」

 他の模擬戦や訓練をしてる村人達の方に目を向ける


「皆、そろそろ今日の訓練は終了だ!お疲れさん!」

 ディランの声に、皆が手を止めて振り返る。

 

「「おっす!お疲れ様です!」」

 そのまま解散し、今日の訓練は終了した。


「さぁ、お前達も帰るんだぞー」


「はい、それじゃ、お疲れ様でした」

「おー、おっさんもお疲れ!」


「おう、お疲れさん」


 ――村長の家に帰り、明日の出発に向けて準備をしてくれているシェリーのもとに向かう。

 

 コンコン……


「はーい、あら、おじ様?どうしたんですか?」


「おう、急にすまん。明日の準備で手伝えることはないかと思ってな」


「そんなに気にしなくても大丈夫ですよ。着替えと、当面の宿代と食糧費、あとは森で採れる薬草も少し用意しました。擦り潰して傷口に塗るのが一般的ですが、薬湯として飲んでも効果はありますよ」


「宿代と食糧費なんて勿体無い、街に着いたらフラムにギルドまで連れてってもらって日銭ぐらい稼ぐって」


「ダメです。ギルドの依頼で日銭を稼ぐにしても、宿でしっかり休んで、食事を取って万全な状態で臨んでください」


 ピシャリとシェリーに言われ、ぐぅの音も出なくなってしまう。


「まったく、そういうところはロズみたいですね」

「な、アイツほど考え無しではないだろう」

「確かに、ロズなら何も考えてなさそうですね」

「だろ?俺はちゃんと街に着いてからの生活も考えてるんだ」

「それはそれとして、私たちからの餞別として生活費は貰ってください」

「そう言われると……いただくしかないな」


「それから、街に着くまでの食糧は明日の朝用意するので、それで準備完了です」


「おー、なんと頼もしい。ほんとにありがとうな」


「だから、気にしないでくださいって……さあ、そんなことより晩御飯です。行きますよー」


 そう言って部屋を出るシェリーを追いかけて、食堂に向かって行く。

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