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14話 襲撃に備えて

 賊の襲撃に備えて村長の家に向かったディラン。

 家の中に入ると、すでに村長とシェリーも準備を進めていた。


「村長!」


「ディラン殿か、賊が来るやもしれんそうじゃな。わしらも今から広場の方へ向かうところじゃ。」

 

「こんな時に村を襲いにくるなんて」


 村長の後ろからシェリーが不安そうに歩いてくる。

 洞窟で会った時と同じように、弓矢と革製の胸当てなどの装備を身に着けていた。


「どこかで、この村が魔獣の襲撃にあった噂を聞いたか……なんにしても、昼間の偵察でこの村の戦力が少ないことは、あちらさんも分かってるだろう。とにかく、二人は広場の中に避難しててくれ。賊の規模はわからんが、好きにさせるつもりはないさ」


「おじ様……」

「一度ならず二度までも、助けていただくことになりますとは、本当に、申し訳ない……」


「右も左もわからない俺の面倒を見てくれてるんだ。その礼になるかはわからんが、村長も気にしないでくれ。まずは、ダナン達と合流して作戦を確認しよう」


 村長とシェリーは、不安の残る表情でゆっくりと頷く。


 ――村長と一緒に広場に着いたところで、ダナンと合流する。


「ダナン、状況はどうだ?」


「ああ、とりあえず、村の入口に防護柵を設置したところだ。後は、この広場の周りにも柵を作って、中から迎撃できるように備える」


「そうか、それじゃあ……」


 自警団も含め、大まかな作戦の内容を確認していく。

 村の入り口は一箇所で、村の防壁には石や木材を中心に作られている。

 外からの侵入経路としては、その入り口からか、梯子などを用いて防壁を超えて入るしか方法はない。

 中に侵入して来た賊に対しては、巡回している自警団で連携しながら対処しつつ、広場を中心に弓や投石等で遠距離からの支援攻撃を行って撃退する。


「この作戦でどうだ?村長」

 ダナンが村長に確認する。

 

「うむ、問題なかろう」

 村長も頷きながら、作戦の内容に同意する。


 しかし、ディランは……

「いや、待ってくれ。広場の守りが薄い気がする、巡回する班と広場の守りを担当する班とに分けられるか?それから木を組んで、こう……三角屋根の様な形にして、上から大きな布を何枚か掛けて矢避けの代わりに使える様にしたい。それと、火矢を使われた時のために水桶を幾つか用意できると安心だが」


「なるほど、確かに、広場まで抜けられたらまずいな。布は大きい物をいくつか集めてくるとして……水は、今から準備すれば日が沈むまでには何とか出来るだろう。よし、すぐに動こう」

 ダナンは深く頷き、すぐに自警団に指示を出していく。



 ――ちょうど日が傾き始めた頃

 

 (さて、日も沈んできたが……巡回班と道順の確認や交代の段取りを詰めないとな)


 自警団の人数は二十人ほど、そのうち戦闘経験があるものはダナンを含めて六人……その六人をそれぞれ班長として三人一組に編成していく。

 人数的に二人が余るため、その二人とディランとで編成することになったが、連携の取りやすさも考慮してロズとゼラルドと組むことになった。


「おっさん、頼りにしてくれよな!」

「ロズ、油断しちゃダメだ。相手は人間、どんな手を使ってくるかも分からないんだから」


「ゼラルドの言う通りだ。魔獣や森の獣とは違うからな。相手の動きや思考を読んで動くように」


 それを聞いたロズは、凄く嫌そうな顔をしながら口を開く。


「動きや思考なんて俺に読めるわけねぇって。まぁ、でも、気をつけるよ」


「確かに、ロズには頭を使って戦うのは合ってないかもしれんな」


「おっさーん、それはそれで酷くないか?!」


「はははっ」

「ふふっ」


「おいおい、お前ら、緊張感が足りないんじゃねぇか?」


 三人のやりとりを見て、呆れ気味に声をかけてくるダナン。


「まぁ、ガチガチに緊張してるよりは良いか。それで、巡回の仕方なんだが、三組ずつ巡回に出て、他の三組は後方で待機。残りの一組は休憩って感じでどうだ?」


「あぁ、それでいいと思う。巡回を始めるのは日が沈んでからにしよう。それまでは各自、装備の点検や連携の確認を行ってくれ」


「ふっ……流石に自称騎士様なだけあって、指示が的確だな」


「おいおい、ここに来る前まで騎士として小隊長まで勤めてたんだぜ?まぁ、いくら言ったところで自称なのはかわらんか」


「ま、冗談はこのぐらいで、あんたの実力は信用してる。力を貸してくれてありがとよ」


「そういうのは、無事にこの状況を切り抜けてからだ。それに、彼女も一緒に戦ってくれるなら心強いしな」


 ディランの見つめる先には、夕陽の光を浴びて淡く燃える様な髪を靡かせながらこちらに向かうフラムの姿があった。


「いったいどうしたの?ちょっと村から離れてる間に随分物々しい雰囲気になってるじゃない」


「ああ、どうやら賊に目をつけられたみたいでな、襲撃に備えて準備を進めてるところだ」


「賊?……あたしの村を襲おうだなんて良い度胸じゃない。返り討ちにしてあげるわ」


 メラメラと瞳に闘志を滾らせるフラムを宥めつつ、作戦についての説明をしていく。


「……と、まあこんな感じで自警団を中心に巡回しながら、広場に集まった皆を守りながら立ち回る事になる」


「わかったわ。それならあたしは一人で目についた奴から叩き斬っていくわね」


 (なんとも勇ましい……いや、頼りになるねぇ)


「まぁ、何にしても夕食を食べて来るといい。広場でロザミラさん達が食事を用意してくれてるみたいだからな」


 ロザミラの名前に何とも言えない表情で少し目を伏せたが

「……ええ、行ってくるわ」


 柔らかな笑顔を浮かべて歩いて行った。


「おっさん、俺、フラムさんのあんな笑顔、初めて見たぞ」


 ロズがいつもと少し様子の違うフラムに目を瞬かせながら聞いてくる。


「そうなのか?って言うか、フラムさんってお前にしては余所余所しい呼び方だな。叔母さんなんだろ?」


「うっ、まぁ、そうなんだけどよ。前に叔母さんって呼んだらすげー怒ってさ『お姉さんか、フラムさんと呼びなさい!』って言われたから、気をつけてるんだよ」


「ああ、そういうの気にする方なんだな……」


「はは!まぁ、フラムが一緒に戦ってくれるんなら、安心だろ」


「そうだな……そうだ、ゼラルド。レイナさんの杖なんだが、もう少し待っててくれ。材料は集まったから、賊どもを追っ払ったらすぐ作る」


「いえ、まさかこんな事になるとは思いませんでしたから。それに、母のためにそこまで気を遣っていただかなくても……」


「言ったろ?俺が何かしたいから作るんだって。どんなのができるか楽しみにしてな」


 ディランはそう言って、ニカッと笑う。


「おっさん、杖とか作れるのか?」


「ん?まぁ、昔から木を削って何か作ったりするのは好きだったからな。杖ぐらいなら作れるさ」


「へぇ、意外と器用なんだな」

「おい、ダナン、意外とは失礼だな」

「はは、悪い悪い。そのがたいで手先が器用だってんだから、ついな」

「いやいや、そんな事ないだろ?って、こんな事やってる場合じゃないな……俺たちも日が暮れるまでに腹拵えさせてもらおう」

「そうだな、腹が減ってちゃ力も出ねぇからな」

「しっかり食べて、襲撃に備えましょう」

「おう、飯だめしー!」


 (賊を迎え撃つ準備は整った……相手の規模や力量が分からないという不安は残るが、何としても守ってみせる)

 ディランも、静かに闘志を湧き上がらせていた。

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