【1話/若頭】
「テストステロン,まぁアンドロゲンとも呼ばれて居て,一般的に一番知られている名前は
男性ホルモンと呼ばれる数値の事だがね,
一般的な成人男性の平均値は総テストステロンなら[2.9~10.7 ng/ml]遊離テストステロンであれば[8.5~27.9 pg/mL]と言う研究結果がある大学から調べられていてだね」
「我々の病院が行った精密検査が示した君の
テストステロン値は,その平均値を遥かに
上回って居るんだ」
「は,はぁちなみに幾つほど高いんで?」
「,,,13倍」
「13倍⁉︎」
「違う,我々の病院の持ちうる最高精密度の機械
すらそれを測定しきれなかった,暫定13倍と
なって居るが13倍以上が計り知れないんだ」
「なるほど」
「しかもアンタの筋肉や骨だって異質だ,昔の
君のカルテを勝手ながら見させてもらったよ,
出生に至るまでの全ての数値をね,驚いたよ」
「ミオスタチンの欠乏,君の肉体は類い稀なる
質がある,常人と比較したならその筋肉密度に
して約70倍強ときたもんだ」
「はぁ」
「食事量,筋肉に力を入れた際に,骨が折れて
しまうんじゃないか,内蔵を圧迫して破裂させて
しまうんじゃないか,膨張した筋肉に皮膚が
裂けてしまうんじゃないか,血管が破裂して
しまうんじゃ無いか,などとも思ったが,
それら様々な問題が君にとってはまるで
意に返して無い」
「食事量は常人並みっすからね」
「最初はサプリの摂取や栄養剤の投与を考えた,
だが結果として分かった事はアジア人両親の
遥か遠い祖先に共通したポリネシアの血の
隔世遺伝」
「限りなく省エネルギーな肉体の運動効率,故に して大量の食物を必要としない極めて異例的な
ものだ」
「発汗や基礎代謝,脂肪燃焼効率において
極めて低い数値を表示した,まさに超人的に
痩せない体質ってわけだ,一般人がもしこんな
体質に生まれてきたなら,成人する頃には
1000kgを超える巨体に育っただろうな」
「1トンって」
「冗談と捉えるのは好きにしなさい,それよりだ
骨だよ骨」
「そう言えば自身の骨について聞いたことが
ないな」
「本来ならば骨硬化症ってのは骨が脆くなって
しまうものなんだ,だがしかし君の場合は
骨すら異質なんだ」
「確か手術する必要性が必要の無い良性の
軟化じゃない,腫瘍じゃない,骨密度の以上な
増加性質にある,人間が骨折してそれを修復
する際にその部位が固くなったり,ムエタイの
選手が脛骨にパイプを押し付けてこうパン生地を伸ばすようにコロコロと強く押し付けてやる
足を強くするような感じ」
「君の骨は常に再生と硬化を繰り返す骨密度増加症と呼べるようなものなんだ」
「骨が分厚いから強いってより圧縮されて
硬い」
「そして柔軟な骨,軟骨だよ,その節の部分は
バレリーナやテコンドー選手のように
柔軟にして体幹に優れた関節だ」
「(俺病気を調べにきたんだが,なんなんだマジ,
俺親切すぎるだろ)」
「そして皮膚,エーラスダンロス症に酷似した
柔軟性と聞いたが,精密検査をして皆が驚愕
したよ,強皮症にも酷似している,だがしかし
全く肉体に悪影響を及ぼしていない,それが
何を表しているか分かるかい?」
「ん〜わからない」
「まるで君の皮膚はゴムのように柔軟だが,
銃弾更には真剣に至るまで一切合切の攻撃を
弾いちまうんだ,鋼の混じったゴムって言うべき
もんだな」
「それよりそれより先生,それより内蔵を
病気はないんですか?」
「無いよ,全く持って正常に稼働して居る,カルテを見てくれたなら分かると思うが血糖値,ALP,LDH,ALB,テストステロン,WBC,RBC,
以下全てに至るまで全く問題ない,むしろ
健康過ぎてしまうくらいに安定してる」
「なら良かったです,帰りますね」
「あ,ちょっ」
バタン,ドアを閉めて帰って行った。
「東アジア人,,,いや日本人夫婦から生まれた
宍道隆匡殿,あなたほどの人間を私は見たことが
ない」
「神経に至るまで常人の域を超えて居る,
血管が浮き彫りになるあの身体,あまりにも
分厚くそして穴が広く高い血液循環効率
を有して居る,だがそれ以上に優れた五感を
与えて居る,12に至る視力,本来聞き取れない
トーンを聞き取り,また盲目の人のように優れて
反響による座標特定が可能な20000hzを超えた可聴範囲」
「触覚は骨伝導による完璧な空間把握,本来なら
味わえないものを味として感じ取り鉄すら溶かす強力な胃酸に分厚い胃を持つ味覚,様々な
物を嗅ぎ分け取れる嗅覚,五感すら人間の域を
出て居る,しかもあの思考回路,常人の
情報処理速度の数倍,まるで戦闘専用のサイボーグですよ」
「しかも一番驚いたのは,がん細胞化しない
サイクル,一体全体あれはなんなんだ?」
,,,病院を後に帰路に着いていたところで
あった。
「あ,親父に飲み物かなんか買って行ったあげよ」
コンビニ来店して行った。
「ターゲットを捕捉した」
「店内にて今から暗殺を実施する」
こうして二人の暗殺者がコンビニ入る。
「らっしゃいませ〜」
ぐしゃぐしゃぐしゃぐしゃ,一人の暗殺者が軽々
と店員の身体をペシャンコにした。
「ん?なんや」
次の瞬間,もう一人の暗殺者がヤリに最短ルートで加速するのだが。
「ん?」
漫画を手にし,よそ見しながら手を抜いて皮一枚で避けたではないか。
「やるではないか,容姿だけしか知らなかったが,
貴様名前は」
「まずお前達が名乗れよ」
「お前達?」
「(な⁉︎完全に気配を消していたはず,
マジシャンの使う心理学的視線誘導術も
聞いてない⁉︎)」
「冷や汗も表情筋の変化もない,心電図を
使って感情を読み取ろうが,変わらないだろう,
だけど分かるぜ,お前が動揺していること」
「一体何を言って居るんだか」
次の瞬間,バックヤードに置かれていた
カッターナイフを手に忍び寄り,ぶっ刺すが。
「気づかないと思った?」
なんと完全な不意打ち,失敗し避けられる。
「オラァ!ブラフだよ!」
「ふ〜ん」
「(顔面に直撃した,よっし,は?)」
殴って理解してしまったんだ,力士を度々
戦車にクッションを巻いたようだとか
大岩の上からゴムを履かせたようだとか,
やつに拳が触れた瞬間脳内がイメージした
ものはあまりにも計り知れない巨大な
鋼鉄を更にダイヤモンドコーティングをした
不動明王像であった。
「ちぃ,もう小手調べは終わりだ」
「へぇ」
次の瞬間,更に二人は加速し出す。
「見えるかな」
「俺ら二人が」
店内を縦横無尽に,まるで瞬間移動に
等しい残像すら認識不可能な速度で。
「確かに早いな」
「(これなら行ける,翻弄している)」
だがしかし,これがこの二人の暗殺者としての,
暗殺者人生に終わりを告げる。
「はぁ,未来ある若人だし軽く終わらせてやる」
次の瞬間,本気の二人が見えない速さで
攻撃する。
「(あれどこに⁉︎)」
「ここだよ」
「何⁉︎」
バゴーン,デコピンいやもはや爪先に撫でられる程度の超がつくほどの手加減を彼ら二人が喰らう。
あの速さを一瞥すらしない体術?に
どんな相手すら即座に看破する観察力。
ドゴーンバゴーンバチコーンっと,
壁を破壊しながら衝撃で後ろに吹き飛ぶ,
全く勢いは止まらず12枚の壁を破壊し終わる
頃に,肉体はボロッボロになっていた。
,,,彼ら二人が弱かったからか?いいや違う,
彼ら二人もそこそこに洗練されて居る
暗殺者だ。
左に寝転ぶ黒服の彼は,難波牟利,非常に
若々しく見えるが120歳と大ベテランの
暗殺者だ,肉体年齢は21歳の頃から変化
しなくなった,特殊に変異した細胞を持つ。
冷静沈着な戦闘スタイル,100年間の様々な経験
を生かした戦略はその高い戦闘知能指数が
イカされて普段なら即座に弱点を見抜く洞察力
がある。
そして何よりあらゆるものを武器化する応用力
である,全てを武器化すると言うのは本当に
凄いことだ,ある意味あらゆる武器より使用難易度が高い豆腐の角で人間を殺したり,ティッシュペーパー1枚だけで家を破壊したり。
髪の毛1枚をヒラリとするだけで
弾丸の軌道をずらして相手に推進力を
失わないままに跳弾させるなどなど,
彼は卓越した武器術を持って居る,そして
今回戦闘で見せた瞬間移動並みの速さは
軽く音速を超えていた。
え?風圧は大丈夫かだって?圧力の不連続的変化,それが衝撃波,暗殺者だよ?そんなの制御可能な
体術は基礎中の基礎だよ。
そして何より衰えない筋肉がある,マッハを
超えて足を下に振ることで二段ジャンプなど
現実離れした芸当が出来る。
そして右に倒れて血反吐を吐いて居るのは
真田興史。
やつとは違い自由奔放なスタイルの戦闘をする
経験は圧倒的に少ないが工夫と言う資質や
潜在能力,言わば才能やセンスでするバトルが
あり得ないほど強い。
真正面からの殴り合いで自身に敵対する
あらゆる存在を嬲り殺しにしてきたくらい
ステゴロが得意なんだが,難波同様に
暗殺者らしく全てを武器化出来る。
他者の眼が認知可能なフレームより早く
見えないではなくもはや認識不可能なレベル
に早い瞬間移動並みの速さは難波同様のもの。
難波また鍛錬を積んだ暗殺者に共通して居るが,
殺気によるノルアドレナリンの過剰分泌により
自身の肉体を強化しながら相手の筋肉を
畏怖で硬直させてデバフ出来る,そして
殺気を汲み取る力を持ち,事前に1年間以内に
死ぬかが分かる。
いつ死ぬかは,死相の黒の濃さで変わる,その人が病で死ぬか,他殺か自殺かも匂いで分かる,
もはや殺すかも分かる,変装した人間とか見抜くにはこれが必須の技術であるが格闘家は
殺気がなく見抜きづらい。
また過去に真田は列車内の暗殺をする際,列車を
かかと落としの一撃で破壊したり,スナイパーの狙撃を防ぎ,天体望遠鏡の技術を応用した高性能のスナイパーですら点に見えるほどの距離を一瞬で移動して首を逆さまにしたり。
52階建てのビルで戦闘した際は一撃で登り
階段を全壊してしかもその衝撃波で地面に
クレーターを作り大量にコンクリートを
抉り取ったり,色々と桁外れの戦いをしてきた。
そんな若手の期待の新星と大いなる信用の
大ベテランの暗殺者コンビを潰したのだ。
「ガハ!はぁっはぁっはぁっ先輩,まずい死ぬ」
「はぁっ俺もや,っく奥義を使うか」
すると難波はオノマトペの様な心地の良い
何かを呟く,早口で呟く,そして。
「はぁ?,,,グガァァァ」
「いやいびきうるさ」
なんと,宍道隆匡が立ち上がる。
「グガァァァ」
「白目剥いて,は?」
「夢遊病?または解離性人格障害の様な
もので別人格が発露したか」
「グガァァァ」
「いや寝てるから夢遊病だわ」
「そっすよね」
「睡眠導入とレム睡眠の意識に限定した覚醒を
原理とした金縛りだぜ?詰まるところはなんだ,
身体の一切の自由と制御を奪われてなお,反射神経だけで身体を動かしてるってのか?」
「んな馬鹿な」
だがその馬鹿げた完全に非現実的なそれは
事実なのだ,衝動性を無に介した無感情,不可抗力の我儘な肉体。
次の瞬間,空に裏拳を放つと風圧で店が吹き飛ぶ。
「んな⁉︎」
「まるで爆発⁉︎まずい,催眠術を解かねば」
次はアラームの様な音を出した。
「んあ?」
「すいませんしたぁ」
「悪かったなぁ」
こうして二人の暗殺者に勝利した,ちなみにだが
修理費用はこいつらの依頼者のある極道組織の
親父から毟り取ったとさ。
「若頭?」
「あぁ,仙道会の天竜の親父に選ばれたんだよ」
「あの俺らは何したら良いですか」
「お前ら舎弟だな,若手に俺らの家族になれや,
したら許してやる」
チラッと顔を見合わせる。
「はい!よろしくお願いします!」
こうして暗殺者二人が仲間に入った。