表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ふたりで灯す、やさしさのかたち  作者: 流浪の旅人
第1章 それぞれの秘密、それぞれの夜 — 推しが、姉でした。
9/114

9.私の番 ― 姉ではなく、推しとして寄り添う

数日後のある夜。

尚人のスマホに、通知が届いた。


RINA_cos:新しい投稿をアップしました。


何気なく開いたその投稿に、尚人の心は、静かに震えた。


「今日は、大切な人を想って撮影した写真です。

少しでも、その人の背中を押せたらいいなって思って。

“誰かの頑張りは、見てくれてる誰かの希望になる”――

そう、教えてくれた人がいます。

だから今日は、私も、精一杯のエールを贈ります。」


添えられていたのは、どこか懐かしい風景を背景にした、あるコスプレ写真。

尚人の好きなアニメのキャラクター――その中でも、彼が一番好きだと語ったヒロインの衣装。


(これ……俺が前に“好き”って言ったキャラ…)


コメントしたのは、だいぶ前のことだった。

それをちゃんと覚えていてくれたこと。

そして、こうして“自分のために”としか思えない形で届けてくれたことに――

尚人の胸は、熱くなった。


一方、ことりは、投稿の反応を静かに見守っていた。

いいねが少しずつ増え、コメントが並び始める中。

たったひとつの通知を、何よりも待っていた。


@nao_cam_photo:

「…こんな形で、背中を押してもらえるなんて思ってなかった。

“好き”って言ってよかった。

…ありがとう。俺のヒロインは、やっぱり、あなたでした。」


その一文に、ことりはそっと、胸に手を当てた。

そのあたりが、じんとあたたかくなるのを感じた。


(ねぇ、尚人。

わたし、ずっと“お姉ちゃん”でいたかったけど、

でも、それだけじゃ足りなくなったみたい)


声に出せない気持ちを、彼女は画面越しに届ける。

ことりではなく、“RINA_cos”として。

でもそこには、“姉としての愛情”が確かに重なっていた。


その夜、尚人はスマホを手に、ひとつのメッセージを送った。


「ことり姉ちゃん。

今度さ、ちょっと話したいことがあるんだけど…

どこかで、ちゃんと時間とって会えないかな?」


ことりは、それを見てからしばらく、返信をせずにいた。


画面の文字を見つめながら、心の中で、そっとつぶやく。


(やっと……来てくれた)


そして、画面にこう打ち込んだ。


「うん、いいよ。

じゃあ、今度は――“ちゃんと会おうね”。

お互い、隠さずに。」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ