37.気づかれない交差点 ― すれ違いのやさしさ
夜。
尚人は、ベッドに寝転びながら、
ふわふわと余韻の残る気持ちでスマホを見つめていた。
さっき届いたあのコメント――
何度も読み返しては、胸がじんわりと温かくなる。
そんなとき、不意に通知がひとつ混じる。
「RINA_cos:新しい投稿をしました」
(……姉ちゃん?)
尚人は、反射的に画面をタップした。
そこに映っていたのは――
淡い光に包まれたような、優しい表情のキャラ。
その中に、姉の面影が確かにあった。
添えられたキャプション。
「今日の写真は、“そっと寄り添いたい”って気持ちで選びました。
笑ってるだけじゃなくて、その奥にある“静かな強さ”を、
誰かが受け取ってくれたら嬉しいな。」
尚人の胸に、すっと温かい風が吹き抜けた。
(……俺が今日投稿したのも、
“やさしさを渡したくて”だったんだよな)
話し合ったわけでもない。
でも、まるで約束していたかのように――
姉弟そろって、“同じ想い”を込めた写真を、同じ日に投稿していた。
尚人は、スマホを見つめたまま、小さく笑った。
「姉ちゃん、ほんと…天然だけど、
やっぱり、すごいんだよな。
“気持ち”を伝える力が、ちゃんとある」
コメントを書こうか、指が一瞬止まった。
でも――やめておいた。
今はまだ、“RINA_cos”のままでいてほしい。
姉としてじゃなく、憧れの表現者として。
尚人は、画面を見つめながら、
心の中でそっと呟いた。
「……俺も、今日、そっち側にいたんだよ」
ノートのページをそっとめくって、
今日の言葉を書き留める。
【感じたこと】
・姉ちゃんの投稿、まるで背中をそっと押されたみたいだった
・何も言わなくても、“気持ち”がすれ違う場所で、ちゃんと交差することがある
「まだ伝えなくていい。
でも、いつか、“隣にいるよ”って言えるといいな」




