表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ふたりで灯す、やさしさのかたち  作者: 流浪の旅人
第1章 それぞれの秘密、それぞれの夜 — 推しが、姉でした。
4/114

4.すれ違いのSNS ― 見えそうで、見えない君へ

【弟・尚人の夜】


「…あ、ストーリー上がってる」


布団の中でスマホを見つめながら、尚人はまた“彼女”のストーリーをタップする。


「今日は初めての衣装だったけど、みんな褒めてくれてうれしい…♡」

「次は何着ようかな?オススメのキャラあったら教えてください♪」


柔らかい絵文字と、ちょっとお茶目な口調。

その“文体”が、どこか姉に似ている気がして、尚人はつい眉をひそめた。


(いやいや、考えすぎだって……でも)


写真の中のその人は、ことりとはまるで違う――はずなのに。

ふとした仕草や、目元の印象が、頭から離れない。


「…もう、変な妄想はやめよう」


そう言い聞かせながらも、尚人はRINA_cosに“おすすめキャラ”として、

自分が好きな作品の中から、ことりが昔話していたアニメのキャラをあえてコメントしてみた。


「○○の××とか、似合いそうです」


ちょっとした確認のつもりだった。

もし反応が返ってきたら――それは、もしかして。


【姉・ことりの夜】


(ん?この名前……また、コメントくれてる)


お風呂上がりの髪をドライヤーで乾かしながら、スマホをちらりと覗く。


「○○の××とか、似合いそうです」


ことりは、思わず吹き出した。


(それ、昔わたしがハマってたアニメじゃん……尚人に話したこと、あったかも)


ほんの一瞬、心が跳ねる。


(まさかね……でも)


このアカウント、本当に不思議。

いつも適度な距離感で、でも作品やキャラに詳しくて。

なにより、言葉の選び方が、どこか“近い人”みたいで落ち着く。


ことりは、少し迷ってから返信を打つ。


「その作品、実はずっと前から好きだったの♡ いつか着てみたいなぁ♪」


ほんのり“匂わせる”ような文章。

もしかしたら、気づいてくれるかも……そんな期待が、心のどこかにあった。


でも――


「……なにやってんの、私」


スマホを伏せて、ことりは小さくため息をついた。


“バレたいのか、バレたくないのか、自分でも分からない”


【交わらないまま、すれ違う夜】


尚人は、返信を見て、思わず心臓が跳ねた。


(“ずっと前から好きだった”? それって……)


けれど、すぐに頭を振る。


(いやいや、偶然。たまたま被っただけ。こんなの、決めつけるなんて…)


スマホの画面は、光っては消え、また光っては消える。


ふたりの心は、すぐそこにある“正体”を前にして、

あと一歩――踏み出せないまま。


その夜も、ただ、静かに過ぎていく。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ