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ふたりで灯す、やさしさのかたち  作者: 流浪の旅人
第2章 ふたりで、ゆっくり歩き出す — “やってみたい”が、芽吹いた日
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5.ひとりの夜 ― はじめての検索履歴

夜。部屋の明かりを消して、ベッドに潜り込む。

スマホの画面だけが、布団の中でぼんやり光っている。


(姉ちゃんは、もう寝てるかな……)


尚人は、スマホのブラウザを開いた。

指先が、ホーム画面の検索窓をゆっくりとタップする。


「男の娘 コスプレ 初心者」

「男でもできる 可愛いキャラ」

「コスプレ 始め方 男性」

「初心者 ウィッグ 選び方」

「メイク 男 女装 自然」


検索履歴に、次々と並んでいく言葉たち。


(こんなの、誰にも見せられないよな……)


でも――心のどこかでは、ワクワクしていた。

“検索してる自分”が、すでに変わりはじめていることを、ちゃんと感じていた。


「メイクって……下地とか、ベースって何?」

「カラコンって安全なの…?」

「衣装って買うもの?作るの?」

「足の毛って……やっぱ処理するの?」


知らない言葉ばかり。

でも、不思議と怖くなかった。


画面の向こうには、同じように悩んで、でも楽しんでいる人たちがたくさんいた。

そして、その中には――あのRINA_cosの姿もあった。


(姉ちゃんも、最初はきっと不安だったんだよな)

(なのに今は、堂々としてて、すごく輝いてて……)


だからこそ。

自分も、少しずつでいいから近づいてみたい。


尚人は、お気に入りに登録していたRINA_cosの過去投稿を何度も見返す。

衣装のシルエット、メイクのバランス、ポージング……。


画面の中の“姉”は、いまも美しく笑っていた。

そしてその笑顔が、尚人の背中を、誰よりもそっと押してくれていた。


(いつか――俺も)


その夜、尚人はそっとメモ帳アプリを開き、こう打った。


【やってみたいことリスト】

・メイク道具を知る

・自分に合いそうなキャラを探す

・ウィッグの種類を調べる

・衣装の買い方を調べる

・姉ちゃんに、いつか…言えるようにする


画面を閉じて、スマホを胸に抱きしめる。


(……秘密。だけど、今だけの“俺だけの夢”)


静かな夜の中、

ひとつの未来が、そっと芽吹いた。

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