表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ふたりで灯す、やさしさのかたち  作者: 流浪の旅人
第2章 ふたりで、ゆっくり歩き出す — “やってみたい”が、芽吹いた日
114/114

101.届いたやさしさに、そっと微笑んで ― 弟が返す“気づいたよ”の合図

尚人は、スマホを手に、コメント欄をゆっくりとスクロールしていた。

目を止めたのは、@RINA_cos のコメント。


その最後に添えられた、ある一文が――

彼の胸に、ふわりとやさしく灯った。


「今日の写真、

夕暮れの空に“まるで木漏れ日”みたいな、やわらかさを感じました。」


その瞬間、尚人の目元がふっと緩んだ。


(……気づいてくれたんだ)


(しかも、“木漏れ日”なんて……

なんてあたたかくて、やさしい返しなんだよ、もう)


手にしたスマホを、そっと胸に引き寄せたくなるような気持ち。

うれしくて、くすぐったくて――

ちょっとだけ、泣きそうになるほどだった。


(これは……俺だけに向けた言葉だ)


“木漏れ日”は、彼にとって愛しさのサイン。

確信できるほど、まっすぐに伝わってきた。


尚人は、返信を打ち始める。


でも、「気づいたよ」とは書かない。

あくまでも、ふたりだけがわかる**“静かな会話”**にしたかった。


「“木漏れ日”って、いい言葉ですね。」


「強すぎない光なのに、ちゃんと温かくて、

木々の間をすり抜けながら、

静かに地面を照らしてくれる――あの感じ。」


「実は僕、ああいう光に、ずっと憧れてました。」


投稿を終えたあと、

尚人は静かにスマホを見つめながら、ふっと微笑む。


(言葉にしなくても、きっと通じてる)


たしかに名前は明かせていない。

でも、心の中では確かに**“あなた”**を呼んでいる。


(……ありがとう、姉ちゃん)


ふたりのあいだに交わされたのは、

声ではなく、心でつながる会話だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ