99.ふたりだけが知っている言葉 ― 弟が仕込んだ、やさしい“合図”の投稿
尚人は、静かな夜の部屋でノートを広げていた。
思い出していたのは、
@RINA_cos から届いた、やわらかであたたかいコメント。
「あなたの言葉が、
わたしの今日を照らしてくれました。」
その一文が、尚人の心にずっと残っていた。
(……照らす、か。
あの人の言葉こそ、俺を照らしてくれてたのに)
だから尚人は、
その“照らす”という言葉を、そっと次の投稿に仕込むことにした。
投稿されたのは、
夕暮れのやさしい光が、遠くの街をそっと染める風景写真。
キャラは少し伏し目がちに、でも穏やかに微笑んでいる。
そして、添えられたキャプションには――
「今日の光が、
誰かの空にもちゃんと届いていたらいいなって、
そんな気持ちで撮った1枚です。」
「“照らす”って、
実はとても静かな行動なんですよね。
でも、誰かの心にそっと灯をともす、強い力があると思ってます。」
「この投稿も、
どこかで、誰かをそっと照らせますように。」
投稿ボタンを押してから、
尚人は小さく息を吐いた。
(きっと、気づいてくれるよね……)
これは、ただの言葉遊びじゃない。
名前を明かせないふたりが交わす――
“やさしい恋の合図”。