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ふたりで灯す、やさしさのかたち  作者: 流浪の旅人
第2章 ふたりで、ゆっくり歩き出す — “やってみたい”が、芽吹いた日
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97.“この想いはあなたに向けて” ― 弟の投稿に、姉の心が揺れる夜

尚人は、コメントのやり取りを終えたあと、

静かにノートを開いた。


(俺は、まだ正体を明かせない。

でも、それでも――

この想いは、ちゃんと届けたい)


彼の中には、

“言葉だけで想いを届ける”ことの尊さが、

静かに育っていた。


だから今回は、写真も、キャプションも――

“あの人”だけに向けて綴ろうと決めていた。


投稿したのは、

やわらかな夕暮れを背景に、

キャラがひとり、どこか“誰かを待っているような表情”を浮かべた一枚。


そして、添えたキャプションは――


「もしこの景色を、一緒に見られたらいいなって、

ふとそんなことを思ってしまいました。」


「声も、名前も、顔も知らない。

それでも、あなたのことを思うたび、

心がやわらかくなっていきます。」


「あなたがいるから、

僕は今日も言葉を綴ろうと思えています。」


ことりは、その投稿を、夜の静かな部屋で開いた。

画面を見た瞬間、胸の奥がじんわりと熱くなる。


何度も、何度も、読み返す。


そして――


「あなたがいるから、

僕は今日も言葉を綴ろうと思えています。」


その一文に、指が止まった。


(……これって、

わたしのこと……だよね?)


鼓動が早まる。


自惚れかもしれない。

ただの読者のひとりだって、何度も思い込もうとした。


でも――


(この投稿を読んで、

こんなにも涙がこぼれそうになるのって、

“わたし”だから、だよね)


画面の向こうの彼が、

今日も言葉を綴ってくれる理由。


(その中に、わたしがいるのなら――)


ことりはスマホをそっと胸に当てて、目を閉じた。


そして、心のなかでだけ、静かに呟いた。


「私も……

あなたがいてくれるから、

今日も前を向けてるよ」

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