3話
名前は適当につけている、けど適当につけるのも案外大変なので名前がいっぱい出てきたらそれだけ時間がかかる。
Bクラス自己紹介中。
そもそもだこのクラスには現状上位刻印が全てそろっていることになる。
上位刻印は全部で十種類、俺の持つ、竜、鳳、獅子、狼、一角馬、と他に、毒蛇、亀、熊、牡牛、魚がある。ちらりと見えたカロシーヌの右手の甲の印は牡牛であった。
残るはリーシャの背、そして残りの公爵家から三人のはずだが上位刻印の気配がするのはあと二人だけだった。
「僕はサーマイン公爵家三男、シンユーです、シンって呼んでください。刻印は上位刻印の魚の印、属性は風です」
刻印を宿した左手を見せびらかすようにヒラヒラさせて挨拶ををするぱっと見優男で軽薄さも感じるが、悪いやつではないと思う。
次いでシンの後の女子、こいつから上位刻印の気配がする……なんだか気配が強いような?
「あたしはサーツィ、サシーア公爵家次女、上級刻印は……」
そういうとサーツィは両腕を掲げ―――。
「毒蛇と亀、ほんとは姉さんが片方担う予定だったけど体が弱くて死んじゃったから……」
騒然となる教室、俺もちょっと驚いた、やけに気配が強いと思えば二つ持ちか。
「痛くなかったの……?」
教室から自然と漏れる声。
「痛かったわ、けどこれは姉さんに託されたあたしの誇りだから」
気丈に振舞っているがその目には涙が滲んでいた……痛みを思い出してるのかな? うんうん、分かる二度までは痛いよね。術師の腕前だとは思うが多分普通の術師はそんなに腕は磨かないと思うんだ。だって施術は痛いものであるというのが一般常識だから。
けれどこれでリーシャの背にあるのは熊というのが確定したな。平民からの特待生、実際の平民でもなくはない話だが基本貴族を名乗れない庶子に多い立場だ、そして表向きリーシャには刻印がない、完全に平民として扱われるが、ここまで険悪な雰囲気は出ていなかったが平民相手ではどうなるのだろうか、リーシャの番が回ってくる。
「り、リーシャです、得意なのは光魔法と治癒魔法です……。」
リーシャの自己紹介はあっさりと終わった平民だし特別いうことはないだろうけど、教室の雰囲気はといえば、そんなに悪くない……どころかむしろ好意的である。どうやら庇護欲を掻き立てられている様子でキツめの印象があったレイン殿下とサーツィすら微笑んでいる有様だ。
そんな雰囲気の中俺にお鉢が回って来た。
「俺はタロス、特技は近接戦闘、属性は鋼だ、よろしく」
庶子なんてこのぐらいでいいのだ。そもそも俺の場合顔を見れば大体のことは分かるはずなのである、それだけ有名だと自負している。施術されてから五年、帝都に来ては闘士ギルドに通い腕を磨き、魔物を討伐などし小遣い稼ぎをしそれなりに名を売って来た、闘士等級こそB止まりだがそれも年齢を加味した話だ。
俺はここに魔法を習いに来た、もちろん貴族家の責務ということもあるがこの世界では前世知識にあるふわっとした異世界知識のようなレベルだのスキルだのはない、戦闘技術も魔法知識も学ばねば手に入らないし磨かねば成長もない。
独学とほんの少しの家庭教師の教えでここまでやってきたが流石にそれが限界である、そもそも刻印を使いこなすにはこの学園での授業が必須科目だ。帝国がそう定めているのでこればかりはどうしようもない。
「はーい、それじゃあー、みんなのじこしょーかいがおわったのでーぇ、今からーふれあいたーぁいむ! 気になるひととーおともだちになっちゃいましょー」
先生がそう言うと教室が一気に騒がしくなりみんなそれぞれ思い思いの相手のところに集まった。
主に、レイン殿下、カロシーヌ、シンユー、サーツィ、リーシャの元へ。
俺の元へは三人ほど来た、どれも顔なじみだけどな。
「よぉ、タロス同じクラスになれるなんてラッキーだな」
同じ闘士ギルドに所属している同年代で侯爵家の三男坊のヘラクルだ。地属性戦士で得物は槍を使う闘士ランクは俺と同じBでよくつるんでいる。
「ああ、ヘラクルもミシャもササリナもいるとは思っても見なかったよ」
「一応は貴族だし、可能性はあるかなって私は思ってたけどね」
そういうのはミシャ、モナオー子爵家の子女で、闘士としてよく通っている商会が子爵家の持つ商会で彼女はそこで看板娘として働いている。彼女の父は商人としてやり手でその功績から皇帝に拾われて爵位を賜ったことから成金子爵と呼ばれている。
「タロスが庶子っていうのは知ってたんだけどねー、庶子ってあんまり学園通わせてもらえない子が多いから正直期待はしてなかったんだよねー」
ササリナ・ペープシュ伯爵令嬢、彼女も闘士ギルドの仲間であり、ヘラクルの婚約者だ。
帝国の婚約者制度は変わっていて家が決めるのではなく、当人同士で取り決めるその方が家が団結し、国が強くなるからだとのこと。
ヘラクルは三男だし、ササリナは一人娘な為、ヘラクルが婿入りするのは確定事項である。
「そこは腐っても公爵家かな、まあ正直なところ兄貴たちと一緒にされないかヒヤヒヤしたんだけどね」
兄の所業も俺の扱いもこいつらには全部話してあるので気軽に軽口が叩ける。
他愛ない雑談をしていると今まで人に囲まれていた連中がこっちにやってくるのが見えた。腐っても公爵家ということか、どうやら挨拶はしなければならないようだ。
プロットも何もない、ただ文字が書きたいだけで、全部その場で決めているのでそのうち登場人物なんかまとめると思うがまだ先になるかと思います。