0007 魔王の物語り5話と6話のあらすじ
起稿20240620
起項20240705
改稿20240707
0007 魔王の物語り5話と6話のあらすじ
5話目
昨日の間に王都に到着し、旧交を温めることも出来た。数少ない友人。生物学者として日々を過ごす彼も今は忙しく、何かのきっかけで生態系に変化が起きていないか。調査員の一人として任されているらしい。
まだ如実に変わったところは特に無いらしいが、気になることは増えてきたらしい。
明日が謁見だと告げると大出世だなんだと喜んでくれた。否定したが、からかわれてしまった。
正装に身を包み、姿見を確認。
久しく正装に身を包んでいなかったからか、護衛にからかわれた。
待合室に騎士が訪れ、謁見の間への先導をする。
私の護衛は、待合室で待機だ。
ここからは王直属の近衛隊が受け持つ。
前に来たときは叙爵の時だったので何年も前。
変わらず立派な通路を通り、豪華な扉を開けてもらい中へ入る。
王は玉座に鎮座し、隣で宰相が立って出迎えてくれる。
主人公は王から10m程離れた場所で立ち止まり、挨拶を始めた。
苦々しげに王は、宰相が今回の謁見の内容を語っているのを制止し、主人公を呼ぶ。
魔王の称号を得たこと。世界の敵という称号を得たこと。これに間違いが無いか。
主人公は包み隠さず肯定すると、即刻の爵位剥奪と国外追放を申し渡してきた。
これには宰相も驚き、王を窘めるが、決定であると頑なに曲げず、すでに帰る領地も無いとし、近衛を呼び出す。
呼ばれた近衛も対応に困っている。王が実行を促し、宰相が止めている。国のトップ二人が全く逆の指示を出すのだ。困惑するのは判るが、王直属ならば王の意に反するのは気が引けるだろう。近衛が戸惑っているうちに、王が堪忍袋の緒が切れ、王の命に背けば即刻処刑すると言いだし、主人公は抵抗せず囚われの身となることを条件に自分の護衛と領地に罪はないので害することのないよう依頼。宰相は最善を尽くすと請け負ったが、王は無反応だった。
近衛に連行されて、牢に入る主人公。
あまりにも無抵抗のためか、警戒されるが主人公は、とがめる気が起きない。
牢の奥で服が汚れるのを気にせず座ると、思考の海に沈み込む。
国外追放。民に帰る。
別れも告げずに去るのは名残惜しい。
仕えてくれた人々を思い返す。
国境隣接領領都 将軍目線
領都に招かれ、会食をこなした将軍は、早々に自室に戻る。
天の声を聞いた日。ここの領主が内戦を起こしていたことは、明白な事実であり、度々侵攻して撃退されているのも知っている。この国はこんな横暴をねじ伏せることも出来ない。
王の覚えが良いことに横暴を働き、何度か厳罰処分になりかけては王が取りなした。それについても宰相から注意を受けている。
領地替えを宰相が進めていたが、王の裁可が下りない。なんとも歯がゆい。
王の剣である将として命を受ければ、理不尽な敵にも牙を剥く戦士ではあるが、腹芸は得意では無い。
今日も最前線の視察を優先させたかったが、どういう訳か必死になって留まらせられ、結局明日の朝から向かうことになった。
何を求めていたのか、理解に苦しむ。
水を求め、体を拭って早々に休もうかとしたところ、部下が急報を持ってきた。
隣国の侵攻かと聞けば、王からの命令。
主人公領への進軍と領民の殲滅。
王は女子供さえも手にかけよと記している。
この筆跡は間違いではない。王に計られたか。
その思いがよぎり、宰相ならば、このような安直で誰の目にも不誠実な手段は人が離れるとして拒否するだろう。
仕方なしに護衛についたここの兵士に領主への面会を要請し、すぐに快諾して会うことになった。
王からの命令書を渡し、進軍せねばならないことを告げると、ここの領主は、この報を嬉々として受け、その勢いのままに、この領の全軍でもって蹴散らすと豪語した。国境隣接領の領主とは思えない。腹芸の苦手な将軍でさえ愚かと評する文言に、国境守護の兵を半分は残すように厳命して、今から出立すると告げ、領都を後にする。
ここの領主に好き放題させれば、本当に彼の地の人々が一人残らず殺される。そう直感したからだ。
6話目
主人公領の防衛用砦付近 将軍目線
夜間に距離を稼ぎ、土地勘があり、馬の扱いに長けた二人を斥候として先行させる。一人には、この中で一番足の速い自分の馬と交換し、二人に先程書いた書状を預ける。防衛用砦についたら速攻で矢文として中に放ち、王の意には反するが、危機を伝えねばならない。二人と二頭には悪いが、一領を王の暴挙で失うには民も将も惜しい。いがみ合った敵国にさえそんな措置は取らない。多少の禍根を残しても土地を養う民は必要。誰もいない土地は魅力的に見えても手をつけにくい。
民あればこそ管理がそれなりに行き届く。誰もいなければ、管理を全て兵だけでまかなわねばならず、労力もかかり、実務的にも非効率。倫理的には論外だ。
我が国は内戦をして体力を消耗している場合ではない。3つの隣国とは、大がかりな戦争こそ、ここ数十年無いが小競り合いは続いている。それだけに内戦などで疲弊すれば、そこを突くなんて至極当然。弱った部分から切り取り、更に形成を確固たるものにするぐらいでなければ、領地の取り合いだけでなく、生存競争にさえ残れるかどうか。
気が重い。
このようなことをしている場合ではなかろうに。
将軍が出立して程なくして、あそこの領主も出立したのだろう。準備の早さは前もって準備していたのだろうとしか思えない。
対隣国ではなく内戦向けにだとしても。表向きの軍備であれば多少の言い訳は立つ。用意する物資はほぼ一緒であり、違うのは遠征をするかどうか。
持ち出す必要の無い防衛戦の軍備で、持ち出す準備をする者は多くは無い。野戦込みでも防衛戦ならば、遠征に比べて糧食の外への持ち出しは少ない。
兵站。戦時の物資輸送は距離が伸びるだけ、継続性が困難になる。遠征時は、それを考慮して多めに兵と移動し、兵站の一度に運ぶ量をなるべく減らし、多少日数が延びても窮しないように確保する。
兵站が断たれれば、遠征者は飢えとの戦いで戦力が落ちるだけではない。最悪、味方が味方ではない状態まで考慮しておかねば、生き残ることも難しい。こうなったら戦闘どころではないが。
距離的には、あと一日もすれば主人公領の端。防衛用砦に辿り着くだろう。それが機能していることを観るだけでも異常ではある。主人公領はかなり狭いものの隣国国境とは接しない地だからだ。
味方に囲まれた防衛用砦なんてものは、形式上の警備以外でいえば、普通ならば隣領との入出管理程度だろう。
それが防衛拠点として成立している。
そこに問題を感じずにはいられない。
知識として、愚痴を聞いてはいたが、この異常性は他国に突かれる大きな的だ。
改めて認識させられる苦汁でしかない。
放置した自分にも何か出来るだろう。最悪は回避せねば、下手をうてば国が亡くなる。
王都 地下牢の中 主人公目線
一日経った。昨夜の夕食は私の口には合わなかった。普段の料理に感謝を捧げたくなった。
久々にあまり眠れなかった。そういえば護衛達は帰路の出立に問題なかっただろうか。迫害を受けなければ良いがと心配になる。
幸いにして、孤独を感じることはない。
念話という形でガイドとも話せる。
ガイドからすれば、いつでも外に出れるのに留まる意味が理解できないそうだ。
更に監禁され従っているのが不思議らしい。
武装解除しているが、魔法技術を抑えるモノは何も無い。確かに多少の抵抗はあっても、外に出るのはそれ程困難ではないだろう。行く当てがないのもあるが、元々抵抗する気がない。爵位を剥奪された自分が領地に行くのは気が引けるが、分体を解除したくても、遠隔操作での解除は出来ないので、一度は領地に戻る必要はある。
ただ、領地についてはどう捉えて良いのか判らない。
爵位剥奪されたから、はいそうですかとなるかと言われれば否。これまでの交流。生きてきた軌跡がそこにある。離れがたい。だが、領地替えではなく国外追放だ。戻るどころか国を出ねばならない。未練の有無は横に置き、国と争う姿勢は領民を苦しめる行為にしか向かないだろう。とても自己満足で突き進むには、リスクが高過ぎる。
考えが巡って答えが見えず、目先を変えようと、ふと気になっていた。王のガイドと手許のガイドとの違いを、当の本人?に聞いてみるかと思いついた。
王が称号を把握していたのは、王の手持ちのガイドから聞いたのだろうと予想し、もしかしたら王のガイドが、俺のことを報告したのかもしれないと推測して聞いてみた。
その推測は、ほぼ当たりだろうとしながら、この国の王だったからでもあると理由を話し始めるガイド。
基本的に国の代表にはゲームからガイドが配布されるらしい。理由は、システムからゲームに則した能力の配布はされたが、運用自体はこの世界に住む者達に委ねた。だが、ゲームとかけ離れる可能性を摘むためにも有力者。影響者にガイドをつけたらしい。
有力者、影響者ならば、すべての可能性を摘むことは出来ずとも、方向性を与えることは不可能ではないそうだ。
今回のケースの能力の配布としては魔法技術がこれに当たる。
あとは、ゲームの妨害を避けるためにも有力者、影響者にガイドを付ける必要があったという。ゲームの進行上の必要人物に必要な行動をとってもらうために、重要度に応じて天の声だけの対応の者とガイドが配布されるものと別れるらしいが、ほとんどは天の声で誘導するくらいで問題ないそうだ。
だが、有力者や影響者がゲームシステムを妨害する方向で動き出すと運営が成り立たなくなる。
必要情報の隠蔽や破壊、独占の抑止。
現在の技術では再現困難な品物もこの世界にゲームシステムが配置しており、先回りし、隠蔽や破壊、独占のような行為に走られれば、ゲームの難易度にも影響するそうだ。
この世界の住人としては、聞いているだけで、わがままであり、勝手で、迷惑な話なのだが、いったん横に置くとして、そうした場合にガイドを付けていれば、ゲームシステム側から該当者に注意、警告、処刑が可能だという。
生殺与奪の力を手にしていると言っても過言ではないが、ガイドをつけていなければ、天の声による脅し。もとい、警告までしか出来ないそうだ。
ある意味興味深い。
ガイドはゲームシステムから記憶と方針を与えられているが、国の代表に配布されるものは、特に方針を与えられることはなく、今回のシステム統合に伴う情報提供を目的としていて、この世界の現状を正確に把握する仕組みもないから聞かれても答えようは無いだろうとのこと。
ただ、ゲームの進行上で必要となる人物は、ゲームシステムが、ほぼ確実にどこにいるかは把握しているそうだ。
ゲームの進行上。普通であれば、どこにいるかは開示できないはずだが、ここの王は魔王がいる国の王。プレーヤーに魔王の居場所を教えるための道案内としての役割があるため、魔王の居場所を把握しようとすれば、確実に可能となる。
それゆえ知っていても不思議ではないと淡々と説明する。
ただ、国外追放になれば、役割が自動的に変更されるため、魔王の居場所を知ることは不可能になるらしい。
なんだか、とんでもないことを聞かされた気がする。