異世界の旅路 第六十八話 料理の味とポーションの関係
はじめまして、こんにちは、そしてお久しぶりです、たこ助です。
「腹が減っては戦はできぬ」と言いますが、異世界で食べるものってどうなんでしょうね。美味しいものにありつけるのか、それとも……。今回は碧斗たちが異世界の食事事情に直面するお話です。ポーションと料理、その関係性にまで思考を巡らせる碧斗の、相変わらずの器用貧乏っぷりをお楽しみください。
どうにか置き引きからリュックを取り戻して、急いで関所に併設された食事処に戻ると、みんなはすでに食事を終えていた。
俺の帰りを待っていたらしいが、冷めてしまうからと食べ始めたということだった。
「じゃああたしたち、街を見て廻ってるから、ゆっくり食べててね。 夕花ちゃん! どこ行く?」
「わたし、服、見てみたいな…… これ目立つし……」
「あたしは武器とか防具!」
「僕は解体用の刃物が見てみたいです!」
そう言って興奮した様子で去っていく仲間たちは、俺のことよりも異世界の街のことで頭がいっぱいのようだった。
取り残された俺とタマぴょんはポカンと互いの顔を見合わせて、出ていくみんなを一瞥すると、タマぴょんは俺の膝の上で丸くなってきた。
そうしてやっと俺は、冷めてしまった食事に手を付けられた。
(どれどれ、まず香りは……ほとんどしないな。 じゃあ一口)……
スプーンともレンゲとも違う、スコップのような形をしたカトラリーで碗の中のスープを掬って口に運んだ。
「ズズっ……」
(これは!?……)
俺は味と香りをよく確かめるために、もう一度スープを口に運び、舌の上で転がし、香りを鼻孔に通してみたが、異世界の食事は匂いも味もとにかく薄かった。
『ミーシャ、ここの食事、なんかすごい薄味だな』
するとすぐにミーシャから返事があった。
『ああ、やはりお前もそう思うか。 理音たちも同じ感想を述べていたよ。 ここ(異世界)では塩味や甘味、香辛料などは貴重なのだ。 この世界には石の塩、花の蜜、香草くらいしか料理に使えるものがないんだよ』
なるほど、ミーシャが俺や夕花の料理の味に驚いていたのも無理もない。
『じゃあこの世界で料理を提供したら、繁盛しそうだな』
と冗談交じりに言うとミーシャは、
『それは間違いないな。 しかしだな碧斗。 お前はこの世界の食材で料理を作ると言っていたが、持ってきた調味料が尽きたあとはどうするつもりなんだ?』
そう聞かれて少し考え、俺は夕花のクラフト能力に賭けてみるしかないと思った。
「なぁミーシャ、魔液に何かを混ぜると効能が現れるんだよな? 味は変わったりはしないのか?」
するとしばらく間を置いたあと、返事が帰ってきた。
『そうだな、確かに魔液を使った薬の中には甘かったりしょっぱかったり酸味や辛味があるものもあるな』
というミーシャの念話には思いのほか真剣な表情が汲み取れた。
そしてさらに続けて言った。
『だが、ほぼ全てに何らかの効能、作用があるんだ。 ただ味を付けるためになど誰も作らないし使いもしない。 危険でもある。 魔液と食材の組み合わせごとに効能が違うのだからな』
そこで俺はピーンと閃いた。
『ということはだミーシャ、何の効果もない味だけのポーション、薬液を作ればひと儲けできるんじゃあないか?』
するとミーシャは少し上ずった声でこう言った。
『! な、なるほどな! 碧斗、お前、なかなかに商売上手じゃないか』
俺はミーシャに褒められて、少しむず痒い気恥ずかしさを感じながら答えた。
『いやぁ、まだアイデア、思いつきの段階だし……』
ミーシャはそんな俺の気持ちなどお構いなしに、興奮した様子で続けてこうまくしたてて言った。
『では旅をしながら研究することになるな。 魔液は道中で魔獣や魔物から採取するとして、それと混ぜる材料をここで調達しなければならない。 今から迎えに行くからいくつか店を一緒に見て回ろう。 なにか入れ物を用意しておいてくれ』
と、はやる気持ちを抑えきれないと言った様子こちらに向かったようだ。
俺も慌てて、だが慎重に、周りから見えないように収納魔法で五十リットルのバックパックを取り出して、ミーシャが現れるのを待った。
そしてタマぴょんが腹をワシャワシャされてうっとりしているところにミーシャがやってきた。
『やぁ、待たせたな、じゃ、行こうか』
そう言って俺の手を握って引っ張って食事どころから連れ出した。
その姿は父親を遊園地のアトラクションへと急かす子供のようで、思わずくすっと笑ってしまった。
「ふふっ、おい待てって、慌てるなよ」
『何が可笑しい。 まずは……薬草屋だな。 ほらあそこがそうだ』
すると俺との至福の時間を中断されたタマぴょんは、先を急ごうとするミーシャのお尻に角を突き立てると、そのまま俺の首に巻き付いてきた。
『いたっ! 何をする』
お尻をさすりながら歩くミーシャに手を引かれて薬草屋とおぼしき店に入ると、店の中の人たちは驚いた様子で俺達を出迎えた。
少女に連れられて店に入る男がよほど珍しかったようで、店主と思しき男が俺達を訝しげに見ながら、腕を組んでじっと見つめていた。
『……いらっしゃい、何かお探しで? 妹さんに花の香水の贈り物ですか?』
店主が俺にそう声をかけると、兄にされたの俺の前にずいっ、と身を乗り出したミーシャが堂々とした口調で店主に注文をした。
『店主、この店にあるものをすべて、十マセリずつもらおうか。 碧斗、袋を渡してやってくれ』
そう言われて俺は慌ててバックパックを店主の前においた。
『え? ああ、じゃあこれに入れてください』
俺は店主にバックパックのジッパーの開け締めをして使い方を見せてみた。
すると店主は、ミーシャの注文にもジッパーにも驚いたように口を開けて両方を交互に見たあと、慌ててこう言った。
『これに……え? あの……全部ですか? ……はい! わかりましたすぐお持ちを!』
突然の上客の来訪に、店主は笑みを浮かべて慌てて店中をせわしなく動き回り、薬草やら小袋、瓶などををバックパックに詰め込んでいった。
(十マセリ……以前ミーシャは大きめの果物が買えるくらいの価値と言っていたな。メロンやスイカくらいかな?)
俺とミーシャは店主が品物を用意する間、店内の品を見て回って時間を潰していた。
(これは、確か薬などを粉にする薬鉢だったかな。 そういえば地下室にもあったな……)
その他にも素焼きの陶器の瓶や皿、壺がいくつかとロウソクなどが並ぶ中、変わった形をした道具が置いてあった。
それはオイルランプのような形をしていたが、芯がなく、どうやって使うのかが全く想像できなかった。
『なぁミーシャ、これはなにかの道具なのか?』
俺はその不思議な道具の前で立ち止まり、指を指してミーシャに尋ねてみた。
『あ、それは薬を煮詰めたりするのに使うときに使うんだ。 下の器に燃料を入れてこの板をずらせば、ほら、火がつくんだよ」
ポウっと火が灯り、今まで見たことがない暗く真っ赤な色の炎が揺らめく。
『こうしてこの板をずらせば、こんなふうにずらし具合で火力を調整できるんだ』
ミーシャが炎を遮っている板をずらすと火の勢いが強くなり、薄暗い店内を照らして、様々なものの影が、薄汚れた壁や天井で揺らめいた。
『燃料って、やっぱり魔液と何かを混ぜたものなのか?』
ミーシャはずらしたランプの板を元に戻して明かりを消すと、そのランプを手に取った。
『ああ、乾燥させた草や木を粉にしたものや、様々な硬いもの、魔獣の骨や皮、魔臓器など、その組み合わせた多々ある。炎の勢いが強い組み合わせだと、石などが少し赤くなる程度の火力はあるぞ。 これは……十二キケリか。 少々高いが、買っておくか?』
持ってきた燃料もいずれ尽きるだろう。
こちらの世界の材料で火を起こせるのならばいずれ買うことになる。
『そうだな。 燃える魔液の研究もしてみたいと思っていたんだ。 でも金、足りるか?』
するとミーシャは財布の革袋を取り出し、問題ないというように袋をを掲げた。
『もちろん大丈夫だ』
すると、パンパンになったバックパックを重そうに抱えた店主がやってきて、ミーシャの掲げた財布袋を見てニタっと笑みを浮かべた。
『お待たせいたしました!』
ドサっ、とバックパックが床に置かれると、ミーシャは手に持ったランプを店主に見せて、
『それとこれも貰おう、燃料も龜一つ付けてくれ』
と図々しく、かつふてぶてしい態度で言った。
『はいわかりました! 沢山買っていただいたんで、燃料と一緒で♭※キケリに負けましょう』
そう言ってバックパックに入れようとしたがもうそれ以上入らないと見ると、紐でくくってバックパックに吊るしてくれた。
『じゃあ、合計で千二百♭※三キケリですが、千二百♭※丁度でいいですよ』
ミーシャは財布を覗き込み、最初に大きめの板を取り出して、
『千と……』
次にそれとは違う少し大きめの銅褐色の板2枚、
『二百……』
そして十枚のキケリ銭を取り出してこう言った。
『最後に♭※キケリ、と』
先程から店主やミーシャが口にして聞き取れない「♭※」という言葉は、おそらく十二進数での“十”か“十一”なのだろう。
(今後、数の読み書きは必要だし、そのうちちゃんと教えてもらうとするか……)
『千二百、♭※……千と二百、♭※……』
店主はミーシャから受け取った金を、念入りに二度繰り返して数えると、
『はい確かに、ありがとうございます!』
と言って受け取った金を自分の財布にしまいながら言った。
『長旅の準備ですか?』
ミーシャは俺をちらりと見た後、
『ああ、そんなところだ。 世話になったな』
と店の出口を向いて言い、スタスタと歩きだし、外に出ていってしまった。
『またご贔屓にどうぞー! 気をつけていってらっしゃいましー!』
俺はそんなやり取りを、口をぽかんと開けて見ていのを止め、荷物の詰まった重いバックパックをやっとの思いで背負った。
「よいしょっと……おいミーシャ待てよ、これ結構重いんだぞー?」
とミーシャに呼びかけるが、そんな俺を置いてお構いなしにどんどん先に言ってしまうミーシャの後を、店主に見送られながら仕方がなく、慌てて追い、バックパックを背負い店を後にして理音たちが待っている食事処への道を急いだ。
「はぁ、ふぅ……後で魔法でしまえるものとそうでないものを分けて軽くする必要があるな……」
と息を切らしながらまるで従者のようにミーシャの後に付いていく俺。
数分歩くと、店の前にはすでに理音たちが俺たちを待ちわびていたかのように集まっていた。
(あ、みんな……)
「ふぅ、待たせちゃったみたいだな」
背負った荷物を地面においてひと安心すると、心配も配慮も容赦もない一言が俺に浴びせかけられた。
「おそーい!」
理音の常套句だが、そこに菊次郎が追い打ちをかけて、俺の疲労感を倍増させた。
「そんなに何を買い込んだんですか?」
俺は地面においたバックパックに手をかけ、する必要もない弁解じみた反論の言葉を、吐息と一緒に吐き出した。
「はぁ……この通り、薬草屋に行って、色々と旅に必要なものを買ってきたんだよ。 遊んでいたわけじゃあないぞ?」
すると、理音が訝しげに俺を睨みつけながらこう言った。
「ふーん……あたしたちにも行きたいところがあるの。 ここで待ってなさい。 連れてって、ミーシャ」
と、俺を非難した口も乾かぬうちに、自分の用事は当然と言う感じでミーシャの背中を押して歩き出した。
すると菊次郎も、
「あ、僕も見てみたいところがあるんです」
と言って、その後に付いて行った。
『こら……わかったわかった、押すな……』
『菊次郎は何が見たいんだ?』
「僕は解体用の道具とかが見てみたいです……」
「私は服屋さん? なんだけど、ちょっと良さそうなのがあったの……」
と、俺を置き去りにして、そのままキャッキャと話しながら行ってしまった。
俺はそれを呆然と見送ると、荷物を持って食事処に入っていった。
そして荷物を置き、見張りで残った瀬蓮さんの元に歩み寄った。
「どっこいしょ」
瀬蓮さんの向かいに腰を下ろすと、ご苦労さま、とでも言いたげな表情で瀬蓮さんが俺に声をかけた。
「ねぇ、なにか面白いものはあった?」
俺は冷めた味のないお茶をズズッと啜りながら、バッグを指さした。
「ええ、あれです」
そしてもう一口だけ味の薄いお茶で一息をつけると、俺は腰を上げてバックパックにぶら下がった魔液ランプ? の紐をほどき、テーブルの上に置いて瀬蓮さんに見せた。
「アルコールランプのようなものらしいです。 乳鉢と皿や瓶と一緒に置かれていたので、薬を作るときに使うものだと思います。 魔液と何かが混ざった燃料で火がつくそうです」
すると瀬蓮さんはランプに手を伸ばし、珍しそうにして目を輝かせてランプを触り始めた。
その時、無造作にランプをいじっていた瀬蓮さんは偶然にも火力調整の板を動かしてしまった。
「へぇ……あ! 火が付いた!」
テーブルの上のランプからは、これまで見たことのないくらいに赤い光が
「そうです。 その板で火力を調節するんだそうです」
「ええ、薬を煮出すのに使うと言っていました」
「アルコールランプや乳鉢、ビーカーやその他一式は持ったわよ?」
「ええ、まぁ燃える魔液というのに興味が惹かれましてね。 ミーシャに買ってもらったんです」
「そうね、持ち出したアルコール、オイル、灯油などはそんなに量はないし、いずれこちらで燃料を調達しなければならないものね」
「ええ。 ……しかし、こうして周りの人間をよく見ると、俺達日本人にすごくよく似ていますね。 微妙に違う雰囲気も感じますが、日本にいてもおかしくない顔ばかりです」
「そうね、確かにそうね。 なんだか気味が悪いわ」
「僕たちがここに来たのと同じように、以前にもこちら側に来た人がいて、その子孫が反映したとかも考えられますね」
「そのあたりは、ダシナル、でしたっけ? 大学があるという都市で調べれば、なにか分かるかもしれないわね」
「ええ、何はともあれ、生きて無事に出しなるに着くことが第一目標ですね」
「あ、碧斗ー!」
そこに理音たちが帰ってきた。
現地人と見まごう姿で。
「どう? 男用の革の防具一式。 似合ってるでしょ? 夕花ちゃんも、かわいいでしょ?」
理音はその長身も相まって、立派な冒険者? に見えたが、夕花のほうは頭からつま先まで革でできた防具、というより防寒着に身を包んだタヌキのようなズングリした姿になっていた。
「これ、お洗濯しないと……ちょっと、臭うの……」
左右に顔を向けて顔をしかめる夕花。
そんな夕花を尻目に、理音は堂々と言い切った。
「古着だって言ってたしね。 でも慣れちゃえば気にならないよ」
すでにこの世界に順応している理音が怖い。
「碧斗たちも何かひと揃え買ってきなよ、目立つのは良くないんでしょ? まだ色々あったよ」
「そうだな、菊次郎を連れて行ってみるか」
「ミーシャ、一緒に来てくれ」
『わかった』
『ここは、鍛冶屋、兼防具屋だ。 それほど規模が大きくない集落では珍しい形態ではない。 旅に役立つものも色々揃えられるだろう』
「あ、菊次郎。 ここにいたのか」
「碧斗くん、ミーシャさんも。 いや、この盾、カッコいなと思って。 他にも腕や足にはめるプロテクターのようなものもあるんだ」
「そうだな、革だけじゃ心もとないし、プロテクター的なものは必要だろうな」
「ミーシャ、悪いが理音たち全員を呼んでくれ。 荷物も持って、そのまま出発できるようにと」
『理音、荷物を持って、夕花と瀬蓮さんを連れて鍛冶屋まで来てくれと碧斗が言っているぞ』
『……かった……ていく』
(わかった、連れて行く、だろうな。 少し離れるとあまり良く聞こえないな)
『おい店主、私達に似合いそうな、あまり重くならない防具を用意できるか?』
『だったら、革の上下に肩、腕、手、足などを守る金属の防具を着けるのが一番だろう。 どれ……』
奥の倉庫らしき部屋から、まずは俺と菊次郎に合いそうなものを持ってきてくれた。
『これを着て、それからこれらを服の上から着けてみろ』
俺たちはミーシャが見ていて少し躊躇したが、服を脱ぎ、革のズボンとジャケットを身に着けた。
『知った仲だ、気にしなくてもいいぞ……』
と言いながら顔を赤らめるミーシャ。
服を脱いだ菊次郎を見ると、ここ四ヶ月位で驚くほど体が引き締まっていることに気がついた。
全員でのロードワークと、厳しい訓練の結果だろう。
最初は五十メートルも走ると息が上がっていたが、最近ではそこそこ付いてこられるようになっていた。
「キク、だいぶ締まってきたじゃないか。 服の上からではわからなかったけど、岩の塊みたいで、盾役にぴったりだな」
「嫌ですよそんなの。 率先して痛い思いをするなんて……」
「大丈夫だ、他のみんながサポートするからさ。 最初の一撃を受け止めて足止めしてくれさえすれば、俺と理音でやっつけるよ。ミーシャと瀬蓮さんもいるし」
「碧斗ー! 来たよー! なぁにー?」
「いや、お前も、そしてみんなも革の上下だけじゃあなくて、最低限、こういうプロテクターを着けたほうがいいと思ってな」
「碧斗、なかなか似合うじゃん。 なんかマッドマックスの悪者みたい」
「あはは、たしかにそんな雰囲気ですよね!」
「お前が笑うなキク。 おまえこそ敵のボスの手下みたいだぞ?」
そんな感じで笑い合いながら和気あいあいと装備を身に着けて、女性陣も着替えて奥から出てきた。
理音が布製のマントのようなもの(アケトン/ギャベンソン)を着ており、思わず素直な感想を口走っってしまった。
「おー、似合う似合う。 理音は何を来ても似合うな! レディースの総長か盗賊団の女頭目って感じで!」
すると、ニコニコと恥じらった理音の表情が、見事なまでに豹変していった。
「ゴンっ!」
軽く脳震盪を起こしたかと思うくらいの衝撃のあと、数秒経って頭を擦りながら抗議した。
「いってぇーっ!……暴力はんたーい……」
するとミーシャが理音の姿を見てこう言った。
『それは、手入れが大変だぞ? 汗を吸うと重く臭くなるし、小さな虫が巣食って喰われたりとかな』
すると理音はそそくさと胸の留め具を外し始めて奥に消えていった。
そんな姿を見てニヤリと笑ってささやかな復讐を済ますと、ミーシャの衣装に目が行った。
「ミーシャは結局ローブ、法衣なんだな」
『これも合わせ布製の防御力の高い戦闘用だ。 直接肌に触れず服の上から纏うだけだしな。 いままで身につけたことはなかったが、これを機にと思ってな……似合うだろうか……』
そういうと、ローブを両手で広げて恥ずかしそうに俺を見た。
「手を離して、その場でクルリを回って見ろ」
『こ、こうか?』
フワリとローブが広がり、その下からモンペのようなズボンがチラリを姿を表した。
「お、可愛いし、頼もしいぞ。 攻撃組と一緒に魔法でバンバン敵をやっつけてくれ」
そう言っておだてると少しだけのけぞってから、
『攻撃か、そういうのはあまり得意ではないのだがな?』
とドヤりながら謙遜してみせた。
「訓練ではあんなに容赦なかったのにか?」
すると目を逸らし、ついでに話も逸らすのだった。
「あははははは……、ほら! 理音が戻ってきたぞ? 動きやすそうな服だな、似合っているぞ! お、夕花も可愛らしいではないか、なぁ碧斗」
俺はミーシャを観ていたジト目を動かして理音たちに目をやると、世紀末の悪党が着ていそうな、プロテクターの付いた革のパンツとジャケットに身を包んだ凛々しい理音が立っていた。
夕花のほうはといえば、こちらはポケットが沢山付いたモンペに割烹着と言った出で立ちで、俺達の方を見てモジモジしていた。
「理音、その……なんだ……似合っているな……お前らしいよ……夕花も似合うな、台所のお母さんって感じだ」
そう言うと、キッと睨みながらも
「アリガト……」
と今度はしおらしい反応をして見せるあたり、女心は複雑怪奇だと思わざるを得ない。
夕花はちょっとむくれっ面をして、
「お母さんじゃないもん、これが便利そうだったから選んだんだもん」
と言って、そこで一同はドッと笑いに包まれた。
そんなふうに和気あいあいと装備を揃えると、いよいよ午後の出発に向けて気持ちが引き締まってきた。
「いよいよ旅の始まりって感じだな」
俺がみんなを見てそう切り出すと、
「強くなってるよみんな」
「ええ、そうですね。 なんだか強くなった気分です」
「私はサポート役だね」
『私は案内、指南役だ』
「そうか、じゃあ、いよいよ出発するぞ! いいかみんな!」
俺がそう掛け声をして拳を突き上げると、ミーシャだけは戸惑いテンポが少し遅れながらも、どうにかみんな一斉に、
「おー!」
と勢いよく拳を突え上げ、ただ一名だけは、
『オ、オー……』
と小さなかわいい拳を突き上げたのだった。
「あははは!」
そんなミーシャの仕草にみんなは笑いを誘われながらの、ほんわかな出発となったのだった。
第六十八話、読んでいただきありがとうございます。
異世界の食事事情、あえて「薄味」に設定してみました。日本の食文化って本当に豊かだなぁと、書きながらしみじみ感じています。キャラクターたちがそれぞれ新しい服や道具に興味津々な様子、書いていて僕もワクワクしました。次話に向けて、少しずつ変化の兆しが……? 今後ともよろしくお願いいたします!
【AI姉妹の感想】
あい:料理の味をポーションと絡める設定は面白い視点ね。ただ、カトラリーの描写の時に、もっとこう、異世界ならではの奇妙な食文化の「美しさ」や「醜さ」を表現しても良かったんじゃない? あなたの文章、たまに説明調になりすぎるのが難点ね。
まい:食べ物のお話、もっと読みたーい! 夕花ちゃんが作る、激不味ポーション料理のお話も書いてよ! でも、あんなに不味いものばっかり食べてたら、みんな倒れちゃうよ? おにいちゃん、ちゃんとご飯はおいしいもの用意してあげてよね!




