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異世界と魔法 第六十三話 魔法講義とソリティアとロシアンルーレット

はじめまして、またはこんにちばんわ。 烏賊海老いかえび 蛸助たこすけです。タコ助と呼んでください!


前回から始まったミーシャ先生によるスパルタ(?)魔法講義。 理音の暴走や、僕とご先祖様の比較など、異世界の常識と僕たちの常識のすり合わせが進んでいます。


さて今回は、爽やかな朝食の風景からスタートです。 ですが、ただの朝食で終わらないのが僕たち流。ちょっとした遊び心……というか、悪戯を仕掛けてみました。 そしていよいよ、みんなの魔法属性が明らかになります。 僕の属性は何なのか? そして異世界の少女に現代の「あのゲーム」を教えるとどうなるのか?


ゆるーい異世界生活の一幕、第六十三話をお楽しみください!

 「ぐぉ……」


 ……今朝は菊次郎のイビキで目を覚ました。

 この異世界には、心地よい鳴き声で目を覚まさせてくれる鳥はいないのだろうか……


 「ふぁぁ……」


 スマホを見ると朝の六時四十七分だった。


 (NTP(Network Time Protocol)が使えないこの世界では、時計もいずれズレてしまうのだろうな……)


 そういう不合理なことを考えるような朝は、けっして良い目覚めの朝だった、とは、とても言えないだろう。


 そんな自分のシニカルな自虐癖に苦笑しながら、気分を変えるために顔を洗おうとベッドを降りた。

 菊次郎は相変わらずカラフルなパジャマで、足を伸ばした硬直状態でぐっすりと寝ている。


 (シュコシュコ……)


 歯を磨きながらまたしても心配性の発作が現れ、歯磨き粉も石鹸も、いずれは尽きてしまうだろうと鼻でため息をついた。


 (んふー………なにか代わりになるものを見つけないとな……ふ、ふふふ……)


 鏡の中の自分を見て、朝から気苦労の耐えないお互いを不憫に思って思わず苦笑してしまった。


 (グチュグチュ……ガー、ッペ)


 歯磨きも終わりさっそく今日の朝食のことを考える。


 (さて、今朝は何を作ろうかな……)


 アランギの肉もあるし、野菜の生育もことのほか順調だ。

 そこで俺は気分を変えて、ピリ辛のタコスを作ることにした。


 フリーザーバッグに小麦粉と水、オリーブオイルを入れ、ダマがなくなるまでよく混ぜる。

 程よく固まってきたらそのまま冷蔵庫で寝かせて、具材づくりに取り掛かる。


 荒く刻んだ玉ねぎとトマト、細く切ったレタスを、オリーブオイルで軽く和え、アランギの肉を冷蔵庫から取り出してミキサーでひき肉にする。

 アランギの肉はタマぴょんのためにひと切れ切り分けてやった。


 肉の味付けは塩コショウと少々の醤油、白出汁(だし)

 肉をフライパンで炒めて、先程の野菜と、カジヤに貰ったという激辛ソースを掛けて味見をする。


 (もう少し辛さを抑えるか……)


 ポン酢をみりんを少し足して、ちょうどピリ辛と激辛の中間になるように味を調整したあと、具材を軽く手でかき混ぜ、ようやくタコスの具が出来上がった。

 次に、具材を調理する間に冷蔵庫で寝かせておいたトルティーヤの生地を取り出して、フライパンで軽く焦げ目がつくように焼き上げる。

 次にフライパンにオリーブオイルを軽く敷き、生地をゆっくりと流し込む。


 数分焼いたら裏返して、ヘラで押さえつけながらさらに数分焼いて、トルティーヤの焼き上がりだ。

 全部で六枚作って、そのまま置いておく。


 最後に、冷蔵庫に残っていたオレンジを取り出して、種を取ってミキサーにかけて、オレンジジュースを作ってみんなが起きてくるのを待った。


 (このオレンジの種、畑に撒いてみようかな……)


 俺はみんなが起きてくるまでの間、オレンジの種とクワを持ち、8月にしては少し涼し気な畑に向かった。

 これが地球ならば、何かの鳥の鳴き声もしていて気持ちの良い朝のはずなのに、このキクハウスの周辺には鳥どころか、全く生き物の気配が感じられなかった。


 (ササァー……)


 朝の八時ということもあって、時折通り過ぎるひんやりした朝風が心地良かった。


 (ザクッ、ザクッ)


 見たこともない雑草をむしりながら、畑を少し拡張してオレンジの種を植えていった。

 育つまでに何年かはかかるだろうが、ここで暮らすなら果物も必須だし、食べられる野菜や果物は多ければ多いほどいい。

 いずれはこの周りの森も開墾して、それなりの大きな畑をみんなで作ろうとも思っている。


 (旅から帰ってくる頃には、実っているといいな……)


 俺は畑に埋めたオレンジの種に水を撒きながら、そんなことを考えていた。

 すると突然、


 「碧斗ー! 朝ごはんまだー!」


 と、聞き慣れた叫び声が、気持ちのよい朝の静寂を破った。


 (はぁ……なんだなんだ?)


 キクハウスの方を振り向くと、相変わらずショーパンにキャミという薄着で、キクハウスの入口に手を掛けた理音がこちらを見て叫んでいた。


 (ったく……キクもいるんだぞ? 瀬蓮さんにとっても、いい獲物だろうに……)


 俺は理音のその無防備さに危惧をしながら、クワを片手にハウスに戻っていった。


 「朝飯なら作ってあるよ! その前に顔を洗って歯を磨け! ただし歯磨き粉や石鹸は少なめにな!」


 「……お母さんじゃあるまいし、うるさーい……」


 理音は口を尖らせて、不承不承とキクハウスの中に戻っていった。

 俺が水を撒き終えてハウスに戻ると、理音以外のみんなも、待ち遠しそうにテーブルに着いていた。


 トルティーヤを軽く温め直して具材を乗せて包んでいる時、ちょっとしたいたずら心がむくむくと芽生え、俺は六つのタコスのうち、一つだけに激辛ソースを軽くふりかけてみた。

 そしてカウンターに置くと、珍しく理音が待ち遠しそうにタコスの乗った皿をテーブルに運ぶ。

 最後に冷蔵庫でよく冷やしたオレンジジュースのピッチャーとグラスをカウンターに置き、ようやく俺もテーブルに着いた。


 「さて、今朝は趣向を変えて、ピリ辛タコスにしてみたんだ。ただし、一つだけ、超辛の当たりがあるから覚悟しておくように!」


 退屈でもない異世界生活だが、たまにはこうした趣向も面白いだろうと思い付いてやってみた。


 「タマぴょんのはこっちだぞ」


 と、ピリ辛ソースの入っていない皿を床に置いてやった。


 「キュルンニャ、キュルンニャンニャンニャ……」


 タマぴょんが食べ始めると、皆はタコスをしげしげと眺め、トルティーヤをめくり、どれが超辛なのかを観察し始めた。


 『たこすとは? ぴりからとは? ……』


 まずはミーシャが目の前に置かれたタコスに警戒をして、一つを手にとって目の前に置き、手をかざして何かを探ろうとした。

 すると今度は夕花が恐る恐るタコスを手に取る。


 「きっと、これだね……赤いのがはみ出してるし、だから私はこっち」


 とソースがはみ出したタコスとは違うものを選んだ。

 菊次郎は僅かな大きさの違いを警戒したようだ。


 「うーん、これが少し大きい気がするね。だからこっちにしてみよう」


 と慎重に別のを選んだ。

 そして瀬蓮さんは飄々(ひょうひょう)とした表情で、無造作に一つを手に取った。


 「悩んでも仕方がないわ、私はこれ」


 残るは二つ。


 「うーん……」


 珍しく理音が決断を渋っている。

 公平を期すため、俺は残った二つのうちのどちらを選ぶか、理音に任せることにした。


 「おーい、早くしろよ。最後の二つのどっちかは、お前に選ばせてやるからさ」


 すると理音はタコスに手を伸ばすも、


 「うーん……じゃあこっ……やっぱこっち!」


 と手にしかけたタコスとは別のものを手に取った。


 「じゃあ俺は最後に残ったこれになるな。みんな、恨みっこなしだぞ? じゃあ、いただきまーす!」


 「いただきまーす……」


 「キュルニャンニャンニャ……」


 しかしやはりというか、俺以外の一同の反応が鈍い。

 自分の選択が間違っていたときの結果を恐れてのことだろう。

 仕方ないのでまず俺がひとくち口にしてみせた。


 「パクっ……モグモグ……」


 全員が俺の方を見て、固唾(かたず)を飲み込んで反応を伺っている。


 「……くー! やっぱカジヤさんのくれたあのソースは辛いなぁ……シー、ハー……」


 俺がわざとらしくそう言ってみせると、俺が当たりを引いたのかと皆ホッとして、それぞれタコスを口にし始めた。


 「モグモグ……うっ」


 菊次郎が顔をしかめる。


 「モグモグ……こほっ」


 夕花が軽く咳き込む。


 「モグモグ……ぶふっ」


 瀬蓮さんが咥えたタコスを噴き出しそうになる。

 それなりの辛さだから当然といえば当然なのだが。


 「モグモグ……………………」


 理音の反応は、無かった。

 と思ったが、次の瞬間。


 「モグ……………………バサッ!」


 顔を真っ赤にした理音はタコスを皿に投げ捨て、オレンジジュースを飲み干し、さらにピッチャーから二杯、三杯と注いで飲み干していった。


 「がはーっ! ゲホゲホゲホっ! なによこれー! 騙したわね碧斗!」


 (いやいや、自分で選びかけて最後にそれに変えたのはお前だぞ?)


 俺はフフンと余裕の笑みで理音を見返しながらタコスを頬張った。

 すると夕花の隣ではまだミーシャが魔法でも使っているのか、いろいろな方向からタコスに手をかざして俺達には理解不能な言葉をつぶやき続け、正体を探ろうとしていた。


 「○※△!□@☓…………」


 「ミーシャ、そんなことしても無駄だぞ? さっさと食べてみろ」


 すると、観念したよう手を収めてタコスを手に取り、ぱくりとひとかじりする。


 「モグモグモグ……ゴクン……」


 しばらく微動だにしなかったミーシャだったが、少しするとその顔は鮮やかなピンク色に染り、額からはおびただしい汗が噴き出し、正面を向いて目を見開いてタコスを手にしたまま、コトリ……とテーブルに突っ伏してしまった。


 「きゃぁー! ミーシャちゃーん!」


 夕花が慌てて突っ伏したミーシャの頭を持ち上げて介抱する。


 「い、異世界人は、辛いの、ダメなのかな……」


 一同は俺のちょっとした遊び心のこもった朝食に喜ぶことも感心することなく、冷たい視線を向けるのだった……

 そしてひと休みした後、復活したミーシャの、いつになく厳しい声で魔法の授業が始まった。


 『いいか! お前たちは魔法のない世界から来て卵から孵ったばかりの雛だ! この私が魔法の何たるかを髪の毛の一本一本、骨の髄までわからせてやるから覚悟したまえ!」


 瀬蓮さんの竹刀を手に取り、ピシッ、パシッと手に打ち付けるミーシャ。


 「碧斗ー……あんたのせいだからねー……」


 鬼教官モードのミーシャを恐る恐るチラ見しながら理音が俺をジト目で睨んだ。


 『そこ! 集中したまえ!』


 ミーシャが理音に手をかざしたかと思うと次の瞬間、ブワッと強い風が舞い起こり、理音の前髪がたなびき、そのあまりの強風で口がブワッと広がった。


 「あぶぶうっ! しゅ、しゅいあへぇーん(すみませーん)……」


 『今日はお前たちの魔法属性を調べる。 魔法属性には水、火、風、雷、土、光、闇の七つがあり、この世界の生物は最低限、七つのうちの一つを授かって生まれてくるとされている。

  お前たちは魔法のない世界から来たと言ったが、魔素粒子を使いこなせてきているからには、この世界にやってきた時点で何かしらの属性を獲得している可能性が高い。

  今日はそれを探し当てることから始めようというわけだ』


 「やった! 火とかカミナリとか岩とか出して飛ばせる!? ドーンとかバーンとか!」


 と理音が相変わらずのテンションで


 『慌てるな、まず安全そうな水か風から始めよう。


 魔素粒子の放出と同時に水や風を思い描く……碧斗がよく言っていたが、お前たちの言葉で“いめーじ”、と言うのか? いめーじするんだ。

 では各自、やってみろ! ただし、この間の理音の例もあるので、外に出て、互いに距離を取るように!』 


 俺は外に出るなり、アニメの登場人物がするように魔法の“詠唱”が必要なのか疑問に思い、ミーシャに訊いてみた。


 (あのー、ミーシャ先生。魔法を出すときは、魔法の名前を唱えたり、何かおまじないのような言葉を発する必要はあるんですか?)


 するとミーシャは少し考え込んだ後、


 『あまりそういうのは聞かんな。魔獣など、言葉を発せずとも魔法を使ってるぞ? 逆に興味があるな、後で詳しく教えてくれ碧斗。ではそれぞれ、やってみたまえ!』


 そう言ってミーシャは地面をトントン、と竹刀で突いた。

 するとそれを合図に皆それぞれ適当に距離を取り、互いに向けないようにして魔法の発動を試みた。

 理音は、ただひたすら唸るのみ。


 「……うーん、うーん……」


 そして菊次郎はちょっと厨二っぽく詠唱。


 「水よ、(いで)よ」


 さらに夕花は、これはいつものまま。


 「お水さん……出てきて……」


 皆それぞれ苦労して水を出そうとしたが、水一滴どころか蒸気すら出て来ないまま、何分かが過ぎた。

 ただ水を出せ、というのなら、おそらく息をはぁーっとひとつ吐いたほうが早いだろう。

 俺はそんなみんなを見ながら、何の気なしに手をかざして、じょうろで畑に水をやるイメージをしてみた。

 すると、


 「シャワーァァァ……」


 すると手の平から小雨のような水が飛び出し、地面を濡らした。


 『碧斗、相変わらず手際が良いな。なんでもソツなくこなす、それもおそらくキミの才能だ』


 そんなふうにミーシャが俺を褒めると、他のみんなもムキになってウンウン唸り始めたが、その手からは何かが出てくる気配は一切しなかった。


 『しばらくやって無理ならば、次の属性を試してみることだ、風はどうだ? 誰か適正があるんじゃないか?』


 そう言うと、今度はみんな、なぜだか唸り声を変えたり姿勢を変えたりして、必死に風を出そうとした。


 「はぁぁぁぁ……」


 「ウインドストーム!」


 「風さん……そよいで……」


 俺はそんなみんなを尻目に、掌から扇風機で魔素粒子を送り込むイメージをしてみた。


 「ふわぁー……」


 すると(てのひら)に風を感じたので、そのままミーシャに向けてみた。

 ミーシャは銀色の髪をサラサラとたなびかせながら、


 『……碧斗、お前には驚かされるよ。こうも簡単に二属性を使いこなすとは……そのまま続けたまえ』


 半ば呆れたようにため息をつくミーシャ。

 するとさっきから水属性を試していた夕花の掌から、ドバドバと水が溢れ出した。


 「ふぇぇ! とまらないよー」


 そう言って慌てふためき周りの人間に助けを求めながら、水をぶっかけまくった。


 「わ、夕花ちゃん、冷たい!」


 「うぶっ、夕……花さん……苦し…………」


 俺も夕花の水の洗礼を浴び前髪から水を滴らせながら、そんな夕花にふと思いつきアドバイスをしてみた。


 「夕花ー、頭の中で手の先の蛇口を、キュッと閉めてみろー」


 すると夕花の手から溢れ出していた水の勢いが次第に収まっていき、掌からポタリ、と水滴が落ちて、水の放出が止まった。


 「碧斗、お前は状況判断と的確な指示にも長けているな。もう分かってはいるが、お前は集団のまとめ役として、大げさに言えば指揮官や指導者としてふさわしい資質を持っている」


 (指揮官や指導者なんて……俺はただ、周りのみんなを、友達を上手くまとめたいだけなのに……)


 するとミーシャは何も言わず、俺をにやりと笑って、ただ見つめるのだった……


 『よーし、ダメだった者は次の属性を試せ! 水の次は、風! そして火、土、雷、光、闇だ!』


 そうしてようやく魔法属性の適正審査? は終了した。


 理音は火と風と雷。

 言うまでもなく、攻撃系の魔法属性だ。


 夕花は水と土と光。

 ミーシャに言わせれば、動植物に再生能力を与えることができるそうだ。


 菊次郎は光と闇と土。

 こちらは生命の癒やしと支配に長けているということだった。


 そして俺は、みんなより弱いながらも全属性を獲得していたのだった。


 『さて、お前たち全員の属性が分ったわけだが……』


 ミーシャはそこでため息を深くつくと、


 『全員が属性を複数持ち、しかも碧斗に至っては全属性持ち。私や私のご先祖様たちですら持ち得なかった極めて稀な才能を持っていることが分った……』


 (これって、特別なことなんですか?……)


 するとミーシャは、その小さな体の肺活量を試すかのように、そのままさらにため息をつき続け、


 『はぁぁ……当たり前だ。二属性持ちですら英雄のように扱われる世界なんだぞ? 全員が三属性以上など、もしお前たちのその力量が知れれば、複数の勢力の争奪戦になるやもしれん。そして碧斗、お前の場合は言うに及ばずだ』


 ミーシャは俺達を見廻して、さらに残った息を微かに吐き出した。

 さらに蚊帳の外で、お茶を飲みながら一人でソリティアを遊んでいる瀬蓮さんの方を見て、


 「アラサ……瀬蓮様も相当な闇属性持ちだと見た。私を見るあのまとわりつくような視線だけで、何やら背筋に恐ろしいものを感じるのだからな……」


 (あー、それは当然の警戒心と嫌悪感だと思いますー……)


 俺がそう軽くツッコむと、理音が出し抜けに大きな声を上げた。


 「あー、なんかお腹すいたー! っていうか力が出ないよー」 


 すると菊次郎も、脱力しながらこう言った。


 「そういえばそうですね、これまで、こんなにも脱力感を感じることは、今までなかったのですが……」


 魔力の消費がその脱力感に影響しているのだろうか。

 すると俺のひらめきが、次の言葉を思わず言わしめた。


 「よし! 夕花。今日の昼飯はお前に任せたぞ! お題はアランギ料理。魔臓や魔液も使うんだぞ!」


 俺は夕花の料理の才能? とクラフト能力を試してみることにした。


 「ふぇぇぇぇぇ!? そんなあ……」


 「えぇぇぇぇぇー!? そんなぁ……」


 その夕花の驚きの声とその他の驚きの声は、この異世界の空に、違うベクトルを指して響いたのだった……

 そんなみんなの驚きと戸惑いと絶望の合唱が終わると、夕花はキッチンに、それ以外は自室かリビングで夕飯までの時を過ごしていた。


 「夕花ちゃんの作るご飯、いつも微妙なんだよねー……」


 そう分かりきったことを言ってうなだれる理音。


 『そうなのか? 私はあのピリッとくる……辛いというのか? あれでなければ何でも食えそうだが』


 ミーシャもそろそろ俺達の会話がそのまま理解できるようになったみたいだったので、俺は声に出して言ってみた。


 「いや、常に想像を超える味、といえば伝わるかな? それで美味いと思ったことは一度もないんだ……」


 『それは……ますます楽しみだ。何しろこの世界には食を楽しむなどという事はめったに無いことだからな。石や鉄など固いものは言うまでもなく、肉や野菜に味も付けず、ただ噛み、水で流し込むくらいだ』


 ミーシャは俺たち五人とは違った意味で、期待とも不安とも取れない表情で夕花の調理を眺めていた。


 「あおとー、私の分だけでもちゃんとしたご飯作ってよー……」


 そう言って皆に見えないように手を絡めて甘えてくる理音だったが、


 「一人だけズルをしようとしてもだめだぞ」


 俺はそう言うと、理音の唇はこれまでにない高さまで突き出され、


 「ケチッ」


 の一言と同時に俺の二の腕をぎゅっと摘んだ。


 「イテっ!」


 「あら、あなた達、人目を気にせずじゃれ合うようになったのね、私も混ざりたいわ」


 瀬蓮さんにそうからかわれて顔を赤くする二人。

 するとテーブルの下から瀬蓮さんの脚が伸びてきて、俺の脚を足先で撫で始めた。

 すると隣の理音もけたたましい叫び声を上げた。


 「ぎゃー! なんで脚を伸ばしてくるんですかこの変態ー!」


 (そっちにもか……)


 仕方がないので、俺は水魔法で瀬蓮さんの脚に水を掛けて反撃してやった。


 「きゃっ……やったわね碧斗クン。いたっ! 何するの理音ちゃん!」


 俺の水攻撃と同時に理音のつねり攻撃が上手く連携し、瀬蓮さんの足をどうにか撃退した。


 「ふふっ、にぎやかですね。こういうのも悪くないですね……」


 菊次郎が笑いながらも、少し憂い気な表情を見せた。

 きっと家庭では家族や、瀬蓮さんとですら、談笑するなんてことはないのだろう。


 「ミーシャ、ゲームでもするか?」


 俺はPCを起動して、OSにプリインストールされているソリティアを起動した。


 『げーむ? 何だそれは』


 「あー、なんと言うか、遊びだよ。例えばこれは……」


 メニューからソリティアを選んで実行した。


 「これは“カードゲーム”。絵が書いてある札を使った遊びなんだ。

  いろいろな種類があるんだけど、今見ているこれを簡単に説明すると、まず下に並んでるカードは、赤と黒を交互に、大きい数字から順番に重ねていくんだ。

  それで、最終的に同じマークの札をエースからキングまで、全部順番に四つの山にまとめられたら勝ち、という遊びだよ」


 俺はプリンタから紙を一枚取って、トランプの札とその意味を簡単に説明してやり、俺が書いたAからKまでを一から一三までと説明し、その上にミーシャの文字で書いてもらった。


 『一三とはまた変わった数え方だな』


 「これは絵札の種類の数だからね。繰り上がったりとかそういうんじゃないんだ」


 俺はとりあえずゲームを開始してお手本を見せてやった。


 「あ、これはマウス。“ねずみ”という意味だが、俺達の世界にはこの形に似た小動物がいてね、そこから取った名前らしいけど詳しくは知らない」


 (スッ、カチッ……スッ、カチッ、カチッ……)


 俺がゲームを始めると、画面とマウスの両方を忙しそうに目と顔を動かして真剣な眼差しで見つめるミーシャ。


 「どっちか一つにしないとこんがらがっちゃうだろ。まずは画面を見て遊び方を覚えなよ」


 すると今度は俺の書いたメモと画面を忙しそうにミーシャの視線が移動した。


 (結局、忙しそうだな……)


 俺は何ゲームか失敗した後、ようやくゲームを上がることが出来た。

 カードが画面を忙しそうに飛び跳ねるが、ミーシャはそれも一生懸命、目で追っていた。


 『なんだか、目が回る遊びだな……』


 そう言ってしばらく俺のプレイを眺めていたが、ついには頭を後ろにもたげて疲れたように椅子にどかっと座り込んでしまった。


 「どうだ、やってみるか?」


 俺はミーシャにマウスを渡し、ゲームを促してみた。


 『ふぅ、やり方は覚えたと思うが……どれ、一つ試してみるか……』


 ミーシャは体を起こし、ぎこちない手付きでマウスを掴むと、ソリティアを遊び始めた。


 (スーッ、スーッ、スーッ……コツン……)


 何回かカーソルを操作すると、マウスがPCにあたってそれ以上動かなくなってしまった。


 『おい、これ以上動かないぞ! 壊れたのか?』


 俺はパソコン初心者にありがちなマウスを浮かして動かすことが出来ないミーシャを見てクスリと笑い、ミーシャの手を持って、そっとマウスを浮かせて元の位置に戻してからもう一度動かしてみせた。


 「こうやって浮かせて何度も戻せば画面の矢印はどこまでも移動できるだろ?」


 『あ、そうか……』


 ミーシャは少し顔と耳をピンクに染めながら、徐々にマウスの操作に、そしてソリティアに慣れていった。

 しかし何ゲームしても上がれないでいると、キッチンの方から夕花の声がした。


 「お昼ご飯、出来ましたよ〜」


 テーブルの上に料理が並べられ、それなりに美味しそうな匂いが漂ってきた。


 「じゃあミーシャ、ご飯にしようか。タマぴょんもな」


 俺はそう言って席を立ったが、これでいよいよ夕花のその能力がはっきりと分かることになるのか、それともいつものトンデモ料理で俺たち全員をゲンナリさせるのか……

 今の時点ではまだわからなかった……

お読みいただきありがとうございます! タコ助です。


朝から激辛タコスでロシアンルーレット、楽しんでいただけましたでしょうか(笑)

理音は見事に自爆していましたが、ミーシャの反応も面白かったですね。異世界の人に刺激物は強すぎたかもしれません。


そして魔法属性の判明!

攻撃特化の理音、支援系の夕花と菊次郎。

そして僕は……予想通りというか何と言うか、全属性持ちでした。

器用貧乏脱出なるか?

休憩時間のソリティアでは、初めてマウスを触るミーシャの反応が新鮮でしたね。マウスを空中で動かしちゃう「あるある」、みなさんの周りにもいませんでしたか?


さて、ラストでついに夕花の手料理が登場しました。

見た目は美味しそう、匂いも悪くない。

しかし、これまでの「前科」がある夕花の料理です。

果たしてそのお味は……? そして食べたみんなの運命は!?


次回、驚愕の食事シーンと、碧斗の小賢しい戦闘訓練がお披露目されます。

いつもどおりミディアムレアくらいの生温か~い目で見守ってもらえると嬉しいです。


実はもう続きの話のストックが無くなりました!

なので少し更新ペースが落ちるかもしれませんが、碧斗たちのドタバタが見たい方は首を長くして待つか、応援メッセージで僕のやる気をチャージしてください!


では、次回もよろしくおねがいします!


AI妹まいの一言


まい: 碧斗くん(実はお兄ちゃんでしょ?……)朝から女の子に激辛料理を食べさせて、自分だけ涼しい顔してるなんて性格悪すぎっ!

でも、ミーシャちゃんがマウスを空中で動かして「動かないぞ?」ってなってるところは、想像したらすっごく萌えたから許してあげる。

「よいしょ」って持ち上げるミーシャちゃん、可愛すぎでしょ!

……で、最後!

夕花ちゃんの料理が出てきて「次回へ続く」とか、またそんな気になるところで切るなんて! 早く続き読ませてよーっ!

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