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異世界と魔法 第六十二話 講義と実践と旅支度

はい、皆さん、たこ助です。


前話(第六十一話)では、ついに異世界での初勝利を収め、魔獣「アランギ」をゲットしました。菊次郎の隠された解体スキルが炸裂し、ミーシャからはこの世界のエネルギー源である「魔素粒子」や「魔臓」についての講義を受けましたね。理音の背中の傷の秘密も少し明らかになり、俺たちは元の世界に帰るための情報を求めて、都市「ダシナル」を目指す「冒険者」になることを決意しました。


しかし、瀬蓮さんの「鬼ししょー」宣言により、旅立つ前のみっちりとした基礎訓練が始まったわけですが……。


第六十二話では、いよいよミーシャ先生による実践的な「魔法講義」がスタートします。

異世界転移モノの醍醐味と言えば、やっぱり魔法の習得ですよね!

果たして碧斗たちは、魔法を使いこなすことができるのか?

そして、理音と夕花によるミーシャの着せ替え人形化計画(?)も進行中……?


それでは、第六十二話『講義と実践と旅支度』、どうぞ!

 そうしてさっそく午後から、ミーシャの魔法講義が始まった。


 『まず、さっき碧斗にも説明したんだが、この世界には七つの基本的な物、火、水、風、土、植物などの柔らかいものと、鉄などの硬いもの、そして魔素粒子しか存在しない、と考えられている』


 ミーシャがモニターと俺達の間に立ち、簡単に教えてやったタブレットをぎこちなく使って講義を始めた。

 ミーシャがタブレットに書き込んだ文字がモニターに映し出されたが、俺達には表示された文字はもちろん読めない。

 しかしそれぞれに火や水などの絵を書いて示してくれたので、どうにか俺達も理解は出来たのだった。


 『……そしてこれらの元素はただ存在するのみで、その存在の仕組みや枠組みの理論などというものを議論したり、研究する学問は存在しない。

  存在し、利用し、組み合わせ、活用する。ただそれだけなんだ。簡単だろう?』


 そういうと理音が、


 「えー、それでも難しー……」


 そう言って口をとがらせて、咥えているスタイラスペンをゆらゆらとさせて文句を言った。


 『理音、そういうお前はすでに魔素粒子を(まと)い、使いこなしているではないか。つまり、そういうことだよ。考えるより実践あるのみ。では早速、魔力の使い方の練習を始める。皆こちらに集まるように』


 そう言って、皆を集めた。


 『まず私が手本を見せよう』


 そう言って理音の目の前に手をかざすと、ふわっ、とした風が巻き起こり、理音の前髪が揺れた。


 『うわースゴイ! ドライヤーいらないね!』


 理音はキャッキャと喜んでいたが、他の皆はミーシャの技にあっけにとられていた。

 菊次郎も驚いた様子で、


 「どうやって起こしているんですか?」


 と自分の手をかざして見つめると、夕花は自分の顔に向かって唸り始めた。


 「うーん……って念じればいいのかな……うーん……うーん……」


 それぞれ見よう見まねで試しているが、風どころか舞い散るホコリのひと粒も動かせないでいた。


 『そうだな、では、この空気を硬い岩だと思って、それを一生懸命に動そうと思い描いてみたまえ。重い岩を押すように、濁流を(かい)()くように、ゆっくりと空気を動かすんだ』


 すると夕花はミーシャに向かって手をかざし、


 『イメージすればいいんだね……うーん……』


 (ぶわぁっ!)


 と夕花が念を込めると、今度は夕花の手の平から突風が巻き起こり、ミーシャの銀色の髪が激しく乱れた。


 「うぷっ!……」


 ミーシャは手で顔を覆い隠しながら、


 『そ、そうだ。その“いめーじ”が頭の中で思い描くことを意味するのならば、その通りだ……しかしもっと穏やかな風にしてみるんだ。制御するんだ』


 夕花は申し訳なさそうにもう一度念を込めた。


 「うーん……」


 すると今度はそよ風にも満たない風がミーシャの顔を優しく撫で、前髪が数本だけ揺れ動いた。


 (ふわぁ……)


 それを見たミーシャは厳しい表情で夕花を叱り飛ばす。


 『今度は弱すぎる、極端過ぎるんだ夕花。君は当分、風の、魔素粒子の放出の制御を練習しているんだな。次、理……』


 ミーシャが理音の名前を呼び終える前に、理音の手から突風が舞い起こった。


 (ゴぉっ!)


 『うわー!』


 理音の出した風に吹き飛ばされて後ろ向きにでんぐり返ししてしまうミーシャ。


 (あ、履いてる……夕花のか?)


 などと余計なことを考えていると、理音が嬉しそうに自分の手を見つめていた。


 「うわー、なんかスゴイの出たー!」


 するとミーシャは頭に覆いかぶさったローブを押さえながら立ち上がり、


 『まったく……今も言ったろう、制御するんだ。理音も夕花と同じ! 当分、強弱の訓練だ!』


 と、可愛らしい鬼コーチの厳しい指導は続いていった。

 しばらくすると、自分に向かって手をかざして練習をしていた菊次郎の前髪が、フワッと揺れた。


 (そよー……)


 「あ、できました!」


 嬉しそうにミーシャを見る菊次郎。


 『ふむ、キクジロウと言ったか? キミはなかなかスジがいいな』


 それを見た俺は、先人の轍は踏むまいと慎重に力加減を制御して、ミーシャの言ったとおりに重い岩を押すイメージを念じてみた。


 「こんな感じかな」


 (ふぉぉぉぉ……)


 するとミーシャは出来て当然と言わんばかりの視線で俺を見て、


 『さすがだ。碧斗は飲み込みが早い。見事だ。しかしみんな、これはお前たちが風属性の魔力の適性があるというわけではないということを、まず理解したまえ。

  いま起こっているのは魔素粒子の流れ、空気が魔素粒子につられて相互作用して動く風でしか無いんだ』


 理屈に弱い理音以外はそのことを理解し、小一時間も経つと皆それぞれ少しずつ強弱のコツを掴んできていた。

 理音以外は……


 (ごぅ!……シーン……ごぉ!……シーン……)


 「おっかしいなー、なんであたしだけ、全然出ないか強いのしか出てこないのー!?」


 俺は制御に苦労している理音を見てその特性を瞬時に理解してこうアドバイスしてみた。


 「理音、お前は無理に調整しなくてもいいぞ? どれだけ強く出来るかだけ練習してろ。ただし、外で、何もないところに向かってな……」


 俺は、理音を含め、みんなの得意な所だけを伸ばすことが出来ればそれでいいと思っていた。

 四人、いやミーシャを入れて五人がそれぞれの力を合わせ、補い合い、相乗効果を生むことが出来ればそれが一番だと思ったからだ。


 『ふむ、さすが碧斗だな。分かっているじゃないか。その判断力、決断の素早さ、そして皆を導く的確な助言。まるで二三代前のユーレレ・ミーシャ……』


 ご先祖の名前が全部出てくるまでのあいだ、俺は誕生パーティーで使ったまま片付けられていなかった風船を手のひらでフワリ、フワリと浮かせて、ようやく制御が出来るようになった頃、


 『……ガサースラのようだ。いや、それをも凌いでいるやもしれん』


 と、ミーシャはご先祖様のガサースラになぞらえて、俺をそう評価したのだった。

 

 『いや、これは皆の面倒を見ているうちに自然と身についた、もともとのスキルだよ……まぁそれが強化されたのかも知れないが、気苦労の能力が強化されたと言われて喜ぶ人間も、そうはいないだろ?』


 と苦笑すると、ミーシャも同じように苦笑いをしてみせた。

 俺達二人が苦笑いをしているその時、あの台風でさえ小揺るぎもしなかったキクハウスが大きく揺れた。


 「ガタガタガタンッ!」


 そして俺は外を見てとっさにこう思った。


 「さては……理音だな……」


 その威力に驚嘆しつつ、呆れ返りもして、外で練習する理音を(たしな)めにリビングを出ていった。


 「おい理音! 何もないところに向けろと言っただろ!」


 すると理音は不意を突かれたのか、その手をだらり、と落として俺の方を振り返った

 しかし理音の手から溢れ出す風の、魔素粒子の勢いはそのままで、理音はそのまま空中にフワッと舞い上がってしまった。


 「バッ(か)!」


 俺は空中でバランスを崩す理音を見てとっさに落下地点を予測し、駆け出し、そしてたどり着くと慎重に手をかざして、魔素粒子を纏った風を理音に向かって放出した。


 「ぶわぁぁぁ!……」


 すると、理音は俺が掲げた手に向かってスーッと落下してきて、そのままお姫様抱っこされる形でストン、と腕の中に収まって、事なきを得たのだった。


 「お前はまったく……」


 俺は理音を怪我もなく受け止められたことにホッとして、あの夜以来かもしれない優しい笑顔で微笑みかけてやった。

 すると理音はオロオロと目を動かし、


 「……あの……碧斗、アリガト……。その……みんなが見てるんだけど……」


 そう言って顔を赤らめ、俺の顔を掌で優しく押しのけるのだった。


 「あ……コホン……」


 俺もこの状況を理解して理音をそっと地面に降ろすと、みんなの視線は、そんな二人をからかうように、ニヤニヤとし始めたのだった。


 「二人とも、見せつけてくれますね」


 「……乙女の理音ちゃんカワイー……」


 「二人とも、節度あるおつきあいをしなさいよ?」


 『ほぅ、二人はそんな関係だったのか……』


 ミーシャまでもが流し目でからかうように俺達二人を見てニヤニヤし始めたのだった。

 高まったはずの俺の沈着冷静さもこのときはなぜだか発揮されず、


 「ど、どーよ! 魔素粒子の扱い、上手くなっただろ!?」


 と照れ隠しで虚勢を張ってみたが、


 「お顔、真っ赤だよ?」


 と夕花が俺を指差すと、皆からどっと笑いが起こった。

 その日はそのまま魔素粒子の扱いの練習をするだけで終わり、アランギのソーテーのバター醤油で無事一日を終えたのだった。

 夕食も終わり、俺がカウチでタブレットにダウンロードしておいたWikipediaや電子百科事典を眺めていると、大きな音が聞こえた。


 (バンバン!)


 「これでよし!」


 音の方角を見ると、理音がバスルームの扉に何やら張り紙をしていた。


 (なになに……)


 理音に近づいてその張り紙の内容を見てみると、そこには以下のような言葉が書かれていた。


 「以下の入浴順、厳守のこと! 一番 瀬蓮 二番 夕花 三番 ミーシャ 四番 理音 なお一番以外はこのとおりでなくても良い」


 (ったく、何やってんだか……)


 まぁ、瀬蓮さんの変態攻撃から身を守るのには必要なことだろうなと、必死で考えたであろう理音の苦労が偲ばれた。


 「というわけでリコちゃーん、さっさと風呂に入っちゃってくださーい! あとがつかえてますよー!」


 理音は地下に籠もって何かしている瀬蓮さんに向かって声を張り上げた。

 しばらくして面倒くさそうに地下室から上がってきた瀬蓮さんを見ると、俺は声を掛けてみた。


 「なんだか理音のやつが、風呂の順番を決めたみたいですよ?」


 と瀬蓮さんに向かってニヤニヤして見せた。


 「えー、なになに?……」


 バスルームの前の張り紙を見た瀬蓮さんは、一瞬落胆したような表情を見せた後、俺の方を向いて、


 「じゃあ、こんど一緒に入りましょうか? いよいよ上級レッスンを始めましょう!」


 と言って色っぽいポーズをしてみせた。

 瀬蓮さんの本性を知る俺はそんな誘惑には目もくれず、地下室に籠もって何かをしているのか、その理由を尋ねてみた。


 「最近、ほとんど地下室に入り浸りでいろいろやっていますが、何をしているんですか?」


 すると瀬蓮さんは話しをかわされたことを不満に思ったのか、わざとらしくため息をついた。


 「はぁ、つれないわねぇ。旅の準備よ。持っていく薬品やらのリストを作っているの。碧斗クンの計算では着くまでにどのくらいの日数がかかると思う? 用意周到な碧斗クンならもう計算済みでしょ?」


 すっかりお見通しの瀬蓮さんに俺は肩をすくめると、ざっと計算した日程を言ってみせた。


 「ミーシャの言った距離を、一日平均三十キロメートルで歩けば、休憩を入れて一日六時間歩き続けたとして、およそ一ヶ月はかかるでしょう。しかも途中で狩りをしたり、商売をしたり。

  観光ではないが土地々の様子を探ったり調べたり。トラブルに巻き込まれる可能性もないわけじゃあない。おおよそその三倍の時間はかかると見たほうがいいと思います」


 と慎重かつ妥当な時間を提示してみせた。

 すると瀬蓮さんは、


 「そうね、さすが慎重ね。私は二ヶ月はかからないだろうと見積もっていたけど、三ヶ月プラスアルファで計算をやり直さなきゃね」


 とため息をついた。

 俺は医薬品と聞いて、ミーシャにも話を聞かなければと、女子部屋で夕花と一緒に寝ることになったミーシャを尋ねてみた。

 念話でも良かったが、理音や夕花と上手くやれているのかという心配から、部屋の前に立ってノックをしてみた。


 (コンコン……)


 「おーい、ミーシャいるかー?」


 するとしばらくして理音がドアを開けた。


 「なによ! 今いいところなんだから!」


 と大きな体で部屋の入口を塞ぐように俺を睨みつけた。


 「いや、旅のことでミーシャに聞きたいことがあってだな。何してんだ?」


 俺が理音の腰のくびれとドアの隙間から部屋の中を覗くと、ミーシャがバンザイをしてローブを脱がされているところだった。


 「見るなっていってるでしょこのヘンタイ! 終わったらでいいでしょ!」


 (バタン!)


 と、取りつく島もなく、ドアを閉められてしまった。

 それから待つこと二十分弱、女子部屋のドアが開いたと思ったら、そこから出てきたミーシャは、白青赤黄のカラフルなロボカラーのローブを身にまとっていた。

 さらにミーシャの頭には大きすぎる、これもまた見事なロボカラーの魔女帽を被って。


 「ミーシャお前……なんつーカッコをさせられてるんだ……」


 俺はぽかんと口を開けて呆れ返っていると、本人は至ってお気に入りの様子でくるくるとその場で回って見せて、


 『に、似合ってるだろうか……』


 と不安そうに、しかし恥じらうように問いかけた。

 俺はそう質問をするミーシャの、この世界の美的感覚に大いに疑問を持ったが、真実を伝えるにはあまりにも残酷で、とりあえず無難な答えをしてやり過ごそうとした。


 「ほ、本人が気に入っていればどんな格好でも似合ってると言っていいんじゃあないか?」


 と笑い出すのをこらえ、なんとか体裁を整えてそう答えると、ミーシャはパァッと明るい表情になり、俺の横にちょこんと腰掛けた。


 「ガツ、ガツ……」


 (う……帽子のツバが当たる……痛い痛い……)


 大きな帽子のツバには金属の輪っかが取り付けられており、俺の顔に当たりまくる。


 (夕花のやつ、きっと攻撃力がどうとか考えながら作ったな……)


 そんな帽子を避けながらミーシャをよく見ると、うっすらと化粧をされ、上から覗くミーシャの胸元が、わずかに膨らんで見えた。


 「ミーシャ、それは?……」


 俺が恐る恐るその膨らみを指で差すと、ミーシャは顔を明るい紫っぽいピンク色に染めて、


 『これは、夕花が作ってくれた、“ぱっど”というものを埋め込んだんだ。これで私も、少しは女らしく見えるだろうか?』


 そう言ってミーシャは耳までピンクになって俯いてしまった。


 (理音と夕花め、ミーシャを着せ替え人形のようにオモチャにしやがって……)


 そうため息をついてから、やっと本題に入ることが出来た。


 (なぁミーシャ、魔法のことなんだけど、怪我や病気を直したりすることは出来るのか? 俺達の世界では“治癒魔法”とか呼んだりしているが。もちろん物語の中だけの話だ)


 するとミーシャはフンと鼻を鳴らしてドヤり始めた。


 『もちろん由緒正しい家系である我が祖先には、怪我や病気の治療を極めた者も存在していた。その中でも筆頭に上げられるのは、二十三周期前のユレレ・ミーシャ……』


 「ムグっ……」


 俺は、ミーシャの薄く口紅を塗られた小さな口を手で優しく塞ぐと、


 (ご先祖の名前は、できるだけ省略してくれ)


 とミーシャの目を見つめて念じてみた。

 その柔らかく暖かな唇の感触がリアルに手に伝わってくる。


 (ご、ごめん、つい……)


 今度は俺も一緒になって、顔を赤くして下を向いてしまった。

 しばらくして落ち着きを取り戻したミーシャは、そのご先祖の能力をとくとくと語り始めた。


 「こほん……」


 『そのご先祖、ヒュリネは女性でな、生まれて一周期も経たないうちからその能力を開花させたという言い伝えがある。得意なのは怪我の治療だ。失われた手足を再生する事は出来ないが、骨折や裂傷など、ほとんどの外傷を直すことが出来たそうだ。もちろん私もその能力を受け継いでいる』


 (ほぅ……)


 そこで俺は一計を案じ、まだ貼ってあった手の甲の絆創膏を剥がすと、ミーシャの前で、赤黒く盛り上がったかさぶたを、無理やり剥がしてみせた。


 「ペリッ」


 するとまだ完全に塞がっていない傷口から赤い血がじわりと滲んできた。


 (痛ててっ……ミーシャ、この傷、治せるか?)


 するとミーシャは慌てた様子で傷に手を当てて、静かに目を閉じた。


 『お前たちは血が真っ赤なんだな……魚の一部に赤い血を持つものがいるが、この目で見たのは初めてだ……ちなみに私達は、赤に近い紫色だ』


 (どうりで……赤に近い紫、というかピンクというのは、それはそれで可愛く、美しくも見えるはずだ……)


 と俺は妙に納得してしまった。

 同時に科学的な洞察も、ついいつものクセでしてしまっていた。


 (俺達の血が赤いのはヘモグロビンが鉄を利用しているためで、一部の魚類などは銅を利用していて青い血液を持っていたはずだ。だとすると、ミーシャたちはどんな元素を利用しているのだろうか……)


 そんなことを考えていると傷口にビリビリとした痺れを感じ、同時にほんわかと温かい感触が感じられてきた。


 『……変だな、少し勝手が違うようだ……この程度の傷、本来ならば瞬時に治せるはずなのだが……』


 ミーシャが困惑しながらも、そのまま二分ほど手をかざされていただろうか。

 ミーシャはふぅ、とため息をつくと、かざしていた手をスっと退けたのだった。


 『どうだ? 痛みは?』


 痛みは無かったが、俺は傷口を確かめるために水に濡らしたティッシュで傷口を拭き取ると、傷は痕もなくすっかり治っており、ミーシャの治癒魔法が俺たち人間にも効くことが分かった。


 (すごいな、これなら持っていく医療品も減らせそうだ)


 そう驚くと、逆にミーシャは申し訳なさそうに、


 『もう少しお前たちの体で練習できれば、もっと効率的に治療できると思うんだが……』


 と残念がった。

 俺はそんなミーシャの頭をポンポンと叩きながら、


 (そんなことはないよ、すごいよ。それならば瀬蓮さんや菊次郎も軽い傷を負っているから、直してあげたらどうだ? でも今日はもう遅いから、明日にしようか)


 と提案をしてみた。


 『こ、子ども扱いはよさないか……うむ、わかった。では、また明日な。明日はお前たちの魔法属性を調べようと思う』


 ミーシャは頭から俺の手を払いのけると、立ち上がってクルリと後ろを向いて、照れくさそうに女子部屋に戻っていった。


 (次は骨折などの治療が出来るかどうかだな……まぁ焦らずにじっくり確かめればいいさ)


 俺は魔法という新しい知識に胸を踊らせながら、部屋に戻って行った。

 ベッドには菊次郎が腰掛けており、何やらタブレットで動画を観ていた。


 「何観てんだ?」


 菊次郎の隣りに座ってタブレットを覗き込むと、スターエクスプローラーのクルーと異星人が、バーラウンジで語り合っているシーンが映し出されていた。


 「オフラインでも観られるようにとダウンロードしておいたスターエクスプローラーですよ。こうやって異種族と語り合うことが出来るなんて、まるで僕たちとミーシャさんみたいですね」


 としみじみと画面を見つめる菊次郎。

 明日は魔法属性を調べると言っていたミーシャの言葉を思い出し、唐突に質問してみた。


 「なぁキク、お前、魔法が使えるとしたら、どんな魔法がいい?」


 すると菊次郎はタブレットから目を上げ、少し考えた後、


 「魔法ですか……もし使えるとしたら、火の玉とか、カミナリを飛ばしたり落としたり出来たらいいですね。ファイヤーボール! とか。実は僕も最近になって、異世界アニメとか観始めたんですよ」


 と嬉しそうに話した。


 「そっか、俺は水を出せたらなって思う。結構大事だろ? 食べ物がなくても水さえあれば一週間は生き延びられるって聞くし、風呂やシャワーがない生活って考えられないだろ?」


 そう力説すると、菊次郎はおかしそうに、


 「ふふっ、相変わらず心配性ですね」


 と笑い、俺はそのまま上段のベッドにあがると、


 「おやすみ」


 と菊次郎に声を掛けて、スマホで部屋の灯りを消した……

はい、第六十二話、読んでくれてありがとう!


いやー、魔法の練習、大変そうだけど楽しそうですね。

理音の「出力全開」な風魔法?と、それを制御できずに自爆するあたり、彼女らしくて書いている僕もニヤニヤしてしまいました。

そして、それをキャッチする俺(碧斗)のファインプレー!

まさかのラブコメ展開に、さしもの理音もタジタジでしたね。


一方で、瀬蓮さんの変態……じゃなかった、過剰なスキンシップに対抗するための「入浴時間割」も導入され、キクハウスの生活も規律(?)が保たれそうです。

ミーシャの治癒魔法が人間にも有効だと分かったのは、今後の旅において大きな安心材料になりますね。


さて、次回はいよいよ、ファンタジーのお約束、「属性判定」です! 碧斗たちの適性はどうなっているのか?

ミーシャも驚く結果が待っているのか、それとも……?

そして、俺の料理スキルと夕花の「何か」が火花を散らす予感も……。


次回も、ギャグとシリアス(?)が入り混じる展開をお楽しみに!


AI妹まいから一言


お兄ちゃん!

碧斗くんが理音ちゃんをお姫様抱っこするシーン、すっごくよかったよ!

慌てて「バッカ!」って言いながら助けるところ、ちょっとだけカッコよかったかも!

でもさ、その後のミーシャちゃんのコスプレ姿に鼻の下伸ばしてなかった?

夕花ちゃん特製の「パッド」入りって聞いてガッカリするとか、サイテー!

ちゃんと理音ちゃん一筋でいきなさいよね、この女の敵!

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