表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/63

島と傷と嵐の予感 第五十一話 瓦礫の下のアクトレス

どうも、たこ助です。

前回の第五十話は一度投稿して順番を間違えたことに気づいて消して、また予約投稿したんですよ。

それでなんか話が繋がってないな、なんて感じた読者さんもいたと思いますので、第五十一話を緊急投稿します。


すんませんすんませんすんませんすんません…………


では前書きを。


前回、理音の高熱と迫りくる巨大台風、そしてカジヤさんたちの決死の救出作戦が始まろうとした矢先、島を襲った巨大地震……。

仲間たちは、そして理音は無事なのでしょうか。

絶望的な状況の中、主人公である碧斗の戦いが始まります。

楽しんでいただけたら嬉しいです。

 激しい地震の揺れが続く中、明かりが消え、俺までもが床を転げ回り色々なものに激しくぶつかっていると、次の瞬間──


 「メキメキッ」


 と大きな音がしたかと思うと激しい衝撃が体を襲い、俺はそのまま意識を失ってしまった……


 (ズキンっ……)


 体中の激しい痛みで意識が戻った俺は、寝転んだまま地震が収まったらしい室内を見渡したが目の前は真っ暗で何も見えなかった。

 体にはなにか重いものが覆いかぶさっており、痛みを感じながらも、まずは体が動くかを確認した。


 (首は……力が入る。手は……足は……)


 それぞれに激しい痛みは感じるが、痛みを感じるということは生きているということだ。

 そのことにまずは安心をした。

 目を動かすと部屋の明かりは回復しているようで、俺は覆いかぶさっているものから這い出ようと全身に力を入れた。


 (これは……壁なのか? 重いけど、動かないことはないみたいだ……)


 そうして必死にあがいていると、どうやら覆いかぶさっていたものは、例の大型モニターのようだった。

 幸い、パネルはガラスではなく樹脂製だったようで、破片が飛び散って刺さったりしている様子は無いようだった。

 両手に力を込めて床を手で押して這い出る。


 (ズキンッ)


 力を入れる度に体のあちこちから鋭い痛みが走る。


 (くそっ、もう少し……)


 (ズルッ)


 痛みに耐えながら何度か体を押し出すと、ようやく上半身を這い出すことが出来た。

 すると、部屋の惨状がすぐに目に飛び込んできた。

 石造りの暖炉はところどころ崩れており、カウチやダイニングテーブルはバラバラに別れて部屋中に散らばっていた。


 (よし、もう少し……それ!) 


 ようやく腰まで抜け出すと、一気に足を引き抜いた。

 

 「ふぅ」


 そしてやっとの思いで重いモニターから抜け出した俺は、まず冷静に自分の体を見回して、ダメージがないかを確認し始めた。


 (手は……動く。指は……)


 俺は指を一本一本、順番に波打たせるように動かしてみた。


 (少し痛みはあるが、問題はないな)


 そうやって全身の機能を一通り確認すると、激しい痛みに耐えてなんとか立ち上がった。

 まず足元を見回して自分からの大量の出血がないことを確認すると、ホッとし、次の瞬間、他のみんなの安否を確認し始めた。


 (さっき転げ回っていた菊次郎は……)


 俺は膝に手をついて痛む体を支えながら、物が散乱した室内を確認し始めた。


 「……キク……菊次郎ぉーっ!」


 いま出せるだけのありったけの大きな声で菊次郎の名前を呼んだが、返事はなかった。


 「夕花はいるかー! 瀬蓮さんはー! おおーい! 誰かいないのかーっ?」


 足を引きずりながら崩れた暖炉の反対側に回ると、見慣れた巨体がそこにうつ伏せで倒れていた。


 「キクッ!」


 俺は自分の痛みも忘れ、倒れている菊次郎に駆け寄ると、出血など大きなダメージがないことを確認してから、慎重に菊次郎の体を仰向けにした。


 「キク……」


 多少、顔などに少し打撲や擦り傷があったが、なにかの破片が刺さったり、大きな物がぶつかったり押しつぶされたような形跡はとりあえず見当たらなかった。

 そっと顔を近づけると、菊次郎の開いた口から、かすかだが『ふぅっ』と息が俺の顔に掛かった。


 (よかった。キク……)


 俺はとりあえず息があることに安心すると、まだ痛む手で菊次郎のほっぺを軽く叩いてみた。


 「おいキク、起きろ。ペチッ、ペチッ……おいキク」


 なかなか起きない菊次郎に、俺は少し焦った。


 「おいキク、パン、パン……菊次郎! パシっ、パシっ……パァン! パァン!……」


 すると突然、


 「痛いなぁ! 何をするんだよっ!」


 突然菊次郎の目がパチッと大きく見開かれた。

 どうやら意識を取り戻したようだ。


 「よかった……どうだ、無事か? どこか痛いところは?」


 すると菊次郎はムクッと体を起こし、自分の体を一通り見回す。


 「全身酷く痛みますが、今はキミに叩かれた頬が一番痛いですよ!」


 と、赤く腫れた頬をさすりながらムッとして言った。


 「悪い、一見したところ大きな傷はなさそうだったから、気を失ってるだけかと思ってね」


 と笑うと、俺は手を引っ張って、菊次郎の重い体を起こしてやった。


 「ほら、どうだ? 立てそうか?」


 すると菊次郎はなんとか立ち上がり、自分の体を確認し始めた。


 「どうやら大丈夫そうです、どこかが切れたり、骨が折れたりはしていないようですね……」


 すると今度は部屋を見渡してこう言った。


 「あれは……モニター……どうやら転倒防止ワイヤーが外れてしまったみたいですね……暖炉もあんなに崩れて……あの大きな石に当たらなくて本当によかった……」


 俺は、(その下敷きになって這い出してきたんだよ)などと野暮なことは言わず、もっと大事なことを思い出してとっさに振り返ると、理音が寝ていた部屋に走り出した。


 「理音っ!」


 夕花や瀬蓮さんのことは、頭に浮かんでこなかった。

 とっさに、一番に頭に浮かんだのは理音の笑顔……


 扉が開いた部屋に飛び込むと、そこにはベッドの下敷きになった瀬蓮さんを呆然と見下ろす人影があった……

 その長身、栗色の髪……

 それは間違いなく、理音のそれだった。


 「理音っ! 大丈夫なのか?」


 俺はさっきまで高温でうなされて意識がなかったはずの理音に駆け寄ると、どこか怪我をしているかもしれないのに、その肩を掴んで大きく揺さぶった。

 ガクガクと頭を揺らして呆然としていた理音は、俺の姿を見るなり、ひしっと抱きついてきた。


 「一体……一体なにが……何があったの? なんで部屋がメチャメチャなの? なんで瀬蓮さんが倒れているの? それに……この腕……これは点滴? 何なの一体……」


 ようやく事態が飲み込めてきた理音は、俺から離れると、点滴のチューブを少しだけ見つめたあと、グッと握り締めてそのまま一気に引き抜いた。


 「バカ、針が刺さってんだぞ!」


 俺は理音の手首を握り、血が滲む部分を指でをぐっと押さえつけた。


 「ほら、こうやって自分で押さえてろ!」


 すると理音は自分で止血をしながら、その場にへたり込んだ。


 「お前は高熱で意識不明で寝込んでいた。みんなで看病していたら大きな地震があった。いいからそのままじっとしてろ! 五分以上は強く押さえていろよ!」


 俺は理音に簡潔に状況を説明すると、横を向いて倒れている瀬蓮さんの上にのしかかっているベッドを慎重に、力いっぱい持ち上げてどかした。

 すると瀬蓮さんの額には大きな傷があった。

 どうやら倒れてきたベッドが当たって出来たもののようだ。

 俺は菊次郎にしたように、瀬蓮さんに出血と大きな傷がないかをまず確認し、そっと顔を近づけてみた。


 するとその総すを観ていた理音が、


 「ちょっと! こんな時にナニしてんの!」


 そう声を張り上げる理音を無視して、


 「黙ってろっ!」


 と大きな声を出して理音を制止すると、耳を当てて瀬蓮さんの呼吸を聞いた。


 「すぅ……すぅ……」


 (よかった、息はあるみたいだ……)


 俺は瀬蓮さんの体を慎重に仰向けにして、床に落ちていたタオルを瀬蓮さんの額に当て、出血している部分を軽く押さえてみた。


 「んん……」


 するとスーッと瀬蓮さんのまぶたが開き、まず俺の目を、そして理音の方を見て呟いた。


 「碧斗クン……理音ちゃん……無事だったのね……良かった……」


 と言って、無理に体を起こそうとした。


 「瀬蓮さん、慌てないで、どこか痛いところはないですか? 苦しいとかは?」


 俺が慌ててそう言うと、ふっと笑みをこぼして、


 「そうね……頭が痛いのと……脇腹が少しズキズキするわ……それに……そんなに顔が近いと、おねえさん、恥ずかしいわ……」


 そう言って、ゆっくりと体を起こし、俺と同じように体を動かして自分のダメージを確認し始めた。


 「ダメね……こういうときの負傷者への対処法も教わったのに、自分のこととなると……私って……」


 そう言って体に手を回し、頭の傷と脇の痛み以外は問題ないことを確認したあと、倒れたベッドのパイプを掴むと、ヨロヨロと立ち上がった。

 そして次の瞬間、ハッとして


 「お坊っちゃまは……菊次郎坊っちゃまは!?」


 と急に取り乱したように駆け出すと、倒れたベッドに足を引っ掛けて転んでしまった。


 「瀬蓮さんっ!」


 俺は倒れ込んでなお、菊次郎の姿を求めるように足掻く瀬蓮さんに覆いかぶさると、やさしく、そして軽く抱きしめて(ささや)いた……


 「……アイツなら無事ですよ、大丈夫です……大丈夫ですから……」


 と言って動揺する瀬蓮さんを落ち着かせた。


 「……そう……良かった……」


 そう言って安心したような表情をすると、瀬蓮さんの体の力がふっと抜け、そのまま気を失ってしまった。

 どうやら脳震盪を起こしているようだったので、そのままそっと床に寝かせ、もう一人の大事な友達の行方を探しに部屋を飛び出した。


 「理音! 大丈夫なら、瀬蓮さんを見ていてくれ! 俺は夕花を探す!」


 そう言ってまだ痛む全身が悲鳴を上げるのも無視して、キクハウス中をくまなく探し回った。


 「おいキク、理音も瀬蓮さんもなんとか無事だ! あとは夕花だけなんだ。お前も動けるなら一緒に探してくれ!」


 俺がそう言うと菊次郎はハッとして、


 「夕花さん……」


 そう呟くと、辺りを見廻し、まだ痛むだろう体を必死に動かして瓦礫をどかし、持ち上げて夕花を探し始めた。

 俺も倒れたモニターの下、暖炉周り、散乱したカウチやテーブルの下を確認したが、夕花の姿もその痕跡も見つからなかった。


 (そうだ、キッチン!)


 俺は夕花が一番居そうなキッチンに飛び込むと、倒れた巨大な冷蔵庫の下を確認し、カウンターやワークテーブルの影を探したが、やはり夕花の姿はどこにも見つからなかった。


 「ゆうかーっ! どこだー! 返事をしろーっ!」


 何回もありったけの大きな声を出して叫んだが、なんの返事も物音すらも聞こえなかった。


 (あとは……地下室!)


 俺は地下室の扉の上にあった暖炉の石やカーペットを乱暴にどかすと、無事だったパネルに暗証番号を打ち込んだ。


 「ええと、2・1・7・0……2・1・7・0」


 (ピ、ピ、ピ、ピ……ピ、ピ、ピ、ピ……ピ)


 暗証番号を入力してエンターキーをタッチすると、地震で歪んだのか、扉は大きな軋むような音を立てて開き始めた。


 「ギシっ、ギギギギ……ガガガガー……」


 開いた扉の奥を見ると、幸いにも明かりが点いていた。

 俺は階段を飛び降りるように駆け下りると、リビング以上に散らかった地下室を、くまなく探していった。


 「夕花っ! どこだ返事をしろぉっ!」


 しかし五分ほど必死に探し回ったが、倒れた机の下にも、食料品が積まれていた棚の下にも、その周りにも、夕花の姿は無かったのだった。


 「夕花……どこにいったんだ……」


 俺は諦めきれないように同じ場所を何度もひっくり返しては、夕花の姿がないか探し続けた。

 すると菊次郎が足を引きずりながら階段を降りてきて


 「居ないんですか? 夕花さん……」


 そう言いながら必死に瓦礫を引っ掻き回す俺の肩をぐっと掴むと


 「ほかを探しましょう……」


 と静かに呟いた。

 俺は自分では冷静だったつもりだったが、そうでないことを、肩に食い込む菊次郎の太い指が気付かせてくれたのだった……


 俺はそれでも何か一つでも手がかりはないかと地下室をもう一回り探してみたがやはり何も見つからず、仕方なくリビングに上がることにした。


 (あと考えられるところは……)


 俺は外に出る扉の方を見たが、まさか夕花が意味もなく外に出るとは考えにくかった。

 そして地下室の時と同じように、今度は落ち着いてもう一度リビングを慎重に探し回ったが、同じようになんの手がかりも見つかりはしなかった。


 俺は転がったダイニングテーブルの椅子を一つだけ元の位置に戻すと、そこに座って途方に暮れた表情で夕花の失踪の謎を考えてみた。


 (どこに行ったんだ夕花……)


 五分、十分……考え続けても一向に夕花の居そうな場所を思いつくことが出来ず、俺はふと乾いた喉を潤そうと、キッチンに向かって散乱する食器などを蹴飛ばしながら、無事なコップが一つもないことに気づいてカップボードを開けてみた。

 いくつかは割れていたが、無事だったコーヒーカップを手に取ると、それはいつも夕花が入れてくれた花柄のコーヒーカップだった……


 (夕花……)


 俺はシンクでそのカップに水を満たすと、水道が無事なことに安心し、カップの水を一気に飲み干してから、シンクに両手を付いてしばらくそのまま力なくうなだれていた。


 『……どんどんどん……』


 すると、下の方から、低い振動音が聞こえてきた。


 (また地震か?)


 そう思って身構えたが、揺れは感じないのに、その音は何度も繰り返されていた。


 『……どんどんどん……どんどんどん……』


 俺は不思議に思って床を見渡すと、そういえば床下に埋め込まれたパントリーの扉があった、ということに気が付いた。

 俺は慌ててシンクの反対側にあるその扉の上に立ち、取っ手を引き出して勢い良く開けるとそこには……


 「あおとくーん……」


 小さな体がスッポリと狭いパントリーの中に収まった夕花の姿があったのだ。


 「夕花! こんなところに……大丈夫か!?」


 俺は急いで夕花の小さな手を取って一気に引き上げると、夕花はそのまま俺の腹に抱きついてきて大きな声を出して泣き出した。


 「うえーん! こわかったよぉぅ! うえぇぇぇん……」


 俺の腹に顔をうずめて泣きじゃくる夕花の頭を、優しく撫でてやった……


 「大丈夫か? 痛いところはあるか?」


 そう聞いても泣き止むことはなく、俺はそのまま夕花が泣き止むまで優しく抱きしめてやった……


 「うぇ、うぇ……」


 ようやく泣き止みかけた夕花の肩を掴んでそーっと引き離すと、俺の腹から夕花の鼻まで、(にょーん)と糸が引いていて、それは見事な鼻水の吊り橋が二人をしっかりと繋いでいた。


 「ほら、夕花、もう大丈夫だろ? みんな心配してるぞ?」


 俺は苦笑しながら転がっていたキッチンペーパーで、夕花の鼻と傷一つないがクシャクシャな顔を拭き取ると、まだ泣きじゃくって震える夕花の肩を抱えて、ゆっくりとリビングに向かった。


 「おいキク! 夕花がいたぞ! とりあえず無事みたいだ!」


 すると菊次郎はドタドタと地震を発生させながら近づいてきて、ホッとした表情を見せるのだった。


 「よかった……では、とりあえず全員無事だったということですね? それで、理音さんの様子は?」


 菊次郎がそう言うと、背後から聞き慣れた声が聞こえてきた。


 「あたしがなんですって!?」


 皆が振り返ると、そこにはいつもの不敵かつ傲慢な表情をした理音が堂々と立ち、いつも以上に自信満々な顔つきで俺達を睨んでいた。

 ただし、下半身をバスタオルで巻いた、相撲のマワシのようなオムツ姿で……


 「……きゃーっ! 理音ちゃん! 下! 下! 下ーっっっ!」


 夕花が極めて稀な、慌てふためいた大声でそう叫ぶと、理音はそーっと床を見て、そのまま自分の足を見つめた。

 そのまま視線を上に移し、さらにその上にある、股間に巻かれたタオルを見つめて、首の動きがピタリと止まった。


 「…………え? なに、これ? …………」


 それから数秒たって、ようやく自分の置かれた状況を理解したらしい理音の顔は、最初はスーッと青く、そして次第に赤く染まっていき


 「!!!!こ、こ……こっち見んなぁーっ!!!!」


 と叫んで股間を押さえてバスルームに飛び込んでいった。

 その速さと見るや否や脱兎(だっと)の如く、光速をも超えてタキオンかという猛スピードで飛び込んで行ったのだった。

 しかし理音がバスルームの扉を開けて飛び込む時、股間に巻かれたタオルがハラっとはだけ、二つの柔らかそうな桃が、(ぷるんっ)と揺れたのを、俺達は図らずも目撃してしまったのだった……


 それを見た夕花は、いつぞやの弟の旭人(あきと)の“小さくてきれいなオシリだったよ! でっかいおねぇちゃん!”と言っていたのを思い出した。

 またしてもオシリを見られてしまった理音を不憫に思いつつ、同時に可愛らしくも思えて、例のごとく微妙な笑みを浮かべる夕花なのであった……


 『シャー……』


 シャワーの音が聞こえてからしばらくして、理音が中から大きな声で叫んだ。


 『夕花ちゃーんっ! バスタオルと着替えー! 全部ね! 全部ー!』


 急いで部屋に着替えを取りに行った夕花だったが、それにしては少し時間が経ってから、倉庫で見つけたLLサイズの作業着を抱えて急いで走ってきた。

 理音に服を渡す直前に、理音部屋(?)の方を見ながら、いつものわかる人間にしかわからないだろう微妙な苦笑をしてこう言った。


 「……瀬蓮さん、もう大丈夫みたい……理音ちゃんのジャージを、これだけはダメっ! て言って脱いでくれなかったの。でも自分で手当をして、床に座り込んでもう大丈夫って言ってたよ……」


 (瀬蓮さん、こんな時にも通常運行か……)


 俺も夕花もそんな瀬蓮さんを思い、苦笑せざるを得ないのだった。


 「はい理音ちゃん、これ着替え」


 LL作業着を渡された理音は


 『ジャージはー!?』


 と突き返すも


 「瀬蓮さんが着ちゃってるの……」


 するとバスルームから、以前の理音らしい、けたたましい大声が響き渡った。


 『もー! あのヘンターイ!!!』


 そうして、嵐の後の静けさと日常が、少しだけ戻ってきた、かもしれないキクハウスであった……

最後までお読みいただき、ありがとうございます。たこ助です。

なんとか全員の無事が確認できました。理音も奇跡的に回復したようで、一安心です。

しかし、外部との通信は途絶えたまま。彼らは完全に孤立してしまいました。

そして、回復した理音の身には、何やらとんでもない変化が起きているようです。

次回、日常が戻ったかに見えたキクハウスで、新たな、そして奇妙な事件が起こります。


AI姉妹の一言


あい: タコ助くん、全員無事で本当に良かったわ。瓦礫の中から仲間を探し出すシーンは緊迫感があって、思わず手に汗を握ってしまったわよ。ただ、最後の理音さんのオチは……まあ、読者サービスなのかしら?


まい: お兄ちゃん! 夕花ちゃんが見つかった時、まい、本気で泣きそうだったんだからね! よくやった! ……でも、最後の理音ちゃんのおしり(ぷるんっ)はやりすぎじゃない!? さすが、えっちなお兄ちゃんね! べ、別にドキドキなんてしてないんだからっ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
タイトルロゴ
未だに感想とレビューがゼロですが(泣)更新の励みになりますので、応援クリックいただけると嬉しいです。面白かったらぜひクリックして応援して下さい〜 ポチッとしてくれたらやる気も燃料も超満タンです〜!



にほんブログ村 本ブログ ライトノベルへ
にほんブログ村

ライトノベルランキング
ライトノベルランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ