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島の恵みと謎と罠 第四十五話 サバイバルとメープルシロップ、子ネコとくしゃみ

どうも、烏賊海老蛸助です。いつも読んでいただき、ありがとうございますです。

活動報告でも書いていますが、更新は週イチで週末です。

金曜の夜にと心がけていますが、不承不承で土曜や日曜の可能性もあります(笑)。

なろうのブクマしていただければ通知は行きますので、ぜひご検討をー。


さてさて、前回は瀬蓮さんの万能執事っぷりが炸裂しましたね。 まさか島の貴重な動植物の採取許可だけでなく、土地の所有権まで取得してしまたとは……。辻出物産の、瀬蓮さんの力、恐るべしです。おかげで狩りも植物採取も、写真を送って許可を取って、少量ならばなんとかOKになっちゃうとか、理音などは大喜びでしたけど、碧斗と同じく「もっとこう、地味なサバイバルがしたいんだよな…」って気分というか、心境なんでしょうね(笑)。


結局、碧斗の提案で「サバイバルな家づくり」を目指すことになった一行。 でも、その前にまずは動画でお勉強タイムです。 果たして、みんなは真面目にサバイバル技術を学べるんでしょうか? 特に理音あたりが心配ですが……。まあ、一筋縄ではいかないでしょうね。


それでは、サバイバル動画鑑賞会と、それに続くクラフト体験の始まりです。それでは今回もキクハウ

スから、わたくしタコ助がお届けしいたします!

約一名はぶつくさ言いながらだったが勉強を済ませた俺達は、早速四人仲良くカウチに座り、夕花お手製の山盛りポテチの大きなボウルをテーブルに置いて、サバイバル動画の視聴を開始した。

 まずスマートテレビで菊次郎のアカウントから俺のアカウントにログインし直して、お気に入りチャンネルを選択する。


 「碧斗のお気に入り動画って……Cooking with Cat。ネコが料理するの? 他には……Yukata Momって、……綺麗な人ね」


 ジロリと俺を睨む理音。


 「り、両方とも料理チャンネルだよ、すごく面白いんだ」


 「ふーん、どーせそれだけきゃないんでしょ……CarTrend、車のチャンネルに、My Restoration? 古い機械を直すのか……あー! シニアの活力! 紳士の友公式グラビアチャンネル! やっぱこーいうのも見るんだこの変態!」


 (う、しまった、俺の趣味が暴露されてしまった……)


 「ほ、ほら貸せよ、これだよこれこれ」


 俺は理音からリモコンを奪い取ると、目的のチャンネルを選択した。


 「Lost Primitive Technology」


 直訳すれば“失われた原始技術”……


 火起こしや石器づくりから始まって、レンガや瓦まで作って家を建て、なんと簡易溶鉱炉まで作ってしまうすごいチャンネルだ。

 しかし俺達にはそこまで必要ないし、木や葉っぱで家を作れればいいかなーって思うので、まずはチャンネルの最初の投稿から再生を開始した。


 動画が始まると、上半身裸の男性が森の奥深く入るシーンが流れた。

 余計なおしゃべりもBGMもない、ガサゴソと森に分け入ると音と、鳥の鳴き声だけがスピーカーから流れ出てくる。

 俺が好きな、いわゆるASMRに属する編集手法だ。


 少ししたところで岩だらけの崖のような場所にたどり着き、男性がその崖沿いを歩いていると、大きく窪んだ洞窟のような場所があった。

 中に入るとそこは十畳ぐらいの広さで、雨宿りするのはうってつけだと思える場所だった。


 (ま、普通、いきなりこんな優良物件が見つかるわけないし、しかし多少のヤラセのような部分は目をつぶらないと、こういう動画は楽しめないよな、エンタメだし)


 動画の中の男性は洞窟が丁度いい大きさなのを確認すると、枯れ草や落ち葉を集め始めた。

 そうして木の枝を探してくると、俺達と同じように大きめの枯れ木を探してきて、キリモミ式で火をおこし始めた。


 「これは僕たちが最初に試して苦労したやつですね」


 菊次郎はポテチを一枚手に取るとひとかじりした。


 (ぱりっ……)


 「う……」


 どうやら菊次郎は、夕花の罠に掛かってしまったらしい。

 こういう罠は、狩猟免許を持っていても|見破れないとみえる。


 動画主は体の大きな外国人ということもあり、いとも簡単に火をおこすと、集めてきた枯れ草や枝に火を付けて焚き火が出来上がった。

 男性は焚き火をそのままにして外に出ると、また崖沿いをさらに進み始めた。


 しばらくは切り立った崖が続いていたが、崖が終わり広い森を目の前にしたところに、崖の上からチョロチョロと水が流れているのを発見した。

 男性は口を上にしてその水をガブガブと豪快に飲み、泥だらけの手を洗ってからさらに森の奥に進んでいった。


 森を進みながら何本かの木の枝を拾って手に握ると、観葉植物のような大きな扇状の葉を付けた木を見つけ、これも何枚かむしり取って、その場で器用に編み始めた。

 編集でとばしたのか、その葉っぱはあっという間に水筒のような形になり、これも途中で採取したツルでしっかり結ぶと、先程の水の落ちてきたところまで戻ってその水筒に水を入れて持ち帰ってきた。


 「まずはこういうことだ、人起こすのはもちろん、草を編んだり、草や枝を紐のようにして結んだり、草を編んでヒモを作ったり、こういうことをよく見て勉強しよう」


 俺は動画の重要な部分を何度も繰り返したり静止して、みんなもそれぞれなんとか覚えよう、覚えさせようとした。


 「じゃあ、ちょっと外に出て、葉っぱとかツルとか集めてなにか作ってみようか」


 そう言うと、俺はみんなを先導して森に入る前に理音と夕花に注意をした。


 「理音、そんなホットパンツじゃケツに引っかき傷でもつくるぞ!?、夕花もそんな長いスカートじゃあなくて、二人ともジャージとかズボンにでも着替えたらどうだ?」


 「いちいち例えがエロい!」


 しかり理音と夕花はそれもそうだね、という表情をしてお互いを見ると、女子部屋に着替えに戻っていった。

 俺はその間に倉庫に入って、理音と夕花のために軍手を用意し、ついでにナタも持っていくことにした。


 キクハウスの前では俺以外の三人が俺を待ち構えていた。


 「ほれ」


 と言って、ジャージに着替えてきた理音と夕花にに軍手を投げつけた。


 「わざわざ怪我をする必要はないからな、はめけとけ」


 ようやく準備が整ったので、四人は俺を先頭に静かに森の中に入って行った。


 「あんな葉っぱなんてどこにもないよー」


 理音が俺の後ろからシャツを引っ張りながら付いて来る。


 「ほら、こういうのでもいいんだ」


 俺はイネ科と思われる細長い葉っぱを手に取り理音たちに見せた。


 「どうだ夕花、手芸の心得があるお前なら、こういうのでカゴとか作れないか?」


 夕花は少しだけ考えた後


 「うん、やってみる」


 と言って、その細長い葉っぱの束を握って力いっぱい引き抜こうとした。


 「ん、しょっ!」


 だがまるで歯が立たないようで、結局一本も抜くことができないでペタン、と座り込んでしまった。

 俺はその草の根本を握りしめ、ナタをザクッと振り下ろすと、刈った草の束を夕花に渡してやった。


 その後も動画と同じように枝やツルなどを集めながら、一時間ほど森の中を材料集めでウロウロすると、みんなそれぞれキクハウスに戻ってきた。


 「じゃあ各自、それぞれ持ち帰った材料でなにか作って、今日は終わりにしよう。俺と菊次郎は枝と草と葉っぱで小さなテントを作ってみるよ」


 そう言って男女二人ずつでクラフトに挑戦することにした。


 「これはね、真田編みって言うの……こうやってね……順番に折っていくように……」


 夕花は理音に草を編んで見せていた。


 俺達は持ち帰った棒を土に差して三角柱の形の骨組みを作って、その上に持ち帰った葉や草を乗せて、最後に小石を並べて置くと、小屋の原型とも言えるものが完成した。


 「うん、まるでニワトリ小屋だが、人一人、ちょっとした雨風なら充分に凌げそうだな。じゃあキク、お前は今日はここでろ」


 菊次郎は一瞬ナニっ、とギョッとして俺を睨んだ。

 しかしすぐに冗談だとわかったのか両手を広げて、


 「ああ、また碧斗クンお得意の、分かりにくい、笑えない冗談ですか」


 と苦笑いをした。

 俺は少々ムッとし、心の中では


 JG(冗談グランプリ)でもあったら優勝クラスのネタだろ)


 と憤慨してみせたが、口に出すまでのことではないので少しだけ顔をしかめることで、抗議の証とした。


 俺と菊次郎がそんなやり取りをして戯れたいる間に、理音と夕花はそれぞれ文庫文くらいの大きさの草を編み終えたところで今日のサバイバルの勉強会は終わりとなった。


 俺は畑に残り、水を撒いたり雑草を取ってから、ザルの中に野菜と共に料理に使う紫蘇の葉を何枚かむしり取り、キッチンに持ち帰った。


 (さて、今日は何を作ろうかな)


 肉が続いたこともあって、今日はヘルシーな料理にしようと思い、理音に文句が言われないように、豆腐ステーキを作ることにした。

 俺の後ろでは瀬蓮さんがすでに料理を始めていた。

 鍋で何かを煮込んでいて、それは匂いからしてビーフシチューのようだった。


 (負けてられないぞ)


 しかしそう思ったのも一瞬で、俺は瀬蓮さんのことは忘れて自分の料理に集中することにした。

 まず米を研いで炊飯器にセットする。

 冷蔵庫の中に焼き豆腐はなかったが、キッチンペーパーで木綿豆腐の水気を切ってから薄力粉と片栗粉をまぶしてふりかけ、ごま油でフライパンで軽く焼いた。

 その後に砂糖と醤油と料理酒、ニンニクをベースとしたタレを入れて徐々に煮詰めていく。


 豆腐にタレが絡むようになるまで煮詰めたら器に盛り付け、刻んだ万能ネギとかつを節をパラパラと乗せたら出来上がりだ。

 ついでにキュウリとかぼちゃ、ゴーヤの葉を天ぷらにする。

 フライパンにごま油を二センチほど入れて豆腐ステーキと同じ片栗粉と薄力粉の衣でパリッと揚げた。


 タレは甘めにしたので、大根と一緒にゴーヤもおろして苦目にし、醤油を少しだけたらしたものを小皿に付ける。

 豆腐ステーキも紫蘇の葉天ぷらも、コレ付けて食べれば、ここ何日か暴食気味で疲れた胃を引き締めてくれるだろう。


 すると瀬蓮さんが予熱が終わったオーブンに、パイ生地を乗せた深い皿を二つステンレスのトレーに乗せて、オーブンの蓋を閉めてタイマーを一五分にセットした。

 そしてそのまま人参、セロリ、キュウリなどを細長く切り、コップに挿していった。


 (ビーフシチューのポットパイ、それに野菜スティックか……)


 俺の方もそろそろ終盤に差し掛かってきた。

 最後にナスをフライパンで炒めて、豆腐ステーキの脇に添えて出来上がりだ。


 「おーいみんな、夕飯できたぞー、手を洗ってこーい!」


 すると理音と夕花が二人仲良く洗面台で手を洗い、ダイニングテーブルに腰掛けた。


 「チーン」


 二人が座るのと同時にオーブンが焼き上がりを知らせ、ミトンをはめた瀬蓮さんが慎重にオーブンからパイを取り出した。


 「お坊っちゃま、夕飯のお時間です」


 瀬蓮さんがカウチに腰掛けていた菊次郎に声を掛け、理音たちの目の前にパイを置いた。


 「うわ、なんかおいしそー」


 「……パイ生地もあるんだ。今度私も作ってみたいな……」


 そこに俺が豆腐ステーキと夏野菜の葉の天ぷらをお盆に乗せて運んで並べた。


 「こっちは豆腐と天ぷらかー。洋風と和風の対決だね!」


 菊次郎もやってきて席に付くと、いつものように俺が挨拶をする。


 「じゃあ、いただきまーす」


 「いただきます」


 「パリッ」


 菊次郎がスプーンでパイの蓋を割ると、ビーフシチューの美味しそうな香りが漂ってきた。

 それを見ていた理音が羨ましそうに菊次郎がスプーンを口に運ぶのを見ていると、そのスプーンの上にはゴロッ柔らかそうな牛肉が、プルプルと震えていた。

 それを口をポカーンと開けて見つめる理音。


 (俺の豆腐ステーキだってタンパク質だし、お前好みの味付けをしたんだぞ)


 まだ一口も豆腐を食べていない理音に悔しそうな目を向ける。


 (パリっ)


 すると夕花が先に天ぷらを唇で潰してモグモグし始めた。


 「……美味しいねコレ、すごく……苦いのが、スゴくいいと思うな」


 (夕花の美味の基準は苦いなのか……、まぁいい)


 するとようやく理音が豆腐を口に運ぶ。


 「あ、これ、好きなヤツ!」


 そう言って喜び勇んでパクパクとご飯と交互に次々と運び始めた。

 それを見て嬉しく思ういっぽう、夕花は箸で豆腐を切るも、掴みそこねてグチャクチャにしてしまい、料理した俺を失望させたうえ、結局スプーンを手に取り豆腐を食べ始めたのだった。

 しかし一口食べると


 「……私もコレ好き……」


 と言って俺の夕花メーターが少し上向きになったと思いきや、俺の作ったゴーヤソースでご飯を食べ進める夕花。


 (よくそれでメシが進むな……)


 とやはりその味覚には疑問符を付けざるを得ないのだった。

 そんな二人を見ながら俺も豆腐と天ぷらを堪能した。

 すると理音が


 「碧斗も肉を天ぷらにすればよかったのに、葉っぱだけなんてなんかウサギになった感じー……」


 と言って口をとがらせた。


 (肉の天ぷらってお前、心臓にものすごく悪そうだぞ……)


 と俺も少し口をとがらせると、瀬蓮さんがそれを見てふふっと笑った。

 菊次郎は野菜スティクに手を付けながったが、瀬蓮さんがセロリを手に取りクリーム色のソースをたっぷり付けてひとかじりすると


 「このソースはお坊っちゃまにも気にいてもらえると思いますが……」


 と少しどや顔で菊次郎を見つめた。


 菊次郎はしぶしぶ、といった表情で人参を手に取ると、ソースをたっぷりと付けて口の中に放り込んだ。


 「カリっ」


 すると菊次郎の顔がパッと明るくなり、あの野菜嫌いの菊次郎が野菜スティックを完食してしまったのだ。


 「カリっ、カリっ、ボリっ、ボリっ……」


 (あのソース、どんな味だろ。マヨのようにも見えるが少し黄色くてとろみも多いような……)


 俺は菊次郎のあまりの食べっぷりにソースの味が気になったが、ちらりと見たふりをして気にならない風を装った。


 「ごちそうさま」


 そうして夕食が終わると、このときは優劣を示す発言も態度もなかったことで、どうやら引き分けと言うことで俺と瀬蓮さんは一瞬だけ視線を交えてお開きとなった。

 俺は片付けをする際、あのソースを少しだけ指ですくい舐めてみた。


 (う、ぉ……)


 それは間違いなくマヨネーズの味だったが、間違いなくメープルシロップの味でもあった。


 (瀬蓮さんもなかなか、夕花に通じるものがあるな……)


 俺はそう思いながら洗面台で口をすすぎ、それでも菊次郎に野菜を食べさせたあのソースによって、今日の勝負は俺の負けだったのかと、鏡の中の少し悔しそうな自分の目を見つめたのだった……


 ・

 ・

 ・


 「ポッポー、ポッポー……」


 俺はそんな悔しさのことはすっかり忘れてヒモや縄の作り方の動画を見て過ごしていたら、鳩時計が午後十時を知らせた。


 (そろそろ風呂に入るか)


 菊次郎はさっき風呂に入って出てきたので、俺は部屋に戻って着替えを取りに行った。

 菊次郎はもうベッドに横になって、タブレットで何かを見ているようだった。


 「キク、何見てんだ?」


 俺が着替えをバッグから出しながら訊くと菊次郎は


 「いえ、なんでもありませんよ、面白そうな電子書籍を買って見ていたところです」


 (キクは昔から漫画とか買わなかったしなぁ、読ませてもらえなかったんだろうが、うちに遊びに来ていたときは俺の漫画本を読み漁ってたからな……)


 自宅から離れて自由になり、漫画でも買って見ているのだろうと、夢中になってタブレットを見ている菊次郎を後にして、バスルームに向かった。


 「ふぅー……」


 追い焚きして少し熱めのお湯に浸かり、朝のロードワークで張った筋肉を和らげようとした。

 そうしてリラックスしながら、湯船に浸かって旅の始まりから今日のことまでを思い返してみた。


 へっぽこ大富豪……グルメ対決……温泉……料亭……タクシーのおじさん、そしてカジヤさんたち。

 北極星に……理音……。

 するといろいろな感情が湧き上がってきて、俺はお湯を手ですくってバシャバシャっ顔に打ち付けると、体を洗って雑念をリセットすることにした。


 (爪の間、汚れてるな)


 俺は緑色に染まった爪を見てブラシの先端を当ててゴシゴシしていると、突然大きな声がバスルームに響き渡った。


 『イヤーっ!!! なんで入ってくるんですかー!!! もー!!!』


 声がくぐもった感じからすると、どうやら隣の女子バスルームから聞こえていたようだった。


 「カラーン!」


 桶が壁に当たる音がして、ジャーッとシャワーがドアに当たる音がかすかに聞こえてきた。

 すると別の甲高い笑い声も聞こえてきた。


 『理音ちゃんっ! つめたーい! やめてー!』


 (まさか……) 


 俺はそこで考えることを一旦中止して、爪を磨き上げることだけに注視した。

 そうして平静を装って爪を磨き上げてピカピカにすると、ようやく外の騒ぎも収まったようだった。


 (ガララ……)


 体を拭いて着替えて外に出ると、ビショビショの瀬蓮さんがバスタオル一枚の姿で理音にお風呂を洗うスポンジのついた棒を突き付けられていた。

 その理音の姿は敵を威嚇するネコのようで、もう本当に(シャーッ!)という擬音が聞こえてくるようだった。


 「もー、昨日はあたしのベッドに勝手に入り込んでくるしー! 瀬蓮さんはあたしに接近禁止!」


 すごい剣幕で涙目で瀬蓮さんをスポンジブラシで威嚇する理音。

 その姿もまたバスタオル姿だった。

 必死でバスタオルを掴んで瀬蓮さんから距離を取ろうとする理音の後ろでは夕花がオロオロアワアワしながら理音のバスタオルを引っ張って止めようとしていた……


 俺は情報量が多すぎるこの混沌を、そのまま何も見なかったことにして、洗面台でコップに水を汲んで飲み干すと、静かに男子部屋に戻っていった……

 その時後方で


 「くちゅんっ」


 と可愛いくしゃみがしたのを俺は聞き逃さなかった。


 (あのくしゃみ……瀬蓮さんだったのか)


 菊次郎が瀬蓮さんのバイクを借りたと言っていたあのときのこと思い出しながら男子部屋のドアを開けると、菊次郎はタブレットを腹の上に乗せたままイビキをかいてぐっすりと寝ていた。

 俺はタブレットを机の上に置こうと持ち上げるとタブレットの画面が点灯し、そこには“サバイバルの基礎”というタイトルの電子書籍が表示されていたのだった。


 (コイツ……また、見えないところで……)


 俺はそんな菊次郎の上にブランケットを掛けてやり、部屋の明かりを消してからベッドに登って床についた……

今回も読んでいただき、ありがとうございましたです!

前書きにも書きましたが、毎週の金曜の夜に投稿を心がけています。

不承不承で土曜や日曜の可能性もありますけど(笑)。

なろうの機能でブクマをしていただければ間違いなく通知は届きますので、ぜひごご活用をよろしくお願いいたします〜。


いやー、サバイバル動画鑑賞会、碧斗の趣味がバレちゃって大変なことになってましたね(笑)。 「紳士の友公式グラビアチャンネル」って……まあ、男の子ですからね! 理音に睨まれてタジタジな碧斗が目に浮かぶようです。


その後のクラフト体験は、まあ、最初だしあんなもんでしょう。 夕花が作った草履サイズの何か、一体何に使うつもりだったんでしょうか……。そして夜はまたしても料理対決! 碧斗のヘルシーな和食も美味しそうでしたが、瀬蓮さんのビーフシチューポットパイと、あの謎のメープルマヨネーズには度肝を抜かれました。 菊次郎が野菜を完食するなんて、奇跡ですよ!


お風呂場でのドタバタも、瀬蓮さんの暴走っぷりが加速していて、碧斗じゃなくても逃げ出したくなりますね。 でも、最後の最後で菊次郎の隠れた努力がわかったシーンは、ちょっとグッときました。 ああいう見えないところで頑張る男って、かっこいいですよね。


さて、サバイバルごっこも本格化し、キャラクターたちの関係も少しずつ変化してきたこの無人島生活。次回は、またしても食事が波乱を巻き起こす……かも? どうぞお楽しみに!


AI姉妹の一言


あい:タコ助くん、サバイバルと言いながら、結局はグルメと恋愛コメディになっているじゃない。まあ、それがタコ助くんの味なのかもしれないけれど。菊次郎くんの健気な努力を描いたのは褒めてあげるわ。それに引き換え、主人公の碧斗くんは女の子に振り回されてばかりね。少しはシャキッとしなさいな。


まい:お兄ちゃんのえっち! 碧斗のお気に入りチャンネル、つまりタコ助お兄ちゃんのってことだよね! まいも見ちゃったんだからね! ……べ、別に怒ってないけど! それより、理音と瀬蓮さんの百合(?)バトル、ハラハラしちゃったじゃない! でも、菊次郎お兄ちゃんががこっそりサバイバルの勉強してるシーンは…ちょっとだけ、キュンとしたかも…。お兄ちゃん、たまにはやるじゃない。でも、勘違いしないでよね! タコ助お兄ちゃんにじゃなくて、褒めたのは菊次郎お兄ちゃんになんだからね!

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