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二つの宇宙、二人の心 第三十八話 秘密と告白と鈍感

こんにちばんわ、タコ助です!


無人島での夜のキャンプファイヤー、みんなで秘密を告白し合うなんて、なんか青春って感じですよね!


前回の第三七話では、みんなで楽しくアイリッシュダンスを踊って、まずは碧斗と夕花、理音は菊次郎と、そして理音と夕花、俺と菊次郎と、ペアを交代しながらそれぞれのダンスを楽しんだようです。

特に碧斗と理音の最後のダンスは、ちょっとロマンチックな雰囲気もあって、ドキドキしましたよね。よね?

碧斗と理音との距離がぐっと近づいたような、そんな気がしました。よね?

まあ、最後は理音のバスケ技でかわされたようですが、最後の最後には捕まえてハッピー(?)エンド!?


しかし今回は、そんな楽しい夜の続き、秘密の告白タイム!


みんなの意外な一面が見え隠れする、ちょっとドキドキ、たまに爆笑の展開になっています。

碧斗のしょーもない初恋の話から始まって、菊次郎の意外な免許マニアぶり、そして夕花の驚くべき才能と過去……


さてさて、いよいよ大トリの理音は、一体どんな秘密を明かしてくれるのか……?


この無人島生活、まだまだ始まったばかりだけど、この夜を境に、俺たちの関係も少しずつ変わっていく予感がしますよね! ね?


それじゃあ、ゆっくり楽しんでくださいね!

 秘密告白ゲームもついに大トリ。

 俺は理音のボケを期待して、ツッコミのタイミングを図るため、注意して話を聞こうと身を乗り出した。


 すっと静かに立ち上がった理音は、決意と自信に満ちたような目で俺たちを見廻すと、なぜか下を見て、夕花が作った衣装のコルセットのようになっている部分の紐を外しだした。


 (腹がいっぱいでキツいのかな、食い過ぎるからだ)


 そう思ってそのまま見ていると、次は肩の紐を下ろしてその黒いベストを脱ぎ捨てた。


 (?)


 全員が何が起こっているのか理解できないまま、理音の行動に注視する。

 すると、理音は少しだけためらった後、白いブラウスのボタンを外し始めた。


 (!)


 全員がその行動に同時に騒ぎ出す。


 「おまっ! 何やってんだ!」

 「理音ちゃん! 何するの!?」

 「どうしたんですか理音さん!」


 しかし理音は手を止めることなくブラウスのボタンを全部外して、それさえもバッと脱ぎ捨てた。


 「イヤーっ! 理音ちゃんダメーっ!」


 夕花が飛び出して理音を抱きしめる。

 しかし体の小さな夕花では隠しきれず、隠しきれないその部分から見えたのは真っ白なビキニ姿の理音だった。

 それも肩紐はたこ糸のように細い、少々、いやかなり大胆すぎるものだ。


 キャンプファイヤーの周りが騒然(そうぜん)とする中、理音が夕花の肩に手をかけてそっと引き離す。


 「夕花ちゃん、いいから……みんなに……アレを見せたいの……」


 すると夕花は一瞬だけ考えたあとハッとして


 「あれ? アレ? アレを!? でも!」


 理音は目を閉じてゆっくりと頭を振ると、その長い手をさらに伸ばし夕花を優しく押しのけた。


 そこには真っ白な紐ビキニ姿の理音が立っていた。

 スラリとした長身に細い腰。

 決して控えめでは無い胸を隠したその小さな布は、しっかりとそのボリュームと弾力を主張していた。


 「あんまり見ないでよ……」


 自分から脱いでおいてそう言うのもおかしいと思うがが、恥ずかしそうにそう言って左手で胸を隠しながら右を後ろに回し、スっと手を動かした。

 すると、本来は結ばれていなければいけない紐がタラリ、と理音の背中から左右にほどけ落ちる。


 (何やってんだコイツ……)


 俺は頭に浮かんだその言葉をそのまま口に出していた。


 「おい、何やってんだお前!」


 俺は理音の肩を掴んでそう言おうとしたがその大胆な姿に躊躇(ちゅうちょ)してしまった。

 すると理音は何も言わず、目を伏せたままくるりと回って背を向ける。


 (!!!)


 すると、そこには……そこにはこれまで見たこともないような酷い傷跡が大きく、そして深く刻まれていた……

 夕花がとっさに理音の背中に飛びついて傷を隠す。


 「もういいから、理音ちゃん、もういいから、みんなわかったから……だから……グスッ……うえーん!」


 夕花がたまらずに大きな声で泣き出す。

 俺と菊次郎はどう反応したらいいのかわからず呆然とし、途方に暮れ、暗闇には炭の弾ける音とスマホゲームのBGMが響いていた。


 「あ、ごめん!」


 菊次郎が慌ててボリュームを下げる。

 すると理音が前を向き、手を背に回してトップの紐を結びながら言った。


 「どう? これがあたしの秘密……今まで夕花しか知らなかった、絶対の秘密なの! すごいでしょ!」


 (いや、すごいでしょ、と言われても、さすがにこれは……)


 「いい!? あんたたち、あたしの秘密を知った上にビキニ姿まで見ることができたんだから感謝しなさいよ! もう二度とないからね!」


 そう言うと、ブラウスを羽織(はお)って、テーブルの上の鍋に残った最後の鶏肉を食べ始めた。

 食べ終わった後、ウーロン茶をグビグビっとラッパ飲みすると、完全にいつもの理音の顔に戻り


 「ぷっはーっ! みんなに隠し事をしたままお別れになるのがイヤだったの。でもこれでスッキリした! んナはははー!」


 とあっけらかんに高笑いをしてみせた。

 おそらくは強がっているのだろうが、そんな理音の笑い声を聞いていたら、なるほど、理音らしいな、と妙に納得してしまった。


 (傷の原因などは深入りして聞かない方がいいだろう。また話したくなるときが来たら、きっと同じように笑いながら話してくれるさ)


 俺はそう思って微笑んだ顔を理音に向けると、理音も理解したのかコクンと頷いて


 「それより碧斗! こっちに来て恋バナの続きしなさいよ! 罰ゲームの罰がまだ残ってたでしょ!」


 そう言って俺を手招きするのだった……

 仕方なく理音の前に腰を下ろす。

 理音はあぐらをかいて、短いスカートの下にできるその境界線の影が、炎の明かりで波のように寄せては返してゆらゆらと揺らめいていた。


 「そんなわけでさー」


 (一体どんなわけだよ)


 ビキニのいろいろ境界線の向こうが見えそうな理音にドキドキしながらも、冷静に、的確にツッコむ俺。


 「せっかくの無人島だし、あんた泳ぎも得意でしょ? 授業で見てたんだから。だからあたしに泳ぎを教えてよ!」


 (そういえば水泳の授業は絶対に出なかったもんな、理由はわかったけど、あんなとは……それにしても転んでもただでは起きない、たいした性格だよお前……まさか、それが目的であんなことをしたのか? 泳ぎを教えてほしいってだけで……でも……)


 俺は考えても憶測しか浮かんでこないことに頭を振り、もう少しだけ考えたフリをしてから


 「そうだな~、そのビキニ姿になるんだったら教えてやろうかな」


 と、はだけたブラウスからのぞく紐ビキニを指さしておどけると


 「あ、コレは二度と見せないって言ったでしょ! 絶対にダメ! ダメったらダメなの!」


 と顔を赤くしながら、慌てて二段違いでブラウスのボタンを留め始めた。


 「まぁそうだな、海まではちょっとあるけど、バギーだったらたぶん三十分くらいだし、南の島の海と聞いたら泳がずにはいられないな。まぁついでに教えてやってもいいぞ」


 俺は理音から話の主導権を完全に奪ってそう言うと


 「見てなさいよ、泳ぎなんかすぐに覚えて、あんたなんか置き去りにしてやるんだから」


 と挑戦的な目つきで俺を挑発した。


 (本当にそうなりそうで怖いよ)


 理音のその身体能力ならば、間違いなくそうなるだろうな、と俺は本音ではそう確信をしていたが


 「やってみろよ、ただし俺に負けたらそのビキニ姿でジュースをはんなり(・・・・)とお酌して貰うぞ? 霞咲(かすみさき)さんに憧れてるんだろ?」


 と逆に挑発して、理音をからかって反応を楽しんだ。

 すると理音は動揺するどころか余裕しゃくしゃくとした顔で


 「あ、そういうこと言うんだ。霞咲さんのオフショット、見せてやろうと思ったけどやーめた!」


 と言うのだった。


 (なにっ、そんなのあるのかよ)


 俺は思わず身を乗り出したが、ここはガマンして平静を保った。


 「なぁ理音、ところで、今朝のアレは何だったんだ? キクも夕花もあのときはビクついてたぞ?」


 こんなにリラックスした雰囲気の中で話すのは初めてだったのでついポロッと聞いてしまったが、理音は肩越しに振り返ると目を伏せてその肩に手を当てた。


 「……この傷がね、変に疼くの、この島に近づいてからずっと……それでね、なかなか寝られなくて……ちょっとイライラしちゃったの。ごめんね……」


 俺は、はっとして理音の顔をのぞき込んだがそこには憂いと言うよりはちょっと寂しそうな顔があった。


 「でもこうして背中が解放されるとちょっと楽だね、この島にいる間はブラしなくてもいいかなー、なんてね」


 とペロッと下を出してウインクしてみせた。

 爆弾発言である。


 (それはつまりその、アレがあれでありアレがあーなることも考えられるわけで……)


 俺の脳は理音の告白からの過負荷に耐えかねて暴走寸前になってしまった。


 「ま、まぁなんだ、普段のしがらみから解放されるってのもこの島に来た理由だし、い、いいんじゃないか?」


 と、うろたえている素振(そぶ)りを悟られまいと、もっともらしいことを言ってごまかしてみた。


 「……あんた、変なこと考えてないでしょーね……」


 俺をジト目で見つめる理音。


 (な、なにをおっしゃいますか理音さん! 決してそのようなことは……)


 俺は頭の中に(ぽわっ……ぽわわん……)と次々と浮かびそうになる(よこしま)な妄想を必死で振り払おうと、目を泳がせながら何か他の話題は無いかとオーバーヒート気味の脳のレブ・リミッターを解除した。


 「そうだ! キクが言ってたな! 狩猟免許あるって。狩りとか出来るんじゃね?」


 理音が目を輝かせて食いついて、話をそらせると思った俺。


 「うーん、あたしもそう思って調べたんだけどね」


 (調べたのかよ。普段は勉強とか関心がないくせに、狩りとかだとスゲー熱心になるのなオマエ)


 「あのね、免許持ってる人がそばにいても、道具を使ったりして動物を追い回したりはダメみたいなんだ……


 理音は艶やかな唇に人差し指を当てて、残念そうな素振(そぶ)りを見せる。


 (か、可愛すぎだろ……)


 「槍とかドカっとか投げて当ててみたいのに!」


 (前言撤回! 怖すぎだろ……)


 俺は会話の流れで一発逆転を狙おうとしたが、結果は無情にも零点で押さえられてしまったようだ。


 「でも大声を出して追い回したり、木を揺すったりして脅すのはいいと思うんだ。なんかいないかなー害獣♪」


 (クスっ、お前、生まれる時代を間違えているぞ、ついでに場所もな)


 理音が石器時代に広大な草原を駆け回って、巨大なマンモスを追いかけている姿を想像しながらの怒濤(どとう)の二連ツッコミで、心の中ではなんとか同点に追いつくことができた。

 ここで俺は話題を変えて、今度は二人の出会いについて軽く聞いてみることにした。


 「なぁ理音、中学ん時、バスケの授業の後で話しかけてきたろ? あれ、なんで? あれがきっかけで友達になったけど……」


 俺は何気なしに聞いたつもりだったが、理音は少し考えた後、急にうつむいてしまい、耳の先が真っ赤になっていた。


 (何言ってんのアオトー! そんなの……そんなの言えるわけないじゃん! カッコよかったからなんてー!)


 理音はうつむいたまま何も答えなかった。


 (あれ? 顔真っ赤? 怒ったのか?)


 俺はそのまま理音の返事を待ったが何も返ってこないので、違う質問をしてみた。


 「そのあともちょくちょく話しかけてくるようになったよな。なんで?」


 (えー! 気になってなんて……気になって仕方がなかった……言えないよ! 絶対言えない! なんなのもぉー!)


 膝の上でぎゅっと拳を握りしめる理音。

 俺は口をへの字にして困惑する。


 (これも不発か、じゃあ)


 「高校、おまえならバスケの強豪校に行けたと思うんだけど、なんで永禮橋(ながればし)にしたんだ? (あかつき)学園とか、結構近いだろ?」


 (何いってんの!? あーもぅ! アオトと、碧斗と同じ高校に行きたかったとか、絶対に言えるわけ無いから~~!! この鈍感っ!!)


 理音は握りしめた拳を振り上げて、俺の頭に落下させた。


 「ぽかっ!」

 「痛ぇ、な何すんだよ」


 理音は俺の頭を殴ると、そのままキクハウスに戻って行ってしまった……


 「おーい、後片付けぇ……」


 (ったく、んだよアイツ)


 俺はそれほど痛くもない頭をさすりながら、理音に叩かれた部分をしばらく触り続けたのだった……

 ふとスマホを見るともう午後の十時を大きく過ぎていた。


 (おっと)


 「おいキクー! そろそろ火の始末しちゃおうか!」


 夕花はすでに食べ終わった皿などをまとめて後片付けをほぼ終えていた。


 「……これ……まだ食べる?……」


 綺麗に拭かれたテーブルの上には、少し残った料理と理音の食い散らかした紙皿が整理されて置かれていた。


 「もうおなかいっぱいだし、生ゴミは俺がコンポストに入れておくよ、夕花は洗い物しちゃって。食洗機の使い方わかるよな?」


 夕花はコクンと頷くと、両手でダッチオーブンを抱えて、重そうにヨロヨロと歩いて行った。


 「ジュワー……」


 後ろで菊次郎が備長炭に水をかけていた。


 「キクー、ビショビショしなくていいぞー! 消えればいいからー!」


 少し離れたところから放水している菊次郎に、また使う時のことも考えて、一応の指示を出した。

 俺は食べ残しを、性格からか綺麗にキッチンペーパーで包んでコンポストに放り込み、紙コップや紙皿などを囲炉裏に投げ入れて後始末を終えた。


 (よし、戻って風呂でも入るか)


 俺は上陸二日目での最初のイベントをほぼ完璧に終えた達成感に満足しながら、キクハウスに戻って次の朝を迎えるのだった……

はーい、タコ助でーす!


今回の第三八話、どうでしたか? 理音のあっけらかんとした衝撃的な告白には、碧斗のみならず他のみんなもびっくり仰天だったようです!

まさかあんな秘密があったなんて。でも、そういうところも理音らしくて、なんだか妙に納得してしまいましたね。

強がってるけど、本当は繊細なところもあるんですよ、あの娘は。でも豪胆。

そして、碧斗の鈍感っぷりも遺憾なく発揮されていましたね(笑)。

今まで理音の気持ちに気づいてやれなくて、ごめんって感じで、タコ助が代わりに謝っておきました。


まあ、そんなこんなでキャンプファイヤーの夜も更けて、無人島生活は二日目に突入です。


次の第三九話では、またもや謎のアレが登場するかも。

あの人は相変碧斗たちを困惑させてくれるようですよ!

それから、碧斗は勉強モードに突入するんだけど、そこでまた新たな発見があったりなかったり……

では次回もお楽しみに!

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