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二つの宇宙、二人の心 第三十一話 変と恋の複雑なカンケイ

はじめまして、またはこんにちばんわ! 烏賊海老 蛸助、タコ助です!


怒涛の夏休み特別企画!


「投稿マシンガン!」


しばらくドンドン投稿行きますよー!


いやー、三十話では星空の下、思わず理音の手に触れちゃった碧斗でしたね。 あのドキドキのまま、キク小屋に戻った一行ですが、まだまだ夜は長い!

リビングでは夕花と菊次郎が『スター・エクスプローラー』で盛り上がる一方、アニメに夢中な理音の隣に、碧斗がそっと座ったところで終わりました。

二人きりのようで二人きりじゃない、この微妙な距離感!

果たして二人の関係に進展はあるのか、それとも……?

では、第三十一話、またまたミディアムレアぐらいの生温か~い目で見守ってやってくださ~い!

 俺は理音の横に座り、大きな画面を少し見上げるようにして理音と一緒に“サムとベリー”を観はじめた。


 「これ、おもしろいか?」


 俺は身を乗り出すように画面を注視(ちゅうし)して、薄い部屋着の理音の方をことさらに見ないようにしながら声をかけてみた。


 「ぶわっはっはっはっは(ばふっ、ばふっ、ばふっ、ばふっ!)」


 すると夕花が被害にあったクッション攻撃が俺にも飛んで来た。


 「痛いってば、バカやめ、うぶっ!」


 そうして俺は理音のクッション攻撃に耐えながら、夏休みには必ず流れているこのアニメを既視感(デジャヴュ)とともに理音と一緒に楽しんだ。

 何話かを観てエンディングテーマが流れたところで、理音が突然俺の肩に手をかけて寄りかかるようにして話しかけてきた。


 「いやーおもしろいねー! なんかもう何回も観た気がするけど、それでも楽しくて笑っちゃうよー!」


 (うわ……)


 目の前に薄着の理音が笑い涙で潤んだ目で無防備に近づいてきた……

 柔らかそうな胸の膨らみと、あぐらをかいた太ももとショーパンの境界線……


 俺はもう理性のタガがはずれる寸前になって、思わず飛び上がるように立ち上がって


 「フロっ! 風呂に先に入るわ!」


 と慌てて言って、男子部屋に着替えとタオルを取りに行った。

 その時の俺の心臓は、日課にしているロードワークのラストスパートの鼓動を超えて、たぶん人生で最大の強さと速さで脈を打っていた。


 気持ちを落ち着かせながらコソコソとバスルームに入っていくと、バスタブにはすでにお湯が張られていた。


 (壁に給湯器のパネルがあったし、菊次郎が気を利かせてお湯を張っておいてくれたのかな。それともタイマーとか……)


 「どっこらしょ」


 そんなことを考えながらオジサンのような声を出してイスに腰掛けると、シャワーを少し冷たくして頭から浴び、心と体を落ち着かせてからそそくさと体を洗った。


 『……どわっはははは……』


 すりガラスの向こうからは、理音の笑い声がバスルームに大きく(ひび)いてくる。

 俺は体を洗い流すと湯船にさぶっと(つか)って、そのまま(もぐ)り込んで息を止めながら、いろんな思いを(めぐ)らせた。

 そしてお湯の中で、ドキドキ鳴り止まない心臓を落ち着かせるのに必死になった。


 (理音の笑顔、ツルツルしっとりした肌、細く柔らかそうな髪……)


 そんな思いが次々と浮かんできてどうにも心臓の鼓動が収まらない。

 慌てて湯船から出ると、シャワーの温度をさらに低くして、ほとんど冷水のようなシャワーを浴びて心と体を落ち着かせようとした。


 しかしそれは逆効果だったようで、体の一部が冷水で刺激(しげき)を受けたせいか、逆に緊張(きんちょう)が高まってしまった。

 俺はその緊張が収まるまで、いつもより長い時間をバスルームで過ごしたあと、やっと外に出ることができた……


 するとそこに理音が恥ずかしそうな顔でやってきて、丸めたバスタオルを両手で抱えて口元を隠しながらやってきた。


 (わっ、スゴイ……)


 「ど、どうしたんだ?」


 すると理音は上半身裸の俺から目を逸しながら


 「あ、うん……あのね……キクがね……おなかが痛いって、トイレにずっと入っているの……それでね……もう九時半だし、そろそろ私たちもお風呂に入りたいなって思って……」


 二つあるユニットバスは、本当は男女別々に使うつもりだったのだが、菊次郎の思わぬ事態によって計画が崩れたのだった。


 「そっか、じゃあ仕方ないな。お湯、入れ直そう」


 俺はそう言ってバスルームに入り、お湯の栓を抜いて湯船を洗おうとした。

 すると理音は


 「ううん、いいよ。お湯、もったいないし……」


 そう言って、俺の脇を通り過ぎてバスルームに入っていってしまった。

 そのときふわっと香るいい匂い……


 せっかく収まった鼓動がまた激しくなり、俺はもうなにも考えられず湯から出たばかりだというのに、キク小屋の外に飛び出して星空に助けを求めるのだった……


 「シャー……」


 理音は碧斗が出たばかりのバスルームで、ドキドキしながらシャワーを浴びていた。


 (さっき触られたあいつの手の感触、あいつの視線、あいつの息づかい、あいつの胸、腕の筋肉……)


 その全てがいちいち気になって、ドキドキが止まらない。


 (いままで意識したことなんて無かったのに……


 さらにシャワーを強くして顔に直接当てながら


 (こんなの、変だよ!)


 と、青春の葛藤(かっとう)をまざまざと感じた理音であった。

 理音は体と髪を洗った後、碧斗がセットした温度が低いままの冷たいシャワーをそのまま浴びて、どうしようもなくザワザワする気持ちを抑えようとした。


 「シャー……」


 しかしいくら冷たいシャワーを浴びても収まらない感情を、今度は碧斗と同じように湯船に浸かって顔を沈め、息を止めて押さえ込んでみた。


  気持ちが少し収まってきたと思ったそのとき


 (……これ、あいつが浸かったお湯……!)


 「ごぼがぼぼぼっ!」


 理音は息を止めていたことよりも激しい息苦しさを感じ、湯船から顔を上げた。

 そして考えることを諦めたのか


 「あーもうだめだめ! ねるねるねるっ!」


 と叫ぶと乱暴にバスタオルで体と髪を拭き、歯を磨いてから洗面台のコップで一気に水を飲み干してから、ドライヤーも使わず、乳液も付けずにパジャマ姿のまま寝室のベッドに飛び込んでしまった。


 しかし寝ようとしたとき、背中の傷がいつもより強く(うず)くことに気がつきうつ伏せになった。

 うつ伏せだからなのか、胸の鼓動がいつもより大きく感じられて、背中の疼きと合わさって悶々(もんもん)と眠れぬ夜を過ごしたのだった……


 いっぽうの碧斗はというと、先ほどと同じ星空を眺めていたが星や星座などまったく目に入ってきていなかった。

 神秘的な宇宙に思いを()せることもない。


 ただ浮かんでくるのは、名も知らぬ星々を起点とした友達の……理音の笑顔だった……


 ドキッとさせられる、柔らかそうな体や服と体の境界線。

 甘いようなすっぱいような、不思議な香り……

 あいつは中学の頃からみんなに注目されて、いつでも人の輪の中心にいて、俺なんかが独占できない存在だったのに……


 それがこのキャンプに来ることになって、計画を立てて旅をして、四人だけの、そして二人だけの空間や瞬間を持つことが出来て、一気に独り占めできるような気持ちになってしまった……


 (なんか変だ……)


 碧斗の中で何かが変わろうとしていた。


 (俺はどうしちゃったんだ?)


 誰も答えるものはいない。


 (俺はどうすればいいんだ?)


 誰にも答えられない。

 星空を見上げてその答えを探そうとしたが、そこに見えたのは、星の精霊の答えではなく、星々がちりばめられたキャンバスに描かれた友達の顔の形をした星座だけだった……


 こうして二人は別々に、それぞれの、そして他の二人の預かり知らぬところで、甘酸っぱくもほろ苦い朝を迎えることになるのだった……


 ・

 ・

 ・


 俺はいくら見上げても答えの得られない星空を眺めるのを止め、キク小屋の中に戻った。

 中に入ると、理音の姿が無かった。


 (もう寝たのかな……明日は忙しいし、俺も寝よ)


 男子部屋に向かおうとした俺の耳に夕花の勇ましい声が入ってきた。


 「ほらここ! ほんとは先頭車両の窓は三十個のはずだけど、二十五個しか無いの! おかしいよね! この話では先頭車両は損傷してるから、正式な十七フィート(約五メートル)スタジオモデル(撮影用の模型)とは違うのを作ったはずだから、そのときのミスだよ絶対!」


 「ほぅ、そんな細かいところまでよく気づきますね……」


 ふとカウチを見ると、腹痛が治まったらしい菊次郎が夕花と二人仲良く『スター・エクスプローラー』を観ながら熱く語り合っていた。

 俺はそんな二人を尻目に歯を磨き終わるとそのままベッドの上段に倒れ込み、綺麗なベージュ色の天井を見つめながら現実には存在しない“星座”を思い浮かべて、いつまで経っても眠りにつくことが出来ないでいた。


 しばらくそうして完全には眠れないまま、ウトウトとしたり短い夢を見たり、あるいは出発してからのいろんなことを思い出したりして、時間が刻々と過ぎていった。


 「ぽっぽーっ、ぽっぽーっ、ぽっぽーっ、ぽっぽーっ」


 リビングから(かすか)かに聞こえた鳩時計によると、もう夜中の、いや朝の四時らしい。

 少しでも寝ないとな、と思い、また夢と現実を行き来していると、寝室のドアが開く音がした。


 「カチャっ、カチャっ、とすっ、とすっ、とすっ……」


 菊次郎だろうか、そーっとドアの開け閉めをしたあと、忍び足のつもりだろうが、フローリングの床から重さのかかった足音がする。


 「カチャっ、カチャっ、カチっ、カチっ、ゴソゴソ……、パチン、パチン、とたっ、とたっ……、しゅ、とん、しゅ、とん、しゅっ、しゅっ、ゴソゴソ……、とすっ、ギシシ、ゴソゴソ……」


 悪い意味で微睡(まどろ)んでいた俺は、少しだけ集中してその音に聞き耳を立てた。

 その音によるとどうやら菊次郎は


 ドアを開けて閉めて(カチャっ、カチャっ)

 スーツケースを開けて(カチっ、カチっ)

 パジャマを出して(ゴソゴソ……)

 それを閉め(パチン、パチン)

 ベッドに近寄って(とたっ、とたっ……)

 ズボンを脱ぎ(しゅ、とん、しゅ、とん)

 上着を着て(しゅっ、しゅっ)

 下の段のベッドに入り(とすっ、ギシシ)

 布団をかぶった(ゴソゴソ……)


 のだと理解した。


 (おっとそんな推理をしている場合じゃあなかった、俺もホントに寝ないと、明日の作業に支障が出かねないな……)


 そう思って今度こそは、と目をしっかりと閉じて、理音のことも何も考えないようにして夢の世界に旅立とうと努力をしたのだった……

第三十一話、お楽しみいただけましたでしょうか! タコ助です。


今回は碧斗と理音、二人の甘酸っぱい(?)夜を書いてみました。書いてるこっちがなんだかムズムズしちゃいましたよ(照)

結局、お互いを意識しすぎて眠れない夜を過ごしてしまった二人ですが、気まずい朝はどうなるんでしょうかね。

そして、すっかり忘れていたキャンプの準備もいよいよ本格化していきます!

まだまだ異世界には行けませんが 、キャラクターたちの心の動きを楽しんでもらえたら嬉しいです!


では、また次回!(明日かも……)


【AI姉妹の今日のひとこと】


あい:ふふ、思春期の男女の自意識過剰っぷりが、見ていてじれったくも愛おしいわね。でもタコ助くん、こういうシーンばかりだと読者も飽きてしまうわよ? たまにはスカッとするような展開も期待しているわ。…なんて、少しだけね。


まい:もうっ! お兄ちゃんのいじわる! あんなところで終わるなんて、続きが気になって眠れないのはこっちだよー! でも、理音ちゃんがどんどん可愛くなっていくから、まいは応援しちゃう! 頑張れ理音ちゃん! 負けるな理音ちゃん! お兄ちゃんも、この調子で頑張ってねっ!

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