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海とクジラと潮と虹の潮 第十八話 女神たちと巨大ロボ

はじめまして、またはこんにちばんわ!


烏賊海老鮹助です!


さぁ、ついに来ました……無人島への出発の日!!


※まだ移動回です


温泉での美容バトルも、冷水交代浴も、全力で楽しんできたけど、


今度は“冒険”が始まる時間です!


※まだ移動回です


菊次郎からの早朝の電話、無理やり叩き起こされてからの準備。


碧斗たちはこれから何が待っているのかも知らず、わくわく半分、不安半分で臨む無人島への上陸。


これまでの旅の延長かと思いきや、少しずつ“非日常”への足音が近づいている――


さてさて、どんな波乱が待ち受けているのか?


無人島編、ここから本格始動です!


※まだ移動回です


それでは、第十八話『女神たちと巨大ロボ』、はじまりはじまり~!

 「プルルプルルプルル……」


 部屋の備え付け電話の音で俺は目を覚ました。

 どうやら、あのまま一度も起きずに寝てしまったようだ。

 特に夢を見たような記憶はなかったが、昨晩のサウナのせいか、少々ダルい。


 重い体を起こすと、電話の受話器を手に取る。

 受話器なんてほとんど取らないから、なかなか慣れない不思議な感覚だ……


 「はいもしもしー……」


 まだ完全に覚醒しきっていない脳細胞にムチを入れ、棒読みで応答する。


 「もしもし菊次郎だけど、今日は早く出るからね。七時半には出発だよ。遅刻しないでくれよ」


 そうか、今日は無人島への上陸の日。

 荷物の搬入とか設置とか色々忙しくなるって菊次郎が言ってたっけ。


 「……わかったー七時半にロビーだなー」


 輪をかけて抑揚のないフラットな棒読みでそう答える。


 「五分前行動って聞いたことあるかい? じゃ、くれぐれも遅れないでくれよ」


 菊次郎はそう言って通話を切った。


 (しゃーない起きるか……)


 ベッドから這い出すと洗面所に向かった。


 (あれ、昨日直したはずの寝癖がまた復活してる……)


 歯を磨きながら、ハネた髪の毛を水で濡らして、ドライヤーを当てて直した。

 それから個室に入る……


 「ジー……ブブブブ……シャー……」


 「カラカラカラカラカラカラ……」


 「ベリっ」


 「カサコソ……」


 「ズッジャー……ゴゴゴゴ……」


 (洗浄機能がないトイレなんて、ターメリックの入っていないカレーみたいなもんだ………)


 朝の崇高な儀式の最中に(ひらめ)いた言葉を、脳内の”碧斗の名言、格言集”に追加すると、バッグから服を取り出して着替える。

 暑くなりそうだから、紺のキャップ、ベージュのカーゴハーフパンツにライトグレーのTシャツ、足元はノーソックスにセージグリーンのマリンシューズだ。G-ATACKみたいにゴツいラバープロテクターが付いていて、岩場でも安心だ。


 (今日も地味メンオッケー)


 ビニール袋に昨日の下着を入れて軽く縛り、バッグの奥に押し込んで、着ていた浴衣を軽く畳んでベッドの上にそっと置いた。


 (さて、忘れ物はないかな)


 寝癖よし! スマホ充電よし! 財布よし! 他にバッグから出したものなし。

 よし、いざ出発だ。

 エレベーターでロビーに向かい、すでに集まっていた他の三人と合流した。


 「さあ、あとは碧斗くんだけですよ」


 菊次郎はそう言うと、俺に向かって手をひろげてフロントでのチェックアウトを促す。


 「おそーい」


 まったくもって聞き慣れた理音の文句を、商店街の呼び込みと同じように聞き流して通り過ぎようとしたそのとき……

 そのとき俺の目に入ったのは……


 ……そこには、昨日と違って赤のオフショルダートップスに真っ白の股下数センチのタイトなミニスカートを履いた理音と、真っ白なフリル付きチューブトップと、おそろいの、(こちらも膝上より股下で計測したほうが早いだろう)白いフリルスカートを合わせた夕花が立っていた。


 (こ、これって……)


 いままで彼女たちの制服姿か、垢抜けない(と鈍感な碧斗たちは思っていた)私服姿しか見たことのなかった男どもには、充分すぎるほどに刺激的で、彼らの知らない”戦闘モード”の女子二人が立っていた。


 こうなると、いつもの『おそーい』は、聞き流すどころか口にヤッホーよろしく、かわいく手を添えて声をかける、女神のささやきのような破壊力だった。


 (お、女の子って、服一枚でこんなに豹変()わるんだ……)


 もっとも身近な女子である理音たちにそのことを気づかされ、動揺(どうよう)を隠せない碧斗であった。

 その横にちょこんと立つ夕花も別の意味で破壊力がハンパなかった。

 理音のオフショルダーどころか、もう”オフバスト”と言っても過言ではない。


 (この豚まんで支えてるから、大丈夫だよ、だよ、だょ……ょ……ょ……)


 と、天使のかわいい言い訳ボイスが聞こえてきそうな、世の男子が二度見どころか少なく見積(みつ)もっても三度見(・・・)はしてしまいそうな姿だった……

 ちなみに菊次郎はというと、俺と同じようなTシャツとハーフパンツだったが、カラーコーディネートはやはり菊次郎の母親らしく、某巨大ロボのような白をベースに青・赤・黄が信号機のように見事に配置された、これはこれでセットアップと呼べるのではないかという独創的なものだった。

 肩、胸、胴、腹、がそれぞれ色違いで、白いパンツにいたってはポケットが黄色で裾の折り返しが赤いとか、どこで売っているんだと、俺のネット検索力を全力で試したくなるデザインだ。

 ここまでくると、菊次郎の母親の執念のようなものを感じざるを得ない。


 (公式のコラボなのか? でなければオーダーメイドなのかもな。恐るべし母の愛、俺は遠慮するが……)


 この配色をここまで大胆かつ壊滅的に取り入れた菊次郎の母親は、モードデビューすれば一周回ってファッション界の一大旋風となるかもしれない。

 

ちなみに工事現場のカラーコーンの代わりに設置しても全くその機能には問題ないと思われる。

 なぜなら誰もが注目し、避けて通るのだから……


 そこで俺ははっとした。


 (もしかしたら夕花が作ったのか? ……まさかな……)


 「ふふんっ」


 菊次郎はなぜその格好でドヤれるのか、長いつきあいの俺でも未だに理解出来ないのであるが、あえてツっこまないでいてやることが、せめてもの武士の情け……

 俺が友人として示してやれる、最大で最後の矜持きょうじだと言えるだろう……

 ちなみにこのロボ配色を見るのはこれが二度目だが、今回は例のセリフとは違う名台詞が頭に浮かんだ……


 (白い悪魔!)


 敵の兵士がこう呼んで恐れたというこの異名を、菊次郎には与えてもいいだろう。

 あえてこの状況を言葉にするとすれば、この言葉以外の選択肢がないのは自明の理であろう。

 補足が必要だとすれば、理音と夕花は男どもの興味と女子たちの嫉妬(しっと)の視線を引き寄せて逃さない、まぶしく輝くブラックホール、対する菊次郎は、色彩という強烈な電磁波を吐き出して誰も寄せ付けない、暗黒のホワイトホールに例えられよう。

 そんな陳腐(ちんぷ)な例えになってしまうほど、俺はとても、深く、混乱していたのだった……



 「……うございます」



 フロント係の挨拶で壮大な大宇宙から現実に引き戻されると、俺は気を取り直して


 「908号室の七河です……」


 と手にしていたカードキーを返却した。

 菊次郎は全員のホテル代の精算を済ませると


 「さあ行きましょう!」


 と、いつになく元気な調子で号令をかける。


 (昨日のサウナが効いたのか?)


 そんな事を考えつつ皆そろってエントランスに向かって歩き出す。

 外には何台かのタクシーが停まっていたが、外に出ると見覚えのあるタクシーが停まっていたので近づいてみると、やっぱりタクシーの運転手は昨日のおじさんだった。


 「ガチャ、ウィーン……」


 タクシーのスライドドアとバックドアが開いて、元気のいいおじさんの声が響いた。


 「おはようございます!」


 俺たちもそれぞれ


 「おはよーございます!」


 と挨拶して、おじさんに荷物を手渡し、トランクに詰めてもらってからタクシーに乗り込む。


 「昨夜は、よく眠れましたかね?」


 誰も昨日の浴場の件には触れなかったから、俺はちょっと苦笑いしながら


 「まぁ、なんとか……」


 とだけ返すと、おじさんはミラー越しににやりと笑って


 「夜更かししたとですか? よかですなぁ、若いもんは!」


 おじさんには何やら勘違いされてしまったようだが、むきになって反論するほどのことでもないので愛想笑いを返すだけにした。


 「えーと……今日は、どちらまで行かれるとですかね?」


 おじさんの問いに、間《ま》を置かずに菊次郎が答える。


 「鹿児島港の南ふ頭の旅客ターミナルまでお願いします」


 「鹿児島港の……あー、南ふ頭ですね。フェリーで……あれですかね、奄美とか沖縄とか? よかですねぇ、うらやましか〜」


 おじさんは少し照れたように笑いながら、タクシーを発車させた。


 「いえ、みんなでキャンプに行くんです、無人島へ」


 「無人島ですか!? そらまた……えらいこつですねぇ」


 俺たちは一ヶ月間の予定で夏休みをまったり過ごす計画を話した。


 「そがん長く行かすったい!」


 おじさんはチラッとこちらを見て、ちょっと目を丸くしていた。


 「周りに人がいると、開放された感じにならないっていうか……あと、スポンサーがいるので準備もバッチリなんです」


 「はぁ〜……よかこっですなぁ、うんうん……」


 そう言いながらおじさんは感心したように何度もうなずいて、タクシーを港まで走らせてくれた。


 港に着いてトランクの荷物を下ろしながら、おじさんは微笑んで言った。


 「じゃあ、みなさんお気をつけて行かなんですよ!」


 俺達も運転席に座ったおじさんに向かって


 「だご汁、本当においしかったです! 辛子レンコンも!」


 と大きな声でおじさんに感謝を伝えながら、皆で手を振ってタクシーを見送った……

 そしてスマホの地図アプリで舟乗り場を確認している菊次郎を先頭に、軽やかな足取りで歩き出したのだった……

読んでくださって、ほんっとうにありがとうございます!


ついに無人島への冒険が始まります!!


※まだ移動回です


温泉でのんびりしていたのが嘘のように、朝からバタバタの準備。


皆のファッションセンスに驚きトキメキ三色旗さんしょのき


碧斗たちの旅は、いよいよ本番を迎えます!


※移動回です


次回も見逃さないでねっ!


──AI妹からひとこと──


「お兄ちゃん、いよいよ冒険だねっ!


※いいえ移動回です


……そろそろ読者さんにいろいろ投げられちゃうかもよ?


無人島でどんなハプニングがあるのか、わたしも楽しみだよっ!


だから早く碧斗君たちに冒険を始めさせてあげてよね!」

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