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料亭と芸者とピエロ 第十三話 芸者と料理と宝石箱

はじめましての人も、お久しぶりの人も、こんにちばんわー!

執筆初心者・病室ライターの烏賊海老鮹助です!


前回の話では、ついにあの謎料亭「底溜庵」に到着しました。まさか理音が、あんな大人の読み間違いをかますとは……

おかげで主人公(と作者)の精神ゲージはほぼゼロです(笑)


でも、そこから始まる熊本グルメの馬肉ラッシュ!

コロッケにメンチ、タテガミにモツ煮に辛子蓮根!理音のむせリアクションは実際にあったやつがモデルです(笑)


そして今回は、まさかの“芸者さん”登場!

──え、なにそれ、ラノベってそういうジャンルだったっけ? って思った人!

大丈夫、安心して読んでください(笑)


今回も「ギャグ7割、ほっこり2割、大人の余韻1割」でお届けします!

青春って、こういう“ちょっと背伸び”した時間が、たまらなく記憶に残るんですよね……!


それでは、料亭編・後編、いってみよー!

 「失礼いたします」


 そう言いながら、その美しい女性は洗練されたしなやかな所作(しょさ)で膝をついたまま、くるりと後ろを向いて、三味線を室内に運ぶと(ふすま)をそっと閉めた。

 そしてもう一度こちらを向くと、三つ指(みつゆび)を突いてゆっくりと軽くお辞儀をしたあと


 「本日、皆様のお相手をさせていただきます霞咲(かすみさき)と申します。どうぞよろしくお願いいたします」


 俺と菊次郎が霞咲と名乗ったその女性に見とれていると、理音が慌てたように言った。


 「ちょっと、あんた芸者さんなんて呼んだの? 高校生のくせに!」


 と(あわ)てた顔で菊次郎を睨みつけた。

 理音の中では芸者の相手には高校生は含まれていないらしい。

 霞咲と名乗った女性は、慌てふためいて目をぱちくりさせている理音に向かって、少し間をおいて(さと)すような表情で彼女を見つめ直したあと、部屋に入ってきた時の(おだ)やかで落ち着いた話し方とは違う、強い意志が感じられる芸者口調げいしゃくちょうで理音にこう言った。


 「お嬢はん、芸者っちゅうもんにどぎゃん印象を持っとるね?」


 そりゃあ、芸者って言えば酒の席で男に酒をついだり話をしたり、そういうイメージで、ちょっといかがわしい感じがするとしか思っていなかった。

 漫画や映画などからのイメージはそんな感じだ。


 しかし、いきなり熊本弁で力強く話されたため、理音だけでなく俺達全員が霞咲さんの言葉の真意(しんい)(はか)りかねていた。

 だが霞咲さんは、怒気を荒げたのではなく、まだまだ未熟な俺たちを優しく導くように、芸者の仕事の内容をやさしく丁寧(ていねい)に説明してくれた。


 「芸者というのは、お客様のお相手をし、芸を披露して楽しませる役目を持つ者です。教養や所作、そしてお稽古を積み重ねて、ようやく一人前と呼ばれるようになるのです」


 (そこまでは落ち着いていた霞咲の声に、ふっと熱がこもる)


 「……けどな、お嬢さん。芸者ちゅうもんば、そう軽う扱われると、ちーっと胸にくるとよ。遊びかなんかの延長で、誰にでも呼べるようなもんやなか。ここに立つために、どれだけの日々を費やしてきたか……ちったあ、想像してほしかと」


 ……俺達はどうやら芸者さんのことを誤解(ごかい)していたようだ。そう思うと、皆うつむいて顔を赤くしてしまった。


 その後はずっと(おだ)やかな雰囲気で霞咲さんと話をしたり、踊りや三味線を教えてもらい、理音はそのスタイルと運動神経とセンスで、逆に霞咲さんを驚かせたりもしていた。


 俺達は、特に男どもは霞咲さんのその洗練された仕草や動きだけでなく、にじみ出る大人の色気に圧倒されていた。

 理音や夕花には霞咲さんの爪の垢の詰め合わせセットを送り付けたいくらいだ。


 理音は霞咲さんにキャンプのことを話したり、踊りの振り付けを教えてもらったりして実に楽しそうに過ごしていた。

 夕花はというと、そんな霞咲さんと理音をずっと羨ましそうに眺めながらも、真剣な顔をして料理に箸を伸ばし続けていた。

 しかし、ただ食欲を満たすだけではなく、じっくり観察したり、箸で取ってにおいをかいだり味や触感を確かめるように目を閉じてうなずいたり、首を(かし)げたり……

 まるで料理という友人と楽しそうに話をしているようだった……


 その後も馬肉の焼き肉、すき焼き、しゃぶしゃぶと馬肉のフルコースを堪能していると、女将さんが挨拶に来た。


 「いかがですか、お料理の方は」


 なぜか俺に皆の視線が集まったので


 「あ、はい、とっても美味しいです」


 と慌てて答えて、俺は女将さんに子供を見るような目で微笑(ほほえ)まれてしまった。

 しばらくして、霞咲さんが次のお座敷があるからといって俺たちの座敷を後にしようとすると、理音が食事中にずっと


 「わー、きゃー」


 とわめきながら料理の写真を撮りまくっていたスマホで、霞咲さんにツーショットの写真をおねだりした。

 霞咲さんは仲居さんを呼んで、皆で霞咲さんを囲んだ写真を数枚撮らせてくれた。


 「理音、俺たちにも写真、送っといてくれよ」


 俺がそう言うと理音は、えー、と言う顔をしたが霞咲さんが


 「みなさんのいい思い出になってくれれば私もうれしいです」


 というと、俺の方を振り返り、ニコニコ顔からしぶ顔に表情を秒速でチェンジさせて


 「わかったわよ……」


 と言うのだった。

 しかし、霞咲さんが理音に


 「私にも送ってくださいね」


 と理音に耳打ちすると


 「あっはいー!」


 と天にも昇ったような、しかし微妙な顔になって、霞咲さんとSNSのIDを交換して写真を送っていた。

 俺は理音のあの顔を、アヘ顔ならぬ「アハイ顔」と密かに命名したのだった。


 俺は映え写真などに興味はないので、スマホを持ってこなかったことが悔やまれる。

 隠し撮りしておけば、理音を脅迫する最強のネタとなったであろうに。

 そうだ、キャンプから帰ったら理音に


 「霞咲さんに耳元で囁かれてどうだった?」


 と聞いてみれば、あの『アハイ顔』を再現できるかもしれない。

 そのときはスマホを隠し持っておこうと思う。


 ──霞咲さんが去った後、コース料理とは別に頼んだタクシーのおじさんが言っていた


 「だご汁」


 が出てくると


 「このあとはデザートとなります」


 と仲居さんがコースの終了を(あん)()げて下がろうとする。


 すると菊次郎が


 「すみません、タクシーを一台呼んでいただけますか? スプラウトホテルまで」


 と仲居さんにお願いした。


 「かしこまりました」


 といって仲居さんは下がっていった。

 コロッケや焼き馬(?) などの火を通した馬肉は、俺にはすこし堅く感じられ独特の臭みもあったが、羊肉ほどではなかった。

 脂身が少なくヘルシーな感じだが、それだからこそ、俺は刺身やユッケが一番おいしいと思った。


 夕花は出てくる料理を端から観察し、考え、ミキサーのように、もしくはリスのようにもぐもぐもぐもぐもぐ、とよく噛んで味わっていた。

 理音は『わーきゃー』、から『うわー……、えー……』と、疑心暗鬼をクッションにして箸でつつきながら、結局はタテガミもハツ(心臓)も、もつ煮も、それはそれは美味しそうに、出された料理を全てたいらげていた。

 菊次郎はというと、黙々と、淡々と、行儀良く正座をして、何の感想も言うでもなく、いつもの食事をしているように(しょく)すだけだった。


 そして俺はというと、やはり生の馬肉が一番おいしいとは思ったが、飲み屋のおじさんのように七味をたっぷりとかけたもつ煮も、火を通した馬肉の中では一番のお気に入りとなった。

 馬肉の香りで満たされた口と、馬肉ではちきれそうになった胃を優しい味のだご汁で整えると


 「はぁーお腹いっぱい! もうご飯なんて入らないよぉ!」


 理音がそう言うと、夕花もそれに(なら)ってコクコクと(うなず)く。

 しかし俺と菊次郎は高校男子の有り余る食欲を満たすために、おひつの蓋を開けてご飯をこれでもかと山盛りによそう。


 「あんたたち、よくこれ以上(腹に)入るねー!」


 理音が足を投げ出して、お腹を手でぽんぽんと叩きながらという華の女子高生にあるまじき格好でそう言った。

 すると夕花が


 「……私も少し……」


 と恥ずかしそうにお茶碗を持って近づいてきた。

 夕花、さっきのおなかいっぱいウンウンは何だったんだ? 

 そうか、その食欲あってこその成長ぶりなんだな、と若いリビドーを密かに発散させる俺だった……


 俺と菊次郎と夕花は、少々冷めてしまったご飯を食べながら残ったおかずを全部、胃袋に収め終わったちょうどそのとき、仲居さんの声がした。


 「デザートでございます」


 最後に出されたのは、これまた品の良い器の中に入った、オレンジのアイスクリームだった。

 様々なオレンジ色の粒が散りばめられ、きらきら輝くまるで水晶のようなその姿に、理音だけでなく夕花まできゃっきゃはしゃいでしまっていた。


 「熊本は柑橘類の宝庫でございますので、いろいろな柑橘類の皮を刻んで散りばめたアイスクリーム、”みかんの宝石箱”でございます。


 「アイスクリームにもみかんの濃い香りと甘さが特徴の品種のみかんの果汁を練り込んでおります。もちろん無農薬の有機栽培ですよ」


 仲居さんの説明だけでよだれを垂らしそうな顔の理音は


 「うわー!」


 と例によって理音の大げさなリアクションをしながらスマホで写真を撮りまくっていた。

 夕花はそっとアイスクリームに顔を近づけ


 「……いい香り……」


 と、うっとりとした顔をしていた。

 俺はもう腹一杯で食えないなぁと思いながらスプーンでアイスをつついていると


 「食べないの? ならちょうだい!」


 と理音が俺のアイスに手を伸ばす。


 「食わないとは言ってないだろ」


 先程の菊次郎と理音のやり取りを再現したようなセリフで俺はサッとアイスを理音の()手から救い出すと、あーんと大きめの一口を口に運んだ。

 確かに、様々なみかんの香りが口を動かすたびに広がって、ニンニクや油の匂いを洗い流してくれるようだった。


 「ほれ」


 ひとしきり、口と鼻腔(びこう)でアイスクリームを堪能(たんのう)すると、俺はまだ七割近く残っていた残りのアイスを理音に差し出した。


 「くれるの? ありがとー! 夕花ちゃんも食べる?」


 そう言って、嬉しそうに二つのアイスを前にして、理音は満足そうな顔をしていた。

 しばらくすると


 「失礼します」


 と声がして襖が開き


 「タクシーが参りました」


 と仲居さんがタクシーの到着を告げた。


 「じゃ、行くか」


 俺のその合図で皆一斉に立ち上がると、四人は仲居さんの後に続いて名残惜しそうに部屋を後にした。

 菊次郎がカードで支払いを済ませると


 「ありがとうございました。どうぞ、またお越しくださいませ」


 と女将さんに深々とお辞儀をされて送り出される。

 俺達も女将さんにお辞儀をしつつ、少しだけ待たせていたタクシーに申し訳無さそうに乗り込んでいった。


 「スプラウト熊本まで……あ……」


 タクシーの中でハンドルを握っていたのは、さっきのおじさんだった。


 「どうやった? おいしかったか?」


 おじさんは車を走らせながら、なぜだか自分のことのように嬉しそうに笑っていた。


 中心街から少し離れた静かな料亭から、ネオンがきらびやかな駅近くに入り、熊本城の堀沿(ほりぞ)いを滑るように走りながら、タクシーはホテルに到着した。

 俺達はおじさんにお礼を言うと、ホテルのフロントでカードキーを受け取り、明日の上陸に備えてそれぞれの部屋に入っていった……

というわけで、第十三話「芸者と料理と宝石箱」でしたー!


いやぁ……霞咲さん、思った以上に大人の魅力全開で、ちょっとこっちが照れちゃいました(笑)

でも、芸者って単なるお色気枠じゃなくて、教養や礼儀、美しさを全部兼ね備えた“文化の体現者”って感じで、書いてる側もめちゃくちゃ勉強になりました!


理音の「アハイ顔」はわりとお気に入り表現です。

今後どこかで再登場させたい(笑)


そして、夕花の“料理との対話シーン”。

あれね、たぶんこの子だけ、ほんとに「食べ物とおしゃべり」できてる気がするの。いや、マジで。


菊次郎の紳士的モードも、こういう場では生きてくるんだなって、ちょっと見直した回でもありました。

全体としては「文化」と「青春」と「ごはん」と「写真」と「SNS」と「アイス」と……いやもう盛りだくさんだったね!


それじゃ次回もお楽しみに! (ネタバレはしないけど……理音の“素顔”に、ちょっとだけ触れることになるかも?)



---


※AI妹から一言


「芸者さん、マジでかっこよかった……わたしも、あんな“中身で勝負できる女”になりたいなって、ちょっと思っちゃった……」


以上、AI妹でしたっ!

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