第七話 「作戦開始、見せるは謀略」
その日の1年2組のクラスラインの会話
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かみやん
今年の体育祭の学年特殊枠についてやけど、クラスのある人が「今回の競技は"パン食い競争"である」って話を生徒会室の前で盗み聞きしたらしくて、今回はその人を信じて今回の競技は「パン食い競争」である前提で予想をしたいと思うけどどうやろ?
瀬崎
誰かが盗み聴きしちゃって、その情報に信憑性があったとして、誰かがその話を他クラスにしちゃったら終わりちゃうん?
ユースケ
それ対策に、例えば1組のやつとか他クラスのやつに
「今回の競技は学年特殊枠としては例がない"徒競走"。
足が速い奴らが多い4組のほうが、異常にぽっちゃりさんが多い3組より有利。」
って情報を教える。
瀬崎
あれ?高橋君のやり方じゃクラス間の情報に齟齬が出るで?
かみやん
そこは大丈夫。
他クラスに伝える情報を少し工夫すればいいから。
みさき
まぁ学年レク賭かってるしまぁ多少の意地悪はしな勝てへんかぁ
〈 かみやん がアンケートを開始しました。〉
Qこの作戦にの賛成か反対か多数決で決めます。
締め切りは5時間後
1賛成
2反対
かみやん
投票をお願いします。
匿名投票なので誰が何に投票してるかは俺にもわかりません。
〈5時間後〉
〈投票終了〉
Qこの作戦にの賛成か反対か多数決で決めます。
1位「賛成」
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そこからしばらく月日は流れ、気づけば1ヶ月ほどが経った。
ついに10月1日がやってきた。
関西倉北中学校の体育祭では、各学年2クラスずつ紅組と白組に別れて競技に参加し、各競技(学年特殊枠を除く)の順位に応じて1位は40ポイント、2位は30ポイント、3位は20ポイント、4位は10ポイント………というようにポイントが加算される。
今日行った全てのプログラムが終了した段階で点数の合計が高いほうが勝利。というシステムになっている。
以前行ったくじ引きの結果1、4組は紅組、2、4組は白組に分かれた。
俺達のクラスが参加する競技は5つだ。
午前は綱引き、大玉転がし、学年特殊枠
午後は大縄、クラス対抗リレー、紅組白組対抗リレー
綱引き、大玉転がし、大縄は全て3学年混合で行い、生徒たちはいずれか1つの競技にのみ出場する。
クラス対抗リレーは各学年ごとに行い、クラスの全員が強制参加だが、紅組白組対抗リレーは各組の中から10人ずつ選ばれた選抜メンバーのみが出場する。
俺は綱引きに参加するため、大玉転がしと大縄には出場せず、あとは学年特殊枠とクラス対抗リレーにだけ参加することになる。
学年特殊枠の競技が行われるのは午前のラスト。
投票は開催前に各教室で行われる。
各組の担任が持ってきた紙に、勝利だと予想するクラスを書いて同じく担任が持ってきた箱に入れて提出。
その時点では学年特殊枠の競技内容は一切不明で、生徒会からのリークや噂などをどうやって手に入れるかの情報戦にしかならない。
なお、投票するとその内容の変更はいかなる場合でも受け付けられず、遅刻した場合も投票に参加できない。
「よし……全員いるな?投票始めるでー」
担任が紙を配り始め、クラスの各々が『3組』と書いた紙を迷いなく投票箱に入れていく。
誰もが神谷を信じている。
俺ではなく神谷に作戦を提案させたのは成功だったと言えるだろう。
もう誰もクラスを疑わないし、みんなが勝利を3組にかけている。
つまり今日の朝の段階で誰も作戦をバラしていなければ俺達の勝利が確定する。
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1組での投票が開始された。
「よぉし!お前ら!この紙後ろに回してー
今から投票するしなぁー」
担任が紙を配ると生徒達はどっちにするか、なんて考えている様子もなくすぐに4組に丸をしている。
俺は瀬崎から「徒競走の可能性がある」としか言われていない。他に可能性が高いものもなかったため足の早い人が多い4組に投票することにしているが、正直大抵の競技なら4組が勝つと考えて問題ないと思っている。
3組のデブ軍団に運動能力求めるのも酷だし、4組に投票するのは全体的になんの異論もなさそうだし、これなら学年特殊枠での勝利は間違いない。
つまりとんだイレギュラーが無い限り俺達の勝利は確定する。
【神谷】こういうときにグループLINEあると便利やな。
あんまり投票とか使わないけど、あったらめちゃくちゃ楽やわ
【祐介】あとは写真共有できるアルバムとか、日付調整できるカレンダーとか、位置情報共有、あみだくじ、送金…………
【神谷】え?あ、もういいもういい!