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奇策の裏役者  作者: masterpiece (村右衛門&モ虐)
<中学1年生--夏休み>
2/18

第二話「噂、若しくは事の発端」

 



「おーい!祐介!」

 俺は■■に起こされて目を覚ます。

 俺が塾や授業中に睡眠をとる時は、左手で目を隠しつつ、頬杖をつくような体勢で顔を下に向け、右手でペンを持つ。

 こうすることでバレるリスクを極限まで下げている。

 まぁ、授業が終わってもこのままの体勢なので毎回■■に起こされなければ俺は教室に置いてけぼりにされるわけなのだが。




「昨日何時に寝たん?どうせ日付変わってからもゲームしてたんやろうけどさ」■■が呆れたように聞いてきたが、

「昨日は3時まで起きてた。そっから8時まで寝てから昼飯抜きでまたゲームしてた」俺の返答を聞いた■■はより呆れたような顔をしていた。

「ネトゲにおいて、ログイン時間が短くなりがちな学生はニート相手には差がつきがちって聞くけど、祐介が例外な理由がようわかったわ」



 帰りのバスで、俺たちはまたいつものように雑談していた。

 ■■にさっきの授業の内容を教えてもらっていたのだが、

「需要と供給ってので脱線したのは覚えてるんやっけ?」

「あぁ〜そこはギリ起きてたかな?」

「ていうか、この前俺に、『山本の片思いの経過観察を報告する代わりに今後俺が寝た授業の内容を教えて』とか言ってたけど元々寝んかったらいいと思うのは俺だけか?」


「いやぁ………それがなぁ。

 休日は夜更かししながらゲームをして、塾で寝て、授業内容は■■に聞いて、宿題をする。そうするってもう決めてるから。」

 それなら塾に行く必要性がどこにあるのだと問われるレベルのことを当たり前のように胸を張って主張する裕介を見て、■■は授業の内容の説明を続けようとするが………

「なぁ、需要と供給っての思い出して思いついたことがあるんやけどさ、今言ってもいい?」

「■■が授業内容の説明吹っ飛ばしてまで言うってことはそれほど重要なことなんやろ?

 いいよ。授業内容は後でdisc●rdで聞くし。」



「俺たちの共有する情報には、需要がある。

 俺たちは、情報を腐るほど持ってるけど、他の奴が、俺らの知らん情報を持ってたり、逆に他の奴が知らん情報を俺らが持ってたりするわけやん?」

「まぁ……そうやな。何でそんな当たり前のことを急に聞いてくるん?」

「まぁ最後まで聞いてぇや。

 その情報をお互いに供給することができれば、需要と供給が情報においても成立する。そうは思わへん?」


 ❃




 〈chat log 20245017〉



ユースケ

なぁ、さっきバスで言ってたやつ、詳しく。

 

■■

いいよ。


■■

“需要と供給”をうまく使って

学校全体に網張ってさ、俺たちに全ての情報が集まるって言うふうなのになればよりいいんじゃね?って思ってさ。


ユースケ

どうやって?


■■

例えば、そこら辺にいる男子1人呼んでさ。

「こいつの好きな人気になる?」

とか聞いて、食いついたらそいつから俺らの知らん情報探して、もし知ってたら教えてあげたらいい。

そいつから聞いた情報は、他の男子釣る時にも使えるしな。


ユースケ

じゃあ情報をわらしべ長者的な感じで交換しつつ集めることで俺たちが超情報強者になれる、ってことか?


■■

まぁ大雑把に言うとそんな感じ。

でも、大々的にトップに出る気はない。

ネズミのようにコソコソして、大きな網を張ろうかなって思ってる。

トップの俺の存在はうまいこと隠そうかなって思ってる。


ユースケ

隠すってどうやってすんの?


■■

この話はお前がこの情報網の中で動くと約束してくれへん限り教えられへん。

企業秘密みたいなもんやしな。


ユースケ

情報網………か。

そんなことしてるってバレたら周りからどんな風に言われるかわからんで?


■■

コソコソするって言ったやろ?


ユースケ

先生にバレて解散させられる………とかは?


■■

それを無くすためにコソコソするんやろ?


■■

で、どうすんの?

やる気ないならここで話は終わりやけど。


ユースケ

わかった。その組織に入る。

ただし、組織のメンバーの安全はしっかり確保しろよ。


■■

おけ。なら続き話すで。


まず、俺はそこら辺の男子との情報交換をせーへん


ユースケ

は?


■■

俺の代わりに、祐介と、もう一人女子の幹部を用意する。

情報交換をお前らにやらせて、その結果を俺にチャットで報告してもらう。

そうすれば祐介か女子がボスやとミスリードできるやろ?


ユースケ

そんなやり方………俺らを囮にして自分は安全圏内ってか?


■■

当然やけど、報酬はお前の知らん情報を渡す。

ただ、お前が望むなら俺に情報じゃなくて"お願い"をしてもいい。もちろん情報に釣り合うお願いならやけど。

そして報酬の情報はより良いものになることを約束する。


ユースケ

まぁ………結構優遇してくれるわけか。


■■

そうゆうことやな。


ユースケ

で、組織の名前は?

まさか、名前はないなんて言わんよな?

まぁ名乗ることもないかもやけどさ


■■

ネズミのような情報網、上層部がネットで活動することも踏まえ、網のnetとインターネットのnetもかけて、

Mouse.com………マウスコムでどう?


ユースケ

おぉ………いいやん。

で、そういえばさっき言ってた女幹部ってのは?


■■

それはリアルで話したいなぁ………


 ユースケ

 学校で話すわけにもいかへんやろ


■■

わかった。学校の近くに裏山があるやろ?

あそこに実はちょっと前まで80ちょいの爺さんがやってた喫茶店があってさ、その爺さんが最近死んで店も潰れてんけど誰も出入りしてなくてさ、なんと鍵も開いてる。

アジトにはピッタリやと思うんやけど


ユースケ

え、それ大丈夫なん?


■■

大丈夫。その爺さんと俺って実は知り合いでさ、昔爺さんが生きてた時に俺らが遊び場にする許可は得てる。


ユースケ

まぁ、それならいいけど。

なら明日の午後2時、そこ集合な。


(■■から地図の画像が添付される。)


ユースケ

わかった。じゃ。また明日な。


■■

ゲームしすぎて寝坊とかやめろよー


 ❃


 俺は思い瞼をこすりながら喫茶店に足を運んだ。


 看板には「喫茶 シュラフ-プラッツ」と書かれていた。

 古びたこの建物には捨てられたネズミのような哀れさと、それでもここに残り続ける生命力を感じる。


 どうやら■■はまだ来ていないようだ。

 喫茶店の中にあったホコリを被った席の内の一つに腰掛けて待っていると、背後から気配がした。


 サッと立ち上がり振り返ると、目の前に拳が飛んでくる。


 咄嗟に自分の前腕で相手の前腕を跳ね返すように攻撃を防ぐ。



「思ってた程バカじゃないんやな。」


 俺は相手が誰か気づいた瞬間驚きを隠せなかった。


「って………お前………」


「お前じゃなくて瀬崎 佳奈(せざき かな)。同じクラスなんやし名前ぐらい覚えててもいいんちゃう? 高橋祐介君」


 この喫茶店にやってきたのが、■■と女幹部ではなく俺のクラスの学級委員(まじめちゃん)だったからだ。




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