第十七話 「イルミネーション、されども不穏」
「なぁ………本気で行くのか?」
「ねぇお兄ちゃん?いかなかったら私何のために来たのかよく分かんなくなっちゃうよ?
いやまぁそりゃぁ………お兄ちゃんの横にいるだけで十分楽しいしそれでもいいんだけどやっぱり関係を進展させたいというかなんというか………」
「やっぱ家にいていいか俺!?」
もしイルミネーションに男女2人で行こうもんならマウスコムの連中に出くわした際、マウスコム達は格好のネタだと言って喜んで広めるだろう。
それも瀬崎の下部組織を中心に情報を垂れ流して瀬崎に情報が伝わるようにして、瀬崎からボスに伝わるようにしてだ。
「ほらほらふざけてないで行くよ!」
と、半ば引きづられるような形で家から出された俺は、徒歩数分の近所の公園まで歩くことになった。
「つーかくるみはここ来て何すつもりやったん?カップルじゃあるまいしまさかこの地獄と化したこのクリスマスムード全開なイルミネーションの会場に足を踏み入れるっていうんじゃーーー」
「はいはい。お兄ちゃんも十分リア充だから大丈夫。私って言うかわいい許嫁がーーー」
「お前と婚約した覚えはない。」
❃
「ねぇお腹すいたしなにか食べない?あ、あそこにたい焼きあるじゃん!」
「たい焼きってデザート枠だし後に取っておけば良くない?」
「あ、それもそっか…………ん?『焼きそばメガ盛り 食べきれば料金は無料。複数人での挑戦可』………あれやる?」
「フードファイターの道を進むつもりはないぞ。普通の焼きそば2つな。」
軽く見積もっても10kgはありそうな焼きそばの看板を指差してくるみは言ったが、さすがにそれを2人で食べれる気はしないので却下する。
「ボソッ(チェッお兄ちゃんと一緒に一つの皿の料理をつまみたかった………)」
「聞こえてるんだよなぁ…………」
「そうか!お兄ちゃん昔から視力と聴力だけバケモノだから………だからうるさいとこ余計に嫌なのかもね」
くるみは顔を真赤にしながら早口になって言った。
俺を連れ回すことに夢中なくるみだが、
俺は早くもとんでもない事に気づいてしまう。
瀬崎の取り巻きがいる。
俺の下部組織が瀬崎の下部組織を経由して瀬崎に………というわけではない。
瀬崎の下部組織が直接情報を入手してしまったら■■に情報が届くスピードも当然だが早くなる。
それはまずい。
最悪なことに人が多く。周囲が非常に騒がしい。
これが最悪なのは、は俺自身が人混みや騒音が嫌いだから……………というのがないわけではないが、
人が多ければ後をつけられていても気づかない。
逆に、撒けたとしても確信を持ちにくい。
それに周りがうるさいと、俺達の声が瀬崎の取り巻きに聞こえない。
声が聞こえた場合、俺が珍しく標準語を話しているため、見慣れない顔であるくるみのおかげで他人の空似であると思ってもらえる上、仮にそう思ってもらえなかったとしても「お兄ちゃん」とくるみが呼んでいるのが聞こえれば従兄弟だと言える。
まぁ信じるかどうかは全くの別問題だが。
だからこういう場所は嫌いなんだよ。
その後屋台で焼きそばを2つ買い(くるみが「私が払う!」と言って聞かなかったので奢ってもらった。)、美味しく頂いた。
「くるみ、ソース付いてる。」
俺はティッシュを手に取り、くるみの唇の横についていたソースを拭き取ると、
「お兄ちゃん………いつの間にそんなにデキる男になってるの!?」
なんか感動された。
❃
「たい焼きってつぶあんとこしあんどっちがいい?」
「カスタードっていう変わり種無視していくスタイルか。これ別の店で食った時は意外と美味かったぞ。」
「え、どうしよ………お兄ちゃんのオススメ………おっちゃん!カスタード1つ!」
カスタードを注文していたくるみ………あれ?1つ?きっとくるみは2つって言ったけど俺が聞き間違えたんだよな。
と思ったがやはり1つだ。
店主がくるみに渡したたい焼きは1つ。
「おいくるみ。早速たい焼きにかぶりついているようですが………俺の分は?」
「ふぇ?ふぁるひょ?」
と言ってくるみは突然、俺の口にたい焼き(くるみが一口食べたやつ)を突っ込んでくる
「…ムゴッ!?」
「間接キスだね。お兄ちゃん♪」
ホントに何で来たんだろう………
これはマジで、瀬崎が聞いたらなんて言うか………
【女子A】あれって高橋じゃない?
【女子B】高橋?あぁ、体育祭の人か
【女子A】何あの女の子?彼女かな?
【女子B】やとしたらすごいバカップルやな
【女子A】ちょっと後つけてみる?
【女子B】賛成




